◆国立大の独立行政法人化見直し


 自民党の教育改革実施本部の「高等教育研究グループ」(主査=麻生太郎元経企庁長官)は五日までに、国立大学を独立行政法人化する政府の方針を見直し、国立大独自の新たな枠組み「国立大学法人」(仮称)の検討に入った。事務・事業のスリム化が狙いの独立行政法人化は、「結果的に大学での有能な人材育成を困難にする可能性が高い」と判断したためで、三月末までに新法人の在り方について報告をまとめる。

 ただ、国立大学を独立行政法人から除くことは、政府の行政改革の方針を根底から覆すものであり、自民党文教族や政府の中央省庁改革推進本部の中には、独立行政法人化や私大化を求める声も根強いことから、論議を呼びそうだ。

 同研究グループが検討している「国立大学法人」案は、〈1〉自主的で柔軟な運営ができるよう各大学に法人格を与えるが、独立行政法人とせず、制度の共通規範を定めた独立行政法人通則法を適用しない〈2〉法人化しても、国立学校特別会計制度を部分的に導入する――などを柱としている。

 独立行政法人には、複式簿記など民間企業並みの会計基準が導入される。当面、国から運営費が交付されるが、将来的には独立採算制になる可能性も指摘されている。また、評価制度により、中期目標に沿って業績が上がっていないと評価された場合、運営費はカットされかねない。だが、国立大では、基礎科学など採算性とは縁の薄い科学技術の研究や、少数言語、考古学など経済的効果では測れない学問もあることから、同研究グループは、「利潤追求型」の独立行政法人制度では、大学にそぐわないと考えている。ただ、大学改革の観点から、国による評価制度など独立行政法人に導入される効率化のためのシステムは適用する考えだ。

 文部省は九九年九月、独立行政法人化する場合には人事権を大学にゆだねることや大学評価の際には大学側の意見を尊重するなど、特例措置を個別法に盛り込む必要性を指摘した「検討の方向」を大学側に提示。その後は独立行政法人化が既定路線となっている。

(3月6日3:14)


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