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臨界レベルの共形場と保型表現論

量子場をアデール的に扱う 着想は, 共形場の初期からいくつかの論文に現れていた [18]. 半単純群 G のゲージ対称性をもつ, リーャ当ハ X 上の 共形場理論(Wess-Zumino-Witten 模型)を考えよう. 場の理論であるからには, 励起あるいは相互作用を表わす場の作用素が登場する. X 上の全ての点で励起 がありうるので, 量子場の作用すべき空間として各点で アフィン・リー環(無限小ゲージ変換)

の表現を考えるべきだろう. 理論とは にある場の作用素 の相関関数 を与える仕組みといえる.ここで は期待値と解すべき量を与える何者かだが, X が高種数だったりG が非可換だったりその変換性の 束 B が非自明だと,その定義は明らかでない. 相関関数は場の作用素の積 が真空 ' を励起した 状態に対し値(期待値)を与えるものと思えば,仕組みとは状態空間の双対空間の元 で

なるものと思える.これは暗に `励起のおこっていない点'z の状態を暗に基底状態 と考えていると思うと,有限個の素点にのみ非自明な表現を置くアデール群の表現論を思わせる [20]. 相関関数を特徴づけるのは共形変換に対する変化を記述する共形 Ward-高橋関係式だが, これも が 大域的なゲージ変換の全体 で不変とよみかえられ, 保形形式の定式化に類似する. 土屋らは Ward - 高橋関係式が定める の微分方程式を(点付き)リーャ当ハ X のモデュライ空間上で考察し, これが X の退化に対応する境界成分にそって 確定特異点型であること,理論が種数について帰納的に定まることを 示した[19]. 解 は1次元と限らず, モデュライ上にベクトル束 「カイラル共形ブロック」を定め, 解の次元は リーマン球面上の 3 点関数 の場合に帰着して求められる.

共形場と保型表現論の類似を追求するには臨界レベル で考えるのが良い. アフィンリー環の標準 中心元 c が値 k で作用する理論を レベル k という. {} を の不変内積に関する正規直交基としよう. 共形変換の量子化である Virasoro 代数の作用は, カレントの作用 の 2 次不変式から発散を正規積::で除いた, 菅原形式

 

で実現される. Virasoro 代数の作用素 は

を満たす. ここで h は の dual Coxeter 数で, では n である. k=-h が臨界レベルで,右辺が 0 となりVirasoro 代数が作用できない (このため「共形」場理論というには語弊もある). 理論は点付きの X をとめたG 主束 B のモデュライ で閉じ, 保型表現論の数体をX の関数体 にしたように見える. から 同士も可換となり, その相関関数への作用は 上で可換な微分作用素系(可積分系!)を与える. その同時固有函数が Langlands 哲学における保形形式の類似だというのが Drinfeld らの主張である. 体拡大は幾何的には(分岐) 被覆にあたるから, リーマン面版Langlands理論では基本群の表現がガロア群の表現にあたる. G の双対 に値をもつ 基膜Qの表現が 可積分系の固有値と1対1に`Langlands 対応'すると予想されている.



Koji HASEGAWA
Thu Aug 17 14:28:33 JST 2000