なんでもなんでも3HTMLの書き方利用上の注意リンク集ホーム

黒木のなんでも掲示板2 (0040)

記事を書く時刻順目次スレッド検索過去ログ最近の記事

各記事の Id ヘッダー行の # から始まる文字列をクリックすると、その記事自身にジャンプします。その記事自身の URL を知りたい場合に利用して下さい。さらに、括弧の中の reply をクリックするとその記事に返事を書くことができ、 thread をクリックするとその記事を中心としたスレッド形式の目次を見ることができます。

Id: #b20020402165101  (reply, thread)
Date: Tue Apr 02 16:51:01 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020402144835
Name: ブタネコ
Subject: つまり

僕が列挙したのは、90年代のアメリカの好調の理由の一部で、それがいいというのでは、ありません。
それらが、他の年代にあるからといって、この年代の理由の一部になれないということもないし(必要条件と十分条件)。
一番根底にあるのは、循環の政策を間違わないのも大切だが、実際のアメリカ人の多数派が、Juliet Schorなど読むにつけ深い意味で幸せなんかな?ってことです。
同様の疑問は、ニュージーランドの行革の実際はどう?という疑問で、友人が2年ほどニュージーランドにいて帰ってきたばかりで、個人の報告からすべてを判断する気はないけど、50過ぎなのに学生して、毎週安くオペラをたのしんでたなんて聞くとへ〜って感じだし。
最近の日本人は過剰にネクラで、心理不況を深めてる。ロシア文学のネクラーソフか解析数論のネクラーソフの驚異の定理かで、すこし花見気分になるといいのに。
Id: #b20020402144835  (reply, thread)
Date: Tue Apr 02 14:48:35 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020402124236
Name: 若田部
Subject: つまり?

ひめたにしさんへの質問でしたから、ひめたにしさんにもご意見をいただきたいと思いますが、ブタネコさんの説明は、要するに「アメリカがやってきたことすべてが奏功したのだ」というわけですね。

これだと、バブルの頃にあった、80年代の日本では、「日本がやってきたことすべてが奏功してきたのだ」とまったく区別がつかない説明ですね。

「構造」だけによる説明の最大の弱点です。結局、説明になっていない。説明を求めると、無限に個別の事例だけが脈絡もなく出てくる。

1)アメリカはネバカでネアカで楽しい=>昔からそうじゃないですか?ちなみに私は、ネバカ、ネアカという表現は嫌いです。

2)世界に開かれた大学があり、イノベーションをひっぱっている=>あのアメリカの70年代でも同じじゃないですか?

3)自分だけ勝つ、わがままルールを自分で作る(覇権国家の創業者利得?)=>アメリカの世紀って、いつ始まっていましたっけ?

4)鉄鋼では、アメリカもヨーロッパも、日本並みに労働者をしばく(城下町の崩壊と地域の暴力化の犠牲に)と合意し、アメリカだけ一ぬけた。
=>日本並みにしばくのならば、日本と同じ土俵にたっただけでは?

5)中国並み?の環境破壊継続で外部化享受=>理解できない話です。

草の根民主主義を支えた中間層をつぶすと、どうして成長がもたらされるのか?などなど細かい疑問点はつきないのです。

黄金の60年代(例の90年代も、実質GDPの成長率では60年代には及ばないのです)があって、そのあとに、70年代、80年代の停滞がある。それらはグリーンスパンを除けば、1)、2)、3)は変化なし、4)は日本並みになっただけ、ですから残るは5)だけ?
Id: #b20020402141252  (reply, thread)
Date: Tue Apr 02 14:12:52 2002
Name: 岡田靖
Subject: 補足
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/b0040.html#b20020402135814
は、ひめたにしさんに対するコメントでした。

ついでに、私の論説を紹介してくれてありがとう>ブタネコさん
ただ、老婆心ながら注釈加えておきますが、あの分析の主眼は「明るい展望」と
いうよりも、財政赤字30〜35兆円あっての景気回復だということです。回復
で調子に乗ってまた緊縮するとコケます(笑 しかし、このまま無限に財政赤字
を膨らますわけにもいきません。やはり、消費や投資の異常な落ち込みの原因で
あるデフレを阻止する強力な金融政策が不可欠だということが、言外の結論です。

Id: #b20020402135814  (reply, thread)
Date: Tue Apr 02 13:58:14 2002
Name: 岡田靖
Subject: 消費需要減退の時期
すでに若田部さんに書かれてしまいましたが、消費需要の低迷に関しては二つの
ポイントを押さえないといけないと思います。

第1は、高度成長以前からずっと続いている日本の消費性向(消費/可処分所得)
の低さです。これは文字通り「構造」であって、いろいろな議論はあるが、結局
日本人は貯蓄が好きというようないい加減な解釈が一番説得力がある(笑

第2は、90年代に入って消費が急速に低迷してきたことです。これについては
岩田教授の説明もありますが、「デフレの経済学」28ページに引用されている
私の作成したグラフをご覧下さい。若田部さんの言うように、92年頃から急に
日本の勤労者世帯の消費は可処分所得では説明できない低下を開始している。
この時期が、日経平均のバブル後最初のボトムだったことは偶然とは思えません。

つまり、こと消費に関する限り、クルーグマンの説明は必ずしも説得的ではなく
黒木さんの指摘した因果連鎖のほうが説明力があるように思われます。

Id: #b20020402124236  (reply, thread)
Date: Tue Apr 02 12:42:36 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020402113151
Name: ブタネコ
Subject: どうしてでしょうか?

世界最大の富裕国であるアメリカで、10年にも及ぶ景気拡大が続いたのは、どうしてでしょうか?

その前の不況で、民主主義の草の根文化をささへた中間層をしばいたから。
Juliet Schorの"The overworked American"には、日本人よりこき使われているアメリカ人が。そして手にした金で、Schorは『浪費するアメリカ人 : なぜ要らないものまで欲しがるか』訳 岩波 を、先の天皇の病気の自粛ブーム以来、暗く暗くの日本社会に比べ、アメリカはネバカでネアカで楽しい。
世界に開かれた大学があり、イノベーションをひっぱっている。
自分だけ勝つ、わがままルールを自分で作る(覇権国家の創業者利得?)鉄鋼では、アメリカもヨーロッパも、日本並みに労働者をしばく(城下町の崩壊と地域の暴力化の犠牲に)と合意し、アメリカだけ一ぬけた。
中国並み?の環境破壊継続で外部化享受。
そりゃ、グリーンスパンが日本の官僚より上玉ってこともあるが。
29年の農業恐慌で、『怒りの葡萄』の映画を見ると、こんなに一生懸命に生きてきた人達の70年後は豊かで当然とも思うし。
Id: #b20020402115745  (reply, thread)
Date: Tue Apr 02 11:57:45 2002
Name: ブタネコ
Subject: 岡田 論説 ほか

3月27日付の岡田 靖さんが、例の猪のとこに書かれた、 「ニューエコノミー」後のアメリカ経済の回復と日本のバランスシート調整 は、一番あたる確率の高そうな向こう半年のめちゃ暗くはない予想。
岡田予想通りいくと、『在庫循環は最終局面となる』が、『近年の日本企業は猛烈な勢いで収益改善に勤め、そのいっぽうで設備投資を抑制している。この結果、キャッシュフローから設備投資を控除した資金余剰(フリーキャッシュフローつまり企業部門全体としての貯蓄)は、法人企業だけで20兆円弱という凄まじい金額に達してい』て、『景気が循環的に拡大局面に入ったとしても設備投資の急速な拡大は全く望めないと考えるのは無理はない。』 しかしこれも飽和だから『大規模な財政赤字の下支えがあるなら、循環的な景気拡大は設備投資の拡大を早晩引き起こす』のではというシナリオ。

宇野風恐慌論では、恐慌からの回復の初期を不況とよび、ここでイノベーションがうまれるのだが、そして宇野風の橋本でも、電機などの設備投資や研究費の落ち込み、社長レベルの人間の無能さを問題にしている。
有機パネルや燃料電池まわりの研究は、財政がささえても。ITの自然な普及の妨害となっている教育のあり方や、地方財政が下支えとなって、介護の充実とか。まあ、一部ゼニコンとやるきのない金融はシバカレても。
循環と構造の幼稚すぎる喩えとして、精神軟弱のアル中で肝臓そろそろヤバク、腎臓はマダなんとか、血圧の高いのがいる。
ともかく血圧を下げて、腎臓の中で糸玉体が破裂してるのをとめなきゃ、あらたな構造問題が加わる。精神訓話はそれと平行してするっきゃないが、ありゃま、降圧剤を水でなくウィスキーで飲んでいるよ。

Id: #b20020402113151  (reply, thread)
Date: Tue Apr 02 11:31:51 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020402043813
Name: 若田部
Subject: 本当に構造変化?

1.ひめたにしさんは、「これは別に私が勝手に考え出したことではなくクル
ーグマンの「恐慌の罠」で述べられていることです」とおっしゃっていますが、クルーグマンはひめたにしさんと同じことはいっていないのではないでしょうか?

