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実力のある教師を

大学で学ぶ各教科の専門内容が採用試験に出題されない結果, 4 年間のほとんどを教員採用の模擬試験などによる試験対策に費す大学の卒業生が 合格する道が開かれてしまうことは, すでに述べた. 各教科について試験される基準が低いと, きちんと教えられるだけ熟知しているかよりも, 人柄などによる恣意的な選考がされることになる.

このような選考基準のあいまい化を避けるためには, 学校と先生に何でもおしつけることもやめる必要がある. 少年事件の多発後, 学校カウンセラーの必要が ようやくとりあげられたが, 教師に何でも期待する結果, 教えるレベルを下げる結果になっているのではないだろうか. 最近のいわゆる AO 入試も, 推薦書業務が先生を忙殺し, 進路指導どころでないという. 教材研究や本質的な活動のために, 先生を雑用から解放するべきだ. 先生の視野が広がれば, 生徒への進路指導にも幅がでるだろう.

また 10 年後には大量な定年退職が みこまれ, 現在の新任採用数では教育技法の伝承が危ぶまれている [5]. ある教科の先生が一人で孤立したのでは, 教育方法の世代間のひきつぎもありえず, 教材研究のレベルも授業の質も保てるか心配である.

くりかえしになるが, 教師の資質としては, まず 教えるべき 内容を自信をもって教えられることが挙げ られるべきである.ここが疎かでは教師と呼ばれるゆえんを欠き, 各種の情報で目の肥えた生徒の尊敬を勝ち得るはずがない.

かつては, 旧帝大などで専門教育を受けて高校教師になる者も多かったが, 80 年代の経済の拡大とともにその数は減少した.教育実習の長期化や教育専門科目の必要単位増といった 教員免許法改正が行われたため, 教員養成系大学以外での教員免許の取得は著しく困難になりつつある.

受験対策にのみ偏った指導の問題がいわれ, 審議会の議論もそのためのものが長く続いてきた. しかし大学入学に関 していえば, 少子化によりかつて程の倍率でなくなり, 受験の競争的側面も必要な競争のレベルへと 相対的に減っていくことを期待しうる. 偏差値によるしか指導の仕方が考えられなかった昔と比べ, インターネットの普及によって各大学の研究内容についても詳 細な情報を得ることが可能である. その上でどういう指導をするか, 今後の教育の充実のために教師の持つ知識が重要なのは, 情報産業でコンテンツが重要であるのと同様明らかだと思う.



Koji HASEGAWA
Tue Mar 21 14:32:46 JST 2000