ここで目を共形場に移してみる。共形場が「解ける」のであれば それは何を解くだろう?どうやらそれは数論と関係するらしい。
そもそもリーャ当ハ上の共形場を数学的に定式化した土屋-上野-山田 は, 数論におけるアデールの考えを念頭においていた。場の理論であるからには、励起あるいは相互作用を表わす場の作用素が登場する。 考えているリーャ当ハ X 上のすべての点で励起(あるいは相互作用) がありうるので、 各点で量子場の作用すべき空間としてアフィン・リー環の表現を考えることになるが、 理論は任意の有限個の点 にある場の作用素 の相関関数 を与える「仕組み」として定式化される。 ここで は期待値と解されるべき量を与える何者かだが、 X が高種数だったりゲージ群が非アーベルだったりその変換性の 束 B が非自明なときは、 定義や存在が必ずしも明かでない。 相関関数は が真空 を励起した 状態に対して値(期待値)を与えるものであると考えると、 仕組みとは状態空間の双対空間の元 で なるものと思うべきである。 これは暗に「励起のおこっていない点の状態」は基底状態(真空)にあると考えていることになり、有限個の素点にのみ非自明な表現を付随させるアデール群の表現論を思わせる[10]。相関関数を特徴づけるのは共形変換に対する変化を記述するWard-高橋方程式であるが、それは Wess-Zumino-Witten 模型の場合 が 「大域的なゲージ変換の全体 で不変」とよみかえられ、保形形式の定式化を思わせる。 土屋らは Ward - 高橋方程式が定義する点付きリーャ当ハ X のモデュライ空間上の 微分方程式が X の退化で生ずる境界成分にそって 確定特異点型であることを用い、理論が種数に関し帰納的に定まることを証明した。 はリーャ当ハ X と X 上の G 主束 B の組のモデュライ 上のベクトル束 「共形ブロック」をなし、 リーマン球面上の 3 点関数の場合に帰着することで ``次元定理''も基礎づけられる。これは Friedan-Shenker の構想 の実現である。
共形場と保型表現論の類似をより追求するには臨界レベルで考えるのが良い。
このとき
Ward - 高橋方程式は X の変形の項が 0 となり、
理論は X 上の G 主束 B のモデュライ
の上で閉じる。
体を有理数体 Q でなく X の関数体 Fun(X)
にしたと思えば、 はまさに保型形式の類似に見える。臨界レベルでは共形変換(Virasoro 代数の作用)を与えるべき菅原形式が、
更に高次の菅原形式もあわせて中心となり、
「臨界レベルの
共形ブロックの方程式」は 上で可換な微分作用素
(可積分系!)を与える。
この解を Langlands 哲学における保形形式の類似とみよというのが
Drinfeld らの視点である。
一方
体の拡大は幾何的には被覆空間にあたるから、
このリーマン面版Langlands理論においてガロア群の表現にあたるのは基本群 の表現である。
G のLanglands 双対 に値をもつ
の表現が
上の可積分系の固有値と一対一に対応するという形で、
Langlands の哲学が定式化される。
数論的状況における「本来の」Langlands 双対性については、藤原氏の稿で触れられるであろう。