日本のリセッションには構造的な要因がある。そのひとつは、日本の貯蓄率が非常に高いということだ。高い貯蓄率のもとで完全雇用を維持するためには、企業の高水準の設備投資が必要となる。80年代までは、それも難しいことではなかった。なぜなら、生産性が上昇し、労働力人口も増加していたため、潜在成長力が高まり、それに伴って旺盛な投資需要が期待できた。だが、80年代に入ると、日本は技術革新の面でアメリカに追いついた。その結果、もはや生産性が急速に上昇する余地がなくなった。さらに人口構成の面でも少子化と高齢化が本格的に始まった。それが、日本が直面した二番目の構造的な問題である。その結果、高い貯蓄率に見合うだけの投資を確保することが難しくなったのである(『恐慌の罠』6−7頁)。

以上の説が正しいかどうかは別途議論するとして、クルーグマンの本で言えば、構造変化、というならば、
1)生産性上昇速度の下落
2)少子化と高齢化
以上による、「投資の減少」、です。

消費についての変化はいっていないと思います。貯蓄率については、変化ではなく、もともと水準が高い。けれどもこれから先は「さらに上昇する可能性すらある」(7頁)。

2.現実には、92年あたりから消費性向が下がってきています。しかし、これはまさにリセッション、そしてデフレ不況の(「原因」ではなく)「結果」として、消費関数自体の下方シフト起きていること。クルーグマンは詳しく分析していませんが、岩田規久男『デフレの経済学』第7章を参照してください。

「買いたいモノがないから消費は低迷しているのだ」という考え方から理解しようとすれば、「92年から急に、毎年のように、買うモノがなくなった」と考えなければならない(岩田、上掲書、281頁)。

もうひとつだけ。日本では「今の豊かさで一応満足している人が多くても不思議は無い」とおっしゃいますが、それでは、世界最大の富裕国であるアメリカで、10年にも及ぶ景気拡大が続いたのは、どうしてでしょうか?
Id: #b20020402043813  (reply, thread)
Date: Tue Apr 02 04:38:13 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020401033646
Name: ひめたにし
Subject: デフレがいけないのは当然の前提として
 現在の消費不況の背景として「構造変化」が先にあったという話は黒木さんの
お気に召さないようですが、これは別に私が勝手に考え出したことではなくクル
ーグマンの「恐慌の罠」で述べられていることです。(日本型雇用システムにほ
ころびが出ていて年齢ごとの賃金パターンが変化する傾向があるというのは私が
付け足したことですが。)
 こういうことを書く目的を確認しておきますが、私は最初にお邪魔したときか
らずっと、「インフレ誘導策はどの程度実現の可能性があるのか」に興味があり
ます。従って、これが政策として有権者に受け入れられて、効果が現れるまでの
期間、与党が選挙で惨敗しないくらいの支持を得られるのかが知りたい。そのた
めには、最もネックになる高齢者層が理解できるような短い言葉で説明できるか
が鍵になると考えています。

 今のところ黒木さんの説明は
「金融引き締めの遅れ→バブル膨張→大蔵省と日銀によるバブル潰しのためのハ
ードランディング政策→バブル崩解→不良債権が急増+ひどい不況→消費と投資
が低迷し始める→必要な金融緩和の遅れ→GDPデフレータがマイナスの値に→流動
性の罠にはまる→その後の政府と日銀の失策と無策→財政赤字の急増+デフレ不
況のさらなる悪化」

 私の説明は
「構造変化→消費性向の低下→より強いインフレ政策が必要になったが実行され
ていない→デフレ不況の悪化」

 と要約されるわけですね。
 デフレがいけないということは当然の前提であって、これについても別途説明
する必要はあります。

 いろんな論点が出たので一度には書けませんが、goldのジョーク(もちろん本
気ではない)は、ペイオフ解禁で金ブームが起こったことを踏まえて考えました。
インフレ期待が広まれば、再び確実にブームになるでしょう。
 本年2月8日付け朝日新聞の記事より
 http://www.asahi.com/business/news/K2002020800136.html
 業界最大手の田中貴金属工業による金の販売量の伸び:「具体的な数量は公表
していないが、田中貴金属の01年下半期の販売量は上半期に比べて2倍に増え
たうえ、今年1月の販売量は昨年の同じ時期に比べて5倍に増え、2月に入って
も順調に売れているという。」
 先物市場:「東京工業品取引所の金先物市場では決済時期別に何通りもの取引
が行われているが、6日の市場では各決済期でストップ高が相次いだ。7日の先
物市場でも過去最多となる34万枚(34万キロ)を超す大商いの中、前日並み
の高値で取引された。」

Id: #b20020401033646  (reply, thread)
Date: Mon Apr 01 03:36:46 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020331232402
Name: くろき げん
Subject: デフレ自体がやばいからデフレからの脱出が必要なのだ

どうして「構造変化」から出発する絵を描きたがるのか?

そもそも、インフレ率をプラスにする政策が必要なのは、デフレが続くこと自体に害があるからです。「構造変化」の問題は別問題です。デフレ自体が悪であることを説明しないと、間違った理解を広めてしまうことになります。

たとえば、もしもアメリカがデフレに陥ったら、やはりインフレ率をプラスに持って行く政策が必要になります。

金融政策の失敗が主原因のデフレ不況が原因の困難を利用して、自分好みの「構造変化」を起こそうとしている人たちがいる (シバキ主義者)。そういう流れに、ひめたにしさんは無頓着に見える点も気になります。

そういう流れの中で進んでしまう「構造変化」はきっとあまり合理的なものにならず、将来への過恨を残すことになると思います。デフレ不況を悪用させないようにすることは非常に重要な問題です。

「構造」の問題は、よりまともな経済状態のサポートのもとで、合理的な制度改革によって解決すべき問題です。

今回だけは珍しく、一つ一つに簡単にコメントします。

1. 「構造変化→消費性向の低下→より強いインフレ政策が必要になったが実行されていない→デフレ不況の悪化」という筋書きの出発点が「構造変化」というのはさすがにナンセンスでしょう。

よく語られているのは「金融引き締めの遅れ→バブル膨張→大蔵省と日銀によるバブル潰しのためのハードランディング政策→バブル崩解→不良債権が急増+ひどい不況→消費と投資が低迷し始める→必要な金融緩和の遅れ→GDPデフレータがマイナスの値に→流動性の罠にはまる→その後の政府と日銀の失策と無策→財政赤字の急増+デフレ不況のさらなる悪化」のような筋書きです。

デフレを伴う長期不況突入の原因に関して、「金融政策の失敗が大きい」という表現は妥当ではなく、「金融政策の失敗が決定的だったのであり、それ以外の要因は相対的にずっと小さい」と言うべきだと思います。

デフレ自身がデフレ不況を悪化させるからデフレは怖いのです。しかも流動性の罠にはまっているせいで抜け出すのが非常に困難になっている。この点はインフレ期待を高める政策に賛成するためには最初に押さえておかなければいけない重要なポイントだと思います。

2. デフレはやばいので、インフレ率を下げ過ぎないように注意しながら金融政策をずっと続けなければいけないというのはその通りです。

しかし、それは「構造変化」云々とは別問題です。「構造変化」云々がどうであろうと、デフレがやばいことに変わりはないし、インフレ率を下げ過ぎてしまうのも危険です。

3. 「産業構造の転換が速くなった」というのはどうやって計測したんですか? そして、それが原因で1990年代にぐんぐん失業率が上昇したというのは本当ですか? その証拠は?

戦後日本はかなりの産業構造転換を経験してきました。これからも様々な変化を経験するでしょう。現在の問題はその変化への適応を需要サイドに大きな害を与えないように行なうことです。お客様の需要サイドを大事にしないときっとバチが当たります。産業構造の転換に着いてこれない人はどんどん失業させた方が良いというようなやり方をするときっと失敗するでしょう。

4. 「バブル発生と崩壊が無かったとしても、日本経済は、より積極的なインフレ政策を採らざるを得ない構造変化を起こしている」というのはどういう意味ですか?

インフレ・ターゲティングの必要性を主張している人の大部分はせいぜい 1%〜3% 程度の値を提案しており、クルーグマンのように 4%〜5% のような少し大き目の数字を提案している人は少数派です。

少数派だからこそ、「決して荒唐無稽なものではない」とコメントすることに意味が生じるわけです。そして、もちろんのことですが、荒唐無稽でないから即どうしても必要だということにはなりません。

おそらく、 1980年代と同じ程度のプラスのインフレ率が維持できていて、流動性の罠にも陥いることが無かったならば、日本で積極的なインフレ誘導が必要だなどと誰も言い出さなかったでしょう。

5. 「年功序列賃金」の制度に限らず、オヤジが一家を支えることが前提になっている制度のせいで、オヤジ世代が失業した場合の深刻さが増している、ということであればその通りだと思います。そして、そういう制度はオヤジ世代以外の人たちにも害を及ぼしているということも事実でしょう。

しかし、現在の中高年層の失業問題が、無能な高賃金中高年層がいったんレールから外れると苦労する、という話であるかのように語ることには大いに疑問を感じます。

また、雇用流動化の流れの中で特に苦労するのは主に若い世代のしかも学歴その他の条件に恵まれてない人たちであり、様々な慣行に守られている中高年ホワイトカラー層ではありません。

現在の不合理な制度は改革した方が良いでしょう。しかし、それは皆にとってハードな路線ではなく、ソフトな路線で改革しなければまずいと思います。「無能な高賃金中高年層を何とかしろ!」というようなシバキ主義的な発想はきっと失敗するでしょう。

もちろん、ひめたにしさんがそういう考え方の持ち主だとは思いませんが。

6. 私は「今の豊かさで一応満足している人が多くても不思議は無い」というひめたにしさん個人の意見に反する報告があることを紹介しました。個人の実感で他人がどれだけお金を使いたがっているかを推測するのはまずいと思います。

7. 「お金持ちの個人金融資産はそもそも先祖伝来の土地だった」という事実はどこでチェックできますか?

