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黒木のなんでも掲示板3 (0009)

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Id: #e20010607233354  (reply, thread)
Date: Thu Jun 07 23:33:54 2001
Name: ときた
Subject: 内政干渉 小倉金之助

内政干渉は望ましいことではないが、自衛の為には許される。

朝鮮民族が、50年後日本民族が集団ヒステリー化する可能性が0でないことを感じて、ねじ曲げ教科書に抗議するのは、過去の歴史を考えれば、正当な自衛権の行使だと思う。
オーストリアの選挙結果とベルギー政府の反応も同様。

中国の黄砂は大西洋にまで届いている。
日本政府や国連は、全人類の生存権を背景に中国に内政干渉すべきだろう。
実際に、中国人民を搾取しているのは、地方の悪徳幹部で、中央政府はそれほど強くない。

底辺の人民のナショナリズムに火がつくと大変なことになる。
インドもエリートの長期腐敗政権の国民会議から、底辺の人民のナショナリズムに政権が移管したとたんの核武装。
そういう危ないリアリティを隣国同士が協力して綱渡りしてくのが国際政治なのに、外務官僚は何を考えているのかな?

さて以下は、1939年4月号の図書に東北大数学教室の助手であったこともある小倉金之助が書いたものの一部。
また今日の学校教科書風の本なら、私自身が第一に、うんざりしている。あんな粗悪な定食ばかりを、幼少の時代から、長年月に亘って、毎日毎日、無理に食べさせられたからこそ、国民大衆は学問の意味さえ理解せず、学問そのものが厭になる。ある人達はその後、絶食状態を続けたり、ある人達は変態料理ばかりを漁るようになるのである。
62年後に変態料理が定食になるのも、俵 義文さんは立派な方だが、彼が勤務する啓林館の物理の補助問題集が、全国の公式棒暗記教師の熱い支持を受けているのも、困ったことですな〜。
Id: #e20010607200704  (reply, thread)
Date: Thu Jun 07 20:07:04 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010607132403
Name: あもう
Subject: 法的問題

資料は、
http://www.linkclub.or.jp/~teppei-y/tawara%20HP/ihouna%20kyoukasho.html
と、つくる会の主張
http://www.tsukurukai.com/shiryou/seimei.html
です。

 で、読み比べてみたんですけど、いくつか不明な点があります。
公取委のページでも特殊指定の条文が見あたらないのですが、見落としたかもしれません。引き続き探してみます。

まず、公取委の特殊指定ですけど、つくる会の主張している内容が、他社を誹謗しているのではなく、記述されている歴史そのものに対するオブジェクッションであるなら、中傷にも誹謗にもあたらないはずです。誹謗や中傷であれば、特殊指定を待たずに名誉毀損で争えるので、つくる会の行為で問題になるのは「不当な営業行為」だけだと思います。この点が、俵氏の議論でははっきりしません。

次に、つくる会の法律上の位置づけです。もし、組合にあたるなら、23条が適用されて、独占禁止法の適用除外にはならないのでしょうか。これは、俵氏の議論からもつくる会のウェブページからも、はっきりしませんでした。特殊指定との優先順位がはっきりしないので、俵氏の主張が正しいかどうかがわかりません。任意団体として発足、とは書いてありましたけど...。

「国民の歴史」発刊記念講演会ですが、これは中身によると思います。つくる会が事前宣伝と位置づけていても、単なる発刊記念講演会以上のことをしていなければ、どこが後援になったとしても問題なさそうに思えます。その中身が、歴史に関する講演を延々とやって、最後に「今度教科書つくります」って話がちらっとだけ出るような場合に、どの程度の違法性があるか、という問題です。大々的に宣伝をしているようなら、違法確定ということになるのでしょうけれど。

「歴史への招待」というパンフレットを配った件についてですが、内容を見ないと判断ができません。内容によっては、「教科書の宣伝」に該当しない可能性もあります。

検定中に、西尾氏によってテレビで教科書の内容に関する情報が流れた件ですが、検定中に朝日新聞が展開した批判とどっちが先でしたっけ?検定中であるにもかかわらず、中国や韓国からの内政干渉が行われたことについて、俵氏は何も触れていません。検定中なのに、朝日新聞が批判を展開したことについても何も書かれていません。これは不公平であり、バランスを欠く記述です。法律は自力救済を禁じるという原則がありますから、先にやられたかといって検定中に情報を流すことを正当化できるわけではないと思いますが。

つくる会の行動が違法だったとして、誰が原告になれるんでしょうか?この場合、原告として当事者適格なのは誰でしょうか?俵氏の批判文からは、それがはっきりしませんでした。



 以下は私の立場です。
 私が、俵氏の批判をみて危険だと思うのは、私自身が俵氏と類似の論理で叩かれることを常に意識しているからです。特に、法的論点を整理せずに、誹謗だ中傷だと言い立てるあたりがです。例えば「水商売Bookウォッチング」という企画を考えていたりもするんですが、そうすると俵氏と同じ論理で攻撃を受ける可能性があります。つくる会を擁護する理由はほとんど無いのですが、俵氏(に代表されるような)勢力に対抗するには、どういう法的技術が必要かということについては、徹底的に考える必要があると思っています。





Id: #e20010607152026  (reply, thread)
Date: Thu Jun 07 15:20:26 2001
Name: ときた
Subject: 教科書

教科書は、日本の今の教科書、昔の教科書や、世界の主要国や隣国の教科書が、公立図書館で読めるといいですね。
日本は豊かでくらしやすい方の国だが、都市の住宅と、寝たきり老人と、高校の教科書は大層貧しいことがわかるでしょう。
大きな書店で比較的目につくのは、ヨーロッパ共通教科書の東京書籍からの訳本かな。
『外国の教科書の中の日本と日本人』一光社は正則高校の生徒がシンガポールの中学教科書を翻訳したもの。
ブタネコ塾周辺の成金ミッションじょがっこうでも、こういう教育をしてくれたら、彼女らが無教養エリートの妻としてシンガポールなどに赴任したときの行動様式も変化するのに。
右でも左でもない、アフリカ史の画期的な本が講談社の新書なんかにある。外務省がばらまいた奨学金で、横国にも、電通大にも優秀なアフリカ人学生は沢山いる。
世界史の授業に来てもらえばいいのに。大学生は勉強家で、目がキラキラしてるのに、高校生は驚くだろう。
ホブズボームの『21世紀の肖像』三省堂で、訳者の学習院の大先生が、高校生用に一生懸命注をつけたと告白してるが、どれほど高校生の手許にとどいたやら。別の学習院の物理の大先生の啓蒙書と同じ運命かな。
西尾や藤岡はルサンチマンから人格を崩壊させたエネルギッシュな廃人だが、紙屑教科書で30年1日授業をしている、エンルギーをなくした廃人教師の鎖国主義がネーションワイドな既成寄生事実だということがね〜。
Id: #e20010607132403  (reply, thread)
Date: Thu Jun 07 13:24:03 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010607103645
Name: 崎山伸夫
Subject: 個別の動きをバラバラにみると問題が見えなくなる

うーん、あもうさんはバラまきが行われる可能性は低いと見るわけですね。 前述したように、ダミー団体によるバラまきは 「無関係」と一応突っ張ることができる(それが正当かどうかは別問題)だけの枠組があるので、 法的にストレートにひっかからないということにされるでしょう。 で、あもうさんのいう、「ルール破りのリスク」ですが、私は悲観的ですね。 なぜなら、「つくる会」の運動は決して無力ではなくて 地域の保守的権力を取り込んだものになっているからです。 あもうさんとしては評価が低いようですが、 黒木さんが紹介している 「子どもと教科書全国ネット21」の教科書採択権問題のページを参照すれば わかりますが、「つくる会」関係団体からの、 教科書採択権を現場教員から奪うことを意図した請願が全国で多数採択されていて、 採択には各自治体の保守系議員が多数かかわっている、という構図があるわけなので。 バラまきというローカルに起こる事象について、この枠組で問題化すること自体を つぶせる可能性すらありえるのではないかと思いますよ。

次に俵氏のページですが( こっちのほうがよかったかも)、 個別のページだけで完結しているというものでもなさそうなので読み通して 判断したほうがいいような気がします。 で、バラまき問題について。 これを単に「一般書籍」とみれば「言いがかり」でしょうが、 『国民の歴史』は今回の教科書のパイロット版となることを意図して出版されているもので、 『国民の油断』(こっちは出版社が違うけど)は、教科書採択権問題が含まれています (今回紹介したページによれば「採択制度を変えれば教科書は変わる」という章が あえて追加されています)。 これを「教育委員あてに教育長経由で無料でバラまく」ということがされており、 ゆえに、「単なる一般書籍」ではないわけです。 法的問題は それに先行する文書 に書かれている。 で、法的にいえばそもそも物品供与一般が問題になるということですね。

教科書はたしかに「内容で選ぶもの」ですが、 選ぶひとから現場の教員を外し、教育委員と地域ボスによる (「科学」嫌いの)保守的サークルの中で 選ばれるようにしていこう、というのもまた「つくる会」の運動なわけで、 そこまで視野にいれて問題をみる必要があります。


