2024年度の記録

研究集会「第26回北東数学解析研究会」
2025年 2月 17日 (月) --18日 (火)

会場
東北大学 理学部合同C棟 青葉サイエンスホール C201
プログラム
詳細はこちらをご参照下さい.

2025年1月23日 (木) 15:00-18:00 (いつもと開催日時が異なりますのでご注意下さい.)

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
佐藤 由菜 氏 (東北大学)
題目
$p$ - Laplacian を含むある退化放物型方程式の粘性解とその極限問題について
要旨
本発表では $p$ - Laplacian を含む, ある退化放物型方程式に対する初期値境界値問題について考察し, $p$ が十分大きい場合に粘性解が一意的に存在すること, およびその粘性解が $p→∞$ としたときに $∞$ - Laplacian を含む退化放物型方程式の粘性解に収束することを示す. 正規化された $p$ - Laplacian を含む特異放物型方程式に対する初期値境界値問題の粘性解の一意存在や $p→∞$ としたときの特異極限問題は Banerjee--Garofalo (2013) によって研究された. 正規化された $p$ - Laplacian は弱い特異性を有するが一様楕円性を保つため, ア・プリオリ評価が準線形放物型方程式の古典論によって保証されるなど, 解析に有利な側面がある. 本研究で扱う退化放物型方程式は古典論の枠組みからは逸脱する問題であり, また発散型にもならないため, 粘性解の理論の援用が重要になる問題と言える.
発表者
鈴木 啓太 氏 (東北大学)
題目
一般化 Hénon 方程式の最小エネルギーの極限について
要旨
一般化 Hénon 方程式の最小エネルギーにおいて, パラメータ $\alpha$ を十分大きくした際のエネルギーについて考察する. 通常の Hénon 方程式においては, $\alpha$ を十分大きくした際, 最小エネルギーは最小エネルギー解 $u$ の境界に近い部分の寄与が大きいことが Byeon--Wang (2006) によって示されている. 本発表では一般化した Hénon 方程式においては重み関数 $g$ の値が大きい領域における解 $u$ の値がエネルギーに大きく寄与することを示す.
発表者
新田 志郎 氏 (東北大学)
題目
劣線形な局所反応項を持つ非線形熱方程式
要旨
本発表では, 劣線形な藤田型方程式の反応項が局所化された問題について考察する. 局所化されていない劣線形な藤田型方程式に関しては Aguirre--Escobedo (1986) によって, 正値解の存在と初期値が恒等的に $0$ でない場合の解の一意性が証明されており, 一意性の証明については劣解を用いることで行われている. 本発表は Aguirre--Escobedo の手法を参考にし, 劣解の構成を紹介したのちにそれを用いることで得られる一意性についての部分的結果を述べる.

2025年1月16日 (木) 15:00-18:00 (いつもと開催日時が異なりますのでご注意下さい.)

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
柿沼 陸哉 氏 (東北大学)
題目
Berestycki--Lions 条件下における吸収項を伴うスカラー場方程式に対する $L^2$ 正規化解の存在について
要旨
本発表では, $L^2$ 質量制限を伴う非線形スカラー場方程式の解の存在について考察する. $L^2$ 質量制限を伴わない場合, スカラー場方程式の解の存在を保証するための非線形項の仮定に関しては, Berestycki--Lions (1983) により概ねの必要十分なものが与えられた. 一方, $L^2$ 質量制限を伴う場合, 解の存在は Hirata--Tanaka (2019) による峠の補題型の議論や Jeanjean--Lu (2020) による制限付き最小化問題の解析を通して研究された. しかし, いずれの場合も非線形項の条件は Berestycki--Lions 条件よりも強いものであり, 特に吸収項を考慮する上で制限が強い. そこで, 本発表では Hirata--Tanaka や Jeanjean--Lu の結果を拡張し, 非線形項に吸収項を設けることで, Berestycki--Lions 条件により近い仮定の下で非線形スカラー場方程式の解の存在について得られた結果を述べる.
発表者
永井 陸 氏 (東北大学)
題目
球面上における Emden 方程式の正値極角対称解の一意性と非一意性について
要旨
単位球面上の微分方程式の解において, 北極からの角度にのみ依存する解を極角対称解と呼ぶ. 本発表では単位球面上の帯状領域における Emden 方程式の正値極角対称解の一意性と非一意性について考察する. Shioji--Watanabe (2016) によって Sobolev 劣臨界の場合と臨界の場合, さらに優臨界の一部の場合について一意性が示されている. 本発表では優臨界の示されていなかった部分での新たな一意性の結果, 及び多重存在性の結果について述べる.
発表者
曽我 悠利 氏 (東北大学)
題目
ある走化性方程式における解の集中現象
要旨
本発表では, ある走化性方程式における解の集中現象について考察する. この走化性方程式は Keller--Segel 方程式と類似した数学的構造をもつ一方で, 解の長時間挙動において違いがある. 本発表では, 無限時刻で発散する解の挙動に注目する. この解が, 無限時刻においてデルタ関数的特異性をもつことを示す. さらに, ある仮定のもとでは, このデルタ関数の重みが $8\pi$ より“真に”大きくなることを示す.