8. 「お金持ちの金融資産が大部分キンになればいいな」というひめたにしさんの「超個人的考え」はさすがにナンセンスでしょう。いったいどこから gold の話が出て来たんだ? がっくり。

P.S. この記事は April Fool とは関係ありません。どうしようかな。


Id: #b20020331232402  (reply, thread)
Date: Sun Mar 31 23:24:02 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020331112156
Name: ひめたにし
Subject: 失業・リストラ・倒産は循環的問題
 「失業・リストラ・倒産」の大部分は、黒木さんがおっしゃるとおり循環的な
経済政策の失敗により激化したものでしょう。つまり、「構造変化-->消費性向の
低下-->より強いインフレ政策が必要になったが実行されていない-->デフレ不況
の悪化」という順序の後の方で出てきたものだと思います。(要するに原因より
も結果に近い。)そして、循環的問題である以上、これらを理由にしてインフレ
誘導策を取るなら、失業等が沈静化したら政策は終了することになります。
 ところが私は、インフレ誘導に終わりは無く、今後半永久的に持続しなければ
ならない政策ではないか、と考えています。その理由は、従来の景気浮揚策では
効かないほどの消費性向の低下が、「構造変化」として持続しそうだからです。

 ただし、失業の一部は循環的現象でなく構造変化によるだろうと思います。
 かつては、自分の職能を磨き続けるのが勤労者として立派な生き方だ、努力は
必ず報われる、という社会通念がありました。しかし現代では、産業構造の転換
が人間の寿命と比較して非常に短くなっています。つまり、若い頃に志して進ん
だ道でひたすら職能を磨いても、定年を迎える前にその職能が陳腐化してしまっ
たり、あるいはその産業自体が需要が少なくなって縮小し、別の産業へ労働力を
移動させる必要が出てきたりします。
 産業構造の転換が速くなったことも、「構造変化」の一つでしょう。この事実
は、不況と関係なく自然失業率を増加させるし、終身雇用制の維持を難しくしま
す。

 その他、黒木さんが「構造変化」と呼ぶのは反対と言われる内容を点検してみ
ましょう。

 まず、1990年代前半に起こった急激な変化を構造変化で説明することはできな
いということ。
 それは御指摘のとおり金融政策の失敗が大きいでしょう。しかし、急速にしろ
緩慢にしろ、日本の消費構造は同じ問題に向かうべくして向かっていると思いま
す。それはクルーグマンの指摘どおりでしょう。金融政策の失敗は構造変化の弊
害を劇的に露呈させることになりましたが、それに目を奪われ過ぎていては、根
本的な原因が見えなくなるのではないでしょうか。
 バブル発生と崩壊が無かったとしても、日本経済は、より積極的なインフレ政
策を採らざるを得ない構造変化を起こしている、と私には思われます。

 次に、定期昇給のような慣行の破壊を伴う賃金カットはデフレ不況のせいだ、
構造変化と呼んでしまうのはまずい、ということ。
 賃金カット全般としては確かに不況のせいです。けれども、「年功序列でなく
能力に応じた給与体系へ」の流れは、たとえ景気が回復しても止まらないだろう
と私は考えています。産業構造転換の速まりと市場原理導入の進展によって、雇
用の流動化は今後も進むでしょう。その中で年功序列賃金は、他ならぬ中高年層
の失業をより深刻にしています。この賃金体系において中高年者は生産性の割に
高賃金を支給されるので、いったんレールからはずれた場合はかえって悲惨にな
ってしまうのです。
 (ところで黒木さんは年功序列型賃金体系を肯定しておられるように受け取れ
るのですが、そう考えても良いでしょうか?)

 「大きな経済成長はもう望めない」、これは誰にもわからないことで水掛け論に
なりますが、私としてはやはり、今の豊かさで一応満足している人が多くても不
思議は無いと思います。(住宅の広さだけは別問題のようですが。)高度経済成
長期には、テレビドラマで垣間見るアメリカの家庭の生活は羨望の的でした。現
在では、テレビに羨ましい生活が映し出される機会よりも、世界中にある貧困が
映し出される機会の方が多い。かつてよりもモノが売れないのは当然ではないで
しょうか。

 ところで、お金持ちのお金を現物資産へと動かすのはなかなか難しいでしょう。
前にも書いたことですが、お金持ちの個人金融資産はそもそも先祖伝来の土地だ
ったんですから、ほぼ元本の保証されたものにしか変わらないと思います。(そ
ういう堅実な人たちが持ってくれているから安心とも言える。)
 まあ、当面は金(キン)、地価が下げ止まれば不動産へと向かうでしょうか。
 私の超個人的考えとしては、この際、お金持ちの金融資産が大部分キンになれ
ばいいなと思います。そうなれば、眠っていたお金は市中に出てきて(&円安が
進む)、代わりにキンが眠ることになります。そして遠い将来に日本が経済的に
危機(生産力低下による貿易赤字の累積とか)に陥ったときには、お金持ちのキ
ンを没収する法律を作って対外債務を返済し、みんなで生き延びようではありま
せんか。(日本の築いた富を政府に持たせておくより、ずっと安心だと思う。)

Id: #b20020331153943  (reply, thread)
Date: Sun Mar 31 15:39:43 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020331141200
Name: くろき げん
Subject: 何が売れるかを予想するのは難しい

個人的にはインターネットはもっと普及すると思っているのですが果たしてどうか?

「どういう需要が増えるか」という問いは「何が売れるか」という問いに限りなく近い。本当のところは誰にもわからないのではないでしょうか? 経済がまともな状態になれば売れるものは売れるとしか言えないと思う。もしかしたら、インターネットなんかとは無縁の普段の生活レベルをアップするような地味なものが結構売れるかもしれない。個人的には世の中を面白くするものがたくさん売れてくれる方が嬉しい。そういう状況を眺めるのが好きなのだ。

しかし、超売れ線の新製品が出れば需要が増えるという考え方が必ずしも正しくないということは、ここ10年のインターネットと携帯電話の経験からはっきりしていると思います。確かにそれらの新しいものにお金を出す人は増えたけど、その代わりに他のものに使うお金を減らしており、全体では低迷してしまっている。企業側がどんなに努力して新製品を開発しても景気回復には役に立たないかもしれないのです。だから、政府と中央銀行が何とかしなければいけない。

お金の供給量が増えれば需要が増えるという話については、クルーグマンが好んで紹介している子守り協同組合の話が面白いと思います。

財政赤字を伴う財政出動は原理上最低でも「真水」の分だけ必ず需要が増えます (現在の日本ではクラウディング・アウトを心配する必要はない)。しかし、財政出動が呼び水になって需要が継続的に増え続けた状態にならない限り、永久に財政出動を続けなければいけなくなってしまいます。デフレが継続したまま財政出動してもそうなってしまう可能性はかなり高いと思います。 (クルーグマンのモデルの世界では必ずそうなる。 1990年代の財政出動には確かにかなりの効果があったが、継続的な需要増大をもたらすことには失敗しており、効果は一時的なものだったに過ぎません。実際、財政出動を減らした途端に景気が後退している。)

ちなみに高橋財政のときには、デフレは国債の日銀引き受け前に止まっています (安達論説の図2の東京地区小売物価指数の動きを見よ)。高橋財政は金輸出再禁止 (1931.12.13) によるデフレ脱出と国債の日銀引き受け (1932.11.25) の二段ロケット方式になってました。途中に 5.15 のような滅茶苦茶な事件があったにもかかわらず、恐慌脱出によく成功したものです。当時に比べれば今の方がよりましな状況だと思うし、経済に関する知識も増えているので、高橋是清よりも今の日本はうまくやれるはずだし、そうであるべきだと思います。 (メディアを通じて発信される政治家の発言を読むたびに暗くならざるを得ないのですが。与党も野党も一体どうしたんだ?)

個人的には、政府支出をしばらく減らさずに中立を維持したまま、デフレ脱出に全力を尽くし、それだけで景気が回復するなら、それで良しだと考えています。 (ちなみに、アメリカは、1990年代前半に日銀が "too little too late" な金融緩和で大失敗しているときに、グリーンスパンがドカンと金融緩和してひどい不況から脱出して、 1990年代の経済的繁栄を築いています。 IT バブル崩解によるかなりひどい景気後退も政策金利をインフレ率よりも下げて乗り切ろうとしています。)

しかし、デフレを脱出してもまだ勢いが足りないなら、呼び水になるような財政出動を効果的にやることを考えなければいけなくなるかもしれない (個人的にはそうならないことを祈りたい)。そのときには財政出動する先を今までとは違ったものにするべきだと思う。コンクリートで固めるタイプの財政出動はそろそろ止めた方が良いでしょう。そのときには何に財政出動すれば良いかについて真面目に考えなければいけなくなる。

P.S. 30年以上の長いスパンで考えるとき、 1990年代に急激に悪化した少子化の問題は極めて重要な問題なので、政府の役割に関する新美の提案のような考え方は真面目に考慮されるべきだと思います。


Id: #b20020331141200  (reply, thread)
Date: Sun Mar 31 14:12:00 2002
Name:
Subject: どんな需要を喚起するべきでしょうか

はじめまして。電気会社で半導体関係のエンジニアをやっています。愛読書は「私は闘う」(野中広務)、尊敬する政治家は後藤田正晴、好きな政治家は亀です(尊敬するのと好きなのは、微妙に違う)。趣味は史跡散策です。

今の日本経済の危機的状況を脱するためには、短期的には亀が主張する財政出動をやるのが適切ではないかと思っています。

ただ、長期的にみたとき、どんな経済で安定するのがいいのか、よくわかりません。
具体的に、どんな需要が増えるべきなのでしょうか。私が関係している半導体製品などは、あれば便利だけど無くても構わないと思うものがほとんどです。そんなものを作りつづけてるもんだから、給料が安いのも仕方ないのかと思うところがあります。
黒木さん自身が、購入意欲がわくものを分析しています。
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/b0037.html#b20020309033530
「ハードディスク付きテレビでも、買ってみようかな」「買ってみたら、ついでにあれもこれも」という感覚に私も共感をおぼえるのですが、そういった衝動買いによって景気が維持されるべきなのでしょうか。あるいは、地方にもっと道路を建設するのがよいのでしょうか。そうではなく、科研費などをもっと増額して大学の設備を増強するのが良いのでしょうか。
私にこれといったビジョンがあるわけではないです。ですから、「こうだ」「こうしろ」という主張ではありません。もし、ビジョンを持ってる人がいたら、示してもらえませんか。
Id: #b20020331134319  (reply, thread)
Date: Sun Mar 31 13:43:19 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020331133037
Name: くろき げん
Subject: ゴキブリに失礼だったかな

あ、なるほど田中秀臣さんでしたか。ぎゃははと笑ってみましたが、よくよく考えてみるとこの笑い方はゴキブリに失礼でした。ゴキブリおおいに結構と嗤うべきでした。「声の出るゴキブリ倶楽部」でも作りましょうかね。


Id: #b20020331133354  (reply, thread)
Date: Sun Mar 31 13:33:54 2002
Name: くろき げん
Subject: 消費飽和説を根拠も無しに語るのはもう止めよう

