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黒木のなんでも掲示板2 (0046)

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Id: #b20020602013440  (reply, thread)
Date: Sun Jun 02 01:34:40 2002
Name: いなば
Subject: 斎藤誠『先を見よ、今を生きよ 市場と政策の経済学』(日本評論社)

を読んでちょっと頭を抱えています。こっちの不勉強もあるのだが、しかしこれでいいのか。
以前経セミ連載中に黒木さんが文句をつけていたが、今回読んでみると明確にこの人は、今の日本の失業は主に有効需要不足ではなく構造的なものだ、と前提しているのだ。つまり現時点での不況はケインズ的なものではない、というわけ。そしてその根拠は大竹文雄による実証なのだ。
ちょっと大竹の議論も読まないといかん。
Id: #b20020601000810  (reply, thread)
Date: Sat Jun 01 00:08:10 2002
Name: 岡田靖
Subject: デフレの恐怖
報告遅れました。黒木さんがアップして下さった小生の文章は、以前にここで
やった議論への、出し遅れの答案みたいなものです。ひめたにしさん他の皆さん
ヒントをどうも有り難うございました。

Id: #b20020531233715  (reply, thread)
Date: Fri May 31 23:37:15 2002
Name: くろき げん
Subject: 岡田靖「デフレ期待の打破はなぜ必要か?」

岡田靖、「デフレ期待の打破はなぜ必要か?――デフレのミクロ的利益とマクロ的帰結――」 (2002年05月29日)

自分でやらずに他人にやってもらうとありがたいことをお互いにどんどんやってもらえば結果的に皆の生活の満足度が以前より高まるはずなのですが、そういう有益な形でおカネが使われずにおカネ自身の価値だけがどんどん高くなって行くのがデフレの恐怖。


Id: #b20020531163402  (reply, thread)
Date: Fri May 31 16:34:02 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020531102029
Name: かも ひろやす
Subject: 無念なこと

まもなく、起きると予想されているのに、おそらく見ずに死んでしまうであろうことがくやしくてならないことが、私には二つあって、地磁気逆転はその一つです。なぜ人の寿命はこんなにも短かいのだろう。
Id: #b20020531102029  (reply, thread)
Date: Fri May 31 10:20:29 2002
Name: 居酒屋のおやじ
Subject: じゃ、読みます
そのジュニア新書、面白そうですね。読んでみますので、責任もってくださいよ>ぶたねこさん。

Id: #b20020530214212  (reply, thread)
Date: Thu May 30 21:42:12 2002
Name: ぶたねこ
Subject: 千年先の心配?

今月のジュニア新書『地磁気逆転X年』は結構面白かった。
Id: #b20020529194503  (reply, thread)
Date: Wed May 29 19:45:03 2002
Name: くろき げん
Subject: 稲葉振一郎「地図と磁石」第4回

「地図と磁石」第4回が公開されてますね。ついに準備の段階が終わりつつある気配が出て来て面白くなってきました。まとめ読みし易いように以下にリンクをまとめておきます。

稲葉振一郎の「地図と磁石 ──不完全教養マニュアル」 (Alt Biz)

なお、第4回では説明抜きに使われている「ニューケインジアン I, II, III」という用語の定義は第3回にあり、(表2)にまとめがあります。分類の仕方に異論のある人がいるかもしれませんが、その分類の仕方をおぼえておかないとその先を読めなくなるのだ。

第4回の続きが楽しみです。続きを読むまでコメントし難い構成になっている。おあずけを食わされているという感じ。


Id: #b20020526004114  (reply, thread)
Date: Sun May 26 00:41:14 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020523022605
Name: くろき げん
Subject: スティグリッツ曰く「痛みに耐えても状況はよくならない」

ジョセフ・E・スティグリッツ著、『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』 (鈴木主税訳、徳間書店、 2002.5) を読み終わりました。これもまた必読の本かもしれない。資料として、マッキラン&モントゴメリー編『IMF――改廃論争の論点』 (東洋経済新報社)、大野泉著『世界銀行――開発援助戦略の変革』 (NTT出版) を手もとに置きながら読みました。

ネット上で予習したければ以下を見ておくと良いと思う:

以下は『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』の178-181頁にある「痛みに耐えても状況はよくならない」という節の最後の3段落からの引用です。ただし、その一部をあえて伏せ字にしてあります:

 ○○○の誤りの厄介なところは、それがいつまでも尾を引きそうだということである。○○○は、経済に必要なのはよい下剤だとでも思っているような言い方をしばしばする。痛みを引き受けなさい。痛みが深ければ深いほど、その後の成長は強力になります。○○○の理論では、国が将来のことを長期的に――たとえば二〇年後のことを――考えるなら、ここでぐっと我慢して深刻な下降局面を受け入れなければならない。いまの人びとは苦しむだろうが、少なくとも子供の世代が成長することには豊かになる。

 残念ながら、証拠は○○○の理論を裏づけてはいない。深刻な景気後退を経た経済は、回復期に急速に成長するかもしれないが、失われた時間の埋め合わせは決してできないのだ。今日の景気後退が深刻であればあるほど、二〇年後の収入はそれだけ低くなる。○○○が言っているような豊かな将来など訪れないのだ。

 景気後退の影響はいつまでも尾をひく。ここに重要な意味がある。今日の景気後退が深刻であればあるほど、今日の生産高だけではなく、おそらく将来の生産高も低くなる。ある意味では、これは吉報かもしれない。今日の経済を健全にする最高の薬と、将来の経済を健全にする最高の薬が同じでいいわけだから。つまり経済政策は、どんな場合にも経済下降の深刻さと持続期間を最小限にすることを目標にすればよいのだ。残念ながら、これは○○○が目指したことでも果たしたことでもなかった。

(スティグリッツ『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』180-181頁より、伏せ字は引用者による)

あえて伏せ字にしたのはこの引用を日本の現状に関する記述であると誤解してもらえることを期待しているからです。もちろん伏せ字の部分は実際には「IMF」となっています。

現在の日本における最悪の経済論は「痛みを引き受けなさい。痛みが深ければ深いほど、その後の成長は強力になります」という考え方です。日本の某首相が "No pain, no gain!" と叫んで人気を得ていたのはつい最近のことなのだ。その某首相の人気はもうがたおちのようですが、「痛みに耐えれば状況は良くなる」という考え方の人気はまだ高いままのように見える。

スティグリッツの本は、かなり押さえぎみではありますが、読者サービスになるような笑える話がたくさん紹介されており、退屈せずに最後まで読めました。たとえば、

 LTCM【引用者註:超有名なヘッジファンド】の破綻で驚かされたのは、破綻それ自体ではなく、かなり上級の者を含むIMFの一部の官僚がLTCMの破綻によって損害をこうむったという事実のほうだった。自分たちの計画が有効だと、彼らは本気で信じていたのである。

(スティグリッツ『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』218頁より)

IMFは自分達がやっていることを本気で正しいと思っていたふしが見られるんだよね。実際には危機に陥った国に無謀な政策を無理強いして次々に失敗した。そのせいで経済的にどん底まで叩き落とされた人々が数千万人単位でいたことを思えば、IMFのメンバーの一部が投資に失敗して損害をこうむったことは全然大したことではない。


Id: #b20020525185326  (reply, thread)
Date: Sat May 25 18:53:26 2002
Name: ひめたにし
Subject: 年齢階層別人口比推計から目標インフレ率を設定する方式
 山形さん初めまして。「クルーグマン教授の経済入門」買わせていただきまし
た。面白く読んでます。

 この頃、一ヶ月前に書いたことを発展させて考えています。
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/b0045.html#b20020425163614

 インフレ目標率を年齢別人口比から決めてはどうか、という発想です。
 まず、目標設定の考え方と計算方法は、簡単に言うと、日本の人口が
 現在:現役世代8000万人・老人2000万人 (老人は65歳以上)
 20年後:現役世代7000万人・老人3500万人 
 という比率になっていることから、日本の労働力の価格は20年後には2倍にな
るだろう、それがある時点で一気に起こるのは困るから、20年かけて均等に上昇
させよう、ということです。直近の国勢調査のデータから正確に計算すると、一
年分の上昇率は3.04%になります。
 この数字は5年ごとの国勢調査のデータによって変化させます。ただし、計算
上はゼロやマイナスのインフレ率とすべき状態となった場合も、1%より低い値
にはしないと決めておきます。
 この方式には、5つの効果が期待されます。

1.国民に明確な目標を示せる
 日本人は、具体的な目標が与えられると俄然実力を発揮する性質があります。
今の社会の仕組み(65歳以上は就労が非常に難しい)のまま時間が経てば、国民
の生活の質は3%ずつ低くなっていってしまいます。人口比からインフレ目標値
を決めると、まずはこのマイナス分を、非常にわかりやすい形でみんなが実感で
きるようになります。
 一方、生産年齢人口減少による生活の質の低下は、社会の仕組みや生産性を変
化させていくことによって補うことができます。そのプラス分は、すべて「所得
の上昇」として国民に返って来ます。つまり、インフレ率を生産年齢人口減少に
リンクさせることは、日本の抱える困難さと国民がそれを克服した成果を、物価
上昇と所得上昇という目に見えやすいものに、くっきりと分けて表す仕組みです。
「物価が上昇するのは必然だが、がんばれば所得も上昇して生活の質は低下しな
い」という明確な目標を示すことができます。