2025年1月15日 (水) 17:00-17:50 (いつもと開催日時が異なりますのでご注意下さい.)

会場
東北大学 数学系研究棟209室
発表者
古戸 喜紀 氏 (東北大学)
題目
領域上の熱方程式に対する高階微分評価
要旨
本発表では, 有界領域における線形熱方程式の解の高階微分評価について考察する. Lebesgue 空間の指数 $p$ が $1$ より大きい有限の値の場合, Lebesgue 空間における熱半群の2階微分評価は良く知られている. しかし, 指数 $p$ が端点にあたる $1$ または無限大の場合には, 楕円型評価が成立しないため, 評価式が正しいかどうかは非自明となる. 本発表ではこれらの指数について時刻 $0$ 付近での特異性評価に関する結果を紹介する.

2025年1月14日 (火) 17:00-17:50 (いつもと開催日時が異なりますのでご注意下さい.)

会場
東北大学 数学系研究棟209室
発表者
森田 大河 氏 (東北大学)
題目
一般次元の単位球面上の scalar field 方程式の正値解の存在性
要旨
3次元以上の単位球面上での scalar field 方程式の正値解について, 北極からの測地線距離にのみ依存する解の存在性に関して考察する. Brezis--Peletier (2006) によって, 3次元の場合, 方程式の非線形項の指数 $p$ がソボレフ臨界指数に等しいとき, 方程式のパラメーター $\lambda$ を大きくすると, 解の個数が増加することが証明されている. 本発表では, 3次元以上の任意の次元で, かつ $p>1$ の場合に, この結果を一般化できることを紹介する.

2025年1月9日 (木) 15:00-18:00 (いつもと開催日時が異なりますのでご注意下さい.)

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
岡崎 大輝 氏 (東北大学)
題目
分数冪ラプラシアンを有する表面準地衡方程式の解の一意性
要旨
本発表では, 表面準地衡方程式の解の一意性について考察する. 分数冪ラプラシアンを有する場合を考え, 解の一意性が成立する空間の分数冪ラプラシアンの指数に応じた分類を行う. 分数冪ラプラシアンの指数が大きい場合には, Lebesgue 空間での解の一意性が知られているが, 本発表では正則性が負であるような空間において考察する. 一方, 分数冪ラプラシアンの指数が小さい場合には, 補助空間を付与した空間における解の一意的存在性が知られている. ここでは, 補助空間を付与しなくとも一意性が成立することを示す.
発表者
豊島 啓 氏 (東北大学)
題目
双曲空間上の Hénon 型方程式に対する球対称解の層構造
要旨
本発表では, 双曲空間上の Hénon 型方程式の球対称解について扱う. 特に球対称解の性質として対応する放物型方程式の定常解の安定性につながる層構造の性質に注目する. この性質については, Hasegawa (2017) によって2次元以上のとき, ユークリッド空間上の同様の方程式に対する球対称解の性質においては見られなかった臨界指数が新たに現れている. 本発表では, このうち優臨界の場合における層構造のより詳細な解析による結果を述べる. 更に, この結果の証明において鍵となる変換について得られた特徴についても述べていく.
発表者
春山 優樹 氏 (東北大学)
題目
空間1次元における新しいモデル非線形波動方程式
要旨
本発表では, 空間1次元非線形波動方程式の古典解の最大存在時間 (lifespan と呼ばれる) について考察を行う. 一般的な方程式と一般的な小さな初期値に対する lifespan の下からの評価 (解の長時間存在) を分類する一般論と, lifespan の上からの評価を意味するモデル方程式によるその最適性 (解の有限時間爆発) は, 最近ほぼ完成した. ここでは, 最適性をもっと多くの例で保証するため, 未知関数の空間微分のみからなる非線形項, 時間微分のみからなる非線形項, それらの積からなる非線形項, それぞれを持つ新しいモデル方程式について, lifespan の上からの評価に関して得られた結果について述べる.

「東北大学OS特別セミナー」
2024年12月16日(月) 16:00-18:00

会場
東北大学 数学棟3階305室
発表者
岡 優丞 氏 (東京大学)
題目
外力付き平均曲率流方程式に従って動く回転対称曲面の示す特異性
要旨
本発表では, ユークリッド空間における向き付けられた超曲面の時間発展の1つである, 外力付き平均曲率流を扱う. 平均曲率流は有限時間で自身の曲率を発散させることがあり, 特に2次元以上の超曲面の場合は, 1つの曲面が複数の曲面に 「ちぎれる」 ような特異性を示すことがある (Grayson, 1989). この特異性は pinching, quenching などと呼ばれ, 回転対称な曲面に限っても膨大な数の研究が行われている. 本発表では平均曲率流に定常外力の影響を加えた場合の, 特異性の発生の有無及びちぎれる瞬間の曲面の形状に関する結果 (東京大学の 三竹 大寿 氏と, ウィスコンシン大学マディソン校の Hung Vinh Tran 氏との共同研究) を紹介する.