「みな、現在では、自分の消費生活に満足しており、さらに欲しいものはないし、これ以上お金を使いたいとは思ってない」のようなことを言う人がかなり多い。

しかし、新美一正による分析によれば、「費目別需要の所得弾力性推定値は飲食費と雑費が1を超え、他の3費目【引用者註:被服費、光熱費、住居費】も1にきわめて近い値をとって」おり、「さらに雑費を除く4費目需要の所得弾力性は横ばいないし緩やかな上昇トレンドを維持している」のだ。

すなわち、日本の消費者は、所得が増えれば増えた以上の割合で飲食費と雑費を増やす傾向があり、被服費、光熱費、住居費も所得が増えた分に近い割合で増やす傾向があり、しかも雑費を除く項目については所得が増えれば増えるほどたくさん増やす傾向が緩やかに上昇して来たのだ。

もしも、「みな、現在では……これ以上お金を使いたいとは思ってない」という説が正しいならば、現在では所得弾力性は低いはずだし、年々低くなって来たはずです。しかし、新美の結論は現実にはそれとは逆のことが起こっているらしいことを示しています。


Id: #b20020331133037  (reply, thread)
Date: Sun Mar 31 13:30:37 2002
Name: 田中秀臣
Subject: ハンドルネーム変更?
黒木さん、すんません。自己紹介が足りなくて。「声の出るゴキブリ」です。
で、ハンドルネーム訂正します、「田中秀臣」に(笑)。

で、消費と投資の問題を私もいま考えています。消費-貯蓄の構造問題は、村
山昇作氏の『目からウロコの日本経済論』にかなり詳細に、サプライサイダー
的観点から書かれていますね。結局は、インフレターゲットがきかない、特に
消費に影響を及ぼさないという論点です。確かにこのインフレターゲットによ
る消費経路は、「実感」としては判明しかなねます。いま、インフレターゲット
の理論的基礎をおさえる勉強を急ピッチでやっているのですが、そこがひとつの
論点です。しかし角度をかえるとインフレターゲットと消費の問題が論点になるのかという根本から
問直す必要があるでしょうね、なるにしてもどんな形でかとかなり慎重に取り
組む必要があるでしょう。この問題はすぐれて「実証」的
な問題かもしれませんが、それを先取りする形で、上の村山氏の本は実証的
に消費とインフレ期待の経路を否定しています。この反論にもこたえる必要
があるのかな、と思っています。

またまた雑録めいたもので掲示板を汚しました。ご容赦ください。

そろそろ春休み終了で、またまた苦行の日々がはじましまります。みなさん
もお体には気をつけて。

*「声の出るゴキブリ」の話は、私の小学校の先輩である畏敬すべき方から
の伝聞から知りました。


Id: #b20020331112156  (reply, thread)
Date: Sun Mar 31 11:21:56 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020331080130
Name: くろき げん
Subject: 「構造変化」という説明の仕方には大反対

老後が不安だとか、賃金はもう上昇しないのではないかという不安だとか、そういうもろもろの不安が消費に悪影響を与えていることはその通りだと思います。しかし、それを「構造変化」と呼び、しかもそれが当然の既成事実であるかのように述べることには反対です。おそらく考え方が根っこの部分で間違っていると思う。そういう考え方を宣伝するのはまずいと思う。

そして、ひめたにしさんはなぜか世間では騒がれている失業・リストラ・倒産という目の前の不安をほとんど無視しているように見えます。

構造変化はゆっくり起こるはずなので、 1990年代前半に起こった急激な変化をそれでは説明できません。

これに対して次のような考え方はここ10年に起こったことを非常に良く説明できる。前川レポートのようなトンデモが1980年代後半に喧伝され、金融引き締めの遅れによってバブルを膨張させまくり、バブル崩解後には "too little too late" な金融緩和のせいでデフレに突入してしまった。 GDPデフレータで見てインフレ率は消費税率引き上げの効果を除けば1994年度からずっとマイナスの値になっている。消費者物価指数で見てもここ3年続けてインフレ率はマイナスになっている。デフレは需要を減らし、実質金利を高止まりさせ、借金を重くするだけではなく、様々な調整を困難にします。

たとえばデフレ不況下において定期昇給制がひどい困難にぶちあたることは明らかでしょう。

不況で企業が賃金を抑制したいとき、もしもインフレ率が 3% であれば昇給を 2% に押さえれば実質賃金を 1% 減らすことができます。しかし、インフレ率が -1% ならば昇給を 2% に押さえても実質賃金が 3% 増えたことになってしまう。この二つのケースの差は年に 4% なので非常に大きい。それが3年続いただけでなんと10%を超える差が出てしまいます。実際、 1990年代に入ってから労働分配率が高止まりしているという事実があります。

デフレ不況が続けば、企業はまず新規採用を減らして人件費を抑制し、それで足りない分はリストラという名の首切りを増やして何とかしようとする。さらに、経営者サイドは実質賃金カットを実現するためについに名目賃金カットを断行し始めることになります。そして賃金カットによって過去の慣行が大きく変更されたり、実際には一時的なものであっても変更されたと皆が感じるようになる。最近の流れは実際にそうなっているわけです。

定期昇給のような慣行の破壊を伴う賃金カットを「構造変化」と呼びたくなるのは当然でしょうが、その根っこは1980年代後半から1990年代前半にかけての金融政策の失敗によるデフレ不況突入にあるのだから、当然の変化であるかのように語ってしまうのはまずいと思います。

「大きな経済成長はもう望めない」という意見がメディアでよく宣伝されてますが、デフレ不況を脱出してからの様子を眺めてみてからでなければ何とも言えないと思います。皆の自信の無さは現在の不況が原因であるところがかなり大きいと思う。好況期のわけのわからない自信の裏返しだと思う。 1980年代の日本のあのわけのわからない自信は何だったのか。

「現在の衣食住やそこそこの文化的生活は満足している」というのは人によるのでは? 十分安定した収入が約束されている人はそうかもしれないですが、失業・リストラ・倒産の憂き目にあっている人はそうではないし、自分もそうなるかもしれないという不安をかかえざるを得ない人たちは現在の状況に満足しているとは思えない。

あと、インフレ率が上昇するという予想を高める政策に賛成している人たちは、それによって貧乏な庶民が消費を増やす効果をそれほど期待しているわけではないと思います。金持ちが眠らせている大量のお金が動けばそのうちの一部は生産物に向かうはずなので需要が増えるという効果を期待しているのだと思う。あと、インフレ率がプラスになれば、借金は軽くなり、賃金調整も慣行の大きな変更なしに可能になります。 (そして、需要が増えてインフレ率がプラスになればパイ全体のサイズも大きくなる。)

庶民の消費低迷の主原因はおそらく不安にあるのだから、まず目の前の不安の原因である失業・リストラ・倒産を減らさなければいけません。需要が増えてインフレ率がプラスになれば失業・リストラ・倒産は減少します。

実際にそうするのは難しいでしょうが、目指す方向に間違いはないと思う。


Id: #b20020331095801  (reply, thread)
Date: Sun Mar 31 09:58:01 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020330233853
Name: くろき げん
Subject: 山崎元の「名言」

声の出るゴキブリさん、「私のように「声の出るゴキブリ」(マクロ経済学の教科書レベルの知識で時論を語るへぼ経済学者を意味するJMMでの山崎元氏の「名言」)が……」の部分が一応自己紹介にはなってますが、名指しでの厳しい批判をするには十分とは言えないような気がするので、さらに厳しい発言を続けたい場合はより詳しく自己紹介をよろしくお願いします。そうそう、「声の出るゴキブリ」さんとは呼び難いので次回からは別のハンドルを使って欲しいです。

あ、でも、「声の出るゴキブリ」という山崎元の「名言」の話にはうけました。ぎゃはは、「ゴキブリを誘い出す餌」という言い方をしてますが、誰が真のゴキブリであるかは一目瞭然だ。

なるほど、山崎は1999年9月20日の時点で「幸い、患者(日本経済)は少し元気になってきたようにも見えます」と述べていたわけですね。

確かに、実質GDP成長率は1999年から2000年にかけてプラスの値だったのですが、ひどいデフレが続き、名目ではむしろマイナスぎみたったし、完全失業率も減らなかった。要するに、物価を下げて数をさばいたけど、金額的には収入は増えなかった。そして、 2001年に入ってからはひどい景気後退を経験することになり、完全失業率がまた上昇し始めた。山低くて谷深しというのが1992年以降の特徴ですよね。しかも、 1995年から1996年の山に比べて、 1999年から2000年の山は小さい。おそらくデフレが止まらないとずっとそういうことの繰り返しになってしまう。

在庫循環的にはこれから日本は1999年から2000年にかけてと同様の景気回復期をむかえる可能性が高いのですが、ここ10年の経験を見る限り、デフレが止まらない限り、失業者を減らすだけ十分な回復は望めないと思う。


Id: #b20020331080130  (reply, thread)
Date: Sun Mar 31 08:01:30 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020327214542
Name: ひめたにし
Subject: インフレ誘導策が必要なシンプルな理由
 「不況」「構造改革」でなく「構造変化」によって、現在の循環的問題をシン
プルに説明できるし、インフレ誘導政策の必要性もすっきり理解されるのではな
いかと考えつきました。

 人々がお金を今でなく将来使いたいと思うようになったのは、不況のせいとか
循環的な問題よりも、構造的な問題の方が大きいでしょう。つまり、現在の衣食
住やそこそこの文化的生活は満足している、一方、大きな経済成長はもう望めな
い、老後が長くなった、人口全体の中で高齢者の比率が増えた、年功序列制が崩
れて賃金のピークは30代程度になりそうだ、地価が物価上昇率以上に上がる見
込みも無い、このような「構造変化」です。
 こういう変化は日本が先行してはいますが、世界的にもいずれ起こってくるで
しょう。(クルーグマンの指摘どおり。)このような構造変化の中では、循環的
な経済政策を従来とは変える必要がある。すなわち、積極的なインフレ策を取っ
て、決してデフレに陥らないように、人々がお金を持ち続けず、消費か投資のど
ちらかにまわす圧力を掛けつづけなければならない。

