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以上のように、
可換転送行列とは Hitchin のハ ルトニアンの量子化+差分化であると思うべきであろう。
さて既述のとおり一次元スピン系の解法としてはBethe 仮設法が知られていた[11]。
臨界レベル共形場の
q 類似という立場からは、
Bethe 方程式は(半古典極限 においては)
相関関数の積分表示の
臨界レベル極限が与える振動積分の鞍点条件とも読める。
更に Bethe 仮設法を再考することは数論的立場からも面白いと思われ、話題の一つである。
例えばベーテ仮設で解かれる系について、
Sklyanin が逆散乱法で知られていたトリックを発展させ変数分離を明示的に
行ったことも見直され、E. Frenkel らによればWhittaker model と
幾何的Langlands対応との関係をつける場所に位置する。この文脈で Baxter の Q 作用素の再考も大事となる。
物理的には更に長さ無限大の熱力学的極限でスピン鎖の分配関数を計算することが課題で、
これは可換転送行列の固有値の fusion 則による縛りを用いKirillov, Reshetikhin, Wiegmann らが研究していた。熱力学的極限でのベーテ方程式の解のありかについて、解がいくつかの線分の上に規則的に並ぶという「ストリング仮説」
があるが、
彼らはこれを用いて分配関数などを求めた。格子模型が連続極限で与える共形場を既知とすると、
そこには中心荷電という理論の不変量がある。一方それは
元の格子模型から計算できるはずで、上の方法によればdilog の特殊値の有限和となる。結局dilog
の特殊値の和が有理数になるという等式が予想され、
これ自身は Kirillov が dilog の 5 項恒等式に帰着して確認した。
このあたりの事情は
dilog の出てくる状況として知られている数論や双曲多様体の不変量など
との自然な関係の下に理解されれば素晴しい[18]。
(その徴候もあるように思われる[19]。)
Koji HASEGAWA
Wed Nov 24 22:21:44 JST 1999