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Bethe 仮説法の謎

1次元スピン系の解法としてはBethe 仮設法が知られていた[8].臨界レベル共形場の q 類似という立場からは, Bethe 方程式の半古典極限 は相関関数の積分表示の 臨界レベル極限が与える振動積分の鞍点条件とも読め, 先のLanglands 対応の下ではモノドロ ー表現の自明を意味している. Sklyanin によるスピン系の1自由度系への変数分離もWhittaker表現と関係づけて見直された. 変数分離に用いられる Baxter の Q 作用素 が, 行転送行列 を

と表す ことは, E. Frenkel によれば Harish-Chandra 写像の類似らしい.

物理的にはスピン鎖の長さ無限大(熱力学極限)での分配関数を知りたい.Kirillov, Reshetikhin, Wiegmann らは Bethe 方程式の解が複素数平面上でいくつかの線分の上に並ぶという「ストリング仮説」 を用いて分配関数などを求めた. 格子模型が連続極限で与える共形場を既知とすると, そこには中心荷電という理論の不変量がある. 一方それは 元の格子模型から計算できるはずで, 中西らによればdilog 函数

の特殊値の有限和となる. 結局(L(z) の特殊値の和)=(有理数 ) という等式が予想され, L(z) の 5 項恒等式に帰着して確認された[23]. 素人考えだが, この辺は dilog の出てくる状況として知られている数論や双曲多様体の不変量など と自然な関係があるのだろうか. Bethe 仮説法の関連では, Harpar 作用素

() もqが1の羃根の量子群の中心から得られ, カントル集合が現れることで有名な そのスペクトルがBethe 仮説法 で決定できる(Faddeev,Wiegmann ら).またポテンシャル の1次元 Schrödinger 作用素 のスペクトル・ゼータが, の Q 作用素と同じ関数等式をみたすことが最近発見された (Tateo , 鈴木 司, Bazhanov ら). 不思議なことである.



Koji HASEGAWA
Thu Aug 17 14:28:33 JST 2000