 ・・・と説明すれば、短い言葉で誰でも納得できるのではないでしょうか。

 ただし、これはゴールを説明しているだけであって、過渡期の混乱について何
も言及していません。さんぼんまつさんも黒木さんも、インフレなら消費は増え
るというお考えですが、それは、ある程度インフレが定着し、皆がインフレを当
たり前と感じるようになった後の状態だと思います。インフレが当たり前の世界
では、給料もそのうち上がると楽観できます。しかし、現在のデフレ状況からイ
ンフレに転換する際には、一時的な消費の低迷は起こると、私には思われます。

 政策発動から安定的なマイルドインフレが定着するまでにどんな経過をたどる
か、誰も解説してくれないので、大胆にも私(ただの庶民)の想像を書いてみま
す。

[政策決定・発動]
 政府と日銀が共に2〜3%のインフレ目標を定め、国債の買い切りとドル・ユ
ーロ買いを大規模に行い始める。政策の決定が予測される頃から、円安が始まる。

[最初の一年くらい]
 円安によって、輸出産業の収支は改善する。個人金融資産を多く持っている人
は、ドルやユーロ建ての比率を増やす。さらに円安が進む。
 輸入物価が上昇し、それに応じて様々な物価が上がる。(その上昇率は2〜3
%にとどまらないものも多いでしょう。なぜなら、為替相場は2〜3%より大き
く変動するから。)特に影響が大きいのは、電気・ガス、輸入原材料・食料・衣
料・日用品など?
 生活必需品の買いだめの傾向が出る(消費増加)、一方、ぜいたく品の購入や
海外旅行は控えられるようになる(消費減少)。住宅を購入する人は、計画を早
める。
 地価の下落が鈍化し(止まるわけではない)、不動産市況が活気づく。
 企業の設備投資は全体としてやや増加?売り上げの下がった業種は様子見。株
価もまだらながら、全体として上昇。

[次の一年くらい]
 輸出産業では給料が上がり始める。建設・不動産は給料上昇まで行かないけれ
ど、倒産とリストラが少なくなる。その他の産業は明暗が分かれる。
 物価が上がっても給料も上がるから大丈夫、と悟った人たちには、安心感が広
がる。給料が上がらない人たちは不安。(サービス業や公務員の給料上昇は一年
程度遅れるでしょう。)
 年金は物価スライド分上昇。しかし高齢者は、預金の金利が相変わらずゼロに
近いので、生活不安が強い。少ない預金でも、一部はドルにしておいた方がいい
かもと思い始める。円安はまだ進む。
 前年の地価下げ渋りを反映して資産デフレが緩和し、住宅ローン世帯の消費性
向が上向く。企業のバランスシートが改善し、「三月危機」という言葉が久しぶ
りに聞かれなくなる。

[その次の年から]
 産業ごとの明暗がならされていって、最後には安定的なマイルドインフレに。

 問題は、安定的なインフレが定着するのは政策決定から何年かかるのか。上記
のようにスムーズに流れても2〜3年はかかりそうです。その間には、おそらく
総選挙があるでしょう。
 シナリオをどう組み立てても、高齢者はインフレでほとんど恩恵を受けません。
子供や孫のため(あるいは子供や孫に扶養されている人にとっては自分のためで
もありますが)としてどこまで理解を得られるでしょうか。65歳以上の人口は
2200万人。みんな真面目に投票に行かれます。
 政治家にとっては、これは相当勇気の必要な決断になりますね。

Id: #b20020330233853  (reply, thread)
Date: Sat Mar 30 23:38:53 2002
Name: 声の出るゴキブリ
Subject: 構造改革思うこと
ここ数日、「じっと耐えて待つ」経済学者というタイプの知人に接して思う
ことを書かせていただきます。

私はいわゆる構造改革主義の人の論著をいろいろ読みますが、いろいろと
政策提言をしているが、結局は「何もしない。しなくても耐えれば何とかなる」と
いう価値判断があると思いますね。本当は「価値判断」ではなく、それは古典派
の時代から「セー法則」といわれる経済理論なのだから、当然に議論の対象に
なると思います。しかし、この我慢系の経済学者に共通する心性は、「セー法則」
は議論の対象や検証の対象になるものではなく、本人たちにもましてや論敵には
触れてはならない「価値判断=聖域」だということです。だから、私のように「声
の出るゴキブリ」(マクロ経済学の教科書レベルの知識で時論を語るへぼ経済学者
を意味するJMMでの山崎元氏の「名言」)が、彼らにその「我慢の経済学」の成立
根拠を論証してくれと頼んでも、これは論理ではなく、「価値判断」であり、それ
を論議の対象にするのはルール違反である、神々の争いを強要するものである、と
論議以前に感情的な対立になってしまうわけです。
実際に、構造改革主義者やミクロ系マクロ経済学論者(?)は、この我慢の経済学
の立場でありますが、それは彼らの信仰箇条なので、めったに「何もしない、我
慢するだけ」なんて書いている人はおりません。たまにちらっというだけです。
実際に本音をいうとまずいと彼らも思っているのでしょう。「小さな政府」とか
カモフラージュしたり、「明るい構造改革」とか雇用創出数百万人計画だとか
をぶちあげるのですが、中身を見ると結局は実現不可能なものばかり並んでいる。
これは彼らが能力が低くそのような実現不可能なプランをいったりしているのでは
なく、実は最初から実現する気がないからだと私は思うようになってきました。
私から見れば、彼らは「我慢の経済学」を信仰の問題に摩り替えるのではなく、何
もしないというその「論理」を提示して、広く江湖の議題としていただきたいと
最近思うようになりました。正直に、「何もするな!」と宣言して、それを経済学
として提出してくれる「素直な構造改革主義者」を求めたいと思います。私には
そのような素直な構造改革本がないのが前から不思議でした。そのわけが、「何も
するな!」というのは、学問の対象ではなく、秘められた宗教的な信条だったのか
、と思い当たり、多少、「変化球」で意味不明かもしれませんが、投稿させていた
だきます。

ちなみにアメリカではそのような「素直な構造改革主義者」は20年代にいました
ね。W.ミッチェル。彼がおそらくそのような人物だったのではないかと思います。

Id: #b20020328192031  (reply, thread)
Date: Thu Mar 28 19:20:31 2002
Name: くろき げん
Subject: 日経新聞3/25経済教室の池尾和人論説の問題点

「トンデモ経済学家元追究委員会」の375-381 (経済/経済学@いちごびびえす)

新聞の経済がらみの論説の多くは信用できません。結局のところ別口で裏を取らなければいけなくなる。

どこかの経済学部の最近の議論に興味を持っている学生の方あたりが、関連のデータをわかり易くまとめたウェブサイトを作ってくれると皆本当に助かるんじゃないかな。最近のデータはネット上で手に入るのですが、 1930年代頃のデータはそうではない。最近のデータであってもわかり易くまとまってないと一般人には敷居が高くなってしまう。

1930年代のデータに皆が近付き易くなっていれば、「銀行からお金が出て行かないからデフレを止められないと言っている人がたくさんいるようですが、高橋財政時には銀行貸出増加の前にデフレが終了していたんだよね」というようなことを言える人が今よりずっと増えるはず。

各国の最近のデータに皆が近付き易くなっていれば、「インフレターゲティングをデフレを止めるために採用している国はないと言っている人がいるようだけど、 0〜3%のインフレターゲティングを採用しているニュージーランドは、 1998年末から1999年にかけてインフレ率がマイナスになってしまったときに強力に金融緩和を行なってインフレ率を上昇させて目標値の範囲内に戻すことに成功しているんだよね」というようなことを言える人も増える。 (ニュージーランドの事例は、高橋洋一 (経済産業研究所客員研究員) が『週刊ダイヤモンド』2002年3月23日号の66-67頁で紹介していた。)

問題なのは情報があちこちに拡散し過ぎていて、一般人にはアクセスし難い状態になっていることなんだよな。インターネットに普段からアクセスしている人はまだ一般人とは言えないかもしれないですが、ネット上のどこかに情報を集中させておくのは非常に良いことだと思います。


Id: #b20020327214542  (reply, thread)
Date: Wed Mar 27 21:45:42 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020327122450
Name: くろき げん
Subject: 消費と投資と規制緩和について

1. 消費について

マイルド・インフレ自体が消費が減る主な原因になることはないでしょう。他の要因が変化しなければマイルド・インフレは消費を増やす働きがあるはずです。

さんぼんまつさんも指摘しているように、消費税率アップの直前にはかなり激しい駆け込み需要がありました。ひめたにしさんは買い急がなければいけないものがあるかどうかについて疑問に思っているようですが、消費税率アップのときには実際に買い急いだ人がたくさんいたようです。 (あと、何の値段が上昇するのかについてもひめたにしさんは気にしているようですが、それは売れば確実に儲かるものは何か、と聞いているようなものなので誰にもわからないと思うし、前もってわかっている必要もないと思います。)

インフレは現金の価値が下がり続けることですから、現金を使わずに放置して減価させてしまうくらいなら、ちょっとだけ消費を増やしてしまおうと思っても不思議ではないし、そうすることは合理的でもあると思います。個人的な意見に過ぎないかもしれませんが、1980年代までのインフレの時代にはそういう感覚はかなり普通だったと思います。特別に買い急ぎたいものがなくても、そのような感覚が復活すれば消費が少し増えるということはあり得るでしょう。 (消費が少し (数パーセント) でも増えるということは実は大変なこと。)

そして、そのような形で増えた消費は駆け込み需要とは違って継続性があると考えられます。だから、少子高齢化時代に備えて以前の日本のインフレ率の平均値である2〜3%よりも少し高い値にインフレ目標値を設定するというクルーグマンの提案は決して荒唐無稽なものではないと思う。

消費が低迷してしまう主な原因は「将来の不確実性が原因の不安」でしょう。

新美一正の実証研究によれば、日本では、家計消費は所得不確実性から支配的な影響を受けており、将来不安の高まりが家計の貯蓄率を引き上げる傾向があるそうです。

ひめたにしさんが挙げた消費を控えざるを得ない理由も主として「将来の不確実性が原因の不安」の方です。デフレからインフレへの移行とは別の問題です。「デフレを終了させてマイルド・インフレを目指すこと」と「将来の不確実性が原因の不安」は別の議論にした方が良い。繰り返しになりますが、私は両方を解決することが必要だと考えています。

