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受賞者 中村 誠 助教授 2006年度建部賢弘特別賞受賞
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本学数学専攻の中村誠助教授は,「非線形双曲型偏微分方程式の初期値境界値問題の研究」により,2006年度日本数学会建部賢弘特別賞を受賞されました.建部賞は優れた業績をあげた若手数学者に与えられる賞で,奨励賞と,より著しい成果をあげた方に与えられる特別賞が設けられています.去る9月20日に大阪市立大学において開催された日本数学会秋期総合分科会で授賞式が行われました.
非線形双曲型偏微分方程式の研究は,これまで多くの日本人研究者によって優れた業績があげられてきた分野であり,日本が世界をリードしている分野の一つです.その中にあって,中村助教授は,実解析学的方法を駆使して精密な定量的評価を導くという方向から,非線形波動方程式,非線形
Schro"dinger 方程式,非線形 Dirac 方程式といった双曲型偏微分方程式や分散型方程式の大域適切性や散乱理論を研究してこられました.
ことに非線形波動方程式の初期値境界値問題は,障害物があることに起因する
「可微分性の損失」 と 「解の減衰の遅さによる積分量の発散」という難問が問題解決の障害になります.一般に,零条件という付加構造を導入すると,これらの障害を克服することができますが,準線形連立方程式の場合には,その構造も単純では無くなります.また同時に,複数の伝播速度をもつ波の相互干渉と境界からの波の反射の効果も勘案しなければならず,それらがすべて非線形的に干渉するため,問題は一層,複雑になります.
こうした問題を Sogge氏, Metcalfe氏らと共同で,実解析の精緻な評価を駆使し,波動方程式に特有な精密な不等式群を,様々に精密化して用いた結果,複数の伝播速度をもつ連立準線形初期境界値問題というもっとも複雑な場合に,時間大域解の存在を証明されました.
中村氏のこうした成果は,非線形双曲型方程式の研究において大きな業績を占めるものと評価され,2006年度日本数学会
「建部賞特別賞」 の受賞となりました.
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