2.労働力の価格を供給量に応じて設定することで、全体として利用効率を上げる
 たとえば、あるビルを建て替えたいと考えている事業者は、建築費が3%ずつ
上昇するという前提で建て替え時期を決めることになります。日本中のすべての
企業や個人がこういう前提で行動すれば、労働力は最大限効率よく利用されるの
ではないでしょうか。

3.世代間の公平を図れる。
 出生率が上向けばインフレ目標値は低めに、出生率が低下すれば高めに設定さ
れることになりますから、個人にとっては、子供を産む数が少ない世代ほど、老
後は貯金が目減りし自助努力を求められる見通しになります。また、インフレで
国債を目減りさせるにしてもどの程度の割合にするかは世代間の利害が対立する
問題ですが、それを裁量の入らない基準で調整することができます。(利子の方
は国民のがんばり具合=所得で決まるので、文句が出ない。そもそも、インフレ
率分は国債買い切りするので、元本が減る。)

4.景気対策的な金融政策と整合性がある。
 企業にとっては、将来の人口予想が上向きなら投資意欲が湧きますが金融は引
き締め方向、人口予想が下向きなら投資意欲は冷えますが金融は緩和方向、とい
う具合に、景気対策と整合的です。 

5.目標値設定を客観的基準で行える。
 貨幣の中立性がどうのと言っても、現状のデフレからインフレ宣言する際には、
目標値は非常に大きな利害対立を生みます。従って、さじ加減の入らないものを
基準に決定することで、幅広い理解を得ることができるのでは。

 などと、つらつら考えています。おかしいでしょうか?

Id: #b20020523191517  (reply, thread)
Date: Thu May 23 19:15:17 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020522150112
Name: やまがた
Subject: 消費税を引き上げろ!

自慢ではあるけれど、スティグリッツの言っている「消費税を一時的に下げて、後で上げると脅かして消費をうながせ」という議論は、まさにぼくが「スーパーアクロバチック不景気脱出策」で述べた、「2年後に消費税を7%にすると脅かして消費を喚起せよ」という議論と同じなのです。わはははは。(減税がある分、スティグリッツのほうが徹底してるとはいえるかな)


Id: #b20020523182541  (reply, thread)
Date: Thu May 23 18:25:41 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020521102752
Name: やまがた
Subject: スティグリッツ@週刊現代 and アカロフの最適インフレ率論

「週刊現代」2002/6/1号のスティグリッツインタビュー(pp.50-53) を読んだ。

 基本は、日経のインタビューと同じ。「消費税を下げろ!」というのは、このインタビューの見出しとして不適切なことはなはだしい。インフレ目標を導入しろ、そのために為替レートを切り下げろ、消費を喚起するために一時的に消費税引き下げをしろ(二年後に戻すと宣言して)、という話。そしてあとはグローバリズムに関する話。アメリカ式だけがグローバリゼーション実現方法じゃないよ、ということ。

 なお、文中で触れられている「最適なインフレ率がある」というアカロフの論文も見た。いつものアカロフらしい、なかなかおもしろい論文。要するに、みんなが端数を切り捨てるから、ゴリゴリの合理性で決まるのとはちがう行動が見られる、という話。インフレがあんまり低いと、みんなインフレは除外してものを考えるようになる、というのが出発点(これは確かにその通り。変数増やすと面倒だもん)。でも、実際にはインフレがちょっと起きている。すると、将来の値つけや賃金要求のとき、そのインフレ分が考慮されないので、常にゴリゴリの合理性から決まる水準より低めの価格や賃金が実現される。価格が下がればもちろんアウトプットは増えて、それは雇用を増やす(かれの言う「最適なインフレ率」というのは、雇用を最大にするインフレ率ってこと)。アメリカの場合、これは2.7%くらい、だって。これをやると、インフレ率ゼロの場合の比べて、失業は1.7パーセントポイント下がる、そうな。ふーん。

 もちろんインフレ率がゼロだと、端数切り捨てが起きないのでこれが効かないし、インフレが高くなると、みんなそれをちゃんと計算に入れるようになるから、ゴリゴリ合理性にずっと近い水準になっちゃうのだ。


Id: #b20020523022605  (reply, thread)
Date: Thu May 23 02:26:05 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020521102752
Name: やまがた
Subject: シンクロスティグリッツ

シンクロニシティというやつか、もう一つスティグリッツねた。

スティグリッツ『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(徳間書店)が出ました。アメリカ財務省とIMFが、硬直した方針を途上国に無理に押しつけてまわったために、多くの場合には途上国の問題が解決するどころかさらに悪化し、このために各種グローバリズムの問題と称されるものが出てきたのだ、と指摘する良書です。翻訳も鈴木主税で文句なし。なお、本書の要約が読みたければ、世界経済危機でわたしが学んだことを読むと論点が一通り出てきます(悪口はこっちのほうがすごい。が、悪玉は本のほが増えている)。

唯一の欠点が、クーの解説になってない解説。スティグリッツの発言をつまみぐいして「おれも同じことを言ってた」と自慢に終始。説明できないんなら、こんな仕事引き受けるな! いますぐ逝ってよし。


Id: #b20020522150112  (reply, thread)
Date: Wed May 22 15:01:12 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020521102752
Name: やまがた
Subject: スティグリッツEconomics 3rd Edition

スティグリッツ(&ウォルシュ)「Economics(入門経済学)」第三版届く。で、速報。

……うーん。なんかえらく軽薄になったような。日本についてのつっこんだ話は全然なし。(下の予想は大外れ)。それだけならまだしも、全編、「e-Insights」とか「e-Cases」とかでITの話がやたらに散りばめられていて、面食らう。それもかなり浅はかとしか思えないものばかり。「ウェブができて、求人をウェブ上でやる企業が増えた。これで探索コストが削減され、労働市場の大幅な効率化が期待される」なんてまじめに書いてある。おーい、これ、ホントにスティグリッツなの? さらに「森林が酸性雨によって破壊されているのは明らか」なんていうキャプションのついた写真とか。これなら、前のやつのほうがいいんじゃないかなあ。

プラス側で言えば、インフレの部分が拡充されてるというのが期待なのと、あと途上国関連の話題が充実しているのはいいかも。でも、とりあえず第二版をいまのうちに買っておくのだ。(つづく、かも)


Id: #b20020521102752  (reply, thread)
Date: Tue May 21 10:27:52 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020521044525
Name: やまがた
Subject: スティグリッツ

なんか週刊現代の吊り広告に、スティグリッツがインタビューで消費税を 3%に下げろと主張していると書いてあって、共産党みたいだなあと思って 今日チェックする予定でしたが、そういう話か。よかった。黒木さん毎度ありがとうございます。(現代のほうも一応見てみよう)

かれの「Economics」の第三版が出たばかりで、日本のネタをどう扱っている か楽しみ(第二版の日本語訳でも記述が足されていたし、必ず相当量の記述が あるはず)。

でもかれはノーベル賞をとって以来、訳書の前渡し金がすごくつりあげられて 邦訳書がとっても出しづらくなってしまったとか。


Id: #b20020521050758  (reply, thread)
Date: Tue May 21 05:07:58 2002
Name: くろき げん
Subject: 「複雑系」という言葉の悪用の一例

何でも「複雑系」だとか「カオスの理論」とか言えば何も予測できないことになってしまうと考えている人がいる:

野口旭は非常に良いことを言っていると思うのですが、それに対する出沢の発言があまりにもトホホなのだ。たしかに経済はものすごく複雑な系であり、その詳細を予測することは全く不可能でしょう。しかし、少数の数値に射影して観察するとかなり安定してある種の法則が成立している場合がある。そのような法則は複雑過ぎる現実に立ち向かうための貴重な足場になるのだ。

たとえば、経済成長率と失業率の変化 (すなわち実質GDPの時間微分と失業率の時間微分) のあいだには傾きが負の直線でよく近似できる関係がかなり安定して成立しています。この法則は「オーカンの法則」と呼ばれており、標準的なマクロ経済学の教科書には必ず書いてあって、潜在経済成長率やGDPギャップの推定などに用いられています。 (例:クルーグマンによる日本のオークンの法則を用いた議論。)

個人的には野口旭による出沢批判は手ぬる過ぎると思いました。出沢は「複雑系」だとか「カオスの理論」という言葉を理解もせずに使っているわけですよね。あと、それ以前の問題として、「複雑系」という言葉はあまり科学的な言葉ではなく、ある種の人たちが非科学的な理由で流行させた言葉であることも理解しておかなければいけない。


Id: #b20020521044525  (reply, thread)
Date: Tue May 21 04:45:25 2002
Name: くろき げん
Subject: スティグリッツによる日本経済再生の処方箋

スティグリッツによる日本経済再生の処方箋。日経新聞2002年5月9日朝刊の経済教室「日本経済再生の処方せん――ノーベル賞経済学賞スティグリッツ氏に聞く」の一部を抜粋して簡単なコメントを付けておきました。


Id: #b20020515223921  (reply, thread)
Date: Wed May 15 22:39:21 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020514152935
Name: まきの

