専攻長からの挨拶



 数学の研鑽を積んだ人材の社会的ニーズは非常に高く、数学科・数学専攻を巣立った先輩たちは、社会の様々な分野で活躍しています。このことは、数学を学ぶ過程で培われるものが、検索すれば探せる知識や電卓を叩いて求められる事実などではなく、思考力と思考技術であることを物語っています。数学における探求は、じっくりと我慢強く考える力を自ずと鍛え、また論理的に考え説明する力を養います。

 経済産業省は「人生100年時代の社会人基礎力」として、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(および12の能力要素)を掲げ、ライフステージの各段階で活躍し続けられるために求められる「力」と位置付けました。職場や地域社会で多様な人々と出会い仕事をしていくために必要かつ基礎となる力です。

 数学科・数学専攻で学ぶ大学生・大学院生は、数学の探求とその成果発表を通じて、「考え抜く力」はもちろんのこと、「前に踏み出す力」の能力要素である「実行力」と「主体性」、および「チームで働く力」の能力要素である「発信力」「傾聴力」「情況把握力」「柔軟性」を養い、身に付けていきます。柔軟な発想力と、忍耐強く論理的な思考力と説明力は、自家薬籠中の物となるでしょう。

 昨今の感染症や戦争の問題は、世界中で移動制限や行動自粛をもたらしました。この状況下で一段と加速したネットワークの活用は、もはや後戻りできない状況にあります。社会全体のネット依存です。では、誤作動や誤操作あるいは安全面の心配はないでしょうか。飛躍的に拡大し高速化するネットワーク、その誤りの訂正や安全確保の背景には必ず数学が活躍しています。この例に限らず、地面を支える地盤のように、数学は社会を支えているのです。

 東北大学理学部数学科および東北大学大学院理学研究科数学専攻では、代数学、幾何学、解析学、確率論、数学基礎論といった幅広い分野の一流の数学者を揃え、純粋理論から応用理論までの多様な数学の教育研究に力を注いでいます。数学を発展させる人材、高度の問題解決能力をもって多様化する社会の基盤を支える人材、また次世代にその力を伝え更なる力を呼び起こすような人材を、これからも育て、世に送り出して参ります。

2022年4月1日

数学専攻長・数学学科長
大野 泰生

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