2024年12月12日(木) 15:00-18:15 (いつもと開催日時が異なりますのでご注意下さい.)

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
北村 駿介 氏 (東北大学)
題目
空間1次元における重み付き半線形波動方程式の解析
(Analysis on wave equations with weighted semilinear terms in one space dimension)
要旨
本発表では, 時空変数の重みが付いた一次元非線形波動方程式の初期値問題について扱う. 先行研究として, 非線形項が未知関数のみによって構成されている自励的な場合は Li, Yu, Zhou (1991, 1992) 及び Takamatsu (arXiv) の結果によって一般論として lifespan の評価が得られている. この一般論の拡張として非線形項が非自励的な, 時空の変数を含む場合に拡張する方針と, 初期値の台のコンパクト性を外すように拡張する方針が考えられ, 2つの方針に対して, それぞれに対応する新たなモデル方程式の解析を行った. その解析によって, 非線形項が時空の変数を含む場合の変数の入れ方と, 初期値の台が非コンパクトな場合の時間局所解の非存在と条件の最適性について結果が得られた.
発表者
秋山 慧斗 氏 (東北大学)
題目
ツァリスエントロピーによるニューラルネットワークの最適化問題
要旨
人工知能における重要なモデルであるニューラルネットワークは多次元の実数値パラメータを含む関数として定式化され, その最適化問題とは任意の期待される入出力関係を表現できるようなパラメータを探索することである. 近年では統計的最適化, すなわちパラメータをある確率分布に従う実現値として, パラメータ分布の最適化問題へと帰着して分布に関する最適化を考察する方法が主流となりつつある. この分布の最適化にあたっては適切な正則化項を置くことが本質的であり, シャノンエントロピーを採用した問題設計が成功を収めている (Chizat(2022)). われわれは, シャノンエントロピーの一般化として知られるツァリスエントロピーを考察し, ニューラルネットワークの最適化問題へと還元することを試みてきた. 本発表では特に, パラメータ分布に関して線形化された評価関数を新たに導入することで, チサール型のツァリスエントロピーを用いたニューラルネットワークのパラメータ分布最適化問題を設計できたことについて発表する.

「集中講義」
2024年12月3日(火), 4日(水), 5日(木), 6日(金) 15:00-18:00

会場
川井ホール
講師
石毛 和弘 氏 (東京大学)
講義題目
楕円型・放物型方程式の解の凹性について
プログラム
詳細はこちらをご参照下さい.

2024年11月28日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
村川 秀樹 氏 (龍谷大学)
題目
細胞間接着モデルと走化性方程式系
要旨
神経細胞のように長い軸索を持った細胞が, 他の細胞と接触することによりコミュニケーションをとり, 適切な配置につく現象を, 走触性による細胞選別現象と呼ぶ. この現象は, 非局所移流を含む細胞間接着モデルにより記述される. これに対して, 化学物質を介して他の細胞とコミュニケーションをとり, 適切な配置につく細胞現象は走化性による細胞選別現象である. この現象は, Keller--Segel model に代表されるような走化性方程式系により記述される. 走触性と走化性現象には明らかな違いも見られるが, 似たような振る舞いも観察される. 本研究では, 細胞選別現象における走触性現象と走化性現象の関係について考察する.

「東北大学OS特別セミナー」
2024年11月22日(金) 16:00-18:00

会場
東北大学 数学棟3階305室
発表者
水野 大樹 氏 (千葉大学)
題目
結晶粒界運動の放物型フェーズ・フィールドモデルの解の一意性
要旨
本発表では結晶粒界運動を記述する放物型フェーズ・フィールドモデルを考察の対象とする. 本システムについては, 解の一意性の保証が長年の課題となっている. この課題に対し, [Antil et al.] (2024) が擬放物型近似を施したシステムについて解の一意性を保証しており, その正則性が解の一意性の保証に有用であることを示した. そこで本発表では, システムの構成要素である緩和型特異拡散方程式の解析を出発点として, 本システムの解の擬放物型正則性の導出を目標とし, 併せて解の一意性に関する成果を報告する. なお, 本研究は千葉大学教育学部の 白川 健 教授との共同研究に基づく.

