本年度の記録
2025年6月12日(木) 16:30-18:00
会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
大山 広樹 氏 (京都大学)
題目
3次元回転磁気流体力学方程式の長時間可解性および漸近解析
要旨
定磁場周りの3次元非圧縮性回転磁気流体力学方程式に関する初期値問題を考察する. 粘性係数が十分小さい場合および回転速度が十分大きい場合, 同方程式の解に対して, 長時間一意存在性を証明する. さらに, 粘性係数を0, および回転速度を無限大とする特異極限において, 解の漸近挙動を調べ, 速度場および磁場がそれぞれ零磁場および線形熱方程式の解へ収束することを示す. さらに, 上述した収束に関して, ある時空間積分ノルムにおける収束オーダーを導出する.
2025年6月5日(木) 16:30-18:00
会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
原田 潤一 氏 (秋田大学)
題目
6次元藤田型方程式の時間無限大での解挙動について
要旨
ソボレフ臨界指数を持つ藤田型方程式では, 空間6次元が解挙動の意味での臨界次元となります. これは, オーバン・タレンチ解の $L^2$ 可積分性に由来するものです. 本発表では, 空間6次元の場合の解挙動の分類と, 空間6次元特有の解の動きを紹介します. ここで紹介する内容は, 証明が完成していないもの (形式計算のレベル) も含みます.
「東北大学OS特別セミナー」
2025年5月30日(金) 16:00-18:00
会場
東北大学 数学棟3階305講義室
発表者
片山 翔 氏 (東京大学)
題目
$\mathbb{R}$ 上のグラフに関する指数型表面拡散流の長時間挙動
要旨
指数型表面拡散流は結晶表面での原子の拡散による結晶成長のモデル方程式であり, Gibbs--Thomson 則に由来する曲率の指数関数の形の非線形項をもつ4階の幾何学流である. 本発表では, $\mathbb{R}$ 上の関数のグラフに関する指数型表面拡散流について考察する. とくに, 初期値の2階微分の小ささの仮定の下, 初期値問題の時間大域解が一意的に存在し, さらにこの解が時間遠方で表面拡散流の自己相似解に漸近することを示す. この結果は, Mullins (1957) が導入した曲率に関する線形化による表面拡散流での近似を長時間挙動の観点から正当化する. 本発表は 儀我 美一 氏 (東京大) との共同研究に基づく.
2025年5月29日(木) 16:30-18:00
会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
榊原 航也 氏 (金沢大学)
題目
Plateau 問題の高速・高精度数値解析
要旨
空間内に与えられた Jordan 曲線を境界として持つ極小曲面を求める問題は Plateau 問題として知られている.
Plateau 問題では, 一部の特別な場合を除き一般に解が複数存在し得るため, 「解がいくつ存在するか」という基本的な問題に対する完全な解答は得られていない.
本発表では, 基礎解近似解法 (MFS) に基づく新しい数値スキームを紹介し, 境界曲線の滑らかさに応じて Dirichlet エネルギーおよび平均曲率の $L^\infty$ ノルム誤差が指数関数的に収束する理論を導出する.
さらに, 多次元トーラス上で位相パラメータの最適化問題を定式化し, 各種曲線 (楕円, Cassini 卵形, Enneper 曲線など) に対する高精度数値例を示す.
最後に, 本手法を用いた全解探索アルゴリズムを提案し, Enneper 曲線に対する数値計算を通じてその有用性を実証する.
2025年5月22日(木) 16:30-18:00
会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
中田 行彦 氏 (青山学院大学)
題目
分布型時間遅れをもつ微分方程式の対称周期解について
要旨
時間遅れをもつ微分方程式の解の性質や振る舞いが精力的に調べられているが, 関数空間上のダイナミクスの解析は一般的に困難である. 本発表では, 従来輸送型の偏微分方程式で定式化されてきた構造化個体群モデルから, 分布型時間遅れをもつ微分方程式が現れることを動機として, 分布型時間遅れをもつ微分方程式の周期解について考察する. 方程式の非線形性を決める非線形関数が適当な奇関数である場合, 分布型時間遅れをもつ微分方程式に対して, 対称的な周期解がハミルトン系の2次元常微分方程式系から得られることを示す. この結果は, 離散的な定数時間遅れをもつ微分方程式に対する Kaplan and Yorke (J. Math. Anal. Appl., 1974)の結果を拡張したものである. さらに, 非線形関数が奇関数でない場合においても, 分布型時間遅れをもつ微分方程式は, ハミルトン系常微分方程式によって定められる対称的な周期解を持ちうることを紹介する. またヤコビの楕円関数によって周期解が表される例を紹介する.
