格子模型ないし量子逆散乱法におけるこの構造は Yang-Baxter 方程式に基くが、
単にその解(R 行列)を得ようとすれば3 次の関数等式を解かねばならないばかりか未知量の数に比べ
条件が極めて多く、
系統的に解けることから背景があると思われる。
その意味を明かにしたのは Drinfeld だった。彼はYang-Baxter 方程式を基槙ヨ係式として定義される(転送行列のなす)代数に余積構造
が入る(表現のテンソル積が考えられる。
模型の原子の数を自然に増やすことができる)ことに注意し、この関係式が代
数群上の関数環の非可換変形を与える
ものであることを認識した。
半単純リー群は群としては変形できないが、その上の関数全体が成す環は
底空間の「群らしさ」を保ちつつ変形できるというのが、非自明な R 行列が意味することである。この群らしさ
の条件が余積などHopf 代数の構造に他ならない。
従来知られていた Hopf 代数では積または余積が左右対称(可換または余可換)であったが、R 行列は新たに非可換かつ非余可換な系列を与える。関数環の非可換化は量子力学的観測量の非
可換性を思わせ、Drinfeld はこの新構造を
量子群と名づけた[6]。
正確には、量子群とよぶべき対象と双対的にDrinfeld - 神保の量子展開環と よばれる Hopf 代数 があり、より基俣Iである。 群上の関数環にあたる前者に対し後者は単位元近傍での微分作用 素のなす環にあたり、(Kac - Moody)リー環 g の展開環 U(g) の Hopf 代 数としての変形である。 例えば の基槙ヨ係式は
である。 この代数の表現ふたつのテンソル積の成分を入れかえる絡作用素が Yang-Baxter 方程式を満たす。普遍 R 行列とよばれる解の「親玉」が に(無限和として)存在し、一般の解は適当な条件下で各表現の組ごとの普遍 R 行列の像と理解される。特に表現の組に対し解はほぼ一意的である。
古典力学的戸田格子の方程式が単純リー群の余接束上で 展開環の中心元がきめるハ ルトン流であることは、70 年代にKostant らにより知られていた。 神保は戸田格子 の差分化をLax 形式で行うのに必要な関係式を調べ量子展開環の定義に至ったのであった。 一方 Drinfeld はこうした変形がどんな群に対して存在するか考察し、 変形の一次近似(「量子群」の半古典極限)の概念としてポアソン・リー群とい う構造を抽出した。 これは R 行列の半古典極限である「(古典) r 行列」を意味づけ, 既知の可積分系(戸田格子や Calogero 系)におけるLax 形式や高次のハ ルトニアン同士の可換性もより明解になった。 ただスペクトル変数 を持つ解とそれが定める系が 何であるかしばらく謎めいたが、 その後少くとも古典 r 行列については は期待されたごとく一般にリーャ当ハ X 上の点と思 うべきこと、更に先走れば対応する系が Yang-Mills 方程式の reduction としてHitchin が得ていた古典力学的可積分系[7]だという認識が得られた。 R 行列に付随するXYZ スピン鎖などはその量子化 + 差分化と考えられる!