2024年11月21日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
齋藤 保久 氏 (島根大学)
題目
軽症者の受診行動を考慮した感染症流行モデルと後退分岐
要旨
新型コロナウイルスの流行は, 治療薬やワクチンの開発という医療面の課題と同時に, 医師, 看護師, 病床の不足が招く医療崩壊等, 感染症のもつ社会的な側面を浮き彫りにした. Gion--Saito (Stud. Appl. Math., 2023) は, 感染者を治療を要する重症者と治療不要な軽症者に分類し, 治療容量の限界を組み込んだSIRモデルを用いて, 後退分岐 (backward bifurcation) を含む定理を導出している. しかしながら, 軽症者の一部は不安から医療機関に向かい, 実質的な治療は受けずとも宿泊療養等の対応を要する場合がある. 本発表では, こうした軽症者の受診行動を考慮した新たな数理モデルを構築し, 受診対応の容量不足が予期せぬ大規模流行 (後退分岐) を引き起こす可能性を示唆する定理を紹介する.

2024年11月14日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
山本 征法 氏 (新潟大学)
題目
非圧縮性 Navier–-Stokes 流の放物型スケーリングに基づく一意的な高次漸近展開
要旨
半線形拡散方程式の全空間における初期値問題を考えるとき, その積分方程式表示に現れる積分核の Taylor 展開から解の時間大域挙動を表す漸近展開が得られる. これは Escobedo--Zuazua (1991) により convection--diffusion 方程式の解の近似として導入されたものであり, 展開の各項が持つ放物型スケーリングに基づいて一意的な時間大域表現を与える. この手法は後に Carpio (1996) および Fujigaki--Miyakawa (2001) によって非圧縮性 Navier--Stokes 流の時間発展を与えるものに拡張された. 一方, この手法で高次の近似を導入しようとすると, 展開項の係数に対数的な時間発展が現れるため漸近展開が定義できなくなる. さらに, Navier--Stokes 流の場合は質量保存則に由来して係数の空間積分にも困難が生じる. これまでの研究により, Navier--Stokes 流の時間発展を調べる際に Biot--Savart 則と「繰り込み」を組み合わせるとこれらの問題を同時に解決可能であり, 一意的な高次展開が得られることが分かった. さらに, 解に含まれる対数的な時間発展を明示できることが判明したので報告する.

2024年11月7日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
田中 和永 氏 (早稲田大学)
題目
Perturbation from symmetry and periodic bounce trajectories in moving domains
要旨
時間周期的に動く領域における周期的な bounce trajectory (ビリヤード解) の存在問題に対する変分法を用いたアプローチについてお話したい. Bahri--Berestycki (1981), Struwe (1980) らにより開発されたいわゆる "perturbation from symmetry" と呼ばれる方法を用いる.

Perturbation from symmetry では有界領域 $\Omega\subset \mathbb{R}^N$ における非線形楕円形方程式 $-\Delta u=|u|^{p-1}u + f(x)$ in $\Omega$, $u=0$ on $\partial\Omega$ ...$(*)$ の解の存在問題が扱われ, 任意に与えられた $f(x)\in L^2(\Omega)$ に対して $(*)$ の解集合は $H^1_0(\Omega)$ において非有界集合となることが示されている. ここでは perturbation from symmetry のレヴューからはじめ, bounce trajectory の存在問題にどのように perturbation from symmetry を適用するか等について述べたい.

文献:
J. Hirata, Y. Matsugi, K. Tanaka,
Periodic bounce trajectories in moving domains.
Atti Accad. Naz. Lincei Cl. Sci. Fis. Mat. Natur. 35 (2024), no. 1, pp. 77–103.

詳細はこちらをご参照ください.

2024年10月31日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
小林 孝行 氏 (大阪大学)
題目
On the diffusion wave phenomenon for the solutions to the compressible Navier--Stokes--Korteweg system
要旨
本発表では, 圧縮性 Navier--Stokes--Korteweg 方程式の初期値問題における定数平衡状態の安定性について考察し, 解の拡散波動現象について得られた結果を述べる. 圧縮性 Navier--Stokes--Korteweg 方程式は, 蒸気と液体の2相流の運動を記述しており, その相転移境界を薄い遷移ゾーンと見なしたモデル方程式である. 圧縮性 Navier--Stokes 方程式における定数平衡状態の安定性の研究で, D. Hoff and K. Zumbrun 等によって得られた解の拡散波動現象の考察を, $L^2$ および Fourier--Besov 空間の枠組みで, 圧縮性 Navier--Stokes--Korteweg 方程式の場合に拡張した結果を述べる. 前者は九州産業大学の 津田 和幸 氏, 後者は信州大学の 中里 亮介 氏との共同研究である.

