中退者を出さない学校をつくろうと東京都教育委員会が、都立高校2校を指定した「エンカレッジスクール」について、都教育委員の鳥海巌・丸紅相談役が教委の定例会で「落ちこぼれの学校、とはっきり言えばいい」などと発言していたことが分かった。そのうえ、都教育庁総務部が議事録を作成する際、この発言を削除・修正しており、傍聴していた人から疑問の声が上がっている。
「エンカレッジ(勇気づける)スクール」は、体験学習を積極的に取り入れるほか、授業時間も短くし、複数担任制で生徒に接するなど、中退者が出ない工夫をする新しいタイプの高校。先月下旬、足立東高と秋留台高の2校がモデル校に指定された。
同スクールについて、4月11日の教委定例会で報告があった際、鳥海氏は「落ちこぼれの学校とはっきり言えばいい」「エリートコースがあるのなら、ノンエリートがあってもいい」などと述べた。同部は議事録を作る時に「落ちこぼれ……」のくだりを削除し、「ノンエリート」は「そうでないコース」と書き換えたうえで公開した。
定例会を傍聴した女性(75)は「教育委員は公職で、定例会は公の場。本音で語るのは大事だが、その議論の先には実際に教育を受ける子供がいるのだから、緊張感を持って発言してほしい。言ったことを言わなかったことにするのもおかしい」と憤る。
これに対し、鳥海氏は「あいまいな物言いでは教育改革にならない。言うべきことを言って、議論を戦わせながらやるべきだと思い、挑発的に発言した。ただ、傷ついた生徒がいたら申し訳ない」と話した。一方、同部の坂崇司政策担当課長は「議事録は全体としてどんな議論があったかが分かる要旨を記すもの。余談にあたる部分なので省いた」と説明した。
鳥海氏は石原慎太郎・都知事と同じ一橋大学出身で、知事の友人。99年10月に教育委員に就任した。【小平百恵】
[毎日新聞7月8日] ( 2002-07-08-15:01 )