岡部真也 准教授 

    岡部真也氏は, 現在 M. Novaga氏(Pisa大)との共同研究 により, 幾何学的発展方程式に関わる諸問題について研究を 行っています. 特に, 本プログラムに該当する期間において は、具体的に以下のような問題に取り組んでいます:
    (1)ある幾何学的発展方程式に支配される無限の長さをもつ平面開曲線の挙動
    (2)種々の境界条件を満たす平面開曲線のある幾何学的発展方程式による運動
    (3)幾何学的発展方程式に対する障害物問題
    ここで, 幾何学的発展方程式とは, 幾何学的に意味のある 汎関数に対する勾配流方程式を意味します. つまり, 対象と するエネルギーが最も効率よく減少するという規則に従う 曲線のダイナミクスを数学的に解明することを目的とした 研究です. 多くの物理現象は適当なエネルギーの平衡状態や それに向かう過程として現れることが多いため, そういった 観点からも興味深い研究といえます.
    問題(1)では対象とするエネルギー汎関数に曲線の長さを 加えているため, 無限のエネルギーに対する勾配流を構成 しようというものです. 形式的には曲線が運動するための エネルギーが限りなくあるため, 通常とはまったく異なる ことが起こる可能性があります. 問題(2)は問題(1)を より詳細に解析するための準備にもなっていますが, 勾配流 に従う曲線がエネルギーの平衡状態に時間を無限大とするとき に収束することを示すための一般論を構築することが目的です. 最後に, 問題(3)は曲線が超えることのできない「壁」が あるような平面における曲線の運動を障害物問題として定式化 しようという試みです. それに向けた最も簡単化した問題については既に結果が得られており, 今後の進展が期待されています.