2024年10月24日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
渡邊 圭市 氏 (公立諏訪東京理科大学)
題目
Keller--Segel--Navier--Stokes system with nonlinear boundary conditions via maximal regularity
要旨
本発表では, 滑らかな境界を持つ有界領域において, 非線形境界条件を含む Keller--Segel--Navier--Stokes 方程式系の初期値問題について考察し, 小さな初期値及び外力に対する時間大域適切性の結果を述べる. この方程式系は Xue と Othmer (2009) によって提唱されたものであり, 感応性関数が行列値として与えられる点が特徴的である. これまでの既存の研究では, 非線形境界条件に起因し, 時間大域的弱解の存在を示す際に, 適切な切り落とし関数と一様エネルギー評価に基づいて収束部分列を構成していたため, いずれも解の一意性は議論されていない. 本発表では熱方程式とストークス方程式の解の最大正則性評価式を組み合わせることで時間大域的強解の一意存在を示す. さらに, 十分な正則性を持つ既知関数に対する解の正則性についても考察し, 最大値原理と組み合わせて細胞密度及び化学誘因物質の濃度を表す関数が非負となることも報告する. 本研究は 武内 太貴 氏 (九州大学) との共同研究に基づく.

「集中講義」
2024年10月15日(火), 16日(水), 17日(木), 18日(金) 15:00-18:00

会場
川井ホール
講師
前川 泰則 氏 (京都大学)
講義題目
プラントル境界層展開の数学解析
プログラム
詳細はこちらをご参照下さい.

2024年10月10日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
仙葉 隆 氏 (福岡大学)
題目
非線形知覚関数を持つ走化性方程式系の球対称解の性質について
要旨
本発表では, 非線形知覚関数を持つ走化性方程式系の球対称解の性質について考察した結果を述べる. この方程式系の知覚関数は一つのパラメータで表現されている. Winkler 氏は, 関連する方程式系の解がこのパラメーターの大きさによって, 爆発解が現れる場合と現れない場合を研究し, このパラメーターに閾値があることを示した. 本発表では, Winkler 氏が考察した方程式系を単純化しその球対称解のみを考察した. その結果として, 球対称な解の性質が線形知覚関数を持つ走化性方程式系のそれと類似することがわかった. さらに, 空間2次元の場合の線形知覚関数を持つ走化性方程式系に現れる定常解と類似したものが3次元以上でも現れることがわかった. 本発表ではこれらの定常解の性質から特徴的な性質を持つ時間発展する解を構成することができることも述べたい.

「東北大学OS特別セミナー」
2024年10月9日(水) 16:00-18:00

会場
東北大学 数学棟2階209室
発表者
出口 直人 氏 (東京科学大学)
題目
圧縮性 Navier--Stokes 方程式の定常解の安定性解析
要旨
3次元全空間における定常外力付き圧縮性 Navier--Stokes 方程式の定常解の安定性について考察する. 外力が小さいときの定常解の存在及び摂動問題の可解性については Shibata--Tanaka (2003) による結果が既に得られている. 本発表では定常解周りの初期摂動が十分小さい時の摂動の時間減衰評価及び減衰レートの最適性について得られた結果を紹介する.

2024年10月3日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
Ulisse Stefanelli 氏 (University of Vienna)
題目
Free-boundary problems for accretive growth
要旨
Accretive growth is a fundamental process in biological systems, as well as in various technological contexts, including epitaxial deposition and additive manufacturing. The interaction between growth and mechanics in deformable bodies gives rise to a wealth of very challenging mathematical questions. I will provide a brief overview of the fundamental concepts of morphoelasticity, namely, the theory of elastic deformations in growing bodies. In contrast to the classical case, the reference state of a growing body evolves over time, also in response to external stimuli and stress. In some situations, this calls for free-boundary formulations, as the actual shape of the undeformed body is also unknown. I plan to discuss the case of surface accretion, which poses specific challenges. The focus will be the development of a variational framework where the existence of three-dimensional morphoelastic evolution can be proved, both in the infinitesimal and in the finite deformation case. This is work in collaboration with Andrea Chiesa (University of Vienna), Elisa Davoli (TU Vienna), Katerina Nik (TU Delft), and Giuseppe Tomassetti (Roma 3).

「東北大学OS特別セミナー」
2024年7月29日(月) 16:00-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
越塚 毅 氏 (東京大学大学院情報理工学系研究科)
題目
機械学習と微分方程式
要旨
微分方程式は, 機械学習の分野においても重要な数理モデルである. 近年, 微分方程式で記述される力学系を機械学習を用いてモデル化する研究が行われている. 特に, 力学系が持つべき性質を予測に反映させるため, 対象の力学系に関する事前知識を活用する手法の研究が活発に行われている. 一方で, 機械学習モデルや学習過程の解析・改善のために, 微分方程式を利用する方向の研究も存在する. 本発表では, まず機械学習分野における微分方程式に関する重要な研究トピックをいくつか紹介する. その後, 発表者の主要な研究成果である, スナップショットデータを用いた Schrödinger Bridge 問題に基づく集団ダイナミクスの平均場モデル推定に関する研究を中心に, 周辺分野の発展についても議論する.

