そもそも大学の教育研究を行政サービスととらえ, 行政の効率化のための「独立行政法人」として国立大学を 制度改変するのはどうかしている. ニュージーランドの改革([10], 248-252)のような過去の失敗に 学ぶべきである. 実施されれば, 学費の大幅値上げと 基礎的研究組織の縮小を招き, 中等公教育のレベル低下と併せて, 教育の機会均等の 精神どころか国の存在を危うくするだろう. 私は国立大学の独立行政法人化は反対する. これから欧米並の投資が なされるべき大学の将来像を論ずることは別の形で行なうべきである.
少なくとも介護保険導入のとき以上に時間をかけるべきだと思うが, あるいはこの法人化問題のゆくえは, 本書が出るころには決まってしまっているだろうか. 大臣が業務を定めるという制度的不合理をはじめ, 大学評価の方法(そんなことがそもそも誰にできるだろうか)など, 肝心のことがあまりに不透明である. ちなみにイギリスでの大学評価は 優秀選手で開催地が勝つ国体のように, 国際的学究が転々と渡り歩くための ものになっているときく. これが現実で, 夢のように良い方法はないと思う. 目先の経済で百年の計を誤らぬよう祈りたい.