Id: #e20010607103645  (reply, thread)
Date: Thu Jun 07 10:36:45 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010607033122
Name: あもう
Subject: 教科書市販本のばらまきについて

 まずは名称から。
正確には「扶桑社の教科書」と呼ぶべきでしょう。新聞報道やMLでの話題の経緯で「作る会」の教科書と書きました。

 ばらまきについてですが、この間、書店で見かけたときに、中を少し見ました。そうしたら、公正取引委員会による規制で、ある時期までは安価に配ってはいけないと明記してありました。(正確な文言は忘れましたが、こういう意味でした)

 配っちゃいけないというのが扶桑社に対する規制であり、つくる会その他の団体が大量購入して配っても法に抵触するかどうかは微妙なところです。しかし、おそらく競争のルール破りということで、同業他社が黙っていないと思うし、これを理由にネガティブキャンペーンを行うことも可能になります。そのリスクを冒すかどうかがちょっと疑問です。

 俵氏のページも見ました。教科書でない一般書籍のバラまきが法に触れると書いてありましたが、法の何条に抵触するか何も述べていない議論は、はっきりいってお粗末だし言いがかりにしか見えませんでした。

 教科書の場合は、ほとんど同じ内容のもので採択を競うので、ダンピングをしたりすると公取委が乗り出してくる可能性があります。法の適用の基準が一般書籍と異なる可能性があると思うのですが、公取委が決めることです。

しかし、一般書籍の場合は、大量にばらまいたからといって、公正な競争を阻害したとはいえないでしょう。ただし、出版社がこれをやると、再販制度の維持を壊すことになりませんか。
 第三者が正式に買ってからばらまいた場合は、不正競争防止法にも抵触しないでしょう。本は、内容で選ぶものですから、ばらまきがあったとしても、他社の他の出版物の売れ行きに影響しないと考えられます。


 
Id: #e20010607033122  (reply, thread)
Date: Thu Jun 07 03:31:22 2001
Name: 崎山伸夫
Subject: 扶桑社教科書の市販バージョン販売がなぜ問題になるのか

理科教育MLであもうさんが扶桑社教科書市販に言及しているのですが、 理科教育MLに現時点でいない私が そのためにsubscribeするのもなんだし、 ここにあの教科書についての議論実績があるのでこの場を借りて一応コメントしておきます。

まず、これらの教科書は「つくる会」教科書としばしば呼ばれ、 「つくる会」の運動から生まれた教科書であることも公然となっていますが、 一方でこれらの教科書は扶桑社の責任において刊行されるものであり、 執筆者も公式には「つくる会」の(中心的)メンバーである個人複数であって、 「つくる会」そのものではありません。 この関係において、 「つくる会」は公式には扶桑社教科書の利害関係者でない、という主張が可能になっています。 (つくる会が「 当会では「新しい教科書」市販本に関する業務は一切受け付けておりません 」としているのも、おそらくはこの問題がある)。

一方、「つくる会」編として教科書の前段階のものとして出版された 『国民の歴史』等の一般書籍があります。 これらについては、出版当時の報道によれば、 「つくる会」のダミー団体による組織的大量購入と(おもに教育委員などを対象とした) バラまきが行われた実績があります ( 俵義文氏による動向解説も参照)。 今回の「市販バージョン教科書」についても、 表向きは「つくる会」としてはそのような活動を行うようなことはないとするでしょうが、 同様のことが行われる可能性は十分あると考えるべきです。 なお、実際に行われたとしても、「つくる会」は「つくる会」が 法的に利害関係者でなく、さらに「つくる会」が直接指示していることでもなく、 執筆者個人もタッチしていないとして逃げ切るつもりでしょう。 市販バージョンの発売は、そのような活動を可能にする前提となるわけで、 真の「採択へ影響を与える懸念」はそこにあったりします。


Id: #e20010531021941  (reply, thread)
Date: Thu May 31 02:19:41 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010529231726
Name: みよし
Subject: おや見覚えのある名前が

ときたさんの挙げたURLで講演しているのは M. Costeですね。彼らのグループは元々圏論、特に圏論的なモデル論 (構文も意味領域も圏であるようなモデル論)をやっていて、 その延長としてだんだん実代数幾何学にシフトしていったようです。 (単純に言えば可換図式を等式の一般化と考えるわけで、 そういう文脈ではそのモデルを代数幾何と同じくvarietyと呼びます)。 このような抽象的な見方とときたさんのかかれているような具体的な計算と どのように関係するのかはなかなか興味深そうですね。
Id: #e20010529231726  (reply, thread)
Date: Tue May 29 23:17:26 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010515155147
Name: ときた
Subject: Real Algebraic Geometry

都立大からKozlowskiさんのOxford時代の学友のMartinさん
http://www.comp.metro-u.ac.jp/~martin/index.html
も見え、2次会ではPorteousのgeometric differentiationとかエゲレスの古き良き微分幾何も酒の肴でしたが、
1次会では、岩波応用講座の小松彦三郎のオイラー公式とモース理論とベクトル場の話しを、公民館の町民教室並にやさしくし、上手とも下手ともいえない苦労の日本語で面白い講演でした。
生まれてはじめてクライン壷の陰関数表示を見た。レポート用紙1/3くらい。
トーラスの陰関数表示は比較的簡単だけど。
こうした計算の背景にReal Algebraic Geometryがあるとか。
http://www.msri.org/publications/ln/msri/1998/scga/coste/1/index.html
Id: #e20010529185256  (reply, thread)
Date: Tue May 29 18:52:56 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010528210622
URL: http://www2s.biglobe.ne.jp/~Uneyama/
Name: うねやま
Subject: 発生の不思議
いまださん、ありがとうございます、返答があって嬉しいです。

>さて。ではヒトなどではどうか?
>受精前には体軸は決定されていなくて、受精の瞬間に、どこから精子が
>入ってきたかで前後軸が決定されるというのが、現在の通説です。

>極端な例としては、ウシなどで受精卵を2つとか4つとか8つとか
>に分割してクローンを作成するという受精卵クローンという、すでに
>確立された技術があります。

ウシの受精卵は8細胞期か16細胞期でしたっけ、どう分割してもウシになるんです
よね。その場合既に受精後ですからそれから精子が入ってくるはずはないので、精
子が入ってきた場所を各細胞が記憶してることになりますよね。受精卵を分割した
あとでいろんな場所の細胞質を注入するとどうなるんだろうか・・というような興
味がわいてしまうのですが、それはさておき。

精子が入ってきた場所を基準に軸を決めるとして、細胞質が注入されたものは注入
された部分とそうでない部分で「むら」がありますから(そう簡単には均一に混じ
り合わないはずなので)、それがその後の濃度勾配作成の撹乱要因になるような気
もするのですが。些細な影響かもしれないのですが。

素人的に卵は不思議なものだといつも思っているので、妙な話をしてしまいまし
た。

>最後に、十分な動物実験を積んだ後でなければという議論については、
>基本的に同意しますが、と同時に、特に発生工学的な部分については、
>種の壁の大きさを実感していますので、純粋に技術的な側面から考える
>と、動物実験での十分な成功は必要条件か否かというのは難しいところ
>だと感じます。

これは分野は違いますが全く同感です。ヒトと動物では違うところがたくさんあ
る。
結局ヒトのことはヒトでやってみないとわからない(もちろんできない)し、類人
猿のような人間より希少価値の高い動物を徒に実験材料にしていいとは到底思えないので。


蛇足ですが、もし「ヒトと両棲類や実験動物は違うので実験結果をヒトに当てはめ
るのは慎重に」ということが「一般常識」になっていれば、昨今の環境ホルモン騒
動の様相はもっとずっと違ったものになっていたはずだと思います。


Id: #e20010528210622  (reply, thread)
Date: Mon May 28 21:06:22 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010528094842
Name: いまだ
Subject: べつに弁護するいわれもないけれど.....
いちおう発生の論文も書いている身なので、ちょっとコメント。
自己紹介としては、http://www.lares.dti.ne.jp/~ciao の掲示板などに
よく出没している、解剖学な人です。生殖医療には、直接タッチして
いないので、あくまでも、発生も研究している医学系生物屋としての
個人的感想です。

ショウジョウバエや線虫では、前後軸が卵の時点で決定していて、それは
母親由来のmRNAが前後軸方向に勾配をもって分布しているからだ、という
話になっています。この勾配が如何にして形成されるかというのは、まさ
に現在ホットなトピックなのであります。

さて。ではヒトなどではどうか?
受精前には体軸は決定されていなくて、受精の瞬間に、どこから精子が
入ってきたかで前後軸が決定されるというのが、現在の通説です。

高校の生物などで習うかもしれない言葉でいえば、モザイク卵と調節卵
というやつで、前者は卵のどの部分が将来何になるかがあらかじめ決定
されているというもの、後者は、発生の過程でダイナミックに調節され
ていくというものです。ショウジョウバエや線虫はモザイク卵の代表的
なもので、特に線虫では、卵がどう分裂してどの臓器になるかが完全に
決定されていて記載されています。一方、ヒトやマウスなどは調節卵で
す。極端な例としては、ウシなどで受精卵を2つとか4つとか8つとか
に分割してクローンを作成するという受精卵クローンという、すでに
確立された技術があります。