インテルですら、というか、インテルは x86 系以外のほとんどあらゆるもので失敗してますから。そういう意味では TRON CPU が失敗だったからといってもプロジェクト全体の評価にはあまり関係ないと思います(御愛敬と書いたのはどちらかといえばそういうつもりです。あれ、「愛嬌」かな)。

8の字が最近どうなってるかは知りません。やはりもうちょっと別な安定解が見つかってくれないとこれ以上発展しなさそうな気がします。見つかった周期解のうち8の字だけが安定なのは不思議ですよね。


Id: #b20020514152935  (reply, thread)
Date: Tue May 14 15:29:35 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020512103953
Name: かも ひろやす (がんばれ、SH4)
Subject: TRON chip

まあ、ナショナルセミコンダクタのNS32032もザイログのZ8000もNECのV70も消えていったし、インテルですらi432で商業的には失敗しているのだから、TRON chip が突出して失敗しているのではないということで。
Id: #b20020513094553  (reply, thread)
Date: Mon May 13 09:45:53 2002
Name: 居酒屋のおやじ
Subject: 連合講演録
「厨房」で賄い中の居酒屋のおやじです。 藁←あ、また使った。

さて忘れかけていた連合総研での講演録がHP上で閲覧可能になりましたので
ちょこっと宣伝させてください。

http://www.rengo-soken.or.jp/dio/no160/ridazusemina.htm

ではまた

Id: #b20020512121534  (reply, thread)
Date: Sun May 12 12:15:34 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020512103953
Name: ときた
Subject: トロン 8の字

『まあ御愛敬』ってのは、精神的にはかなりキビシイ評価ですね。産業的には愛がある?
ところで、8の字3体問題はその後どうなっているのでしょうか。http://math.ucr.edu/home/baez/week181.htmlからリンクしてあるBill Casselman  http://www.ams.org/new-in-math/cover/orbits1.html には数学の未解決問題がまとめてあるけど。
Id: #b20020512103953  (reply, thread)
Date: Sun May 12 10:39:53 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020511125840
Name: まきの
Subject: TRON

トロン・プロジェクトといってもその成果は多岐にわたるわけですが、組み込 みシステムが主なターゲットである OS の ITRON については国内ではかなり 広く使われているようです。(参考:トロン協会による アンケート調査。まあ、サンプルにバイアスはあるかも)i-mode 端末にも 使われているとのことなので、日本では実はもっとも出荷台数の多い OS かも。

政治絡みでこけたといわれているのは BTRON ですね。CTRON はそれなりに使 われているようです。トロン用プロセッサははっきり失敗だったと思いますが、 あれはまあ御愛敬ということで。


Id: #b20020511125840  (reply, thread)
Date: Sat May 11 12:58:40 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020511012036
Name: ときた
Subject: Σプロジェクト

典型的な日本というか、町内会のgerontocracy
みずほ もこんな具合だったのかなあ?みずほ に限らず銀行はシステム投資が不足してて、為替の手数料など被害は消費者に。
コンピュータや通信の金物屋が防衛関係や郵政にたかるとき、通産よりももっとあまい蜜が。ソフトもおそまつで、孫受けはオウムとか。

話しが少しずれたら申しわけないけど、トロンってあったけど、あれはどう評価すべきなのですか??僕には全然わからないけど、良いものだったけど、米の意を受けた逆産業政策で見捨てたって話しも聴いたけど。
まあ、国家の金でじみな研究者がじみで立派な研究をすることもマレにはあって、戦前の米の品種改良の陸羽132号なんか、日本の人口を随分増やしたのでは。

新プロジェクトは1勝9敗でも、敗けからの撤退が早く、反省をしっかりして、1勝がヒットなら「それでいいさ」とも思うが、Σプロジェクトは、ここまで日本的な負けは老野口じゃないけど陸軍と同じで文化として記念するしか。たかりむしりのさもしい品性下劣はあっても、遊び心が全然ない。遊びこころがIT消費に自然に結びつくのに、ヒノキミ教育委員会に情報教育も総合教育もできないのと同じ。
それで、 国立情報学研究所ってのが、どーんとできたけど、どうなんだろう?都心の情報研究所で、大学院を兼ね、少しは外国にも開かれたのが、20年遅れで作られたんだけど、そして型理論の龍田さんとか人も少しは集めてるんだけど、マルセイユやエジンバラに比べて、ネクタイが取れないというか、遊び心があるのかしら??
Id: #b20020511012036  (reply, thread)
Date: Sat May 11 01:20:36 2002
Name: くろき げん
Subject: 通産省Σプロジェクト

言い忘れていたことを思い出しました。少し前に「産業政策」についてちょっと話題になりましたが、私が「やってはいけない産業政策」の具体例として思い浮かべていたのは通産省Σプロジェクトです。笑える話として非常に優れているので再度紹介。

気楽にストレス解消のために時間を潰したいなら、「プロジェクト ×(ペケ)」の「Σ(シグマ)計画」を最初に読むと良いと思う。通産省の役人が岸田孝一氏という極めて適切な人物に相談を持ちかけるところまでは通産省もなかなかやるもんだと思うのですが、そこから先の展開は日本のコンピューター産業の足を徹底的に引っぱっただけ。 250億円の予算が無駄になった程度の害は実は大したことがないと思う。足を引っぱることによって生じた本当の被害は間違いなく莫大であり、そちらの方が大問題なのだ。「Σを使わず、他の普通のコンピュータを使えば、100倍早くなる。」「地方だ。地方なら、Σはまだ売れる。」 (^_^;)


Id: #b20020510195225  (reply, thread)
Date: Fri May 10 19:52:25 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020510194653
Name: ひめたにし
Subject: おさかな経済の寓話
 子守協同組合の世界は消費のみを語るため、投資には必ずリスクがあって「元
本保証」があり得ないことや、不況が恐慌に至る危険性を持つことを表現できま
せん。そこで私は、子供にもわかるモデルとして「おさかな経済」を提唱します。

おさかな経済の寓話(1)投資に元本保証は無い編

 孤島で一人の人が生活していました。この人は海で魚を手づかみでつかまえて、
やっと生きていました。一日中漁をしても、つかまえられる魚は一日の食料分し
かありません。
 こんな生活はいやだ、と考えた彼が、島にある木や草で網を作ることにしまし
た。そのために、おなかがすくのを我慢して魚を少しずつ節約して干物にしてお
き(貯蓄)、ある日、漁をせずに一日がかりで網を作りました。その日は干物の
魚を食べました。この網を使うことによって、翌日からは二日分の食料になる魚
が一日で獲れるようになり、その余裕分で、彼は住宅建設したり生活を楽しむこ
とができましたとさ。
 ・・・でもこれはラッキーなお話。別の島で暮らしていた人の場合は、労力を
掛けたにもかかわらずお粗末な網しかできず、結局骨折り損のくたびれ儲け。役
に立たない網を捨てて、手づかみの漁を続けましたとさ。

[教訓]
 投資に元本保証はありません。従って、「投資する人は損をする可能性がある
けれど、全体としては投資しない人よりも有利」という経済状態にしておかない
と、誰も投資しなくなります。


おさかな経済の寓話(2)恐慌はこうして起こる編

 さて、もう少し進んだ経済を考えてみましょう。
 孤島に10人が暮らしていました。彼らは、かなり安定した経済を築いていま
した。つまり、1人がたいへん網を作るのが上手く、この人は網作りに専念して
いるのでした。他の9人は、網作り人から網を借りて漁をし、網の借料として1
日当たり1匹の魚を支払うのでした。網を使った漁でたいがい一日に10匹程度
の魚が獲れましたし、一人が一日に食べる魚はほぼ9匹程度でしたから、この経
済はたいへんうまく行っていました。付け加えれば、網作り人が網を製作するペ
ースも、貸し出している網が傷んで補修・新品製作が必要になる度合いとほぼ見
合っていました。
 ところが、おさかな経済に、信じられないことが起こりました。豊漁の時など
に蓄えてきた干物の魚が、だんだん価値が上がっていくのです。というのは、特
殊な発酵によって、魚を置いておくと非常に風味とコクが増し、この魚を食べれ
ば生の魚の倍くらいの満腹感があるとわかったのです。通常一日に9匹は食べな
ければひもじいのに、この発酵魚なら5匹で満足できるのでした。
 こうなると人々は、様々な危険がある海に出て漁をする頻度を減らすようにな
りました。網の使用料として魚を支払うより、その魚を蓄えておいて発酵させる
方が安全確実ではないかと考えたのです。しかも、漁に出なければあまりおなか
が空かないので、発酵魚を3匹食べるだけで一日を過ごせるのでした。
 網作り人はそんな事情は知らず、なんだか最近網を貸し出す頻度が減ったなと
思いながらも、たまたま漁を休みたい人が増えたのかなくらいに考え(景気循
環)、網を作り続けました。けれども、9人のうち6人とか4人しか網を借りに
来ない日があまりに長く続いたため、とうとう栄養失調で死んでしまいました。
たくさんの新品の網(過剰な設備投資)に埋もれるようにして・・・
 この後、残った9人がパニックに陥ったことは言うまでもありません。発酵し
た魚はそのうち食べ尽くされましたし、亡くなった網作り人ほど上手に網を作れ
る人はいなかったからです。
 果たしておさかな経済は、生産力を回復できたでしょうか・・・

