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おわりに

共形場や可解格子模型は, 無限自由度を無限次元対称性で制御するという形で 数学的に量子場を扱う一つのモデルを与えている. リー群の表現論は対称空間上の測地流の量子化 (ラプラシアンの固有値問題)と考えると, 有限自由度の量子力学にあたる.場の量子論では対称性の`第 2'量子化が問題であり,古典的な表現論が「良い」関数を扱うのに対し,「良い」量子場やその差分化を 扱うことが課題といえるだろうか.良い系は 良さを保ちつつ第 2 量子化でき, 更に差分(格子場)化できる 「はず」というわけである[31]. 超幾何関数や q 解析, 更にLanglands 哲学までもそうだったように, 今後も伝統的な探究が新たな意味を見いだすような場を提供するに違いない. なお 以下は 力不足で 述べられなかった話題(妄想)だが,真に受けて人生を狂わせぬよう.

・面模型の種数一般化はどう考えるべきか?

・KP 方程式の 関数の極の運動は Calogero 系に従う(Krichever). これはなぜ自然か?

・離散可積分系は全て量子群から得られるか?

・可解格子模型の連続極限を明示的にとれるか? また, Ising 模型の相関関数が Painlevé 方程式を満たすことを, 可解格子模型一般に拡張して理解できるか? [6]

・ カイラル Potts 模型とモノポールとは, スペクトル曲線が似ている以上に関係あるか?[32]

可積分系の世界は解こうとして解けたものより思いがけない発見の方が著しい成果をあげるように思われ, 2次元の統計物理をうたった共形場の元祖Belavin-Polyakov-Zamolodchikovも弦理論の理解が動機だったという. 最も実り多い問題は ここに無い別のものであろう.思えば(?)点とは何か, 場とは何か, というのが量子場の理論の根源的問いであ った. 本稿の話題も元来これらに対する試みと考えられ,少くとも可積分系においては, 「q」による理論の変形は古典力学から量子力学への移行に匹敵するのかもしれない[33]. 妄言多謝.



Koji HASEGAWA
Thu Aug 17 14:28:33 JST 2000