ということで、母親由来の因子の勾配が崩れるのではないか、という点
については、あまり心配しなくていいのではないかという気が、第一勘
としてはします。

また、黒木さん紹介のWeb現代の記事でも、10-15%も注入するのは
多すぎると批判がありました。一見多そうですし、実際に受精卵に細胞質
の顕微注入をやっていないので、きちんとしたことはわかりませんが、
半径で数%程度ふくらむ程度の顕微注入というのは、それほど入れすぎ
には聞こえません。もちろん、半数以上の卵が発生せずに死んでしまう
でしょうが、胚盤胞あたりの段階まで発生させて形のきれいな胚を選ぶ
という通常の手続きを踏んでいますから、問題ないでしょう。

最後に、十分な動物実験を積んだ後でなければという議論については、
基本的に同意しますが、と同時に、特に発生工学的な部分については、
種の壁の大きさを実感していますので、純粋に技術的な側面から考える
と、動物実験での十分な成功は必要条件か否かというのは難しいところ
だと感じます。つまり、たとえば、マウスなどと、ウシ・ヒツジなど、
そしてヒトでは発生の様式からしてかなりの相違がありますし、発生
工学的な手法についても、適用が容易なものと困難ないし不可能なもの
が種によって異なることが知られています。

では、サルなどで実験すればよい、という意見もあるでしょうが、
実は、サルよりヒトでの方が、生殖医療の技術が圧倒的に進んでいる
というのが現状です。

ということで、もちろん、さまざまに批判されるべき点はあるとは
思いますが、それほどダメダメとまでは思えませんでした。

Id: #e20010528094842  (reply, thread)
Date: Mon May 28 09:48:42 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010527223334
URL: http://www2s.biglobe.ne.jp/~Uneyama/
Name: うねやま
Subject: ミトコンドリアだけではなくて
はじめまして、うねやまといいます。
発生は専門ではない生物屋です。

細胞質移植の話、ずっと気になってはいたのですが、瀬名さんもいらしたよ
うですのでささやかな疑問。

高校の生物の教科書レベルでは卵の細胞質の中にある種の因子の濃度勾配が
あって、それが形態形成を決定する、という類のことは教えていないんでし
たっけ?昆虫や両棲類では胚のあちこちを移植すると頭が二つできたり妙な
ところから足が出たりする個体ができますよね。ヒトでは多分その手の因子
の報告はないですけど(実験できないし、異常な胚は発生しないだろうか
ら)、でも卵子の細胞質をいじるっていうことは遺伝子の有無に関わりな
く、位置情報をかく乱するということで、それだけで相当な問題があると生
物屋としては思うのですが。
誰もそういうことを言わないので不思議だったのです。
どなたか詳しい方はいらっしゃらないでしょうか。

Id: #e20010527223334  (reply, thread)
Date: Sun May 27 22:33:34 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010527155106
Name: くろき げん
Subject: Web現代、文藝春秋、『持駒使用の謎』、『将棋の子』

瀬名さん、どうもありがとうございます。

Web現代』の人体改造の世紀「3人の遺伝子をもつ」遺伝子改変ベビーの衝撃!”は非常に参考になりました。

やっぱり動物実験で安全性を確認してなかったんですね。それじゃあ、遺伝子云々以前に非常識過ぎてお話にならないのだ (cf. 2頁目の下の方)。 4頁目では論文の信頼度にも疑問が呈されている。倫理的にもダメ、科学的にもダメ。

生物の仕組みの柔軟性の科学的面白さに関しては3頁目の話が非常に面白いですね。そこで桑山正成氏が説明していることを私は知りませんでした。

ミトコンドリア入門のためには瀬名さんと太田成男さんの共著の『ミトコンドリアと生きる』 (角川 one テーマ 21、 C-2、 2000.12) も非常に良い本だと思います。

『文藝春秋』2001年6月号も買いました。ついでに買って来たのが以下の本。どちらも将棋がらみの本です。

1. 木村義徳著、『持駒使用の謎――日本将棋の起源』、日本将棋連盟、 2001.3

木村義徳 (1935年生まれ) は将棋の故木村義雄十四世名人の三男で早稲田大学在学中に学生名人とアマ名人になり、大学院在学中に三段で故加藤治郎名誉九段に門下に入り、 1961年に四段 (すなわち将棋のプロ) になり、1980年にはA級八段までのぼりした。現在では棋士の現役を退いて、関西将棋会館の将棋博物館館長をしています。

この『持駒使用の謎』は『将棋世界』での連載がもとになっていて、現時点で使用できる様々な資料をもとに「将棋が現在の姿にどのように進化したか」について著者がどのように推測したかが書いてあります。

著者の棋士としての独自の視点が、実際に様々なルールで古代の将棋を指してみて、ゲームとしての欠点を見抜き、ルールの改良の必然性を確認し、ルールの淘汰圧がどのようなものであったかを推測している点によく表われており、その部分が非常に面白いのだ。 (実は『将棋世界』連載当時から注目していて、早く単行本にならないかと待っていた。)

この本は、将棋好きな人だけではなく、数百年から千年オーダーで「将棋」がどのように変化し、広まり、生き残って来たか、すなわち「どのように進化してきたか」という視点から多くの人が楽しめる本になっていると思います。歴史の研究者が将棋史がらみの貴重な情報を発見した場合には木村義徳氏に連絡を取ると面白いと思う。 (進化関係の入門書に関しては推奨文献のリストを見て下さい。)

2. 大崎善生著、『将棋の子』、講談社、 2001.5

大崎氏には『聖の青春』という著書もあって、そちらも一緒に買っておいた方が良いかも。これは傑作。『将棋の子』も暇がなくてまだ全部読んでないのですが、こちらも極めてテンションが高く、傑作間違いなしです。

大崎氏と言えば、一緒に買って来た『文藝春秋』2001年6月号に「「将棋はゲーム」と言い切る革命児」というタイトルで羽生善治について書いてますね。古臭くない現代的な超一流の勝負師について知りたければ読んでおいて損がないかも。 (あと、現代的な勝負師像に関しては、島朗著『純粋なるもの――トップ棋士、その戦いと素顔』 (新潮文庫、解説は河出書房新社版の頁を見よ) も必読かも。「勝負師」という言葉の持つ泥臭いニュアンスはそろそろ変化した方が良いような感じがします。勝つために合理的に真理を追及し、時代に適合したスマートでかつ独自のイメージを打ち出しながら、圧倒的な実力を見せつける。)

P.S. 『文藝春秋』2001年6月号には中西準子の「ダイオキシン「煽情的極論」を排す――冷静さを失うと別のリスクを見逃す」も掲載されてますね。中西準子のウェブサイトを見ている方であれば皆知っている情報と見方が書いてあるようです。中西準子に対する批判を見付けたら私に教えてくれると嬉しいです。


Id: #e20010527155106  (reply, thread)
Date: Sun May 27 15:51:06 2001
Name: 瀬名秀明
Subject: 澤口氏、ミトコンドリア

黒木さん、お久しぶりです。

澤口氏についてですが、今月の「文藝春秋」誌(2001年6月号)に、野村進氏による「脳ブームと脳科学」という批判エッセイが掲載されています。このエッセイの前に掲載されているのが澤口氏のエッセイ「バドーリオの館で勲章を」。

(掲示板2の話題)ミトコンドリアが混ざった「遺伝子組み換えベイビー」については、Web現代の森健氏の記事(5月23日掲載)に詳細がレポートされました。私のコメントも(大した発言ではありませんが)掲載されています。この他、新聞媒体でも今後特集記事が載るようで、私が協力したものもあります。

突然で恐縮ですが、以上、取り急ぎ御報告まで。
Id: #e20010515155147  (reply, thread)
Date: Tue May 15 15:51:47 2001
Name: ブタネコ
Subject: Andrzej Kozlowski

Mathematicaユーザー会月例会案内  参加自由
Andrzej Kozlowski  http://platon.c.u-tokyo.ac.jp/andrzej/
日時:5月25日(金曜日)18:00-20:00
場所:住友エレクトロニクス(飯田橋駅すぐそば)1階セミナールーム
http://www.sse.co.jp/profile/map_iida.html
Id: #e20010513055641  (reply, thread)
Date: Sun May 13 05:56:41 2001
URL: kenmogi@csl.sony.co.jp
Name: 茂木健一郎
Subject: In a nutshell
黒木さん、レスありがとうございます。



要約すれば、

1、澤口さんの教育、倫理に関する発言は、現時点での脳科学のevidenceに
基づいたものとはいえない。

2、むしろ、澤口さん自身の人間観、世界観に基づく発言と考えた方が良
い。

3、従って、澤口さんの主張を巡る議論は、あくまでも人間観、世界観とい
う思想のレベルにおいて行われるべきであって、脳科学の問題として議論で
きる性格のものではない。