「解析セミナー」
2024年7月18日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
福島 竜輝 氏 (筑波大学)
題目
一次元 Mott variable range hopping の異常拡散相でのスケール極限
要旨
空間内に「一様にランダムに」配置された点の上をランダムウォークする粒子を, Mott variable range hopping model という. 数学的には, このような点配置は Poisson 点過程として実現され, ランダムウォークの遷移確率は二点の間の距離の適当な関数 (通常は指数減衰) として与える. このモデルはいわゆる Anderson 局在が起こっている媒質における電子の稀な移動を表すために考案された. 次元が2以上のときには, 遷移確率の詳細にはあまり依存せずに拡散的なスケーリングで Brown 運動に収束することが知られている. 一方で1次元では遷移確率の減衰速度によって, 異常拡散が起きることがわかる. この発表では, 異常拡散相でのスケール極限に関して, David Croydon (京都大学数理解析研究所), Stefan Junk (学習院大学) との共同研究で得た結果を紹介する.

2024年7月11日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
Florian Salin 氏 (東北大学)
題目
Energy solutions to a nonlinear boundary diffusion problem
要旨
In this talk, we will study a nonlinear boundary diffusion problem of porous medium or fast diffusion type. Such a problem arises as a model for boundary temperature control. We will show that the problem is well-posed in an energy class with no sign restriction, by employing the minimizing movement scheme. Furthermore, we demonstrate that energy solutions satisfy crucial energy inequalities, enabling the derivation of decay estimates and illustrating typical extinction phenomena associated with porous medium or fast diffusion processes.

2024年7月4日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
小池 開 氏 (東京工業大学)
題目
Local exact Lagrangian controllability for 1D compressible Navier--Stokes equations
要旨
区間 $[0,\pi]$ 上で圧縮性 Navier--Stokes 方程式を斉次 Dirichlet 境界条件下で考える. 我々は次の結果を示した : 区間 $(0,1)$ の十分近い部分区間 $I$ と $J$ が与えられたとき, 区間 $(1,\pi)$ に台を持つ外力を適切に選ぶことで, flow map が与えられた時間 $T>0$ で $I$ を $J$ に移すようにできる. この結果を証明するには逆関数定理を用いるが, そのためには $I$ に対する伸長作用が独立な2つの外力を見つけることが重要となる. 我々はそのような外力を線形化方程式の共役方程式を用いて定め, Fourier 解析を用いて "unique continuation property" を示すことで, それらの独立性を示すことに成功した. 本研究は Franck Sueur 氏(ボルドー大学)と Gastón Vergara-Hermosilla 氏(パリ=サクレー大学)との共同研究にもとづく.

「東北大学OS特別セミナー」
2024年7月1日(月) 16:00-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
Mario Rastrelli 氏 (University of Pisa・早稲田大学)
題目
On the Laplacian with point-like interaction
要旨
We refer to Laplacian with point-like interaction, the operator $-\Delta_\alpha$, as the non trivial self-adjoint extensions of the operator $-\Delta|_{C^\infty_0(\mathbb {R}^n\backslash \{0\})}$, with $n=2,3$. Such interactions were introduced firstly by physicists to describe zero-range interaction in quantum mechanics.
The first rigorous mathematical approaches on this operator are made by Berezin and Faddeev in 1961 and by the book of Albeverio and Høegh-Kron in 1981. The research skyrocketed after 2017-2018 when the boundedness of wave operators was proved, allowing to obtain dispersive estimates. These are intensively used in the last years to solve the Schrödinger equation with singular perturbation with power-type or Hatree type non linearities.

In our seminar, we will give the basic definitions and results. Moreover, we will describe in an alternative and more explicit way the singular perturbation in the 3D case, using the Helmholtz equation outside of a ball with Robin boundary condition. Finally, we will characterize the perturbed Sobolev spaces in the 2D case, essential tool for the contraction method regarding equations that involve $-\Delta_\alpha$.

「集中講義」
2024年6月25日(火), 26日(水), 27日(木), 28日(金) 15:00-18:00

会場
川井ホール
講師
宮本 安人 氏 (東京大学)
講義題目
ヤコビの楕円関数とその応用
プログラム
詳細はこちらをご参照下さい.

2024年6月20日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
藤原 和将 氏 (龍谷大学)
題目
1次元半線型消散型波動方程式の時間大域可解性について
要旨
本発表では, 1次元における尺度臨界並びに尺度劣臨界における半線型消散型波動方程式の解の挙動について考察する. この問題は, 初期条件によって解が有限時刻で爆発する場合と, 時間大域的に存続する場合が知られている. 本発表では, 有限時刻爆発現象が生じる為の初期条件について考察する. また, 時間大域解に関する長時間挙動についても考察する. 本発表は, Vladimir Georgiev 教授 (Pisa大学)との共同研究に基づく.

