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専攻長からの挨拶 (平成26年度)
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私たち研究者は、お互いの仕事を信頼・尊重し、研究を行っていますが、最近もメディアで取り上げられているデータの改ざん、捏造などはその研究の根幹を揺るがすものであり、改めて、研究者倫理の教育のあり方が問われています。
数学における研究成果は、他の分野と同様に、論文として学術誌に投稿され、証明に誤りが無いか、優れた結果かどうか査読され、最終的に掲載の可否が決定されます。
当教室にも「東北数学雑誌」という日本最初の欧文の数学専門誌があり、各国から論文が投稿されていますが、厳密な査読を行っています。
論文の著者たちは正しい証明を得たと考えて、論文を投稿するわけですが、残念ながら、本質的な間違いが含まれている場合もあります。
多くの場合、査読等を通して、出版前に誤りは訂正されますが、証明にギャップがあるまま、論文が学術誌に掲載されてしまう事もあります。
その場合でも、遅かれ早かれ間違いはわかります。
数学の場合、証明、すなわち論文の中に間違いの証拠があるからです。
数学において、データ、実験結果は、数学の定理を予想したりするのに活用されることがありますが、証明されないと定理にはならないので、通常の数学研究はデータの改ざんなどの問題とは遠いところにあると思われます。
近年、産業界、諸科学からの需要もあり、様々な面で数学に対するニーズが高まっています。
当教室の小谷教授がWPI-AIMRの機構長に就任したのもその流れの中にあります。
また、優れた研究者の養成は当教室の大事な役割ですが、社会における数学のニーズに応える事も重要な仕事です。我々は、数学を学んだ学生のキャリアパスを広げるために、企業説明会、博士後期過程学生のインターンシップにも取り組んでいます。
このような流れの中で、我々も従来の枠にとどまらない仕事に携わる可能性があるため、上記の問題も他山の石とする必要があると思います。
教育・研究をめぐる状況は時間の経過とともに変化していきます。
我々はその動きに対応しつつ、東北大学数学教室の良い伝統を残し、教育・研究を進めて参りたいと思っています。
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