[教訓]
 保存しておいた魚は、カビが生えて価値が下がるくらいの方がいいんですね。
価値が上がっていくのは良いことみたいに見えますが、思わぬ落とし穴がありま
した。この島の人たちがすべきだったのは、例えば網の性能を向上させてよりた
くさんの魚を獲れるようにすること(構造改革)ではなく、網作り人に適正量の
魚(利益)がまわるように工夫することだったんですね。いったん生産の仕組み
が打撃を受けると、もとの状態に戻すのは難しいのです。ほんと、この後、どう
なったんでしょうね。

Id: #b20020510194653  (reply, thread)
Date: Fri May 10 19:46:53 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020509225933
Name: ひめたにし
Subject: 子守協同組合の話に惑わされた私
 相変わらずよそでゴキブリ活動継続中です。
 最近、そもそも「消費不況」という捉え方がおかしく、「投資不況」ではない
かと考えるようになりました。「企業の設備投資は上向いたが、個人消費が冷え
込んだまま」といった経済分析が多いため、すっかり消費不況とばかり思い込ん
でいましたが、黒木さんが何度も引用しているこのグラフを読む限りでは
http://www.boj.or.jp/wakaru/keiki/wsj.htm#chart3
 貯金を増やしているのは企業部門であって、家計ではありません。個人の消費
は、バブル崩壊後ずっと住宅建設が好調だったこと、また、失業を警戒する人は
確かに貯金を増やすでしょうが、実際に失業したら貯金を取り崩さざるを得ない
ことを考えると、家計の消費性向は全体としてはそんなに下がっていないのでは
ないでしょうか。どうして「消費不況」という言葉が定着してしまったのか、知
ってる方はどうか教えてください。それとも、やっぱり「消費不況」で正しいの
でしょうか。(投資が減った分、消費を増やさなければならないのに、思うよう
に増えない・・・といったところのような気が。)

 それで、今ごろ若田部さんの書かれていた内容を理解したのですが
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/b0042.html#b20020407162851

 クルーグマンは「日本の技術革新がアメリカに追いついたから、真似するだけ
で高い投資効率が得られるような時代は終わりましたよ」「それでも人口が増加
していく社会なら、それなりの投資効率が期待できるでしょうが、人口が減少し
ていく社会では無理でしょ」と言っているわけですね。
 子守協同組合の話はわかりやすいのですが、比喩によくあるように、その枠内
に思考が閉じこめられてストップしてしまいます。要するに、消費の話だけで、
投資の話が無いのです。

 そこで、過去の私の主張ですが
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/b0040.html#b20020402043813

 経済の現状を「構造変化→消費性向の低下→より強いインフレ政策が必要にな
ったが実行されていない→デフレ不況の悪化」
と説明していましたが、下記のように変更します。
「構造変化→投資しても儲かりにくくなった→しかもデフレ→投資にまわるお金
が極端に減った→さらなるデフレ不況の悪化」
 結論「投資したい人が十分に増えるまで、インフレ率を高くしましょう」
 インフレ反対の人には、「それならあなた、現在の物価上昇率で投資する気に
なりますか?今や、誰でも株主になれる時代ですよ。さあ、どうぞどうぞ」とお
勧めする。

 どうでしょう?約100字で結論まで説明できてしまいます(?)

Id: #b20020510123440  (reply, thread)
Date: Fri May 10 12:34:40 2002
Name: ブタネコ
Subject: 減った消費の中味 ヤナーチェクカルテット

遠い将来のことを心配できるのは、一部のゆとりのある人で、そういう人達の消費の変化はマクロな数字には影響しないでしょう。
猫缶の鮪はマクロ経済でも、津軽海峡のトロはマグロ経済。
それでも、文化的な消費が異常な落ち込みなのは、地域で室内楽を聴く会などを組織してると、ヒシヒシと実感できます。
数学書を買うことにしても、 ブルノから藤沢にまで来てくれるカルテットを聴くことにしても、それほどの散財ではないし、貨幣平蔵より、楽しい時間を送った方がいいのに。
体制過剰適応型(小心すぎ)の人格が、必要以上の不安を抱き(ガタガタする 日本が悪くなっても世界はよくなるさと開き直れない)、そのことが身のまわりにあるよいものをなくしていってしまう(地方では演奏会は実現できなくなったり)。そうすると、殺伐とした生活にますます焦りを感じるガタガタスパイラル。


高校生の進路選択でも、資格という宗教に捕われ、法学部と医学部だけ偏差値があがり、基礎学力は崩壊してくなんてのも、おなじ病だと思う。
Id: #b20020509225933  (reply, thread)
Date: Thu May 09 22:59:33 2002
Name: くろき げん
Subject: 消費低迷の原因は財政赤字や人口構成高齢化か?

しばらく前から一部で流行中なのが「非ケインズ効果」もしくは「逆ケインズ効果」という言葉。消費低迷の原因は日本政府が莫大な財政赤字を抱えていることだという説が宣伝されている。近い将来莫大な増税と社会保障負担増があることを心配して、みな消費をおさえているのだそうだ。

あと、同時に流行しているのが、消費低迷の原因が将来の人口構成高齢化問題への不安であるという説。その説によれば、自分が老人になる将来への不安に備えて、みな消費をおさえて貯蓄に励んでいるのだそうだ。

しかし、これらの説はものすごく疑わしい。目の前の失業・リストラ・倒産への恐怖や不況の継続によって収入が減ってしまう不安よりも、財政赤字やら何十年も先のことを心配して、みな消費をおさえているというのは本当だろうか?

おそらくそのような説が流行しているのは、財務省およびその協力者たちが、日本政府のバランスシートなどと言いながら、不況を耐えるための財政赤字の膨張と将来の人口構成の高齢化による負担増をごちゃ混ぜにして、あたかも日本の財政が破綻しているかのような宣伝を繰り返しているからだ。 (嗤えるのは、その財務省がついに格付け会社による日本国債の格下げに反論し始めたこと。)

そのような宣伝によって「財政再建の優先こそ正しい政策だ」という印象を広めることができる。とにかく中身以前の問題として財政の規模を徹底的に縮小するのが正しい政策であるという印象を広めることができる。

宣伝の効果は不安を煽れば煽るほど高くなるだろう。しかし、そのような宣伝は皆の不安を増大し、みなの“熱い正義感”を刺戟して理性的な議論を圧迫することになる。百害あって一利無し。へたをすれば上のような説の宣伝自体がその説を自己実現してしまうかもしれない。

いずれにせよ、我々は将来の負担を軽くするためにも、デフレを終了させ、 3%程度はあると推測される潜在的経済成長率をできるだけ早く実現しなければいけない。財政再建と不良債権処理を優先し、デフレ脱出を後回しにするのは無謀な試みだ。デフレを終了させない限り、財政再建は不可能だし、不良債権の自己増植は止まらないだろう。

P.S. 他の国で「非ケインズ効果」が見掛け上起こっているように見えたとしても、財政赤字→クラウディングアウト→金利とインフレ率の上昇→経済情勢悪化→消費減退という経路で消費が縮小したのであれば将来増税するだろうという予想が消費縮小の原因ではないということになる。クラウディングアウトによる金利とインフレ率の上昇が問題になっているのであれば財政再建は正しい政策だということになる。しかし、日本で起こっていることはその逆のデフレの進行である。


Id: #b20020509122919  (reply, thread)
Date: Thu May 09 12:29:19 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020509031604
Name: ときた
Subject: 日本の「左」の反主知主義

社共に票と雑誌代を捨てているブタネコさんは、各級議員を捕まえてよく雑談しますが、マクロ経済を話題にすると座がしらけちゃう。
高校の数学の先生と数学の話しをすると座がしらけちゃうのと奇妙に似ている。
ヨーロッパだったら、ブランシャールがジョスパンの相談相手とか、オランダの左翼だったら、金融政策が欧州中銀で財政政策が各小国のとき、インフレターゲットの幅は?という問題について偏微分を使ったレポートを議員が読みこなしている。あとマクロの話しが通じるのは英国風紳士のマレーシアの藩王のジュニアだったり。そういうのに対抗して、ぶきみな顔のオヤジだが江沢民もマクロを猛勉してるとか?
ブタペストのカフェで原産国産のルービックキューブをやっていると、子供はオジサンの無能を笑うが、話しかけてきた中学の数学教師は群論の基礎はちゃんとわかっている。

ウォーラーステインはブロデールの流れで、少なくともブロデールは文明論としては面白いのでは?
『高み に立って』、僕ちゃん『左』の『知識人』だからお利口ってナルシシズムしてたら、いつのまにか反マクロ数犬教師になってたら、知の欺瞞だけど、海面よりちょっと高いというかジェノアとか函館とか港町のレストランで船を見ながら読むにはイイ本。
ブロデールのアジア版をねらっている川勝も結構面白いし、あえて分類すれば右の方かな?


