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高次元へ

Yang-Baxter 方程式は 組紐の関係として、実 3 次元における実 1 次元の部分空間を 扱うものであった。 またアフィン・リー環は 1 次元の変数をもつゲージ群のリー環、あるいは 弦理論における世界面上の対称性という意味があった。 これらを高次元化する試みが勿論ある。 例えば、3 次元格子模型の転送行列を基に考えられたBaxter の四面体方程式がある。 圏論的には2-category の変形と理解されるが、解の全貌はまだ未知と思われる。 braided surface の不変量への研究も行なわれており、 筆者は不勉強だが 圏、 polylog、... へ繋がるべきであろうか。 gif。 Yang-Baxter 方程式はHecke 環の表現とも関係したが、 Hecke 環はある種の底空間上の 束全体がなす K 群の対称性の環として一般化され、 実際Lusztig や柏原・谷崎らによりそのようにしてアフィン Hecke 環や 量子展開環(の半分)が 構成されている [16]。これは旗多様体上の幾何を用いるもので、 単純特異点に付随して単純リー環を再構成する Grothendieck らの理論を起源とし、局所 Langlands 対応とも関係する。Cherednik の 二重アフィン Hecke 環(野海氏によれば斉藤の楕  Weyl 群の群環と同型) も複素曲面の幾何によるHecke 対応で Kapranov が構成している。

一方中島はinstanton の moduli と関係して 曲面上の Hilbert 概形の Hecke 環を研究し、アフィン・リー環の実現を得た。共形場の構造はモンスターに関するムーンシャイン現象とも深 く関わり、テータ関数など一重の無限積が出てくる世界を成していたが、 この世界がいわば 2重(以上)の無限積 へと繋がっていることが超弦理論(M 理論)の進展とともに明かになった:Borcherds, Grichenko, Nikulin の一般 Kac-Moody 代数の分母公式、 Moore - Witten らによる Donaldson 不変量の母関数の研究等 [17]。中島も この文脈で S 双対性の理解を目指したのであった。 束の変換性が粒子を表わすと思うと理論の対称性として Hecke 環を考えるのは自然に思われるが、 アフィン・リー環の現れる由来は未知だという。ちなみに Langlnds 双対性に現われる臨界レベルアフィンリー環の中心と W 代数との同型も S 双対性 と似たところがある。M 理論と可積分系 については 高崎氏の稿も参照されたい。



Koji HASEGAWA
Wed Nov 24 22:21:44 JST 1999