4、もし、澤口さんが、実際には自分の個人的な人間観、世界観に基づく発
言を、脳科学のsupportがあるかのように見せかけているとすれば、その点
は批判されるべきである。


ということになります。


さて、構造主義生物学についてですが、私は実は「よくわからない」とい
うのが正直なところです。何が主張されているのか、私にはすぐには明白
ではありません。科学的仮説として、白黒をつけられるような形では主張
されていないという印象があります。

郡司さんについてですが、彼の直感は、人間の認知過程におけるある種の
要素(たとえば、二つのものの間の選択で迷っていた時に、突然第三の選
択肢が現れるといった現象)に関しては非常に鋭いものがある。しかし、
必ずしも、経験主義的科学の領域に直接適用できるたぐいの直感ではな
い。私から見ると、彼は、あまりにも自分にとって切実な問題意識にとら
われているために、いわゆる認識論と実在論のレベルを混同しているかの
ように見える時が時々あります。このあたりが、黒木さんが批判される理
由でしょう。
しかし、人間の認知過程に対する郡司さんの直感自体は、かなり
nontrivial
なものだと思っている。郡
司さんには、ひょっとすると認識論vs実在論というカテゴリー分けを
ぶちこわすようなポテンシャルを感じる。もちろん、結局ダメな可能性
もあるが、それは今後を待つしかない。

私は、ある人たちと同じシンポジウムに出たり、同じ本の中で原稿を書
くこと自体が、その人たちをsupportしていることを意味するとは思いま
せん。私が責任を持てるのは、私の原稿、および私の発言だけです。
「養老シンポ」においても、私は自分の良心に照らして恥じないこと
だけを書き、言っているつもりです。自分の発言、文章自体に関する
批判は、喜んでお受けします。少なくとも、構造主義生物学や郡司さ
んの立場に迎合しているということはなく、判らないことは判らない、
同意できないことは同意できないと言っているつもりです。



Id: #e20010512203220  (reply, thread)
Date: Sat May 12 20:32:20 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010512103853
Name: くろき げん
Subject: このあたりの動向について

森山さんの日記 (5/10) からリンクされた以後、「誰の「脳」が狂っているのか?」にはすでに数百人 (そっくりなドメインからの複数回のアクセスは一人とみなした) がアクセスしています。

5/9 には松元健二さんの日記からリンクが張られてました。

そして、 5/12 の今日には茂木さんと。

本当は「誰の「脳」が狂っているのか?」にたどり着く前に自主的に行動を起こして欲しかったと思っているのですが、ポジティヴな方向に影響があったのは良かったと思っています。ネット内だけではなく、雑誌記事や講演などで澤口氏を名指しで批判できるかどうかをじっくり観察して行きたいと思っています。

茂木さんの「感想」を読んでみたのですが、脳科学者という社会的地位を利用して、古臭くて偏った人間観に基いた個人的な意見 (「昨今の若者たちの脳は機能障害に陥っている」「戸塚ヨットスクールに学べ」などなど) にあたかも科学的根拠があるかのように触れ回っていることに対する直接的な批判が含まれてない点が残念だと思いました。

ちなみに「教育の基礎となる"科学的精神論"」を提唱している戸塚ヨットスクールの過去のNEWSのその他には

●『教育崩壊の原因は脳の機能障害!』

     ――北大・澤口教授が主張――

「新潮45」1月号(12/19発売)に、澤口北大教授が「若者の"脳"は狂っている」という論文を掲載しました。澤口氏は、「平然と車内で化粧する脳 」(扶桑社)で、話題になった脳科学者です。
同論文では、昨今の若者達の奇怪な行動が、脳の機能障害で説明できると指摘。政府や文部省の教育改革案にも、こうした視点を盛り込まなければ根本的解決にならない、「戸塚ヨットスクールに学べ」と提言しています。('00.12.26)

とあります。要するに“脳科学”によって“御墨付”を与えてしまっているわけですね。こういう類の“御墨付”は「その逆の評価をする人も、世の中にはいる」「脳科学のデータに基づいて議論できる性格のものではない」で済ませて構わない問題ではありません。テレビや雑誌など各種メディアにおける同業者による名指しの批判が必要だと思う。例えば、戸塚ヨットスクール側が脳科学者の澤口俊之の言葉を信じたせいで恥かかされたと感じるようになることが望ましい。

(戸塚ヨットスクール以外の事例については冬眠日記の2001/01/09を見よ。)

私は、特にメディアへの露出度の高い脳科学関係者たちが自分達の仲間によるそういう類のトンデモを積極的に批判できない点を非難しています。実際にその科学者が有名だったり優秀だったりするほど悪影響がひどくなる可能性が高いので、そういうトンデモは特に非難する価値があると思う。

さらに、茂木さんの場合は、養老孟司などとともに、澤口氏とは別のトンデモな方の宣伝に協力してしまっている面もあることが非常に気になります。もしかしたら積極的に協力しているのではないかもしれませんが、そういう方面の方々とお仲間であることは確かなことだ。

例えば、「遺伝子オン」の村上和雄。「いのちのページ、いきいき新聞だい1ごう16ページ (99ねん3がつ31にち)」にある村上和雄の講演の記録の最後のページで村上和雄は次のように言っている:

……だから私は、天理教の教えを一言でいえば、良い遺伝子のスイッチを入れ、悪い遺伝子のスイッチを消すことではないかと思ってるんです。このことは時間の関係もあって十分説明出来ませんが、陽気ぐらしというのは、そういうことである。もちろん自分の陽気もあるけれども、周りの人、あるいは出来れば世界の人々ともに楽しんでイキイキするという、そうすると自分の遺伝子のスイッチもオンになる。たとえば、そうすることが親神様の望みであり、遺伝子の暗号を書いたのは神様、親神様であると思っているんです。私は、これが科学の世界と精神世界、私の信仰で言えばお道の世界ですが、そういう世界をつないでいく仲人の役をやりたいと思っています。そういうことで、?21?世紀は大変面白い時代になる。一つは、科学は間違いなく進むんですね、しかし、科学が人間のエゴだけに結びつきますと人類を滅ぼしかねない。精神世界とのバランスをとる必要が絶対にある。そういう点では、私は、21世紀は、親神様の出番であると思っています。どうも有難うございました。

同ページには『脳内革命』が肯定的な形で登場しているのですが、「サトルエネルギー学会21世紀の可能性 2000年12月15-17日」の講演者の中には船井幸雄の名前と共に村上和雄の名前があります。

そして、この村上和雄の宣伝協力の例としては、養老孟司、村上和雄、茂木健一郎、竹内薫著『脳・心・遺伝子VS.サムシンググレート ミニレアムサイエンス──人間とは何か』 (徳間書店) という本が出ているのだ。

他にも、悪名高い『平然と車内で化粧する脳』 (扶桑社、 2000.9) の共著者である澤口俊之と南伸坊の名前を検索すると養老シンポジウムのページが茂木さんのウェブサイトの中に見付かります (出席者に注目)。

以上の動向に対する危惧は、私だけではなく、江副さんも表明しています (4/16の発言の最後の段落)。 (ちなみに、江副さんが批判している「構造主義生物学」は茂木さんのお仲間の竹内薫がまとめた『筑波大学名誉教授村上和雄のナイトサイエンス教室1[生命の意味]』 (これも徳間書店なのだ) の中でも宣伝されてます。)

私や江副さんの危惧が一つの大きな流れになると良いなと個人的には思ってます。直接的もしくは間接的に協力してくれる方がいれば嬉しく思います。


Id: #e20010512144834  (reply, thread)
Date: Sat May 12 14:48:34 2001
Name: ときた
Subject: 数列も蜘蛛の巣で

下に書いた
『数列も蜘蛛の巣で』
ですが、最近流行りのグラフ電卓にもインプリメントされてるみたい
http://www.naoco.com/calc/ti-83plus-bidspec.htm
まあ、方眼紙で手作業のが愉しいし、漸化式が分数関数で、交点がルート2で、連分数と絡めたりするには、数式処理のがいいけど。
y'=k y
をまずベクトル場を眺めてみるとか、存在と一意性の前に、それを実感する段階が高校ではスポッと抜けちゃっていますよね。

Id: #e20010512120942  (reply, thread)
Date: Sat May 12 12:09:42 2001
Name: ときた
Subject: 存在と一意性

漸化式(差分方程式)と微分方程式は一体にして知識を整理しておきたい。
y'=k y
の解なら、C exp(k x) が天から下ってきて、z(x)が解なら、z(x)* exp(-k x) を微分して0で定数であることから、z(x)もexp(k x)の定数倍と小利口に立ち回れる。
b(n)もa(n)と同じ漸化式をみたせば、b(n)-a(n)が、恒等的に0というのは、ウザクテ高踏的でないが、差分方程式の線形性の強調ではある。
y'=ky+p を (y+p/k)'=k( (y+p/k) とy'=k yの型にreductするのは、a(n)=r a(n-1)+dタイプより簡単だし、数Iの完全平方より易しい。
それでいて、コンデンサーの充放電の式であったり。
まあ、数列も蜘蛛の巣で経済数学の教科書風に教えれば教育的だが。
Id: #e20010512103853  (reply, thread)
Date: Sat May 12 10:38:53 2001
URL: kenmogi@csl.sony.co.jp
Name: 茂木健一郎
Subject: 脳科学と教育、社会問題
 以前、ここに書かせていただいたことがあるような気がします。
 SONY CSLで脳科学をやっている茂木ともうします。

