岡部真也 准教授

    本プログラムの援助のもと, ピサ高等師範大のデ・ジョルジ研究所および パドヴァ大学に滞在し, 主に M. Novaga 氏と共同研究を行った. 日常的に 議論を交わすことのできる環境は何物にも代えがたいものである. 数学は 一人で研究に取り組もうと思えば可能であるが故に, 閉じた環境で研究を 行い研究の広がりを阻害してしまうことが起こり得る. もちろん一人で取り 組むことも重要であるが, 数学は直接議論を交わすことによる学術的コミュニ ケーションを通じて研究の進度を加速させ, 研究の新たな方向性を見いだす ことができる場合が極めて多い学問である. 研究のスタイルが確立しつつある 比較的若手の時期に, 多くの研究者が集まる拠点に長期間滞在し日常的に 討論する機会を得ることは非常に得がたい経験であった. 実際に, 日常的に 議論を行うことで問題の解決をはかるという新たな研究スタイルを体感し, 一定の成果をあげるとともに自身の研究スタイルに取り込むことができた.
    今回の経験を通じて, こういった機会をより多くの若手研究者にできる限り長い 期間与えることができるならば, 研究の進展を加速させるのみならず, 世界に 通用する若手研究者の育成に繋がると感じた. これは本プログラムの趣旨に 通じるものであり, 今後も本プログラムが継続されるのであれば, さらなる成果 が期待できるものと思う.