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出版済み/採録決定済みの論文リスト

[1] Fixed point properties and second bounded cohomology of universal lattices on Banach spaces,

J. reine angew. Math. (Crelle's journal), Vol. 2011, No. 653, 115--134, 2011; arXiv:0904.4650

Bをヒルベルト空間と同値なノルムをもつバナッハ空間, もしくはLp空間 (ここで, pは開区間(1,infty)上の実数) とし, kを非負の整数とする. このとき, 以下を示した: 「普遍格子」と呼ばれる群Γ=SL_n(Z[x1,…, xk])がnが4以上のとき, Bader--Furman--Gelander--Monodの定義した性質(F_B)をもつ. ここでバナッハ空間Xに対し, 群の性質(F_X)とは, X上の任意のアファイン等長作用に関する(グローバルな)固定点の存在という性質である. 上記の全バナッハ空間Bで固定点性質(F_B)をもつことは, Kazhdanの性質(T)より真に強いことが知られている. 次いで性質(F_B)を拡張し, B上のアファイン等長作用の有界性という性質を定義した. これを性質(FF_B)と名付け, さらに上記の群Γがこの性質を, 非自明な線型部分の擬作用に制限すればもつことを証明した. これより特に, B上の等長線型表現が自明表現を含まないならば, 有界コホモロジーから通常のコホモロジーへの2次の比較写像: H^2_b (Γ;B) -> H^2 (Γ;B) が単射であることが従う.

[2] On quasi-homomorphisms and commutators in the special linear group over a euclidean ring,

Int. Math. Res. Not. IMRN, Vol. 2010, No. 18, 3519--3529, 2010; arXiv:0911.1341

ユークリッド環Rと6以上のnに対し, 群Γ=SL_n(R)が非有界な擬準同型をもたないことを示した. Bavardの双対定理とあわせると, Γ上の安定交換子長が消滅してることが分かる. この結果は特に環RがF[x](Fは特定の条件を満たす体で, 例えば複素数体Cなど)の形のとき, 以下の背景から興味深い: そのとき, Γ上の交換子長自体(安定化する前のもの)は非有界である. 本論文の結果はM. AbertとN. Monodによる問題(ICM2006, ほか)に, nが6以上の場合の解決を与える.

[3] Fixed point property for universal lattice on Schatten classes,

Proc. Amer. Math. Soc. Vol. 141, 65--81, 2013; arXiv:1010.4532

特殊線型群 G=SL_n (Z[x1,...,xk]) (nは3以上, kは自然数) は普遍格子と呼ばれている. nを4以上, pを開区間(1, infty)内の任意の実数とし, 記号C_pで可分ヒルベルト空間上のp-シャッテンクラス作用素たちのなすの空間を指すことにする. 本論文の主結果は以下である: Gは, C_p上のアファイン等長作用に関する(大域的な)固定点性質をもつ. さらに, 最後に述べる仮定の下で, C_p上の等長線型表現を要素とするGの2次元有界コホモロジーから通常の2次元コホモロジーへの比較写像が単射であることも示した: ここで, 上記の線型表現が自明表現を含まないことを仮定している.

[4] Sphere equivalence, Banach expanders, and extrapolation,

Int. Math. Res. Not. IMRN, Vol. 2015, 4372--4391, 2015, doi: 10.1093/imrn/rnu075; arXiv;1310.4737

バナッハ空間 X と指数 p に対して,有限グラフの (X,p)-スペクトルギャップの X を変えたときの振る舞い,p を変えたときの振る舞いをともに考察した・EEEDバナッハ空間に対して「球面同値」の概念を用い,特に,X が一様凸バナッハ空間と球面同値であるとき,指数 p を (1,\infty) の間で変えても (X,p)-スペクトルギャップに関するエクスパンダー性は不変であることを示した.この結果は X=R のときに知られていた「Matousek の補外法」の一般化を与える.

[5] (酒匂宏樹氏, 小澤登高氏, 鈴木悠平氏との共著) Group approximation in Cayley topology and coarse geometry, III: Geometric property (T),

Alg. and Geom. Topol., 15 (2015), no.2, 1067--1091, doi: 10.2140/agt.2015.15.1067; arXiv;1402.5105

Grigorchuk が定義した「the space of marked groups」という位相空間での marked 群の収束と,有限 marked 群の無限列から作られる無限距離空間の粗い幾何(coarse geometry)での性質の関係を調べる,というプロジェクトの第 3 部である.本論文では,Willett と Yu によって導入された「幾何学的性質 (T)」とよばれる粗い幾何の性質について研究した.有限 marked 群の無限列が「幾何学的性質 (T)」をもつことと,marked 群の「the space of marked groups」での境界に現れる無限群がどれも Kazhdan の性質 (T) をもつことが同値である,ことが主結果である.この結果は,有限群の無限列がある剰余的有限な無限群から来ている,という特殊な場合に Willett と Yu によって得られた定理のケーリーグラフの枠組みでの最大の一般化を与える.「コホモロジー的性質(T)」も導入された.

