千頭 昇博士 課程学生 

    千頭昇氏は圧縮性 Navier-Stokes-Poisson方程式について研究しています. この方程式は, 銀河のような自己重力が作用する圧縮性流体を 記述するモデルとして提唱されました. 銀河で流れているのは無数の星です. これらは質点系の集まりであり, しばしば多体問題として扱われますが, 数学的には難解な問題です.
    そこで連続体近似を行い, 形式的に銀河の運動を流体運動として捉えることで, 古典力学的な流体方程式を適用します. また, 銀河の大きさは巨視的に見ると縮んだり膨らんだりします. こういった流体の性質を圧縮性と呼びます. さらに, 流体に限らず物質が密集すると, 自己重力と呼ばれる力が発生しますが, 偏微分方程式論では Poisson方程式というもので表されます. これらの性質を全て考慮することで導かれるのが 圧縮性 Navier-Stokes-Poisson方程式です.
    千頭氏はこのような流体方程式の解の存在や一意性, 初期値に体する連続依存性などを研究しています. 有名なミレニアム懸賞問題の一つに 「任意の初期値に対する非圧縮性 Navier-Stokes方程式の 時間大域的な滑らかな解の存在問題」があります. これは圧縮性流体とは直接的には関係ありませんが, 周辺にはこのような華々しい問題も横たわっています.