◆介護保険、準備に地域差


 介護保険制度のスタートまであと二十六日。三分の一の市町村がまだ、自宅に住む高齢者や施設の高齢者に対する介護サービスの基盤整備に課題が残るとし、準備に地域差があることが五日、読売新聞社が実施した全国市町村調査の結果で明らかになった。また、半数の市町村が、制度の周知不足や保険料の確実な徴収、財政の安定運営、給付対象から外れる高齢者対策、低所得者への配慮を課題に挙げ、制度の安定運営を懸念していることを示した。ただし、市町村独自のサービスを加えるところも15%あり、国の支援策とともに、市町村自身の工夫を求める声が高まるとみられる。

 介護保険の中核になる高齢者ケアのサービスをめぐっては、一九九〇年の老人福祉法改正により、サービスの供給を整備する責任は市町村にあると定められた。政府はゴールドプラン、新ゴールドプランという長期目標を設定し計画的な整備を促してきた。各市町村はこの十年間の成果をもとに、四月の保険スタートに備えている。

 だが、調査で介護保険の課題(複数回答)を尋ねた結果、「在宅介護サービスの基盤整備」「特別養護老人ホームの建設など施設サービスの基盤整備」を挙げた市町村は、現段階でも、ともに34%に達した。

 このうち、介護保険の最大の狙いである在宅サービスについて、供給に不安があるとの回答が20%を超えたのは、理学療法士らが家庭訪問する訪問リハビリ、看護婦などが家庭訪問する訪問看護、老人保健施設などへ通う通所リハビリ(デイケア)。軽度の痴呆(ちほう)性老人が共同生活して介護を受ける「痴呆対応型共同生活介護(グループホーム)」の供給不安も58%にのぼった。

 サービス以外の課題では、53%の市町村が現段階でも制度の住民への周知を挙げた。

 また、52%が要介護や要支援の認定から漏れた高齢者のサービス対策が課題だとし、46%が現在より負担が増す低所得者の支援策を指摘。措置制度から利用者の契約利用へ変わる保険制度に対する準備不足をうかがわせた。

 さらに、介護保険が国民健康保険と同じく市町村単位の保険になることから、財政運営の不安定さを懸念する声と、保険料が確実に徴収できるかどうかの不安も、ともに46%に達した。

 ただし、これらの課題を指摘する声や不安は、財政の安定運営などを除けば、自治体規模や高齢化率にはあまり関係ないことも特徴。在宅サービスの供給では、人口五万人未満の市町村でも大きな不安がないところが少なくなかった。

 これは、老人福祉法改正以降の十年間、各市町村ごとの地域福祉への投資や施策展開の取り組みの差が、そのまま格差になって出たとみられる。

 市町村格差の兆しは、介護保険で計画するサービスの内容にも表れ、国の基準以外の独自サービス(上乗せ・横出し)を行う市町村は15%あった。この割合は、小規模市町村(人口五万人未満・14%)、中規模市(同五万―五十万人未満・23%)、大規模市(同五十万人以上・20%)とも、それほど違いがなかった。

 介護サービスの基盤については、政府が新年度から新たな整備五か年計画「ゴールドプラン21」を策定するが、市町村側の取り組み次第では、地域福祉の仕組みやサービス供給力をめぐる格差は一段と広がる可能性もある。

 調査は二月に、全国の三千二百五十二市町村(東京二十三区を含む)を対象に郵送方式で行い、二千二百三十三市町村から回答を得た。回収率は68・7%。

(3月6日2:01)


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