ただし、「高福祉高負担方式」がどこまで実現可能かどうかについてはよくわからないし、財政コストを無視した雑な提案には全く共感できません。しかし、メリットがコストを上回る可能性が高い項目についてはどんどんやるべきだと思います。たとえば、またしても新美の提案なのですが、公的保育サービスの整備

おそらく、多くの庶民は、今の政府は自己責任の原則を貫き、我々のためには何もしてくれない方針を取りつつある、と考えています。そういう理解を覆すような方向転換を宣言するだけでも大きな意味があると思います。マスコミの論調も変わるべきだ。

2. 投資について

「投資」という言葉は日常的には「株式投資」のような意味で使われることが多い。しかし、「消費と投資」と組で考える場合における「投資」の意味はそれとは異なります。その意味での「投資」の典型例は生産力増強のための「設備投資」です。新たに商売を始めるためにパソコンなどの事務機器を買い揃えるのも投資です。

ひめたにしさんは「投資機会を増やす政策」の例として「金融ビッグバン」を挙げているのですが、説明不足のせいで誤解されているのではないかとちょっと不安なのだ。具体例をあまり知らない私がまずいのですが。

要するに「投資機会を増やす政策」というのは規制緩和のことです。

3. 規制緩和について

何でも競争原理を導入すれば効率が上がると思っている単純思考な方々が煽っているのとは別に、実際にやった方が良さそうな規制緩和の具体例にはどのようなものがありますかね? 良識派による規制緩和の具体的提案はもっとあるべきだと思う。

たとえば教育分野であれば、初等中等教育で詳しくて面白い教科書が使用可能になるような規制緩和であれば大賛成 (cf. 左巻健男らによる検定外中学理科教科書の試み)。教科書一冊あたりのコストが数倍になっても、学校図書として教科書を生徒に貸与する制度を標準にすれば問題はない。

やらない方が良さそうな規制緩和は、新美が指摘しているように、初等中等教育における教育ヴァウチャー制度、学校自由選択制、チャーター・スクールなどの公教育の私事化です。現実には止めた方が良さそうな提案の方が文部科学省の「ゆとりの教育」的発想と結び付くことによって実現してしまいそうな点がちょっと怖いです。

現在の“改革”万歳の流れが無謀な教育“改革”を実現してしまい、将来世代における知識の分断をよりひどくすることに貢献し、結果的に将来必要な生産性向上の阻害要因になってしてしまうかもしれない。ちょっとした雑談でそういう危険性について語る人がもっと増えて欲しいと思います。


Id: #b20020327122450  (reply, thread)
Date: Wed Mar 27 12:24:50 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020325184624
Name: さんぼんまつ
Subject: ひめたにしさんへ

ひめたにしさん、御返答ありがとうございます。さんぼんまつです。
書き込みが遅れてしまい、申し訳ありません。また、議論の流れを紹介いた
だき大変恐縮です。さて、

>インフレ期待を高める政策を実行したとして、すべての物価が一斉に上昇し始
>めるわけではありませんよね。どのようなモノから実際に値上がりが始まって、
>どの段階で消費が上向き、給料も上がり、景気が回復するのか、というだいたい
>の筋書きを、私はとても知りたいのです。私だけでなく、貯金だけを心の支えに
>老後を送っている国民年金受給者は、筋書きを聞かなければ納得しないと思いま
>す。そういうことを述べた文献があれば、ぜひ教えていただきたいです

おっしゃる通りにインフレにするという宣言だけでは、あまりピンと来ない
と思います。
僕の個人的な理解として、インフレが消費に与える経路というものは、
楽観的で簡単すぎるとは思いますが、

現在のデフレの打破→企業の収益の改善、実質金利の低下→投資の増加
→生産の増加→雇用の増加→賃金の増加

という認識を持っております。
ただ、どのようなモノから値上がりが始まるのかということの予測は困
難を極めるのではないかと考えております。もし、そのような事
が分かるとして、アナウンスしたとしても投機の対象となって一部の人
にその恩恵が片寄る可能性もあるのではないかと思います。
また、そのようなシナリオを述べてある文献は存じ上げません。
稚拙、抽象的な意見で恐縮です。それでは失礼いたします。
Id: #b20020327020930  (reply, thread)
Date: Wed Mar 27 02:09:30 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020325221548
Name: ひめたにし
Subject: 消費に関する構造問題
 インフレ誘導は、投資の期待収益率に対して必ずプラスに働きます。しかし、
極端な話、投資だけ増えて消費が増えないならば、「期待収益率」は裏切られる
ことになります。現象としては、株価が一時的に上昇してまた下がるでしょう。
 それに、投資機会を増やす政策は、金融ビッグバンを端緒としてかなり進んで
きたように思います。超低金利が続いていることもあり、人々の投資意欲は放っ
ておいても非常に高い。(八葉物流のような話はもう覚えきれないほど。)消費
意欲が地域振興券程度では盛り上がっていないのと対照的です。

 ところで供給側に関する構造問題は繰り返し話題になっていますが、消費側の
構造問題については発言があまり無いので、考えてみました。
 第一に、高齢化があります。年金の不安が全く無かったとしても、高齢者の比
率が増えること自体で預金の総額が増えます。現状では、将来的にも急速に高齢
化が進むこと(=年金不安)が予測されるため、余計に預金する傾向が強まって
います。
 第二に、日本型雇用システムのほころびがあります。これはもっぱら供給サイ
ドの効率問題として語られますが、私は、日本型雇用システムは非常によくでき
た消費対応報酬システムだと思います。ヨーロッパのようにはっきりした階級が
無く、アメリカのように地域的な住み分けも無い日本は、生活レベルを極端に高
くも低くもしにくい社会です。従って消費水準は、ライフサイクルの各ステージ
で誰でもかなり一様です。(教育費とか、住宅取得とか、老後準備とか・・・)
収入が能力に応じて決まるより、年齢に応じて決まる仕組みの方が、消費の面か
らは効率的でしょう。

 でも、今から日本型雇用システムを固守しようと主張しても、無理があります。
これは大多数の人が似たようなライフサイクルの人生を送るという前提での給与
体系ですから、昨今のように夫婦共働きとか生涯独身の人が多くなったら不公平
感が先に立ちます。
 現在、雇用者のかなりの部分は「将来的に能力給が主流になるのではないか」
と考えていないでしょうか。そうだとすれば、賃金のピークは30代、せいぜい
40代までで、人生80年の消費をまかなうための資金をその時期に稼いで長期
間保有しなければならないのではないか?という不安を持っていないでしょうか。
(私は持っています。)こういう不安も貯蓄を増やす要因だと思います。

 解決策として、BUNTENさんが提案されたような「インフレ策(=資産の強制的減
価)を併用した累進課税主体の高福祉高負担方式」も有効とは思いますが、大幅増
税が必要ですから、その方向へ進むとしても景気が回復してからですね。回復し
た後でも、どの程度の高負担で合意できるか未知数です。
 バブル崩壊までは、必ず値上がりする住宅が大きな役割(貯蓄の代わり)を果
たしていました。でもこれからは期待できそうにありません。
 移民を大量に受け入れて労働力不足を補うという話もあります。しかしこれは
経済上のことだけで済まないため、国民的合意に至るのかどうか定かでありませ
ん。
 現状で考えて最も受け入れられそうなのは、「身体が元気なうちは働ける機会
を増やす」ことと「働き盛りの時期に蓄積した資産を元手に、現役世代の所得が
引退世代に適切に移転される仕組みづくり」でしょうか。
 後者は具体的には、株式、不動産、債券などが考えられますが、引退世代が増
えた社会では、これらの投資の収益率が低くなるのは自明のことで、移転される
所得に限界があります。すると、どうしてもある程度は海外の成長率の高い国へ
の投資に向かうのでしょう。

 インフレターゲット政策を年金世代にも理解してもらうには、上記のような構
造問題まで話す必要がありそうに感じます。「今は現役世代4人で一人のお年寄
りを支えているけれど、20年後には2人で一人を支えることになるります。日
本の中だけでこういうことをするのは無理があるでしょう。だから、若い人がた
くさんいて発展中の国に投資して、そういう国の人たちに助けてもらいましょう」
とか。

 現実にも、日本は既に貿易黒字より海外資産による所得収入の方が多い国にな
っています。移民を受け入れないなら、お金を媒介に労働力を買うしかないよう
に思います。インフレターゲットは、それを機関投資家だけでなく個人レベルで
もしなければならないということを、各人が認識するきっかけになるのかもしれ
ません。

Id: #b20020327013512  (reply, thread)
Date: Wed Mar 27 01:35:12 2002
Name: くろき げん
Subject: 10円パン

ブタネコさん曰く、「教育ついでに、今朝のテレビで秋田県本荘高校の名物10円パンに殺到する男子生徒の元気な姿を映してた。このパン屋がなくなり名物もなくなるとか、これもグローバリズムかしら。」

これはなつかしい話だな。殺到して10円パンを買ってました。ずっと続いていたとはすごいな。名物がなくなるのは残念。何十年間も続いていたのに。次に帰省したときに話題にしてみよう。


Id: #b20020326234036  (reply, thread)
Date: Tue Mar 26 23:40:36 2002
Name: 田中秀臣
Subject: 岩波ではなくて
ええと、『梅園全集』は名著刊行会で出てます。その中の「慈悲無尽講」です。
『三浦梅園集』が岩波文庫です。「講」関係は前者の『梅園全集』を読んだほうが
いいでしょう。

Id: #b20020326221314  (reply, thread)
Date: Tue Mar 26 22:13:14 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020326211606
Name: ときた
Subject: どうも