「資本主義システム」から「資本家の利潤」の圧縮の部分だけを取り出して「資本主義世界経済の構造的危機」などと騒ぐことに意味があるんですかね?
あるという理由は、在庫が片付いても投資が回復しない(たかつかさん指摘の研究を含む投資の巨額化と商品サイクルの短縮も重要)点。アジアでのバブルも生産施設より不動産などへの投資が引き金だった。
ないという理由は、それほど豊かな社会なのだから、サービスを盛んにして文明を享受すればいい。郁郁乎として文なる哉と呼ばれるように。(川勝はロンドンの地下鉄の駅でバイオリンを引いて小銭を稼いだり、教育テレビを和服のファッションショーにしている。)現実には、イジケ恐慌で、文明的なサービス産業が一番凹んでいる。
イジケからの心理的回復に、部屋をティッシュペーパーで飾るといいのかわかりませんが、長期的な展望を同時代認識として持つことは短期の効果にも繋がるのでは?
ウォーラーステインの1)投資のチャンスなし と 2)生態系劣化 に対して、ウォーラーステインのように知は尽きた、お手上げなんていってないで、グリーンなイノベーションを考えるときでは。(それで田中さんのように佐和を変とは思わない。)
Id: #b20020509031604  (reply, thread)
Date: Thu May 09 03:16:04 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020508145329
Name: くろき げん
Subject: ウォーラーステイン「転換期における知識人」をざっと見た感想

『環』に訳されたウォーラーステインの基調講演を見てみました。「資本主義システム」から「資本家の利潤」の圧縮の部分だけを取り出して「資本主義世界経済の構造的危機」などと騒ぐことに意味があるんですかね?

同じような感想は、稲葉さんが酷評している橋本寿朗著『デフレの進行をどう読むか』についても言える。橋本が強調している労働分配率の上昇による利潤圧縮という事実は、別に橋本が指摘しなくても、デフレの問題について語っている人であれば当然知っていることです。利潤圧縮という事実だけを取り出して特別視しないだけ。

「知識人」の問題は要するに「左翼」の問題です。しかし、資本主義批判派の「左」と保守派の「右」という対立は現実の政策に関わる議論における重大な対立とほとんど無関係になっている。たとえば、 IMFによるアジアの経済危機への介入の仕方をどのように評価するかだとか、現在の日本における正しい経済政策は何かだとか、そういう問題に関する議論は「左」と「右」の対立という観点が重要だとは思えない。そこにはスティグリッツクルーグマンをどのように評価するかという問題がある。

金子勝は明らかに「左」に属する人で色々なことを言ってはいますが、結果的に小泉政権と似たような政策 (財政再建+不良再建処理) を提案しているように見える。そして、金融緩和とその方法をめぐる対立は「左」と「右」の対立というより、どちらかと言えば保守派内部での対立です。重要な対立は決して「左」対「右」ではない。

ウォーラーステインのような「知識人」 (?) を自認していると思われる人たちが高み (?) に立つことによって「資本主義世界経済の構造的危機」を前提にし、「知識人」の役割について論じているのを見ても、私は何の説得力も感じませんでした。

「構造的危機」に瀕しているのがウォーラーステインのようなタイプの「知識人」であればまったく同情できません。


Id: #b20020509011728  (reply, thread)
Date: Thu May 09 01:17:28 2002
Name: くろき げん
Subject: 腐った政治による資源分配の歪みは日本経済の長期低迷の主な原因か?

メディアでどのようなネタが好んで報道されているか、 Google における「腐った日本」や「腐りきった日本」の検索、最近の経済@いちごの0503番のスレッドの136-140、などなどを見ていると、以下のような考え方の勢いが非常に強いことがわかる。その考え方を「反マクロの構造改革主義」と呼ぶことにしよう:

これらにさらに「安全志向で腐っりきって国民一人一人の精神を構造改革しなければ日本の将来は暗い」という発想が付け加わると完全なデンパ系になってしまう。そう言えば小泉首相は「精神構造改革」という言葉を使っていたことがありましたね。個人的に「精神構造改革」という言葉は噴飯ものだと思うのだが、おおまじめに「精神構造改革」について語ることのできる「サンクチュアリ」な世界が存在するようだ。 (史村翔原作・池上遼一作画の『サンクチュアリ』は現在コンビニでワイド版全5巻を買えます。お馬鹿なことに全巻買ってしまいました。)

上にまとめた「反マクロの構造改革主義」は少なくとも二つの点で大きく誤っている。

1. 一つ目の誤りは、腐敗した政治と政官業の癒着による資源分配の歪みを日本経済の長期低迷の主原因とみなしていることである。

1980年代の平均的経済成長率は4%で「失なわれた10年」のそれは1%でした。そして、「失なわれた10年」のあいだに完全失業率はほぼ単調に増加し、 2%しか無かった失業率が5%を超えるところまで上昇してしまった。 1994年にはGDPデフレータの意味でのインフレ率がマイナスの値に突入し、現在では消費者物価指数の意味でのインフレ率もマイナスの値に突入している。このような変化をどのように説明するかが問題です。

まず、規制緩和も民営化もすすんでなかった1980年代の日本経済は絶好調で皆自信たっぷりだったことを忘れてはいけない。よくある説明は「時代の変化に日本の構造が追い付いてない」というようなものです。しかし、平均的経済成長率の3%の減少と完全失業率の3%の上昇とデフレの進行を同時に説明できるような構造変化を具体的に挙げているのを見たことがありません。

たとえば財政赤字の急増によるクラウディングアウトが経済低迷の原因ならばデフレではなくインフレになっているはずだ。 30兆円も財政赤字を出しているのにインフレにならず、どんどんデフレが進んでいるということは、もしも財政赤字をゼロにしたら日本経済が恐慌に突入する可能性さえあるということだ。

金融政策の失敗が主な原因であるという説と1980年代から「失なわれた10年」のあいだの様々な数字の整合性は高い。

「失なわれた10年」のあいだにも在庫循環レベルの景気循環はありました。その景気上昇期に経済成長率が2%〜3%程度になったときもあったのですが失業率は減少しなかった。潜在成長率を大きく超えた経済成長を実現するためには失業率を減少させることが必要です。もしも「反マクロ・構造改革」主義者が主張するように日本経済の潜在成長率が1%程度であったとすれば、「失なわれた10年」のあいだに失業率がほぼ単調に増加し続けることは無かったはずです。

このことから、現在の日本経済の潜在成長率は3%程度はあると推測できる。それが1%平均に低迷してしまったのはマクロ経済政策の失敗 (特に金融政策の失敗によるデフレ突入) が原因である疑いが強い。適切なマクロ経済政策を実現できないシステムが日本経済の長期低迷を招いたのである。 (このことも改革の対象にするべきだ。)

構造改革は、腐りきった日本のままでも3%はあると推測される潜在成長率をさらに高くするために必要になるのであり、 1%平均に低迷してしまっている成長率を2%や3%に上げるためには必要でも十分でもない。 1980年代並の4%以上に引き上げるためには構造改革が必要だろう。しかし、他の先進国における構造改革の結果から、構造改革によって潜在成長率を引き上げるのはおそろしく難しいことがわかっている。

2. 二つ目の誤りは、マクロ経済政策が常に有害だと考えていることである。

財政政策を通した資源配分の歪みの問題は財政の規模の問題ではありません。財政の中身の問題です。中身をよりましなものに変えることが真の構造改革なのだ。財政の真の構造改革が進めば、財政政策による資源分配の歪みは当然減少することになる。しかし、「聖域なき改革」の掛け声によって広く薄く総額を減らそうとするのは真の構造改革ではない。結果的に資源分配の大きな歪みは解消されないだろう。

財政政策の有効性を高めるためには財政の中身を変えることが必要だという主張はマクロ経済政策の重要性を強調する人たちが常に強調しているところである。それに対して、「聖域なき改革」だとか「小さな政府」などと言い出す人たちは財政支出の中身を変えることよりも、財政規模の縮小を強調しようとする。

そもそも持続可能性さえ維持できれば財政赤字は大して重要な問題ではない。累積財政赤字をゼロにする努力は全く必要ではない。むしろゼロにしようと努力することは有害であり、持続可能性さえ維持できれば政府の名目総債務は単調増加しても構わない。

ところが、財務省あたりの宣伝を鵜呑みして、一般政府の総債務の666兆円を将来ゼロにしなければいけないと誤解している人たちがものすごくたくさんいる。日本の財政赤字の問題は総債務をゼロにできそうもないという問題ではなく、持続性の維持の問題である。最も基本的なところで騙されていることに皆早く気付くべきである。 (持続性さえ維持できれば財政赤字の害は騒ぐ人が多いわりに大した問題ではないことに関するより詳しい議論については、『クルーグマン教授の経済入門』の第7章を参照せよ。もちろん持続性を無視して、とにかく財政出動すれば何とかなると考えている人たちに与してはいけない。)

金融緩和は構造改革に必要な痛みを薄めるので好ましくない、政府は痛みを伴う不良債権処理を断行すべきである、のような考え方もあるようだ。

不良債権処理によって効率の悪い部門を潰して効率の良い部門に資源を移動させることを意図しているのだろうが、どの私企業を潰すかの選択に政府が直接関与することに賛成して構わないのだろうか? 金融緩和云々以前の問題として、それで良いとは思えない。腐った権力者たちの利権を増やすだけではないのか?