 黒木玄さんが、澤口俊之さんの最近の言論について批判されている
webpage

http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/Tmp/sawaguchi.html

を拝見して、私の対応も批判されていたので、
下のような短文を書きました。
 澤口さんの最近の言動に関する私の感想は、ほとんど下に尽きます。
 
 この掲示板がふさわしいのかどうかわかりませんが、とりあえず
投稿させていただきます。


脳科学の測り間違い


 脳科学が対象としているのは、それぞれが数千のシナプスで結ばれた、
千億のニューロンからなる複雑なシステムである。
 しかも、この複雑なシステムは、常に外界と相互作用している。
 
 科学は、システムの属性を、ある視点から切って、そこに法則性を
見いだすという形で進んできた。この方法論を脳科学に当てはめる
こと自体は問題がない(というか、それ以外の方法は今のところない)。
 しかし、その結果だけに基づいて、脳、人間について単純な
「割り切り」をすることは多くの場合間違った結論を導く。

 電気生理学は、単純化されたタスク遂行時のニューロン活動を計測
する。しかし、現実の脳は、変化する外界と相互作用しつつ、常に
コンテクストを切り替えつつ機能しているのであって、単純な
タスク遂行時の結果が、ただちに生の脳のふるまいに外挿できるという
保証はない。

 脳科学に基づいて、教育や社会の問題について明確にいえることは、
現時点ではほとんどない。
 だから、脳科学者が教育問題や社会問題について発言する時は、
脳科学のデータ
に基づいて発言しているのではなく、その人の人間観、世界観に基づいて
発言しているのだと考えた方が良い。もちろん、普段、その人の脳が
脳科学者としての仕事に使われているという事実、その過程で脳に
ついて様々な知見を得ているという事実は、その人の人間観、世界観
に影響を与えているだろう。しかし、脳科学者の教育、社会問題に
関する発言が、脳科学のデータによって裏付けられたものである
と考えない方がいい。

 澤口氏の教育問題、社会問題に対する発言は、脳科学に基づく
科学的発言と考えるよりは、澤口氏自身の人間観、世界観に基づく
ものだと考えるべきだろう。

 それから先は、個々人の判断である。
 私自身は、電車の中で化粧をしてもいいと思うし、戸塚ヨットスクールは
理不尽な暴力だと思うが、その逆の評価をする人も、世の中にはいる。
 これは、個性の問題であって、脳科学のデータに基づいて議論できる
性格のものではない。


Id: #e20010511203155  (reply, thread)
Date: Fri May 11 20:31:55 2001
Name: ときた
Subject: 存在と一意性

存在と一意性をペアで高校生に教える、いい素材って何だろう。
ラングの微積のおまけのベクトルに、射影の存在と一意性がきちんと書いてある。もっともベクトル初心者にここまでちゃんとという気になったり。
関数が与えられたら、偶関数と奇関数の和になるなんてのも、数学系に行く人には教育的だが、一般向けにはドラマ性がないような。
なにか、いいの、ないかな??
Id: #e20010510233007  (reply, thread)
Date: Thu May 10 23:30:07 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010510133607
Name: 長谷川進
Subject: 感謝!

御返事いただきありがとうございました。>黒木さん、こなみさん。
ボクもこの“天下り式答案”は正解だと思っていたのですが、立て続けに「減点する」という講師・教師に遭遇したので、チョット自信が揺らいでしまったのでした。

ボクは生徒が大学に合格してくれるなら自分の節を曲げるのもOKなので、自分の常識を点検したかったのです。黒木さんにもこなみさんにも「正解」と言っていただいて、「オレの常識もまだまだ信頼できるな」と安心しました。まだまだ今の商売でやっていけそうです。ヨカッタァ。

-------------
何故このような事をお聞きしたか、説明します。

ウチの予備校のA講師が授業で「与えられた漸化式からa(n)を推測しそれを漸化式に代入すると成立するから出来たという答案は、ダメだ」と言ったらしく、しかもそれ以上の詳しい説明はしなかったそうで、それに疑問を持った生徒がボクに質問してきたのです。(ボクのサイトの掲示板でのことです)

A講師の言わんとする答案はおそらくボクがお見せしたような“天下り式答案”だと思って、掲示板でやりとりしていたら、ボクの知り合いの高校の先生や予備校の講師が「減点する」と言いだしたのです。この二人とも優秀な人ですし、A講師もボクなんかよりベテランなので、「オレがおかしいのか???」と不安になったのでした。

下の“天下り式答案”自体はボクが作ったものですが、こういう答案は模試ではたくさん出てきます(もっといい加減な形で書いてあることが多い)。それをペケにする採点者もいるので、「何故ペケなんですか」という受験者のクレーム処理をボクがする機会がしばしばあります。具体的には、「ごめんなさい。正しいです」と書き添えて答案の点数を直すだけですけど。

--------------
こなみさん>この答案は減点!ということを言っているセンセイというのは,どういう根拠なんでしょうか?

そういう答案を作る子は、会って話を聞くと学力の低い子が多いので、もう少し勉強して欲しいという気持ちが「減点する」になってしまうのかもしれません。採点はあくまで答案に書いてあることの正否を問うのですから、書いてあることが正しければ正解にすべきなのは当然ですね。(自信回復)

こなみさん>長谷川さん自身が「高校の教科書にあるような解答ではないので望ましくない」と留保条件をつけておられるのにも,私はまったく納得がいきません。

日和りかけて心にも無いことを書きました。普段の授業では「教科書の範囲の知識で解けるかどうかに配慮するのは、出題者の責任。君たちは正しいことは何でも使え」と言ってるのですから、「高校の教科書にあるような解答ではないので望ましくない」なんて全然思ってませんでした。喜んで全面撤回します。

2,3人の講師に自分と違う考えを言われたぐらいで動揺するんじゃ、「自立した精神」に程遠いですね。

Id: #e20010510133607  (reply, thread)
Date: Thu May 10 13:36:07 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010510024235
Name: こなみ
Subject: 完璧な答案だと思いますが

 この答案は減点!ということを言っているセンセイというのは,どういう根拠なんでしょうか?
あと,長谷川さん自身が「高校の教科書にあるような解答ではないので望ましくない」と留保条件をつけておられるのにも, 私はまったく納得がいきません。学習態度が従順でないとか?大学入試の問題を解くのにどんなレベルの知識を使おうと, 論理的に正しければ問題ないというのが,私が予備校で教えていたときの基本的な態度でした。 そういう自立した精神をもった子供こそ大学は欲しいのだと思いますがね。
Id: #e20010510054402  (reply, thread)
Date: Thu May 10 05:44:02 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010510024235
Name: くろき げん
Subject: 解の式を天下りに与えること

「☆と◎を満たす数列は一意である」ということさえ押さえておけば、解の数列の一般項の式を天下りに与える議論は論理的に厳密です。論理的には一般項の式をどうやって求めたかを書かなくても間違いにはなりません。 (おそらく、長谷川さんは暗にこう言っているんだと思う。私も同感。)

やったことがないので、入試問題なんかで採点するときにどういう基準で行なうのか私は知りませんが、個人的には何も問題ないと思う。

実際、数学の論文ではいきなり答が天下り的に与えられていることが多いのだ。「X の満たす条件(*)の解は一意的であるから、とにかくどんな方法でも構わないから、条件(*)を満たすものを見付けてしまえば、 X がそれに等しいことがわかる」というのが基本原理。

入試の採点ではなく、その人の数学的実力を見たい場合は解答の中で天下りに与えた式をどうやって見付けたかを質問したくなるのは確かなことだよな。

実際にそういう解答を書いた奴がいたんですか? 3, 7, 15, 31, ... と順に数字を計算してみれば、 4-1, 8-1, 16-1, 32-1, .... となっていることは一目瞭然なので、きっと答は 2n+1 - 1 だろうと推測したんですかね?

正しく答を推測しただけではなく (それだけで数学的能力を発揮していることになる)、実際に条件を地道にチェックしているのであれば相当に立派なもので、いちゃもんをつける筋合は全然ないと思う。


Id: #e20010510024533  (reply, thread)
Date: Thu May 10 02:45:33 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010510024235
Name: 長谷川進
Subject: 訂正

>数列の一般項a(n)の一般項を求めよ。
 
「数列の一般項a(n)を求めよ。」です。スミマセン。
Id: #e20010510024235  (reply, thread)
Date: Thu May 10 02:42:35 2001
Name: 長谷川進
Subject: これで満点?減点?