「集中講義」
2025年5月13日(火), 14日(水), 15日(木), 16日(金) 15:00-18:00
会場
川井ホール
講師
Dumaz Laure 氏(Laboratoire du DMA, ÉcoleNormale supérieure)
講義題目
Localization and delocalization of
random matrices and random
Schrödinger operators.
プログラム
詳細はこちらをご参照下さい.
2025年5月8日 (木)
お休み
2025年5月1日 (木)
お休み
「解析セミナー」
2025年4月24日(木) 16:30-18:00
会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
梶野 直孝 氏 (京都大学)
題目
一様領域上の反射壁拡散過程の境界跡に対する熱核評価
要旨
本発表では, Mathav Murugan 氏 (University of British Columbia) との最近の共同研究
(arXiv:2312.08546) で得られた「劣 Gauss 型熱核評価を満たす対称拡散過程, およびその状態空間内の一様領域が与えられたとき,その一様領域上に自然に定まる反射壁拡散過程の境界跡過程は安定型 (stable-like) 熱核評価を満たす」という結果を紹介する. この結果は, それら自身興味深い結果である次の事実を証明することにより得られる:
(1) 調和測度 (拡散過程の境界への初到達位置の確率分布) の上下評価とdoubling性
(2) 領域上の Naïm 核 ( Martin 核のある種の「対称化」) の領域境界への連続拡張の存在
(3) 境界跡過程の Dirichlet 形式が, 調和測度に関する跳躍核が Naïm 核 (の連続拡張)
であるような純跳躍型 Dirichlet 形式で与えられることを意味する Doob--Naïm の公式
2025年4月17日(木) 16:30-18:00
会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
Dongyuan Xiao 氏 (東北大学材料科学高等研究所)
題目
Complete classification of traveling wave solutions to monotone dynamical systems
要旨
反応拡散方程式 $u_t=u_{xx}+f(u)$ の解の伝播現象を研究するため, 行波解の漸近挙動は非常に重要な役割を果たす. 非線型項 $f$ が単安定条件を満たす場合, 最小の行波解速度 $c^∗$ が存在し, 任意の速度 $c\geq c^*$ に対して行波解が存在することが知られている. これらの行波解は, その減衰速度に基づき, 3つのケースに分類できることが, 簡単な相図解析によって示される. このような分類は, 非局所拡散方程式や Lotka--Volterra モデルなど, より複雑な順序保存系にも適用可能であると予想されているが, 相図解析が直接適用できないため, 未だに完全な解決には至っていない. 本発表では, すべての順序保存系に対してこの分類方法が成り立つことを証明できる, 統一的なアプローチを紹介する.
2025年4月10日(木) 16:30-18:00
会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
Lorenzo Cavallina 氏 (東北大学)
題目
「二相」を超えて— 無限相の場合を含む多相複合媒質における楕円型及び放物型優決定問題
要旨
本発表では, 多相複合媒質における Serrin 型優決定問題を考察する. 媒質は, 有界領域 $\Omega$ 上で定義された区分的定数関数 $\sigma$ を係数に持つ楕円型作用素で表現される. 関数 $\sigma$ が一定値をとる部分集合を「相」と呼び, 境界に接する相を shell, 内部の相を core, 異なる相の境界面を界面と呼ぶ. また, $\sigma$ の取る値の数によって, 「一相」, 「二相」, 「多相」設定に分類する.
本発表では, 斉次 Dirichlet 境界値問題の解 $u$ を扱い, $\partial\Omega$ の連結成分 $\Sigma$ 上で法線微分 $\partial_\nu u$ が一定であるという追加条件を課した優決定問題を考える. このとき, $\Sigma$ 上では二つの境界条件を課しているため, 解が存在するとは限らないことに注意する.
Sakaguchi (2016年, 2020年) は以上の優決定問題が解を持つための必要十分条件を与えた. 具体的には, $C^2$ 級の界面と連結な shell を持つ二相複合媒質に対して, $\Sigma$ が球面の場合, $\partial\Omega$ と界面が同心球面であるときに限り解が存在することを示した. 本発表では, 弱形式を用いて Sakaguchi (2016年, 2020年) の定理の初等的な証明を与え, さらに粗い界面を有する多相設定に対する楕円型及び放物型優決定問題への応用について述べる.
なお, 本研究は Giorgio Poggesi 氏 (University of Western Australia) との共同研究に基づく.