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審議会のありかたとその議論

教育の大きな方針を決めるのは中央教育審議会(中教審)である.しかし, 教育に本来非専門家である文部官僚が中心となって, 非常勤の非専門家主体の会議を運営し, それで良くなるほど教育は簡単だろうか. 政策に専門家の意見が反映されない/できない仕組みで は問題であり, 数学の時間が削減された現在の教育課程には, 私はこれまで数学を必要としたことなどない, という委員の発言が影響したという [13].

この発言もさることながら, これまで 現状認識について統計などを用い, 十分な検討されたかも 疑問だといわれる [14]. 委員という立場こそ実は数学が必要なのではないか. また 最近教育実習が長期化されたが, 委員の方も半年でも教壇に立ってみなくては, 実体から離れた改変にな るのではなかろうか.

分野のバランスも心配である. 中教審では伝統的に理系の委員数が少ない. ノーベル賞級の方がたとえ一人二人入っても, 委員の構成は時間数に直接反映しているように見え,これが数学や理科では実験や計算の練習が減り, わからない=嫌われる原因ともなる.高校の家庭科や道徳は, 数学や理科の理解が減っても 全国的にやるべきだろうか. 「義務教育 3 日論」を示した, 前総理の「21 世紀日本の構想懇談会」でも, 理系の方はわずか一人だった.

現在の審議会は, 悪くいえば「いいっぱなし」である. 委員の方が学校を訪問するな どの話もあまり聞いたことがない. そもそも委員方のうち, 今の指導要領で教える公立 校に, 自分の子供を喜んで通わせる方がどれだけおられるのだろう. 委員の子供 が全て私立学校に通うようであれば, どこかがおかしい.

このような 官僚主導の改変で教育の質が下がらなければ良いが, 教育の体系は小学校から高校まででもきわめて多岐にわたり, 非専門家の思いつきには余る. 「ゆとりの教育」答%によって大きな改変 の行なわれたころ, 「科学は科学者により異なることが多く相対的である」と極論する相対主義が アメリカなどで唱えられ, 「ゆとり」路線の理科教育に反映したらしい [15]. このような 極端な相対主義は, 初学者には有害でさえありうる.十分に知識がなければ, 教師にとってさえ例外でない. 中学数学で合同の概念を教えるのに,一時間折り紙をするだけで何の結論もなく おわる研究授業もあったとか. 状況にもよるが, 子供たちは何を学んだろう?このような形で現在の社会のレベルに達するには, 2000 年以上かかるだろう. 一見親切でも, 実は意地悪ではないか. それ位なら, はじめから丁寧に教えれば良い.


Koji HASEGAWA
Mon Jul 17 22:59:59 JST 2000