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ことのおこり

統計力学の2 次元イジング模型を 厳密に解き相転移の存在を示したのは Onsager だが、 この模型はその後パンルベ方程式との関係が発見されるなど思いがけない世界とのつながりが明らかになった。[3] -- 今思えばベクトル束の離散化の話に見えなくもない。 この世界は Baxter により楕 関数と関係する肥沃な世界へと拡げられた [4]。 格子上の「原子」の状態に対して定義されるべき 局所的なエネルギー(ャ泣cャ悼ラ重)が 現在 Yang-Baxter 方程式 と呼ばれている条件をみたせば、 模型の転送行列が互いに可換になることに彼は注目した。 例えば Heisenberg の XYZ スピン鎖は Yang-Baxter 方程式の 8 頂点解とよばれる楕 関数解 に対応する。 (8 頂点解が定める転送行列の による対数微分がXYZ 模型のハ ルトニアンになる。) 彼は Yang-Baxter 方程式を巧妙に用いてXYZ スピン鎖の熱力学極限を調べ、 更に 8 頂点解が定める2次元格子上の模型の分配関数を求めるため 「角転送行列」を考察した。「原子」を各点に乗せ た2 次元正方格子を 4 つの象限にわけ、その一つを考 える。その境界をなす2魔フ半直線上で原子達の状態 , を指定すると、 境界でこの状態が実現される「重み」は系のャ泣cャ悼ラ重で(= 8 頂点解で)きまる。gif これを行列要素 とした 行列 A が角転送行列で、 各半直線に原子が N 個あり、各原子が n 個の状態を持つとすれば、サイ ズが の巨大正方行列である。彼は数値実験を重ね、系のサイズ の極 限で角転送行列の固有値がある量 x の羃でつくされること、 より詳しく一点相関関数が Rogers-Ramanujan 恒等式

   eqnarray18

の左辺で与えられることを発見した。極限 は全ての状態が等確率でおき系の相転移点にあたるが、 左辺の形で挙動を調べるのは難しい。 右辺を通しはじめて発散の様子が調べられる:この積は保型性を持ち、極限 が 「低温」 に帰着される! 保型関数がこういう物理にでてくると誰も思わなかっただ ろうが、現れたからは楕 曲線が潜んでいる筈である。 同時期に発展した共形場の場合 [5]、楕 曲線上 の理論の分配関数はしかるべき 変換則をもち、アフィンリー環の指標の変換則 の一つの説明を与えた。しかし 格子模型における上の保型性の由来は当初全く明かでなかった。



Koji HASEGAWA
Wed Nov 24 22:21:44 JST 1999