量子展開環の発見は系統的に格子模型の族を得ることを可能にし, その構成, および分配関数を求めることは日魔ナ 多くがなされた. そして Baxter の結果の拡張として, 分配関数がアフィン・リー環の指標と なる現象が広く確かめられた. これは模型の状態空間が表現と同定されるべきこ とを示している.
ところでBaxter の角転送行列のトリックの中に, その固有値を低温極限 に帰着させて計算するアイデアがあった. 1989 年, 柏原と Lusztig は独立に量子展開環の結晶基底 を発見し, その後の研究の 基俣I道具となった. q と x とは の関係にあり, では 量子展開環は定義できていないが, しかるべき極限として余積が単項(例えば, ) となるような生成元をもつ代数がとれる. 各表現において, q=0 の極限でこの代数構造に`従う'基底が結晶基底で ある. 余積の条件から q=0 での 代数は結晶基底の 単項テンソルを単項テンソルに移し, 移りあう「仲間」がテンソル積表現の一つの既約成分を成す. q が 1 の羃根でなければ表現の分解は q=1 のときと同じであ ることと併せれば, 例えば一般線型群の表現の分解を与える Littlewood-Richardson 則も結晶基底を用い証明できる.[15]結晶基底は表現の組合せ的記述を与えるのに非常に適している.
そして結晶基底は何よりも格子模型に応用された. 柏原らは結晶基底を用いて局所状態の列の全体で表現の基底がラベルされることを(計算によらず)示した後, 完全にアフィン量子展開環の表現から出発して模型を再構成した.[16] これはリーャ搭�ハ上の共形場の作用素形式 [13]の q 類似[14]が可解格子模型であるという内容であり, 当初の (2) の保型性がアフィン・リー環の対称性から説明されることになる.
この構成の下で 頂点作用素が局所的な原子の状態空間を生成することから, これらの積の期待値として無限スピン鎖の局所作用素の相関関数のひとつの計算法を得る. これは 共形場の相関関数の表示の自然な類似になっており, また Baxter のBethe 仮設による結果を再現することからも, 状態空間を量子展開環の表現と考えた構成法が支持される. なお 相関関数は公理的量子場の要請を実現する形状因子としてSmirnov が, 共形場における積分表示の差分類似として Varchenko らが研究している.これらはいわゆる q 解析[17] の問題を提供し, 理論の連続極限のとり方とも関連し重要な課題である.