明日、 カチャーリの講演会にいく途中、岩波文庫の『梅園全集』を買い、中の『価原』を読んでみます。
熊沢蕃山もまず、自助があって、互助があり、それから他から助けていただく三重円だったような。
で、村社会の封建制がいやでまん中の互助がなくなり、中心のマイホーム主義と外の藩のかわりの大会社みたいになり、肝心の自助もミーイズムで近代個人主義ではないといった。
19世紀後半のアルゼンチンのハイパーインフレに頭にきたベルギー商人のゲゼルが日本で流行するのは、世界一周ですね(呵呵)
僕は贅沢人間なので、地域通貨があまり好きになれないのは、あいなめの神経をうまく処理し、旨いさしみにしてくれた魚屋のオヤジとか、プロのサービス労働には十分な対価でお礼しなくちゃ失礼とおもうからなんですが。
で、質問みたいな、感想みたいな文をだらだらup して失礼しました、どなたでも、答えていただけたらと思うのは『たかたさんの意見』と橋本にある、危機の深さをどう思うかです。
Id: #b20020326211606  (reply, thread)
Date: Tue Mar 26 21:16:06 2002
Name: 田中秀臣
Subject: 梅園補足
「講」については、『梅園全集』がいいでしょう。これも街の図書館からとりよせ
可能です。

ちなみに「講」的な相互扶助の考え方を経済論的な発想まで高めたのは、梅園
が最初ではないです。太宰春台とかにも同様の話があります。ひょっとしたら16
、17世紀に起源がさかのぼれるかもしれませんが、よく調べていません。

梅園とケインズの『一般理論』でもおなじみのゲゼルとを関連させる人もいるよう
ですが、最近、深尾光洋先生が『日本破綻』でゲゼルの提案を提唱したのには驚き
ました。怖いのでそこは飛ばし読みしましたが(笑い)。

Id: #b20020326201138  (reply, thread)
Date: Tue Mar 26 20:11:38 2002
Name: 田中秀臣
ぶたねこ(ときたさん?)の質問は多すぎて、質問自体がわからないのでこまるの
ですが。質問なのか感想なのか?
私が答えるよりも『三浦梅園集』をごらんください。街の図書館でも、そこになくても
取り寄せてくれるでしょう。講以外のところは問いではないと勝手に理解しておきます。

Id: #b20020326195921  (reply, thread)
Date: Tue Mar 26 19:59:21 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020326175822
Name: ブタネコ
Subject: 「講」?「結」?

ちゃちゃみたいなことですが、「講」は大山講や戸隠講の講かしら?
無尽講が田舎の信用組合の出発点って面もあるけど。
『三浦梅園の世界』小川晴久 花伝社のp107を見ると、もう少し抽象的には「結」かな?とも。
小川によると、梅園は人間の協同性とエゴイズムを「結」と「解」で表しているそうです。
熊沢誠の昔の書き物に、高野実らががんばった、日鉱室蘭の町ぐるみの企業城下町崩壊による雇用危機との闘いがなかったけ?この手の運動が必要なのでは?
地区労がなくなって、連合になって、地方の労働基準監督所はほんとになんもしなくなったのでは。
デパートの地下の食品店のパートなんか、専門学校でても職のない若者には、憧れの職場だが、一人が超長時間労働すれば、ポストはない。労働基本法の精神があれば、自然とワークシェアリングになるのに。
同様に、三浦梅園のような人が田舎の高校の校長で教育基本法の精神があれば、労働力商品の品質劣化は防げるのでは。(小川は梅園の自然科学的センスのよさを指摘。)
教育ついでに、今朝のテレビで秋田県本荘高校の名物10円パンに殺到する男子生徒の元気な姿を映してた。このパン屋がなくなり名物もなくなるとか、これもグローバリズムかしら。
岩波型文化人は丸山真人で、産業省の能吏は加藤さんかな?左派の橋本さへがシバキ的賃下貧乏路線で、丸山加藤の明晰から、幼女のままごとみたいなエコマネーっていうか、そんな発想しか出てこないほど危機は深い?のか、底はもううったのか?
まあ、文明の転換点なんで、本来のわーくしぇあというか時短というか、兼好の『名利に取り付かれて、一生を苦しむこそ愚かなれ』なんだろうけど。
Id: #b20020326175822  (reply, thread)
Date: Tue Mar 26 17:58:22 2002
URL: http://www.t3.rim.or.jp/~hidetomi/index.html
Name: 田中秀臣
Subject: 竹信本、情報感謝
ワークシェアリングですか。
まさに「貧乏路線」でしょうね。竹信さんがそのような快著を出されたことは
うれしいことです。竹信さんとは、一五年前にまだ出版社にいたときに取材を
うけて、朝日新聞初デビュー(笑)をしたときのいい思い出があります。サラ
リーマン的ではないプラスアルファの持ち主でしたね。『能力主義と企業社会
』(熊沢誠)を読むと、ワークシェアリングを導入しようとする際には、日本
には多いといわれている「サービス残業」などの問題を明確化するなど、労使
の時間管理の適用の厳格化が主要な目的である、と書かれています。連合の一
部でもそのような意見もあるようですが、御題目にしかすぎなくなってますね。
端的にいって、政労使型とかいって、社会全体でこのワークシェアリングをす
すめるのは、さらなる名目所得の減少をもたらす可能性が大きいので反対です。
これは知人から薫陶を得たことですが、ヨーロッパのように構造的失業が深刻
であるとか、インフレ基調である場合には一定の効果をもたらすと思われます
が、デフレが問題であるいまの現状で、なぜワークシェアリングが社会全体の
課題になるのか頭が痛くなります。「雇用を確保」することでさらに個々の働
く人たちを窮地に追い込む。齋藤貴男氏ではないですが(私の周囲ではめちゃ
めちゃ評判が悪いですが(笑))、連合の悪い側面が端的に示されている話だ
と思います。不況がすすむといろんなおかしな手法が盛りだくさん出てくるの
で、それを検証するのも大変です。オランダ、アルゼンチン、中国と、つきあ
っていると世界一周旅行になります(笑)。あとこのワークシェアリングとか
エコマネーとか、「岩波型文化人マンセー」が喜びそうなアイディアが、すべ
て経済産業省や(後者は)竹中平蔵氏も支持しているところが「あやしい」で
す(笑)。ちょっとエコマネーについてはいまは「あやしい」だけにとどめと
きます。勉強しなくてはいけないですが。ただエコマネーが好きな人の一部に、
その起源を三浦梅園にまで遡る人がいますが、おそらく「講」の問題でしょう。
その程度の小規模の相互扶助的なものだったらいいのですが、何か開発主義的
な発想と大規模にリンクしていそうで警戒してます。時間があれば関係文献を
読みたいとは思いますが。この一冊!というのがあれば教えてください。

Id: #b20020326001209  (reply, thread)
Date: Tue Mar 26 00:12:09 2002
Name: 時田
Subject: 利潤圧縮はどのくらいヤバイことなの?

橋本氏の本も、P58を中心に、デフレのヤバさについては縷々述べています。
それなのに、マイルドインフレに、あまり理由付けなしに反対するのも、事の本質というか、一番ヤバいのは、『利潤圧縮』だという考えがあるんでしょうね。
で、僕も電機産業の状況なんか、かなりヤバいと思うけど、経済のプロの方で、そんなにヤバくないという、楽観論もあるんですかね?
橋本さんも同盟系では良心組合だった、海員組合のことなんか親身になってた人で、賃下げを持ち出すのは、「他に手段がない」からなんだろうけど、<こっちの手段で利潤圧縮から抜けだせる>という別手段はあるのかな。
僕は #b20020307012446 で、
ワークシェアリングを電機労連が検討してるのもよいことでは。日産型リストラのが個別の資本には良くても、社会全体には電機労連的労資癒着の方が。オランダのように、ワークシェアリングがうまくいくにはオランダのような平等で民主的な社会にならないと。
って書きましたが、少なくとも、マイルドな賃下げのが、『現実に』進行している、昔2万が今1万みたいなのよりは、さらなるデフレ効果がすくないのでは?
次も質問ですが、製造業よりサービス産業の締める比率の大きい社会では、社会全体の分配の中で、労働分配率がもっと大きい方がいいのか、もっと小さい方がいいのか?
労働分配率はほんの少しさがっても、弱者に優しく分配の中味を返れば(地方公務員の3セク渡り鳥など、老人が取り過ぎ)消費は増えないか?
橋本のような命を削った考察も、現実には『雇用分断』に悪用されるだろう。だから最後は、分断された人が連帯して起業するか闘うしかない。
半導体のような戦略産業には政治的に需要を作ればいいが、通産行政も今は機動性を欠き、不要な公共事業などが、ムシリ取りを続けている。需要が出来た分、ワークシェアリングはしないで済む。
生徒にパソコンをさわらせない無気力教育や、通信コストなど、ワークシェアリングしたくないから、自然体で商売繁昌するよう、ボトルネックをなくそうというのは当然だけど、連合自身が、オジサンヌルマ湯社会でそうゆうネックを作りだし、賃下げという最悪の事態に自分自身を追い込んでしまったのでは?