2024年6月13日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
瀬片 純市 氏 (九州大学)
題目
非線形シュレディンガー方程式系の解の長時間挙動について
要旨
本発表では1次元で3次の非線形項を持つ非線形シュレディンガー方程式系の解の長時間挙動について考える. この方程式系の解の長時間挙動はスカラーの場合に比べ非常に複雑になる. 本発表では, この方程式系の解の長時間挙動に対し, 方程式系のハミルトン構造に着目したアプローチを紹介する. 本発表は 眞崎 聡 氏 (北海道大学), 瓜屋 航太 氏 (岡山理科大学)との共同研究に基づく.

2024年6月6日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
隠居 良行 氏 (東京工業大学)
題目
圧縮粘性流体方程式の分岐周期パターンの安定性について
要旨
粘性流体の運動を記述する方程式系においては解は様々な興味深い時空間非一様なダイナミクスを呈する. 本発表では, 回転流体系に見られる空間周期的渦パターンの分岐安定性問題を考察する. マッハ数が小さい場合に, 定常周期パターンの分岐, 非圧縮極限に関する結果, および分岐周期パターンの局所摂動に対する安定性・不安定性に関する結果を紹介する.

「東北大学OS特別セミナー」
2024年5月31日(金) 16:00-18:00

会場
東北大学 数学棟305号室
発表者
赤瀬 康平 氏 (大阪大学)
題目
2次の微分型非線形項をもつ非線形シュレディンガー方程式の初期値問題の適切性
要旨
本発表では, 空間1次元において, 2次の微分型非線形項をもつ非線形シュレディンガー方程式の初期値問題について考察する. 微分を含む2次の非線形項は, その構造によって, ソボレフ空間における適切性の成立の可否に違いが表れる. 本発表では, 逐次近似法が破綻するような2次の微分型非線形項で, $L^2$に基づくソボレフ空間$H^1$における初期値問題の時間大域的適切性について述べる. Ozawa (1998)で導入された原始関数の有界性を付加条件として課した空間においては, ゲージ変換を用いることで適切性を示すことができる. そこで, $H^1$に属する初期値に対する解を, $H^1$に属し原始関数が有界となるような初期値に対する解からの近似によって構成し, 適切性を証明する.

2024年5月30日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
川上 竜樹 氏 (龍谷大学)
題目
Refined asymptotic expansions of solutions to fractional diffusion equations
要旨
分数冪ラプラシアンを有す非線形拡散方程式の解の高次漸近展開については, 通常の拡散方程式に対する手法を用いると, 積分核の可積分性の問題から展開できる次数に制限がついていた. これに対して石毛氏, 道久氏との共同研究 (SIAM '17) により, 線形部分については次数の制限を外し, 初期値のモーメント次数に応じた高次漸近展開が可能になっていた. 一方で, 上記の手法を用いても, 非線形問題への応用に際しては解の可積分性の問題から, 通常の拡散方程式の場合と同等の高次漸近展開は得られていなかった. ここでは, 積分核の時空間に対する Taylor 展開と重み付き$L^q$空間における減衰評価および漸近挙動を用いることで, 上記の問題点を解消し, 通常の拡散方程式から想定される高次漸近展開が得られた結果を紹介する. 本発表は東京大学の 石毛 和弘 氏との共同研究に基づく.

2024年5月23日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
Michał Łasica 氏 (IMPAN)
題目
A variational framework for singular limits of gradient flows
要旨
We consider a sequence of Hilbert spaces and convex, lower semicontinuous functionals defined on them. Any such functional generates a gradient flow on the underlying space. In the case of a fixed space, it is known that convergence of the sequence of gradient flows is guaranteed by convergence of the functionals in the sense of Mosco. However, in many interesting cases, such as discrete-to-continuum limits, thin domains, or boundary layer problems, the underlying space changes along the sequence.
We introduce a generalization of Mosco-convergence to such setting, based on a notion of "connecting operators". We prove a corresponding general weak convergence result for the flows, without assuming any coercivity of the sequence of functionals, and discuss some applications. Our main tool is the notion of "variational solutions" in the sense of Bögelein et al, which allows performing a "Gamma-convergence"-type argument in the evolutionary setting.
This is joint work with Y. Giga and P. Rybka.

2024年5月16日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
菅 徹 氏 (大阪公立大学)
題目
測度を初期値とする非線形熱方程式の初期値問題の可解性
要旨
べき乗型の非線形項を持つ優線形熱方程式の初期値問題を考える. 特に非線形項のべきが藤田指数より大きい場合を扱う. 方程式を変えないスケール変換に関してノルムが不変となる空間から初期値を選んだとき, 初期値問題に解が存在するかどうかを議論する. 解が存在するような初期値の空間の例として Lebesgue 空間が良く知られているが, 測度を含む空間についてはむしろ解が存在しない例しか知られていないようである. 本発表では, 測度を含み, スケール変換に関してノルムが不変で, 初期値問題の解が存在するような初期値の空間を1つ提案したい.