予備校の生徒に質問を受けた事に関して、みなさんのご意見を伺いたいと思って来ました。
 
数列の第n項を a(n) と表すとき、
「a(1)=3     ・・・☆
 a(n+1)=2a(n)+1 ・・・◎
をみたす数列の一般項a(n)の一般項を求めよ」

という問題に対して次のような解答があったら、正解か否かどのように判断されるでしょうか?
 
「b(n)=2^(n+1) −1 (n=1、2,・・・)
とすると、
 b(1)=2^2-1
     =3
     =a(1)

 b(n+1)=2^(n+2)−1
    =2{2^(n+1)−1}+1
    =2b(n)+1
よってb(n)は◎を満たす。

よって、a(n)=b(n)=2^(n+1)−1  (答)」

ボクは、高校の教科書にあるような解答ではないので望ましくはないけど、これでも満点と思うのです。しかし、減点するという知り合いが複数現れて驚きました。

この解答は間違ってますか? 解答のどこかに「☆と◎を満たす数列は一意である」と書いた場合はどうでしょうか? 是非是非、教えてください。

#聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。

Id: #e20010429122139  (reply, thread)
Date: Sun Apr 29 12:21:39 2001
Name: ブタネコ
Subject: 世界大百科

理科教育MLで、左巻教授が板倉さんが理科教育と科学教育の両項目を書いているって勧めてるけど、CDがMacじゃ使えないんだな。
それで、まだ、35年前の24巻セットを使ってる。
その中でシブイのが、『数論』の項目。
シュバレーの書き下ろしで、彌永訳。
Id: #e20010423021435  (reply, thread)
Date: Mon Apr 23 02:14:35 2001
Name: 崎山伸夫
Subject: Academia e-Network ってどういうscopeのものなんだろう?

別のとこでみかけた Academia e-Network(仮称)設立準備会 の「呼びかけ人」として黒木さんのお名前を発見。 ここで想定している活動のscopeというのはどういったものなんだろう (「主旨」だけだとかなり漠然としているので)。

個人的には「経済活動の下に制度的に位置付け」られた「知的活動」で 飯を食ってる状況があってそれはそれで満足いかない点もいろいろあるわけですが、 ただ私が強く感じる意味での「知の共同体」の無さ、というのは ここの会が想定しているscopeを想像するに、 それだけでは解消されるかどうかよくわからないというか... (会の主旨を否定しているわけじゃないです)。


Id: #e20010419122055  (reply, thread)
Date: Thu Apr 19 12:20:55 2001
Name: おおまめうだ
Subject: 如何にして彼は構造主義生物学者となりにし乎

講談社選書メチエ『学問はおもしろい』の池田氏の文章が 彼の思考のバックグラウンドの参考になるかも
Id: #e20010417011301  (reply, thread)
Date: Tue Apr 17 01:13:01 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010416195054
Name: くろき げん
Subject: 「このあたりの動向」について

江副さん曰く、

でも今西も(柴谷も?)古い世代の話なので、どちらかといえば私としてはこのあたりの動向が若い世代にどういう影響を及ぼすのかということに関心が。

時間がないので詳しく説明できないのですが、江副さんに私も同感です。次の世代にどのような悪影響を及ぼすのか……。


Id: #e20010417000325  (reply, thread)
Date: Tue Apr 17 00:03:25 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010416195054
Name: 江副日出夫
Subject: 下の記事の訂正

すみません、

「私にとって科学とは何か」の書評:
http://www.hi-ho.ne.jp/tadaoki/tadaoki/dokusho/1.htm
「今西進化論批判試論」の書評:
http://www.hi-ho.ne.jp/tadaoki/tadaoki/dokusho/3.htm
さらにそれらを踏まえた「進化論も進化する」の書評:
http://www.hi-ho.ne.jp/tadaoki/tadaoki/dokusho/4.htm

です。
Id: #e20010416195054  (reply, thread)
Date: Mon Apr 16 19:50:54 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010414170912
Name: 江副
Subject: 今西進化論と構造主義生物学の関わり

ころっと忘れてたのですが、柴谷篤弘には「今西進化論批判試論」(朝日出版社エピステーメー叢書,1981年)という著作があったのでした。
http://www.hi-ho.ne.jp/tadaoki/tadaoki/dokusho/4.htm に「私にとって科学とは何か」(朝日新聞社叢書,1982年)と合わせた書評があります。
また、 前出羽瀬香氏のページでも、今西&柴谷の対談「進化論も進化する」(リブロポート,1984年)の書評が読めます:
http://www.ipe.tsukuba.ac.jp/~s965525/book2.html#7

5年くらい前でしたか、human ML(人間の進化的理解ML)で柴谷氏が「ダーウィニズムが主流なのは、権力にとって都合がいい説だから」と主張していました。構造主義生物学が受け入れられないのは権力の陰謀らしい。
「では今西進化論も昔は権力にとって都合がよかったんですね?それで、いったいいつから今西進化論は権力にとって都合が悪くなったんですか?」と突っ込んでみたら、「いや今西は最初から反主流で・・・」なんていう回答が返ってきて、呆れてしまったことでしたよ。

でも今西も(柴谷も?)古い世代の話なので、どちらかといえば私としてはこのあたりの動向が若い世代にどういう影響を及ぼすのかということに関心が。


Id: #e20010415133250  (reply, thread)
Date: Sun Apr 15 13:32:50 2001
Name: ブタネコ
Subject: 武蔵野書房

小平市水本町に長くあって、いまは国分寺市本多に移った武蔵野書房という小さな出版社がある。本多秋五はここが好きで、何冊かを出版している。
武蔵野の地域史に強い出版社で、一橋大の国立市コーナーなどにもここの本が。
中西準子が『境川流域下水道計画に反対する意見書』をここから出版したのは、1973年のこと。
ちなみに境川は、両国橋が武蔵と下総の両国に架かるように、鎌倉郡と大住郡の境をなした。
境川が2級河川だったお蔭で、中西のまともな主張は、藤沢と町田の革新市政に採用された。
それ以来四半世紀、建設省のやってきたことは、境川モデルが全国に広がるのを妨害すること。
武蔵野書房はまた、1980年に次の本を出版した。
山下 弘文著『干潟を守る----有明海・諫早湾』
Id: #e20010415113437  (reply, thread)
Date: Sun Apr 15 11:34:37 2001
Name: ブタネコ
Subject: 洪水で人が死ぬか?

インドの英字紙を読んでいると、時に洪水予報が出される。
4日後に**地方に洪水!
次の日の紙面は、3日後に洪水。人々は動かない。
前日に人々は、牛さんといっしょに悠然と退去、当日大平野一面は水におおわれる。
インド人は偉大だ。

洪水で人が死ぬとしたら、ダムが決壊するときだ。
ハノイ北西のボロダムを弾頭にソニーのテレヴィカメラを着けた大型爆弾で爆撃するほど、アメリカは悪人でなかった。
桂川の渓谷にそって(夏松本で会議があったら、急行アルプスで東京に戻ると、朝霧の渓谷風景を楽しめる)神戸のときのように、断層面が長くバリバリと割れていったら?
相模ダムは、東條に忠実な県の役人が朝鮮人労働者をこき使って作った、戦艦大和みたいなダムだから一撃で壊れるようなことはない。(むしろ適当に壊れて水抜きできればいいのだが、当時の役人は今の役人のように手抜きしなかった。)
ダム上流の斜面は、ゴルフ場はむろん、竹林や広葉樹林をスギ林にして、しかも枝打ちもせず、ほうりっぱなしのとこなど、崩れて沢山の天然のミニダムができる。このミニダムが将棋倒しになった時の水の運動量と相模ダムへの力積は計算されているけど、公表されていない。相模原、厚木はハノイだが、地震の鯰はアメリカ軍人のように良心的だろうか。
Id: #e20010415004618  (reply, thread)
Date: Sun Apr 15 00:46:18 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010414170912
Name: こなみ
Subject: そうでしたか

 くろきさん補足をどうも。なるほど,池田清彦は赤塚不二夫の手術に言及できるわけはなかったのですね。 もっとも,だからといってこの件に関する池田のアホ加減が減殺されるわけでもなくて, 味方だと思って勝手に懸想した相手がさっさと宗旨替えしてしまったという 大失敗は傍から見てて大いに笑える。それにしても,論評するにも値しないこういう のがのさばっているという状況は嫌なことです。前に紹介した金森修との対談本では, うやうやしく持ち上げてくれる後輩を前に,気持ちよく先輩風を吹かせているところが 結構笑えます。金森が「いや先生それは…」とかいうシーンでもあればまだしも, 二人でぜんぜん無関係の話しを交互にしながらも意気投合してしまうというしまりのない 流れなのだ。
Id: #e20010414170912  (reply, thread)
Date: Sat Apr 14 17:09:12 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010413225255
Name: くろき げん
Subject: 池田清彦の意味での「反証主義」

