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受賞者 
  小川卓克 教授  2009年度解析学賞受賞

>>日本数学会 >>解析学分科会

 本数学専攻の小川卓克教授が, 「実解析的手法による臨界型非線形偏微分方程式の研究」 により2009年度日本数学会「解析学賞」を受賞されました.

  日本数学会の解析系5分科会(函数論分科会,函数方程式論分科会,実函数論分科会, 函数解析学分科会,統計数学分科会)は, 2002年度から,解析学および解析学に関連する分野において著しい業績をあげた 人に, その業績を顕彰する目的で解析学賞を与えています. 本専攻学では,2002年度の柳田英二教授につづき,2人目の受賞です.  受賞式は大阪大学において開催された日本数学会2009年度年会の函数方程式論分科会 にて行われました.

  小川教授は広汎な関数空間における 様々な臨界型不等式を自らの手で導出し, それを非線形偏微分方程式の解法に応用するという研究で多くの成果を挙げています. 例えば,臨界型Sobolev 空間におけるGagliardo-Nirenberg 型補間不等式と, それと同値なTrudinger-Moser 型不等式を最良定数とともに導出し, その応用として,複素係数を持つGinzburg-Landau 方程式の初期値境界値問題の弱解 が一意的であることと, 粘性係数がゼロになる極限で,非線形Schroedinger 方程式のエネルギークラスの弱解 に収束することを証明しました. また,優臨界におけるBrezis-Gallouet-Wainger-Ozawa 型不等式を 斉次Triebel-Lizorkin 空間における不等式の系として導出しました. 応用として,球面上に値をとる2次元調和写像流の滑らかな時間局所解の延長可能性は, 関数の平均振動ノルムの有界性によって支配されることを証明しました. また,同ノルムによる弱解の正則性のための十分条件についても新たな指標を与えて います. 小川教授が提唱したこれらの関数空間は,スケール変換の観点からも臨界ケースを取 り扱っている最適なものです. 調和解析学においては,Hardy 空間論自身の研究は現在では古典論となりつつあるよ うですが, 非線形偏微分方程式の研究においては,未だその有用性は健在です. 小川教授は2次元drift-difussion 方程式について,方程式のスケール変換則を不変にする 初期条件の空間と,時間大域解存在の構成に有用なentropy 汎関数を両立させる関数 空間として, Hardy 空間より広いある斉次Besov 空間を導入し, Littlewood-Paley分解と実補間空間論を駆使して,熱半群の端点評価式を確立しました. 応用として,2次元drift-difussion 方程式の初期条件がHardy 空間に属するとき, その時間局所解,およびノルムが小さいときの時間大域解の一意存在を示しました. この熱半群の端点評価式は, 今後Navier-Stokes 方程式等他の非線形偏微分方程式への応用についても期待できる ものとして注目されています.

  このように,小川教授は力強い実解析学の手法により, 難解な非線形編微分方程式の解法に対してスケール不変性に代表される臨界型に肉迫する 多くの素晴らしい研究成果を挙げており,今後の更なる展開が期待されています.

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