2024年5月9日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室 (対面+Zoom のハイブリッド形式での開催となります)
発表者
田中 吉太郎 氏 (公立はこだて未来大学)
題目
1次元有界領域上の非局所Fokker-Planck方程式に対するKeller--Segel系近似
要旨
細胞運動や細胞接着現象, 集団運動等の様々な現象を動機として, 適当な積分核による合成積付きの発展方程式が多く提案されている. この合成積による相互作用は非局所相互作用と呼ばれ, 上記の現象を対象とした発展方程式では移流項の速度として課されている. これらの発展方程式では, 積分核の形状を変えることで, 記述する現象を変えることができ, また様々なパターンを解として再現することができる. 本発表では, 移流項に含まれる非局所性を局所的な効果で書き換えることを動機として, 1次元有界領域上で, 非局所 Fokker-Planck 方程式を複数の走化性因子による Keller--Segel 系の特異極限から近似する. とくに Keller--Segel 系のパラメーターを調整することにより, 任意の偶な積分核がある楕円型方程式の基本解の重ね合わせで近似できることを示す. このことから凝集拡散過程と走化性過程の数学的な関係について説明する. 本発表の内容は村川 秀樹 氏 (龍谷大学)との共同研究に基づく.

2024年5月2日 (木)

お休み

2024年4月25日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室 (対面+Zoom のハイブリッド形式での開催となります)
発表者
Erbol Zhanpeisov 氏 (沖縄科学技術大学院大学)
題目
Liouville-type theorem for fully nonlinear elliptic and parabolic equations with boundary degeneracy
要旨
We study a general class of fully nonlinear boundary-degenerate elliptic or parabolic equations that admit a trivial solution. Although no boundary conditions are posed together with the equations, we show that the operator degeneracy actually generates an implicit boundary condition. Under appropriate assumptions on the degeneracy rate and regularity of the operator, we then prove that there exist no bounded solutions other than the trivial one. Our method is related to the uniqueness arguments for viscosity solutions of state constraint problems for Hamilton-Jacobi equations. This talk is based on joint research with Prof. Qing Liu from OIST.

2024年4月18日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室 (対面+Zoom のハイブリッド形式での開催となります)
発表者
内田 俊 氏 (大分大学)
題目
ハイパーグラフラプラシアンを主要項とする非線型多価発展方程式について
要旨
ハイパーグラフとは, 頂点とこれを接続する線分からなる通常のグラフを一般化した概念で, 複数の頂点のグループからなるネットワーク構造の総称である. 吉田 悠一 氏 (国立情報学研究所) はハイパーグラフの幾何学的構造を解析する為に, 通常のグラフに対して定義されるグラフラプラシアン行列の一般化として, ハイパーグラフラプラシアンと呼ばれる作用素を導入した. ハイパーグラフラプラシアンは有限次元ヒルベルト空間上の劣微分作用素として定義され, 本質的に多価な非線型作用素である. またネットワークの構造に応じて作用素も複雑になるため, 抽象理論以上の詳細な解析は一見困難であるように思われる. 本発表ではまずハイパーグラフラプラシアンの定義を述べ, この非線型多価作用素の基本的な性質として Poincaré-Wirtinger 型の不等式が成立することを示す. またこの不等式を応用し, ハイパーグラフラプラシアンを主要項とする非線型発展方程式に対する解の時間大域的挙動について考察する. 時間に余裕があれば, 複数の頂点における熱量が既知関数で与えられた場合 (ネットワーク内部から系全体を制御する場合) について最近得られた結果も紹介する. なお本発表は池田 正弘 氏 (理化学研究所/慶應義塾大学理工学研究科) , 深尾 武史 氏 (龍谷大学先端理工学部) との共同研究に基づく.

2024年4月11日(木) 16:30-18:00

会場
東北大学 合同A棟8階801室 (対面+Zoom のハイブリッド形式での開催となります)
発表者
喜多 航佑 氏 (東北大学)
題目
On Nakao's problem in three space dimensions
要旨
本発表では中尾の問題と呼ばれる波動方程式と消散波動方程式の連立系の初期値問題に対する時間大域解の存在・非存在について得られた結果について考察する. 特に, 空間3次元における単独線形消散波動方程式の解の時空重み付き各点評価を見直し, その応用として中尾の問題に対する時間大域解の存在について部分的に得られた結果を中心に述べる. 尚, 本発表はピサ大学の V. Georgiev 先生との共同研究に基づく.