北別府悠 博士課程学生

    北別府悠氏は測度距離空間の幾何学について研究を行っています. 測地的と呼ばれる距離空間に対して, 曲率次元条件と呼ばれる Ricci曲率の下 限条件および次元の上限条件の抽象化が定義されています. これらは Riemann多様体上では通常の定義と同値であり, 定式化に微分構造を 用いないことから一般の測度距離空間でも定義ができ興味深い性質を満たすこと が示されてきました. 特に分裂定理, Bochner不等式, heat kernel estimate などの Riemann多様体で知られていた様々な事実が次々と明らかになってきて います.
    一方グラフなどの離散的な距離空間も数学の様々な分野で顔を出し, 研究が盛ん にされています. 離散的な空間はその特異性から微分幾何学的な研究というのは されていませんでしたが, 近年 Ollivier によって random walk付き距離空間 の Ricci曲率の概念が定義されました. この曲率は離散的な距離空間に対して も定義でき, グラフの幾何学ならびに解析を研究する新しい手法になっています. 北別府氏はこの Ollivier による Ricci曲率を利用することで, 距離空間の荒 い構造を研究する coarse幾何学を研究しています. この分野は幾何群論とも関 連が深く今後さらに研究が深まっていくと考えられます.