セミナーの予定
2025年5月22日(木) 16:30-18:00
会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
中田 行彦 氏 (青山学院大学)
題目
分布型時間遅れをもつ微分方程式の対称周期解について
要旨
時間遅れをもつ微分方程式の解の性質や振る舞いが精力的に調べられているが, 関数空間上のダイナミクスの解析は一般的に困難である. 本発表では, 従来輸送型の偏微分方程式で定式化されてきた構造化個体群モデルから, 分布型時間遅れをもつ微分方程式が現れることを動機として, 分布型時間遅れをもつ微分方程式の周期解について考察する. 方程式の非線形性を決める非線形関数が適当な奇関数である場合, 分布型時間遅れをもつ微分方程式に対して, 対称的な周期解がハミルトン系の2次元常微分方程式系から得られることを示す. この結果は, 離散的な定数時間遅れをもつ微分方程式に対する Kaplan and Yorke (J. Math. Anal. Appl., 1974)の結果を拡張したものである. さらに, 非線形関数が奇関数でない場合においても, 分布型時間遅れをもつ微分方程式は, ハミルトン系常微分方程式によって定められる対称的な周期解を持ちうることを紹介する. またヤコビの楕円関数によって周期解が表される例を紹介する.
2025年5月29日(木) 16:30-18:00
会場
東北大学 合同A棟8階801室
発表者
榊原 航也 氏 (金沢大学)
題目
Plateau 問題の高速・高精度数値解析
要旨
空間内に与えられた Jordan 曲線を境界として持つ極小曲面を求める問題は Plateau 問題として知られている.
Plateau 問題では, 一部の特別な場合を除き一般に解が複数存在し得るため, 「解がいくつ存在するか」という基本的な問題に対する完全な解答は得られていない.
本発表では, 基礎解近似解法(MFS)に基づく新しい数値スキームを紹介し, 境界曲線の滑らかさに応じて Dirichlet エネルギーおよび平均曲率の $L^\infty$ ノルム誤差が指数関数的に収束する理論を導出する.
さらに, 多次元トーラス上で位相パラメータの最適化問題を定式化し, 各種曲線(楕円, Cassini 卵形, Enneper 曲線など)に対する高精度数値例を示す.
最後に, 本手法を用いた全解探索アルゴリズムを提案し, Enneper 曲線に対する数値計算を通じてその有用性を実証する.
「東北大学OS特別セミナー」
2025年5月30日(金) 16:00-18:00
会場
東北大学 数学棟3階305講義室
発表者
片山 翔 氏 (東京大学)
題目
$\mathbb{R}$ 上のグラフに関する指数型表面拡散流の長時間挙動
要旨
指数型表面拡散流は結晶表面での原子の拡散による結晶成長のモデル方程式であり, Gibbs--Thomson 則に由来する曲率の指数関数の形の非線形項をもつ4階の幾何学流である. 本発表では, $\mathbb{R}$ 上の関数のグラフに関する指数型表面拡散流について考察する. とくに, 初期値の2階微分の小ささの仮定の下, 初期値問題の時間大域解が一意的に存在し, さらにこの解が時間遠方で表面拡散流の自己相似解に漸近することを示す. この結果は, Mullins (1957) が導入した曲率に関する線形化による表面拡散流での近似を長時間挙動の観点から正当化する. 本発表は 儀我 美一 氏 (東京大) との共同研究に基づく.