これに対して、金融緩和 (具体的にはインフレターゲット付き量的緩和) は市場による自動的な調整をうながす政策である。インフレ率がプラスになり、それに遅れて金利が上昇し始めれば、不況下でも黒字で儲かっているところはさらに儲かるようになり、単に低金利で助かっているだけのところはどんどん苦しくなる。景気が上向きになれば資源分配の問題は市場が勝手に解決してくれるだろう。

財政の中身の大幅な変更ではなく緊縮財政を強調し、金融緩和よりも不良債権処理への政府の直接的関与を選択する人たちは、結局のところ「金を出し惜しんだり、痛みを押し付けることによって、腐った権力者たちが口を出し易くする」ことに賛成しているように見える。しかも「腐りきった日本を立て直す」という“熱い正義感”に基いて賛成しているように見える。

これに対して、財政の規模は中立を保ったまま真の構造改革を進め、デフレ脱出のために強力な金融緩和を行なうことを提案している人たちは経済的にも政治的にもよりましな選択肢を示していると思う。

ところが、「反マクロの構造改革主義」の信奉者たちは、腐った政治と政官業の癒着による資源分配の歪みの是正抜きには日本の復活はないと信じ込んでいたり、場合によっては腐りきった日本の改革抜きに日本経済を復活させてはいけない (「景気が回復したら、改革する意欲がなくなってしまう」) などと考えているせいで、破滅的な政策の方を理性ではなく“熱い正義感”によって支持してしまうことになるのだ。そこでは損得勘定という発想自体が抜け落ちている。


Id: #b20020508204419  (reply, thread)
Date: Wed May 08 20:44:19 2002
Name: ひめたにし
Subject: ハリーポッターの物語から
「ハリーポッターと秘密の部屋」の中で、実直な貧乏役人が娘に
Never trust anything that can think for itself if you can't see 
where it keeps its brain.
「脳みそがどこにあるのかわからんのに自分の意志を持っているようなものは信
じるな」
と言い聞かせる場面があります。そういうものは、闇の魔法で動いている可能性
が高い、という理由です。これをもじった格言を思いつきました。
「とても生産性があるように見えないのに利益が上がるものは信じるな」
国債とか。マルチ商法とか。種々の特殊法人・公益法人とか。時田さん御指摘の、
有名大学の学生証とか。
 ところで、最近、ティッシュや洗剤や乾麺を多めに買い置きすることにしまし
た。インフレになるのは、まだまだ先のことかもしれませんが、物がたくさんあ
るだけで何だかリッチで景気が良くなったような気分です。(家は狭いんです
が。)
http://board.asahi.com/nat/board/index.php?qid=498&cn=63
 近い将来の婦人雑誌の特集を予言。「買い置きスペースはこうやって作る!」
「まだあった!ティッシュを8箱置けるスペース」

Id: #b20020508192352  (reply, thread)
Date: Wed May 08 19:23:52 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020508145329
Name: ときた
Subject: Intellectuals in an Age of Transition

下に紹介したWallersteinですが、
Intellectuals in an Age of Transition
LOS INTELECTUALES EN UNA EPOCA DE TRANSICION
で全文が読めるんですね。
Id: #b20020508145329  (reply, thread)
Date: Wed May 08 14:53:29 2002
Name: ときた
Subject: ウォ−ラスティン ソーカルにコメント?

ウォ−ラスティンは、 PEWSPolitical Economy of the World-System Section of the American Sociological Association で基調講演を続けていて、去年の4月のものが『環』9号に「転換期における知識人」として訳されている。
そしてそこで、 The Sokal Hoax : The Sham That Shook the Academy って本が参考文献に上げられている。

ウォ−ラスティンはまず、近代世界システム=資本主義世界経済が三つの構造的制約に行く手をはばまれ、システムの制御ができなくなっているという。
三つとは、
1)世界の脱農業化の結果、価値の総和中の労働賃金が上昇し、資本主義システムが今や、資本家に利潤をもたらさなくなっている。
2)費用の外部化による生態系の破壊。
3)民主化にともなう教育や福祉の拡大と、価値の総和中の税負担の増大。

ウォ−ラスティンは、これらを列挙するだけで、詳細は最近だした『新しい学』を読んでくれと自己PRしてるが、『新しい学』を読んで、おもしろかった方、おられます?十年くらい前の名古屋大出版の『近代世界システム』と藤原書店の『脱=社会科学』に、大きく加わってるものがあるのかな?
たしかに上の三つは、1)は橋本の利潤圧縮と関係してるようだし、2)はひめたにしさんの最初の心配事だし、アメリカでの外部化の指摘を若田部さんに理解できないと指摘されたことも。3)は小泉構造改革という反民主化が、構造変化の逆流であり、短期にも保育所待ちとかマイナス要因になっていたり。

で、ウォ−ラスティンは構造危機の前に、いままでの知の枠組みの有用性がつきたといっている。そして「二つの文化」の問題がだされ、上のThe Sokal Hoaxを参考文献にあげるという流れ。
まあ、その中でウェーバーやグラムシをひいて、Hoaxって言葉から連想されるものより格調のある議論になっているし、当面の短期対策としてのまともなマクロ政策という、バカ政府が蔵にいれてしまったが、尽きたわけではない知もあるし、知の混乱なら『知の欺瞞』自身を引用すればとか、いろいろありますが...
Id: #b20020505103703  (reply, thread)
Date: Sun May 05 10:37:03 2002
Name: ブタネコ
Subject: for a mess of postage

for a mess of pottage
一椀のあつもの。創世記 25:29-34。高価なものを犠牲にした瞬間の物質的快楽の追求。長子相続権とレンズ豆のスープの交換。
for a mess of postage
内外価格差のうち、郵便料金だけをとりあげ、デマ政治の快楽を追求。

市や区の郵便局には、年賀状用の大きな作業室が、年11ヶ月あいている。ダンス教室や、毛筆教室なんかに利用すればいいのに。
Id: #b20020504104333  (reply, thread)
Date: Sat May 04 10:43:33 2002
Name: 岡田靖
Subject: 郵便ポストと金融政策
黒木さんが書かれているように、NZの経済構造改革は日本には全然参考にならな
いのですが、構造改革派はこないだまでNZを持ち上げていたのは周知の通りです
が、最近は音無の構えです。

ここで面白いのは、自他共に認める「反マクロ・構造改革派」の巣窟である某社が
(というのも、もの凄い皮肉だが)、大声で日本とNZは違うぞと叫びはじめたと
いうことです。

原因は、高橋洋一氏のエコノミスト誌に書いたレポートで、99年にNZでデフレ
克服のために猛烈な金融緩和政策が実行され成功したという例を紹介してるわけで
すが、これが基礎的諸条件の全く異なった経済の例を取り上げて効果を論ずる暴論
だと言いたいようです。

さて、日本はNZの真似をすればよいのか悪いのか???こういうと自らの道を切
り開かねばならない(世界中の経済学者がナント言ってるかは関係ない。自分の頭
で考えろ!!が、最近のはやりらしい)のでしょうが、そんな前例のない事をして
いいのだろうか(デフレ下でのインフレターゲットは前例がないから駄目だと聞い
ております)という疑問がまた沸いてくる。

Id: #b20020504035302  (reply, thread)
Date: Sat May 04 03:53:02 2002
Name: くろき げん
Subject: NZの郵便ポスト「民間のは使われない」に小泉首相渋面

5/2のニュースより。

1980年代に大胆な行政改革を断行したニュージーランドに訪問していた小泉首相は、クラーク首相と会談後に首相公邸前のポストを視察した。

小泉首相はクラーク首相と共に、まずニュージーランド国営郵便の白赤黒の三色のポストを視察。小泉首相は差し出し口に指を突っ込んで「日本は赤一色だな」と軽口を叩いたが、それに対してクラーク首相は「国営は効率的で取扱量も多い。みんな国営の方を使う」と述べた。

次に約50メートル離れて立つ民間会社が設けた近くの青いポストまで歩いて移動。小泉首相は民営ポストを叩いて「これが民間か。この方が立派じゃないか」と述べ、「小包はどうか」と質問した。それに対してクラーク首相は「郵便よりは民間との競争はあるが、国営の方がしっかりしたサービスを提供している」と答えた。

(^_^;) (^_^;) (^_^;)

以上はなかなか嗤える話ですね。小泉首相はニュージーランドの改革のその後のことを何も勉強してないのでしょうかね? 勉強していれば上のように皆に笑われるような報道をされるヘマを犯さなかったはずです。

所謂「ニュージーランドの実験」については以下が参考になります:

注目すべきなのは新美の報告です。新美はニュージーランドの構造改革が実際に経済成長を引っぱることができたかという問題を扱っています。

改革を通してニュージーランドの福祉その他は大幅に後退しました。しかし、それは分配の偏りの問題なので、福祉その他の後退という事実だけから構造改革には何の効果も無かったという結論は出ない。良いところがあればその点は参考になるはずなので調査してみる価値がある。せっかく「経済実験」と呼ばれるほど過激な改革を実行してくれたのだから、その結果をありがたく分析させてもらった方が良い。