[6] Multi-way expanders and imprimitive group actions on graphs,

Int. Math. Res. Not. IMRN, Vol. 2016 no. 8, 2522-2543, 2016, doi: 10.1093/imrn/rnv220; arXiv:1403.2322

藤原耕二氏によって挙げられた, 「ケーリーグラフでは多分割エクスパンダ―は通常のエクスパンダーになるか」という問題を連結な頂点推移的なグラフに一般化して肯定的に解決した. 証明は, より一般に, 連結な頂点推移的グラフに対しての多分割等周定数の間の普遍的不等式を導く・アとで得られる. また, 頂点推移的なグラフの多分割等周定数の間に定量的なギャップがあるとき, グラフの自己同型群の頂点集合への作用が非原始的なシステムをもつことも示した.

[7] Superrigidity from Chevalley groups into acylindrically hyperbolic groups via quasi-cocycles,

J. Eur. Math. Soc., accepted; arXiv:1502.03703

高階数被約既約ルート系に付随する可換有限生成な単位的環上の(単連結)基本シュバレー群, ないしは, それの測度同値的な仲間から, 非シリンダー的双曲群への群準同型の像が絶対楕円的であることを示した. 証明には弱混合ユニタリー表現係数の擬(1-)コサイクルを用いる. 特にターゲットの群が閉曲面の写像類群ないしは自由群の(外部)自己同型群のときは, 以前に高階数格子で知られていた, Farb--Kaimanovich--Masur 超剛性や Bridson--Wade 超剛性の非算術化を与える.

[8] (Tim de Laat, Mikael de la Salle 両氏との共著) On strong property (T) and fixed point properties for Lie groups,

Annal. Inst. Fourier, accepted. arXiv:1508.05860

本論文では高階数リー群に関する, 強化された性質(T)を証明した. より具体的には, 「各有限次元 k に対し, k 次元部分空間と k 次元ユークリッド空間とのバナッハ・マズール距離が k の 1/2 より真に小さいべき乗のオーダーで上からおさえられる」ようなバナッハ空間について考える. 主結果では, このようなバナッハ空間に対し, 十分大きい階数の単純リー群が V. Lafforgue の意味での強化されたバナッハ性質 (T) をもつ, ということを示した. 系として, これらのリー群とその格子が等長作用に関する固定点性質をもつことが従う. さらに, このようなバナッハ空間 X に対し, 十分大きな階数の特殊線型群(実係数, 整係数)が「X 上の等長線型表現を係数とする擬 1-コサイクルが有界である」という性質をもつことも示した.

プレプリント

[1] (酒匂宏樹氏との共著) Group approximation in Cayley topology and coarse geometry, I; Coarse embeddings of amenable groups

arXiv:1310.4736

Grigorchuk が定義した「the space of marked groups」という位相空間での marked 群の収束と,有限 marked 群の無限列から作られる無限距離空間の粗い幾何(coarse geometry)での性質の関係を調べる,というプロジェクトの第 1 部である. 群の従順性と Yu の性質Aが対応することを示した. 応用例として, 階数が発散する有限体上の特殊線型群に対して生成系の取り方で, それら無限列の非交和の coarse 幾何での性質が著しく異なることを示した.

[2] Superintrinsic synthesis in fixed point properties,

arXiv:1505.06728(旧バージョンでのタイトル:Strong algebraization of fixed point properties.)

部分群でのバナッハ空間への相対的固定点性質の条件下で, 純代数的な方法で群全体の固定点性質を導く十分条件(固定点性質の"代数化")を与えた. 本論文での十分条件は「有界生成条件」を一切仮定しておらず, その意味で Shalom による 2006 年の国際数学者会議での代数化を強化している. 適用例として, 非可換でもよい有限生成・単位的・結合的環 A ・纈闍`された(A _{n-1} 型のルート系に付随する)シュタインバーグ群 St(n,A) が, n が 4 以上のとき任意の非可換 L_p 空間(特に, 通常の L_p 空間)に関する固定点性質をもつことを示した. ここで p は 1 よりも真に大きい任意の実数である.

プロシーディング原稿など

[1]An alternative proof of Kazhdan property for elementary groups,

expository article, submitted as a proceedings manuscript, 2016; arXiv:1611.00337

本解説草稿は,2010年の Ershov and Jaikin--Zapirain(Invent. Math.)の基本行列群の Kazhdan の性質 (T) に関する結果の別証明に特化したものである.原論文の証明では得られている Kazhdan 定数の評価はこの方法では得られないが,証明は元のものに比べて簡易である.
* この草稿は,プレプリント [2] で得られた結果を,最も基本的な「基本行列群のヒルベルト空間上(等長)作用の固定点性質」の場合に限定して,アイディアを簡潔に説明したものです.

非出版向け草稿

[1] Property $(TT)$ modulo $T$ and homomorphism superrigidity into mapping class groups,

Unpublished manuscript, 2011; arXiv:1106.3769

※ 本草稿の内容は拡張・整理され, 論文 [7] になりました。,