本論に入る前に、ここを読んだ方が誤解するといけないので、こなみさんに代わって補足修正しておきます。「近藤誠氏の本に寄せた池田清彦氏の解説」は1998年4月に書かれたもののようです。そして、そのファイルの Last-Modified は1999年1月9日になっている。一方、1999年4月20日のメルマガ「毎日の芸能ニュース」によれば、赤塚不二夫は1998年11月16日に極秘入院し、1998年12月以降3回の食道癌手術を受け、1999年4月18日に退院したようです。そして、紫綬褒章の受賞パーティーにも病院から参加し周囲に入院を隠し、体重が13キロ減ったものの、退院1ヵ月前から秘密で飲酒再開し、 1999年4月10日には花見をしているほど回復したのだそうだ。だから、池田が近藤の本に解説を書いたときに赤塚不二夫はまだ入院・手術・放射線療法をまだしてなかったし、そうするとも言ってなかったんじゃないかと思います。

まあ、そうだとしても、これは笑える話ですよね。特に1999年6月16日の徹子の部屋この写真。これを見ちゃうと、近藤の本を褒め讃えるために池田が赤塚不二夫の名前を出したのは完全に失敗だったことがわかります。要するに池田は全然先が読めてなかったわけですね。

池田清彦は「パラダイム」という用語を俗なやり方でデタラメな使い方をしているのですが、「反証主義」という用語についてものすごい誤用が指摘されているのでここで紹介しておきましょう。

小河原誠の「ポパー受容史に見られる歪みについて」 (『批判と挑戦』未來社、2000年、 17-77頁) の27-38頁に、科学哲学の基本的な事柄に関する池田清彦のトンデモない誤解に対する批判があります。なんと、池田は「反証」と「反証可能性」を区別せずに次のように述べているのだ:

しかし反証主義を厳密に適用すると、実際にはかなりめんどうなことが起こります。たとえば、ニュートン力学はすでに反証さています……しかし、ニュートン力学は迷信だったとして、学校で教えられなくなったという話は聞いたことがありません。ですから反証という操作により、科学と非科学を分けるのは、かなりあやしいぞと思った方がよいでしょう。

(池田清彦『構造主義科学論の冒険』講談社学術文庫 1332、1998年、37頁より)

池田はポパーを念頭に置いているのでしょうが、それが反証されているか否かで科学と非科学を区別しようとなどと提案した哲学者はいません。ポパーの原典を読まなくても、一般向けの科学哲学の解説を読めば、ポパーは、反証されたかどうかではなく、反証可能性が保証されているか否かで科学と非科学の間に境界線を引くことを提案したと書いてあるはずです。しかも、大抵の場合、相当に目立つように書いてある。上の引用文を読めば、池田の科学哲学への理解は一般向けの解説レベルにも達してないと疑わざるを得ません。よくもまあ、「科学論」の本を書いたものだ。

以上の指摘だけからでも、池田清彦の本を読んで科学哲学について何か知ったつもりになるのはおそろしく危険だということがわかります。 (科学哲学の教科書として、個人的には内井惣七の本がおすすめです (bk1)。)


Id: #e20010413225255  (reply, thread)
Date: Fri Apr 13 22:52:55 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010413161033
Name: こなみ
Subject: どうも最近ますます口汚いやつと思われているんだけど

大豆生田さん,江副さんどうもありがとうございます。 大豆生田さんご紹介のこれ
最近、ガンと診断された漫画家の赤塚不二夫氏が、「オレは忙がしいんだ。ガンなど治療しているヒマはない」と公言して話題を呼んだが、これなどは、ほんの数年前までは考えられなかったことであろ う。それは、本書の第2章でも述べられている、一九九三年の逸見政孝氏のガン告白会見と比較してみればわかる。赤塚氏が近藤誠氏の本を読んだかどうかは知らないが、ガンは手術をしない方がよ いかも知れないのだ、という時代の雰囲気を感じとっての発言であることは間違いあるまい。そして、この雰囲気を作ったのは、まぎれもなく近藤氏の功績である。
赤塚不二夫は食道ガンが見つかって,「ガンの手術なんか受けない!」と,勢いよくマスコミで宣言していたが, 実は周りに説得されて,その後ほどなく手術をして放射線治療も受けて無事退院したなんて 事情は,池田清彦先生のように俗っぽい世間をご存知ないかたには,伝わってないのだろうね。 (私は徹子の部屋を見たという かみさんから聞いた)
江副さんに教えていただいた池田氏の紹介で, キーワードが, 倫理 自由 構造 ってのはなんじゃらほい。倫理とか自由とか,生物学とどう関係するんだ?
Id: #e20010413204551  (reply, thread)
Date: Fri Apr 13 20:45:51 2001
Name: こなみ
Subject: 削除もれ

 例の扶桑社の歴史教科書の検定意見の書きこみの入ったコピーを入手しました。 膨大なので細かい分析はとうめんできそうにもありませんが, 中に傑作が残っていました。
原人の段階に属する人類は日本列島に存在しなかったと長い間,信じられていた。ところが 1993(平成5)年,宮城県築館町の高森遺跡から出土した45点の石器が,約50万年前のものであることが分かった。 その後,同町の上高森遺跡から,火に焼かれた跡をもつ石器や,明らかに人の手で並べられた見られる石器が見つかり, 約60万年前のものと判定された。原人がこの日本列島にも生存していたことは,これで確実となった。
で,こいつは削除されていません。楽しみですなあ。
ざっと眺めた印象では,この教科書原稿はいわゆる「突っ返すしかない論文」の類ですね。 部分的に修正して直すなんてできない学位論文などは,赤を入れることなどせずに 書きなおさせるしかない。だけどこの教科書については審査官が通す方針でチェックを入れていったのでしょう。 その結果がこれ。
理科のほうのコピーは手に入らないかなあ。
Id: #e20010413180719  (reply, thread)
Date: Fri Apr 13 18:07:19 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010413120658
Name: 江副
Subject: トンデモの系譜

しょせんトンデモっていうのは妄想の産物だし、妄想ってのは集団だろうが個人だろうが基本的に私的な体験で、外部とは相互理解不可能なものと思います。だから、ほぼ独立に発生したトンデモ同士が共闘できる点は反主流、つまり反ダーウィニズム以外にはないでしょう。
なので「ダーウィン憎し」って思ってない人が、池田清彦の「さよならダーウィニズム」を読んで、今西進化論とネオダーウィニズムの考え方が似ている、と勘違いすることがあってもおかしくない。池田清彦や柴谷篤弘がどう今西を擁護しようが(その歴史は、残念ながら私もよく知りません)、実は構造主義生物学と今西進化論は似てないってことがバレバレな話ですね。

山梨大学研究者総覧の池田清彦の記事を見ると、堅そうな仕事として「カミキリムシの記載分類、インドシナの昆虫相の調査」のようなこともやってるようです。どのくらい真剣にやってるのか知りませんが。
「興味のおもむくままに理科、文科横断的な研究を行っている」んだそうな。そうか〜本人は楽しいだろうなあ、私が学生だったら、こんな人から「進化生物学」なんて習いたかないけど(笑)

Id: #e20010413161033  (reply, thread)
Date: Fri Apr 13 16:10:33 2001
Name: おおまめうだ
Subject: 近藤誠&池田清彦

近藤誠氏の本に寄せた池田清彦氏の解説にあるパラダイム論 (の池田流解釈) はこなみさんの疑問への言い訳っぽい。
Id: #e20010413120658  (reply, thread)
Date: Fri Apr 13 12:06:58 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010413021731
Name: くろき げん
Subject: 「今西進化論」を検索すると

「系譜」というのはもちろん科学の学説としての系譜という意味ではありません。今西進化論は科学ではないでしょう。「系譜」と言ったのは通俗書の世界で著者や読者たちがどういう繋がりをイメージしているかという話です。

「今西進化論」を検索すると、先に紹介したページ以外にも、ものすごい勘違いが書いてあるページが見付かります。例えば、池田清彦の本を読んで「一番印象に残ったのは、今西進化論とネオダーウィニズムの類似点」 (*) という感想を持った方がいます。

あと、「その後、様々な人々(特に若手の生態学者)が今西進化論を批判し、その実状が世間に公けにされ、逆にそれに刺激された構造主義生物学者が今西理論を擁護するような動きも見られました」 (**) と書いてあるページもあります。そういう歴史はどこで読めるのでしょうか? (『生物科学』のバックナンバーは面白そうですね。)


Id: #e20010413095015  (reply, thread)
Date: Fri Apr 13 09:50:15 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010413021731
Name: こなみ
Subject: 池田清彦

昨日,「遺伝子改造社会 あなたはどうする」(池田清彦,金森修,洋泉社)という 新刊の新書本を本屋で見て,どれどれと買ってしまいました。買っても 何かの知的獲物が見つかるわけないことは分っていたのだけど,やっぱり。 著者たちのダメさを確認するだけために買ったことになってしまいました。
ところで,池田清彦というのは,「生物学者」なのでしょうか?少なくとも 自然科学者としての生物学者であるようには,私には見えません。自分の実験や 研究から得られた結果について,彼が言及しているものが見当たらないのです。 「これは私の仮説ですが…」というのはよくあるんだけど, 仮説なんて誰でも出せる。科学的方法ってのは, 仮説を実証的に検証することであって,思い付きを言いふらすことじゃないやね。
もちろん私は池田に生物学的な意味のある研究論文があったとしても, それを目にする場所にいないわけですから,行くとこに行けば何かあるのかも しれない。ひょっとしたら,構造主義生物学というのは自然科学としての生物学じゃなくて, 素人に思いつきを売るために名刺に刷り込んだ肩書きであるというオチかも しれませんが。
Id: #e20010413021731  (reply, thread)
Date: Fri Apr 13 02:17:31 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010412225739
Name: 江副日出夫
Subject: 敵の敵は味方