新美の結論を、要約の方ではなく、本文から引用しておきましょう。新美曰く、

考察の結論を先取りすれば、【ニュージーランドの】構造改革は確かに事後的な生産性向上効果を有しているが、規模的にも統計的有意性からも不十分な水準にとどまっており、経済成長のけん引役としてはいささか力不足であった、という点に集約される。これは、自由化・規制緩和を基軸としたマイクロ的構造改革が経済成長の実現に対して無力であったということではなく、むしろそれらが十全に機能するためには適切なマクロ経済政策による補完を必要としていたが、それらは改革のプロセスで後景に置かれた、と理解されるべきである。

(JRR 2000.9, p.12 より)

改革当時のニュージーランドはインフレに苦しんでいたが、現在の日本はデフレで苦しんでいる。この違いは極めて大きいのですが、インフレで苦しんでいるときの構造改革という理論的には正しい政策を実行しても、適切なマクロ経済政策の補完が無ければ痛みだけで効果はほとんど期待できない、という結論は現在の日本でも大きな意味を持っていると思います。

しかし、ニュージーランドと日本では目標が全く異なるんで、ニュージーランドの改革は現在の日本にとってあまり参考にならないのは事実なのだ。上の報告の p.47 では次のような違いが強調されています:

そして、新美は次のような警告をしています:

 ……。こうした閉塞感・不安感ないし政治不信の高まりはともすれば、過度の期待を伴った改革待望論に結び付きやすい。事実、わが国マスメディアにおいても、構造改革の必要性を強調するあまりか、「日本が今、この国から学ぶべきものは改革のやめ方ではない」という勇ましいプロパガンダまで登場し始めた。未だ改革を進められないわが国が、改革先進国であるニュージーランドから学ぶべきは、「改革の断行」という単純な事実だけだというのである。

 このような改革は全て是、それ以外は全て非、という決め付けに近いリゴリズムの台頭はまことに憂慮すべき事態である。あらゆる改革は長所と短所とを伴うもので、その評価は両者の総合的判断で決せられるべきものだからである。長所のみを強調し、短所は全て目をつぶるというのでは、プロクルステスの寝台であり、経験科学としての経済学のコンセプトとは相容れない分析態度であろう。

(JRR 2000.9, p.47 より)

これは小泉政権誕生前に書かれたものであることに注意。

小泉首相はニュージーランドに行く前にこういうことを勉強しておけば良かったのだ。いや、首相になる前に勉強しておいて欲しかった……。


Id: #b20020503091014  (reply, thread)
Date: Fri May 03 09:10:14 2002
Name: ブタネコ
Subject: 『環』藤原書店 vol 9 

『環』藤原書店 vol 9 の2800円は、内容を考えたら安いが、800gは肩凝りの原因に。
まずブルデュー追悼でサイードや加藤晴久らが。
特集 21世紀・日本のグランドデザイン では短い文だが、都市再生で原田泰、分配で立岩真也らがいつもどおり的確。佐伯啓思、有馬朗人さへありゃま、いつもよりはマトモ。
陣内を引用すると、
一番困るのは政治学や経済学の人たちが、場所、都市、環境と切り離して物事を論じ、結局、一人の人間としてもそういうものの価値を全く理解しない点ですね。
場所とはヘーゲルの大地のノモスか? まあ、同じ800gの中で長野県人の塩沢さんの大阪論が、そうでない経済学もと。
水系の中の都市・大阪の未来像の山田國廣は三省堂の農薬辞典やゴルフ場亡国論の著者。
Id: #b20020502173434  (reply, thread)
Date: Thu May 02 17:34:34 2002
Name: くろき げん
Subject: サンクチュアリ

まあまあ、ここらで雑談にしませう。

以下のような考え方をしている人は結構多いと思う:

ほぼ既出のネタですが、「政府が財政赤字を出しまくってお金を無駄遣いしているから、日本は不況から脱出できない」という風に考えているもうどうしようもないトンデモさんでさえかなりいるんじゃないかと思う。現実は全く逆で財政赤字のおかげで不況がこの程度で済んでいるのに。実験的に来年あたり新規国債を全く発行しなかったらどうなるか試してみたら面白いかも。マイナスで30兆円のショックの帰結はものすごいものになるはず。想像するだけで楽しくなって来る。 (やめれ!)

上に並べた悪しき民間信仰を皆で嗤えるようにならなければまずい。問題はどうすればそういう状態を実現できるか?

単に誤解してしまっている人には論理的な説得の効き目があると思う。問題なのは上に並べたような教義を「腐った日本を立て直す」という類の発想に基いて積極的に信仰しようとしている人たち。ほとんど史村翔原作・池上遼一作画の『サンクチュアリ』の世界。そうなってしまうとなかなか論理的には説得できないだろう。

というわけで、この問題を勝手に「サンクチュアリ問題」と名付けたいのだが、どうだろうか? たとえば「今の日本の構造を温存したままでは日本が復活することはない!」と叫んでいる人を見掛けたら、「あなたもしかしてサンクチュアリ?」と言う。少なくとも「あなたもしかして『1940年体制』の人?」と言うよりは効果があると思う。

こういう話に使うのに適切な漫画にはどんなのがありますかね?


Id: #b20020502165849  (reply, thread)
Date: Thu May 02 16:58:49 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020502133245
Name: いなば
Subject: ゴキさま

 別に私はあなたに何も文句つけてませんよ? なんでそうハリネズミするかな?

 担当編集者は実は大学の同期でね、あたしも裏の事情は大体わかってます。筆者の選定じゃないことくらいは知っている。文句があるとしたら彼にであって、あなたにじゃない。

 たかつかさんとのやりとりといい、なんかネット初心者的にヒートアップしすぎ。これじゃ2チャンネルあたりで「厨房」呼ばわりされかねないですよ。

 ついでに、(藁 とか、いや(笑)だって、あんまり使わない方がいいと思うな。プロのもの書きなんだから。
Id: #b20020502133245  (reply, thread)
Date: Thu May 02 13:32:45 2002
Name: ゴキ

きびしいなあ、はやりものか(汗)。

まあ、流行ものだからやる、やらないという尺度はどうかな? ましてや奥野さんたちの本だってまさに(アカデミズムの)流行ものだぜ。

問題は『1940年体制』だろうが、フリードマンの啓蒙書だろうが、やる意義があるかどうかで判断してほしいなあ。内容で言及してほしかったなあ。

それと村上泰亮や青木、小池氏ともに、そりゃ「小一時間ばかり問い詰めたい」(ただし村上氏は困難、笑)のは僕も同じだね。でもいなばさんは何を批判的に検証したいのかな? 彼らの批判という「はやり」に便乗していないことを祈るよ。

ちなみにゴキの「小一時間問い詰めたい」理由のあらましは、きわめて不完全で未熟な段階だが

村上氏については→http://www.t3.rim.or.jp/~hidetomi/kanto.html
に書いたよ。『新中間大衆の時代』は野口の本よりもごちゃごちゃしててわかりにくいね。
青木氏については、いままとまった論説を準備してる。これは某雑誌で数回にわけて連載する予定。
小池氏については、例の知的熟練という考え方の批判は承知しているけど、近刊予定の本では「あえて無視」した。つまり本質的には知的熟練は日本の雇用システムの中核ではないと思っている。

村上、青木、小池の各氏を「批判」したい趣旨はよくわかるけど、彼らの「批判」という流行もあるということに注意したいね。

あとラインナップでは浮いてるね。確かに(笑 でもこのラインナップは僕が決めているわけじゃないからね。野口本の批判的検討という依頼でうけるわけだから。編者だったら、あなたのその諫言もたまわるけど、そこをわからんようじゃあ 略)

Id: #b20020502131456  (reply, thread)
Date: Thu May 02 13:14:56 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020502110655
Name: ブタネコ
Subject: 岡崎哲二 ドーア

殺伐の40年代より、江戸の粋のが好きなブタネコとしては、
岡崎だと『江戸の市場経済   歴史制度分析からみた株仲間』講談社メチエとか、ドーアさんだとEducation in Tokugawa Japanとか。

で、何か今まさに江戸時代が終わるという気がする。工業高校+ QCなんてのは、江戸の職人堅気の最後だったのかも。いすずの有名な兼坂のエンジン設計チームなんて、ほとんどが工業高校卒だった。
一方、個別の技術は体感しても、自然科学として全体を見れないことが、今の日本的状況(原発からの段階的撤退やマイルドインフレといった、超あたりまえのこともできない。)だから江戸の悪いとこだけは続いてる。

40年といえば、昭和維新に科学研究費upを訴える、東大の数学教授藤沢利喜太郎の貴族院での演説は滑稽で悲しい。佐々木力の科学史かなにかに長く引用されてる。むなしく「独創性」を強調すれば、後進性の悲哀がかえって滲みでる。
Id: #b20020502110655  (reply, thread)
Date: Thu May 02 11:06:55 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020502000801
Name: いなば
Subject: ゴキさま

あたしは『監獄の誕生』です。

『1940年体制』はどうせ岡崎哲二のパクリだと思って読まずに済ませていたのですが、最近やっと大蔵時代以来の年来の主張(榊原との共著論文「大蔵省・日銀王朝の分析」『中央公論』1977)と知って少し見直しました。

でも『1940年体制』なんてはやりものより、もっとちゃんとした本を取り上げないと。(『現代日本経済システムの源流』とまでは言わんが。)あの特集のラインナップの中で明らかに浮いてる。
たとえば、『新中間大衆の時代』とかどうなんだ。

