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問題

まずは以上の世界の全貌の理解が問題だろう。共形場や可解格子模型は、 無限自由度を無限次元対称性で制御するという形で 数学的に量子場を扱う一つのモデルを与えた。対称空間上の測地流の量子化 (ラプラシアンの固有値問題)として有限自由度の量子力学にあたる表現論に対し、 無限自由度の 場の量子論ではゲージ対称性の`第 2'量子化が問題である。 標語的には、 古典的な表現論が「良い」関数を扱うのに対し、「良い」量子場を 統一的に扱う「表現論」が課題といえよう [21]。超幾何関数や q 解析、更にラングランズ哲学までもそうだったように、 今後も伝統的な探究が新たな意味を見いだすような場を提供するに違いない。以下触れられなかった個別の問題だが、 真に受けて人生を狂わせぬよう。(人名)で思想圏を表わす。

(Atiyah) chiral Potts 模型とモノポールはスペクトル曲線が似ている以上に関係あるか?

(Babelon, Takhatajan) Liouville 模型を解け。 (Belavin) 与えられた共形場理論を極限にもつような可解格子模型を明示的に 構成すること。

(Beilinson 他) 作用素積展開の幾何的扱い。

(Cherednik, 黒木) スペクトルパラメータ付R 行列を 幾何学的対象として位置づけること。

(堀田) q 類似の q と有限体の元数 q とはどれだけ深い関係があるか? あるいは : (Feigin) Shtuka 対応と幾何的Langlands対応との 関係は?

(Krichever) KP 方程式の三角関数解、楕 関数解の 関数の極の運動は Calogero 系に従うことが Lax 表示からわかる。これはなぜ自然か?

-- 可積分系の世界は解こうとして解けたものより思いがけない発見の方が著しい成果をあげるように思われ、 2次元の統計物理をうたった共形場の元祖Belavin-Polyakov-Zamolodchikov も弦理論の理解が動機だったという。最も実り多い問題は ここには無い何か別のものであるべきだろう。そこで? 素朴な問を書くと、例えば とは何か、場とは何か、点とは何か、 なども表現論と可積分系という視点から問いうるものだろう。答のない問かもしれないが、本稿の話題はどれもこれらに対する試みともいえる。少くとも可積分系においては、「q」による理論の変形は古典力学から量子力学の発見に 匹敵するもので[20]、 「良い系は 全て良さを保ちつつ第 2 量子化でき、更に差分(格子場)化できる べきである」 というのがまとめである [21]。 妄言多謝。



Koji HASEGAWA
Wed Nov 24 22:21:44 JST 1999