現象としてはともかく、学説上の系譜として見た場合は、「構造主義進化論は今西進化論の系譜」というのは正しい見方ではないでしょう。今なお一般社会では権威を持ってるらしい今西を構造主義生物学者(というより池田清彦)が権威づけに借りてきてるだけだと思います。
ちなみに、今西はウイルス進化論の中原・佐川によっても持ち上げられてます。

このページの作者の書きかたでは、たしかに「構造主義進化論は今西進化論の系譜」のように受け取っても仕方ないと思いますが、よく読むと実はこの人にも、双方の相違点はわかっても一致点はわからないようで、「この方向(引用者註:DNAに構造を見る方向)と、生物の精神性への探求方向は、一致するものと思われる」と、無茶なコメントでまとめてしまってます。
要するに科学思想もどきとしても「ダーウィン憎し」という以外の接点はないってことなんでしょう。

私も、今西や構造主義進化論にはあんまり詳しくないし、学説的にはどこがどう対応してるのか、いまひとつわかりませんが(というか、どっちの学説も肝心なところで曖昧だから・・・)、今西進化論では個体を超えた「種社会」が変わるのが進化だけど、構造主義生物学者の言ってる「構造」とは、どうやら個体を超えるものでは無さそうです。だから矛盾は明らか。
(しかし構造主義生物学者は構造とは具体的に何かという説明はしてないから、「種社会も構造だ」といいだす可能性は残ってると思う)

しかしこのページの作者、筑波大農林学系の羽瀬香枕氏(鎌倉御家人の子孫か?)とやらの机の上には、The Cell(正式名"Molecular Biology of the Cell"、訳書「細胞の分子生物学」だが、学部生は原著読まないだろうなあ)が乗ってるそうですが、セントラルドグマを理解してる人間がこういうトップダウンな図でよく納得できるもんです。
(言っときますがこれは系統樹じゃありません。念のため)


Id: #e20010412225739  (reply, thread)
Date: Thu Apr 12 22:57:39 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010412160404
Name: くろき げん
Subject: まとめ

もろしげきさんは、デタラメな議論の仕方をした上で自分自身の非を十分認めずに議論をおりてしまったわけです。はまださんが何度も繰り返し指摘しているように、子どもと教科書全国ネット21のウェブサイトをよく読んで、デタラメな揚げ足取りではなく、建設的な意見を述べるようにした方が良かったと思います。

参考ページのまとめ

ちなみに、教科書採択問題についてのQ&Aには「より良い教科書を採択するため」には「保護者や子どもの意見を反映させるシステムをつくる」努力が必要だと書いてあります。教師を教科書採択に関与させるだけで十分だと主張しているわけではありません。

まあ、これから「つくる会」の教科書がどれだけ採択されてしまうかを見れば、日本の各地方の教科書採択システムがどういうレベルなのかが明らかになるでしょう。

そうそう「ダーウィンの進化論は,神話否定のプロパガンダ」と書いてある申請資料の全文を引き続き募集します。誰かがネットに転載してくれることを希望します。

追加情報:「ある研究室の様変わり」「構造主義進化論は今西進化論の系譜


Id: #e20010412160404  (reply, thread)
Date: Thu Apr 12 16:04:04 2001
Name: はまだ
Subject: しつこいぞ
なるほど、4日間もかかって、
自分の最初の投稿は、「Q&Aが『教師の権利だけ』を語ってるのは不十分だ」に変
わったわけですね。そうすると、「知識不足」「表現不足」などではなく、

>つくる会(とそれへの反発運動)については、ある種の思想論争、宗教論争の
>ケーススタディみたいなものとして、ついつい研究対象的に見てしまいます。
>(中略)
>その他にもいくつか、論理的におかしいようなところが見受けられます。
>反対側の主張もこのような感じだとすれば(つくる会の主張同様に)説得力がない
>ように思われます。

などと書かれている最初の投稿をすべて撤回することになるんじゃないですか。

そもそも、あのQ&Aは馬鹿な連中が「教師には採択権が無い」と言ってる事に対し
て書かれた文書である、と分かってますか?

それはそうと、「教育権と採択権についての思考実験」とやらは、
採択の決定プロセスに関して、何か良いimplicationをもたらしてくれるんでしょうか、
さらに、あのQ&Aを、より良いものに書き直してくれるんでしょうか。
例えば、97年3月の閣議決定その他の政府関係資料なんかを、分析の対象として扱う
ことができるのでしょうか。

Id: #e20010412051855  (reply, thread)
Date: Thu Apr 12 05:18:55 2001
In-Reply-To: e0009.html#e20010412050414
Name: 崎山伸夫
Subject: 不公正さについての補足

実際にその教科書を使うことになる「生徒・児童やその保護者」が 採択に(深く)かかわれないという、「いますぐ解決できない問題点」をもって 現場教師が採択にかかわるのを批判するという不公正さと対応して、 「つくる会」のいう「保護者」「有識者」「地域社会」等の採択への「参加」が 「まやかし」である、ということをそのような「参加」がどう実装されるか、 ということを考えることなしに見過ごしているというのも、 もちろん不公正です。

ついでに字句訂正。最後のパラグラフの前半の「歴史の見方を含める」は 「歴史の見方を深める」です。


Id: #e20010412050414  (reply, thread)
Date: Thu Apr 12 05:04:14 2001
In-Reply-To: e0008.html#e20010412035052
Name: 崎山伸夫
Subject: long term の問題と short term の問題を混ぜる誤り

はまださんが追及している 最初の投稿のどこが問題か、 という話。

この投稿の問題は、short term の問題と long term の問題を 混ぜていることにあります(意図的かそうでないかの判断は保留します)。 そもそも現状の「歴史」に関する指導要領が適切なのか、 現状の教科書検定制度がいいのか、採択制度の現状が最良なのか、 という議論はもちろん可能なわけです。 例えば、古代から現代に至るまでを「日本国の」通史としてとらえる、というのは 指導要領がそうなってるし、結局のところどの教科書でもそうなるわけだけど、 (例えば)網野善彦氏の研究と啓蒙で、 そのような見方自体がかなり相対化されてきているという状況をみれば、 結局その対立自体が「国民国家」的なイデオロギーにのっかった上での争いでしかない、 という見方は、たしかにできるわけですね。 そして、教科書検定のありかた自体が、「国家が正しい歴史を認定する」ことを通じて そのようなイデオロギーを強化している、という批判もできます。 例えば、『「歴史教科書」論争を縛る国家幻想』)(苅谷剛彦、「中央公論」5月号)は そういうスタンスです。もろさんの最初の投稿にみられる、 「生徒・児童やその保護者なんかには選択権がないことも「きわめて当然」なんですかね」 というフレーズも、「採択制度の現状が最良なのか」という疑問、という形をとっているわけです。

が、ここで問題なのは、ごく直近の問題です。 教科書は従来からある教科書会社のもの+扶桑社教科書しかないから その範囲で選ぶしかないわけだし、 最終的な採択が教育委員会の単位から学校(や、それ以下の単位)に降りてきていない以上、 実際にその教科書を使うことになる「生徒・児童やその保護者」 (決して、保護者代表を僭称する町ボスではないことに注意)が 採択に加わるということは現実として困難なわけです。 そういう状況で、「どちらが相対的に正しいの」 「どちらが相対的に児童・生徒のためになるの」 という観点で、「つくる会」と「子どもと教科書全国ネット21」の主張を 比較するべきでしょう。 この比較では、「いますぐ解決できない問題点」を持ち出して、 現場教師が採択にかかわるのを批判するのは、公正ではないですね。 しかし、「もろ」さんはそれを(「最初の投稿」以外でも)やっています。

以下、念のための補足。苅谷氏論文では、「複数の教科書による授業」をすすめています。 たしかに複数の教科書を使うのは、歴史の見方を含めるのには「一般論」としては有効でしょう。 でも、扶桑社教科書と他社の教科書、というのは不適切。 そもそも苅谷氏は国民国家的通史に立脚している点で両者を同じ土俵にいるとしているわけで、 それなら比較のためには他国の教科書の翻訳のほうがより適切なはず。 さらに、伝習館訴訟の判決のために「教科書の批判的読み」ということ自体が 現場主導ではリスクが高くなっている、ということを考えると、 結局のところ扶桑社教科書と「他社教科書」の複合は 「両者の中間的立場」には開かれていても 「国民国家通史を越えたところへの相対化」には開かれないわけで、 扶桑社と「つくる会」を利するだけの結果になるんじゃなかろうか、と思ってます (要は苅谷氏論文の全てに賛同してるとは思わないでね、ということなんですが)。


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