ひょっとして、そろそろ村上泰亮、青木昌彦、小池和男の功罪について問い直す時期がきたのだろうか。
Id: #b20020502000801  (reply, thread)
Date: Thu May 02 00:08:01 2002
Name: 居酒屋のおやじ
Subject: ハンドルネーム変更
ハンドルネームは黒木さんの命名なのでこれから「ゴキ」と併用させていただきます。
苺チャンネルみたら「声の出るゴキブリ氏」と紹介されていて笑えました。
ますます愛着が。本名はつかわず「おやじ」か「ゴキ」でせまります。

でまだ書かなくてはいけない原稿が大量にあるので論争的なことは書けませんが、昨日、締め切り
ほっぽって稲葉さんの『ナウシカ解読』を読みました。一部、難解でよくわからな
いところもありましたが、それでもこれはまさに1940年体制論批判に通ずる
と思いました。御存知のように、野口ゆきお氏もナウシカ論を書いていますが
そのナウシカ論と、稲葉さんのナウシカ論とがあまりに異なるものなので驚き
ました。「牧人」とナウシカとの会話は僕はまさにあの物語の愁眉というか
そこを理解せずして、という気がしていて、稲葉さんの本にも十分なスペースと
深みで書かれていましたが、野口氏はそれを「言葉の過剰」で省略!しています。
ナウシカ論を野口氏は日常的な官僚の価値観の優位で説き終ります。他方で、稲葉
さんはユートピアの現実不可能性を、目前の問題としてひきとっています。
この対比は鮮烈でした。
こうくだくだ書いたのは、実はちょっと宣伝ですが『論座』に、ナウシカにも
ふれた1940年体制(批判)論を書きましたのでご笑覧ください。

また少し地下に潜ります

居酒屋の声の出るゴキブリより

Id: #b20020501194703  (reply, thread)
Date: Wed May 01 19:47:03 2002
URL: http://cafe.ocn.ne.jp/profile/siroukun
Name: しろうくん
Subject: 情報だけですみません。。。
* <ハッブル宇宙望遠鏡>新型カメラの天体写真を発表(NASA)
 米航空宇宙局(NASA)は30日、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載した新型カメラで撮影した天体の写真を公表した。
「宇宙への新しい扉が開かれた」と今後の活躍に期待している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020501-00001037-mai-soci
http://oposite.stsci.edu/pubinfo/pr/2002/11/

* 宇宙誕生は130億〜140億年前=ハッブル望遠鏡で推定−NASA
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020425-00000787-jij-int

Id: #b20020501142231  (reply, thread)
Date: Wed May 01 14:22:31 2002
Name: ブタネコ
Subject: 指数定理 比較優位

岩波の数学講座がまだ完結してなくて、今頃『指数定理 下』が。文献案内に、中原さんの簡単な本も紹介されてる。
中原さんは、通産省の交流基金で半年フィンランドに行き、量子コンピュータの講議を。量子コンピュータではこちらが副業で本職は宇宙論みたいな人が多い。
携帯で、日本とフィンランドとどっちが比較優位かもあるが、変な規格基準をアメリカからおしつけられないように、日本の電話会社からもフィンランドに現代の防人が出張してて、量子コンピュータの講議をきけば、応用ばかりやってて頭脳を劣化させてはいけないと、反省の機会に。
地方の公立高が劣化し、普通なら旧帝大に行けるタマでも、旧工業専門学校というか二期校の工学部に。
そういうとこには、悲惨な産学共同体質で、学から何かが生まれないから、資本にすがっているというところも。
携帯のお椀アンテナの試作品が数百種類あって、その性能を片っ端から調べるのがDの学生のすること?新制の工業高校よりひどくないかな?
電磁気学というと、砂川とかパノフスキーとか品格のある学問だが、こういう研究室で飼育されてると、高校生のころは前途洋々の顔付きをしてた青年が銀行員みたいな顔になってくる。
携帯や半導体もだが、大学の比較優位のが社会の未来に関係する。
Id: #b20020430103533  (reply, thread)
Date: Tue Apr 30 10:35:33 2002
Name: ブタネコ
Subject: UNCTAD

UNCTADの年次報告THE TRADE AND DEVELOPMENT REPORT 2002 が出た。要項は特別な文字セットがなくても、アラビア語やロシア語でも読めるが、中文は調子が悪い。(内容に北京からクレーム?)
中国での大量失業を懸念。
日本の不況に先進国の分析の1/3をあて、特に p.12にwages,consumption and growthの囲みを設けている。
赤字が数兆円の業界では無能事務員のオジサンを首にしないのがせいいっぱいだろうけど、保育所の待機児童をなくして、有能な女性の正規雇用を守るとか、新徳島県知事の出身の祖谷谷の部落は人口が100戸から2人へだそうだけど、そういうところに草刈り十字軍を送るとか、上手な賃金のばらまきができないのかね。

Id: #b20020429214550  (reply, thread)
Date: Mon Apr 29 21:45:50 2002
In-Reply-To: b0046.html#b20020429065320
Name: ひめたにし
Subject: 当面は国債の金利がインフレ目標値を下回るであろうと理解しました
 だいたいわかりました。
 政府が例えば3%のインフレ目標値を設定した後にも国債の市場金利が3%を
割ることなんて、一見なさそうに思えますが、企業への融資も社債購入もリスク
が高い場合には、実質金利マイナスであろうと、銀行は国債を持ち続けるしかな
い、ということですね。

 中長期国債の買いきりオペがいつまで続けられるかですが、M2+CDが約670兆円
という規模と比較すれば
http://www.boj.or.jp/siryo/stat/ms0203.htm
日銀の当座預金残高18兆〜19兆円台という規模は、既に3%のインフレを起こす
には十分な額にふくらんでしまっているのではないかと、全くの素人の発想です
が、思います。企業や個人の流動性資産が実物に変わり始めれば、さらにこの規
模はふくらむはず。いったん火がつけば、買いきりオペは早々に不要になりそう
な気がします。

 国債の金利が上昇すると住宅ローン金利も一緒に上がって、住宅着工数に影響
するのではないかとも思いましたが、黒木さんのおっしゃるとおり、民間企業の
業績回復が無い限り国債の金利上昇も無いわけで、ローンの金利が上がるのは景
気の回復後。従って問題なし。と理解しました。

 銀行には経済動向を的確に読み取って動いてもらわなければなりません。それ
ができるか否かで、銀行間に大きな差がつくことになるでしょうね。それにして
も、銀行にとっては、舵取りがより簡単にできるよう、インフレ目標値は(設定
するにしても)できるだけ低い値にさせたいのではないかと思います。

Id: #b20020429065320  (reply, thread)
Date: Mon Apr 29 06:53:20 2002
In-Reply-To: b0045.html#b20020429052621
Name: くろき げん
Subject: 国債金利が一時的に下がった後に上がると考えた理由

まず、日本の国債はほとんど日本国内で消化されているので (cf. FAQ 5-5)、基本的に国内問題だとみなして構いません。

国債は政府が元本を保証し、10年ものなら現在年に1.5%程度の金利収入が得られるという金融商品です。銀行にとっては BIS 規制とのからみで非常に便利な投資先になっています。

だから、もしも「インフレターゲット付きの中長期国債の大規模買い切りオペ」が発動したときに、国債を大量にかかえている銀行は次のようなジレンマに陥ることになる:

国債の金利は不良債権化するリスクがない場合の金利であるとみなせます。リスク込みで判断して相対的にもっと良い融資先があればそちらにお金が流れることになり、国債の金利は上がることになる。逆に良い融資先が見付からない状況が続けば、国債の金利は下がることになる。このバランスによって、国債の金利は決まることになる。だから、現在の国債よりも有利な融資先が大量に見付かるようにならない限り、国債金利は上昇しないはずです。

だから、「インフレターゲット付きの中長期国債の大規模買い切りオペ」が発動すると、しばらくのあいだは中長期国債の金利は下がることになるはずです。皆が売りたくないと思っているものを無理矢理買おうとするわけですから、その値段が上がる (金利は下がる) ことにならなければおかしい。

手もとに大量の現金・預金貯め込んでいる人たちがインフレ・ヘッジのために自分の金融資産の構成を変えたり、実物に投資したりし始めれば、インフレターゲティングの影響が表に出始めることになります。家計部門に存在する1400兆円の金融資産のうちのほんの1%でも動けば、銀行貸出が一銭も増えなくても、 14兆円分の効果が生まれることになる。資金余剰主体になっている日本の企業部門がその効果を見込んで手もとに貯め込んでいる資金を設備投資に回し始めればそれも大変な効果を生み出すことになる。

あれやこれやで景気が回復して結果的に銀行がより有利な融資先を大量に確保できるようになれば、国債金利が上昇し始めることになる。しかし、これは景気回復が原因の国債金利上昇なので大歓迎でしょう。もちろん、他の銀行よりも大量に国債を保有していてかつ有利な融資先を確保できないところは苦しくなる。でも、その苦しい状況を乗り切れば、景気は回復しているんだから、最終的には経営が上向きにならなければおかしいと思います。


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管理者: 黒木 玄  <kuroki@math.tohoku.ac.jp>  (Web Site)
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