Id: #b20020325223840  (reply, thread)
Date: Mon Mar 25 22:38:40 2002
Name: くろき げん
Subject: 竹信三恵子『ワークシェアリング――雇用の分配か、分断か』

しばらく前から「ワークシェアリング」という言葉を聞くたびに不快感を感じるようになっていたのですが、どうして不快なのかについて詳しく報告している本が最近出版されてました:

「分配」と「分断」の区別に関する引用:

 日本という土壌ではなぜか、ワークシェアリングが話題になるたびに、それが個人の生活の質の向上には結びつかず、質の悪い細切れ雇用の量産へと流れていってしまう。働く当事者による自発的な分け合いが「雇用分配」とすれば、いま起きていることは、雇う側の都合に合わせて雇用を上から裁断する「雇用分断」といっていい状況のように思える。……

(竹信三恵子『ワークシェアリング』vii頁より)

 「ワークシェアリングを導入できないものか」と聞いた市民活動家に対し、ある社会政策研究者がこう答えたという話も伝わってきた。「ワークシェアリング? あれはもう、賃金抑制、賃下げと同義語になってしまって、仕事の分け合いという意味には使えないですよ。仕事の公正な配分を求めるなら、違う観点からアプローチした方がいいのでは」
 二〇〇〇年、都内のある区役所の労組関係者に取材したとき、真剣な顔で聞かれたこともある。「賃下げがなければワークシェアリングとは言わないんですか」
 「リストラクチャリング (再構築)」という言葉は、米国で企業の再生と構造改革の意味で使われた。日本では九〇年代、この言葉の下に解雇・人員整理が繰り返され、やがてこの言葉は「リストラ」と略されて「人減らし」「首切り」の同義語として使われるようになった。やがて人々は、「首切り」と経営そのものの改革とを区別するために、「リエンジニアリング」という新手の言葉を導入せざるをえなくなった。二〇〇〇年、ワークシェアリングもまた、似たような運命をたどりかねない状況に陥ったのである。

(竹信三恵子『ワークシェアリング』13-14頁より)

本来ワークシェアリングは失業者を減らすと同時に生活の質を高めるために提案されていたはずなのですが、現在の日本では全く逆に社会不安をより高める雇用分断を正当化するために“ワークシェアリング”という言葉が悪用されている。将来の不確実性が増大するとそのコストを誰かが負担しなければいけなくなる。

竹信の報告と互いに補完しあう分析が新美一正「時短とワーク・シェアリングの経済分析」 (Japan Research Review 1998.9, 14-46, PDF) でなされているので合わせて読むと良いと思います。

これらに対して、「名目賃金引き下げによって企業の利潤を増やせば投資が回復する」という結論を述べている橋本寿朗著『デフレの進行をどう読むか』 (岩波書店、 2002.3.14) は上記のような“ワークシェアリング”批判の議論にほとんど何も注意を払っておらず、かなり問題があるのではないかと思いました。橋本の本は様々なデータをまとめている点では確かに便利なのですが、その結論の正当性はかなり疑わしい。

橋本はインフレターゲティングに有効性が疑わしいという理由で反対しているのですが、デフレが続くという予想を放置したまま名目賃金を引き下げても多くの企業は増えた余剰資金を投資ではなく負債の返済などに回す可能性が高い (cf. クルーグマン論文)。結果的にさらなる賃金引き下げが必要になるかもしれない。そのようなことを繰り返して行くとデフレスパイラルを加速してしまうことになります。

国内企業向けの需要が増えることによってインフレ率がプラスになればパイ全体のサイズが増えます。だから、インフレのせいで実質賃金が下がってしまう人がいたとしても、平均的な分配量は増えることになる。それとは逆にパイ全体のサイズを縮小させながら調整を行なうことにはかなりの危険が伴います。

そして、「名目賃金引き下げ」の提案は、“ワークシェアリング”の名のもとに「雇用分断」を正当化しようとする議論に対する厳しい批判と共に行なわれない限り、結果的にそういう流れを加速してしまうことになるでしょう。

P.S. 以上はブタネコさん (ときたさん) による橋本寿朗の本の書評を読む前に書かれたものです。橋本の本の表紙では1990年代の労働分配率上昇による利潤圧縮メカニズムを皆が見逃していることになってますが、実際にはよく知られていることです。左派に属しているはずの人が最近流行の“ワークシェアリング”という名の賃下げを正当化するために利用できそうな本を書いてしまうのはまずいのではないかと思いました。賃下げを提案するときにはそういう現実の流れに敏感であるべきだと思います。どうして左派の人物が政策提案になるとシバキ主義者と似たような結論に落ち付くのか?


Id: #b20020325221548  (reply, thread)
Date: Mon Mar 25 22:15:48 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020325184624
Name: くろき げん
Subject: 少なくともお金持ちが保有しているお金は動くでしょう

ひめたにしさんに誤解されているかもしれないのではっきり言っておきますが、私の意見はひめたにしさんよりもさんぼんまつさんに近いです。

「皆の将来予想を明るい方向に変化させること」の重要性は、無用なリスクを減らし、インフレ期待を高める政策をより効果的にするために必要だという意味で強調していたつもりです。せっかく政策転換するのであればベストに近い形でそうするべきでしょう。

将来のインフレ率にはずっとプラスの値の下限が設定されることになり、しかも近い将来インフレ率がプラスの値になる可能性が高くなったとしたら、ビビらなければいけないのは文字通りの意味でのお金持ちです。 (お金持ちは個人とは限らず、企業であるかもしれない。) そうなればきっとお金持ちが保有しているお金が大量に動くことになるでしょう。問題なのはその動く先。

お金が実物 (モノやサービス) に向かえば (それは消費かもしれないし投資かもしれない、ひめたにしさんは消費だけにこだわっているが投資も大事)、直接的な需要拡大になります。今まで眠っていたお金が動けば少なくともその一部は実物に向かうはず。 (だから、政府は、実物にお金が向き易くなるような政策、特に新たな儲け先を見付け易くする政策を同時に実行するべきです。)

土地に向かえば地価上昇圧力になり、その土地を利用するためには実物にもお金を使わざるを得ない。

難しいのはお金が別の種類の金融資産に向かう場合です。しかし、株に向かえば株価上昇圧力になり、外貨建ての資産に向かえば円安圧力になり、経常収支黒字を増やすことになる。

お金持ちが手もとに眠らせているお金が動くことによって需要が増えて失業者が減れば嬉しいというのが基本的な考え方です。

まあ、実際にはそんなに成功しないかもしれませんが、何もせずにこのままデフレ不況があと10年も続いたりすると相当にやばい。そういうやばい状況だということをしっかり認識しておくことが大事だと思う。どうすれば成功の確率が増すかを真剣に調査した上で何かをやるべきだと思う。専門家は建設的な態度でできる限りの調査を実行して、それをわかり易い形にまとめて発表して欲しいと思います。


Id: #b20020325184624  (reply, thread)
Date: Mon Mar 25 18:46:24 2002
In-Reply-To: b0040.html#b20020324222728
Name: ひめたにし
Subject: インフレ(期待)と消費の関係

 さんぼんまつさん、はじめまして。
 インフレになれば、当然消費は増える----と私も最初はシンプルに考えたので
すが、逆に消費者が買い控えに向かう商品もあるのではないかと思い直しました。
「インフレ期待で買い急ぐものは?」
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/b0038.html#b20020309212848

 それに対して、岡田靖さんが「インフレ期待の消費への経路」で、「インフレ
が消費にどのような影響を与えるかは自明なものではありません。」と答えてく
ださいました。
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/b0038.html#b20020309224634

 そして黒木さんが「インフレ期待を高める政策に関する私見」で、「皆の将来
予想を明るい方向に変化させること」が重要だと書かれました。
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/b0038.html#b20020313065728

 そこでその後は、皆の将来予想がなぜ暗いのかを探るべく、年金・医療保険制
度などについて書いてきた、という流れです。
 インフレ期待を高める政策を実行したとして、すべての物価が一斉に上昇し始
めるわけではありませんよね。どのようなモノから実際に値上がりが始まって、
どの段階で消費が上向き、給料も上がり、景気が回復するのか、というだいたい
の筋書きを、私はとても知りたいのです。私だけでなく、貯金だけを心の支えに
老後を送っている国民年金受給者は、筋書きを聞かなければ納得しないと思いま
す。そういうことを述べた文献があれば、ぜひ教えていただきたいです。
Id: #b20020325184055  (reply, thread)
Date: Mon Mar 25 18:40:55 2002
Name: ひめたにし
Subject: 野口+田中「構造改革論の誤解」を読んで
 野口旭・田中秀臣共著「構造改革論の誤解」を読みました。ご本人が読んでお
られるようで、感想を書くのは緊張してしまいますが・・・
 主題がはっきりしている。たいへんわかりやすい本です。
 ”経済問題を論じる際には、「構造的問題」と「循環的問題」を分けて考えな
ければならない”ほとんどこのことだけを、一冊使って繰り返し述べています。
 「構造的問題」は「資源の有効利用」「希少な資源をいかに効率的に利用する
のか」というミクロ的な課題。潜在的GDPを規定している。
 「循環的問題」は「資源の完全利用」「遊休している資源(とりわけ労働)を
いかに利用するのか」というマクロ的な課題。現実のGDPを規定している。(ただ
し現実のGDPはもちろん潜在的GDPの範囲内。)
 巷に信じられている「構造改革論」は、マクロ経済学的な政策の有効性を否定
し、失業を増やし、デフレ不況を悪化させている、と、この本は批判しています。
それじゃどうしたらいいの?という結論は、クルーグマンの本のようにいきなり
出てきません。最後の方でやっと「インフレ目標つき量的緩和」という答えが出
てきます。しかも、その具体的手段は全く述べられていません。このへんはちょ
っと不満。でも、「構造的問題」と「循環的問題」を峻別して考えなければなら
ないということは、よく納得できました。

 余談ですが、「構造改革」は「環境ホルモン」と似ていて面白いと思いました。
---「あとがき」より--------------------------------
「構造改革論」とは何だったのであろうか。われわれの考えによれば、それは、
思い込みに基づくある種の「妄想」である。中世の魔女狩りがそうであったよう
に、予想外の事態に直面したとき、人々はしばしば心理的パニックに陥り、本来
なら結びつくはずもない因果関係をみずからの想念の中に築き上げる。それが妄
想である。
---------------------------------------------------

 この「構造改革論」を「環境ホルモン」と置き換えてもそのまま読めるくらい、
よく当てはまっています。”マスメディアにおける「構造改革」は「がらくた箱」
のような言葉だ、なぜこれが構造改革なのかと理解に苦しむようなものまで含め
られている”とも書かれています。そんなところもそっくり。
 なんだか「構造改革」に親しみが湧いてしまいました。どこの分野でも、妄想
的なアイデアには商品価値があるんですね。そしてまた、妄想が十分に行き渡っ
た後では、妄想を批判する論説にも商品価値が出てくる。田中さん、がんばって
ください。

Id: #b20020325163448  (reply, thread)
Date: Mon Mar 25 16:34:48 2002
URL: http://www.t3.rim.or.jp/~hidetomi/index.html
Name: 田中秀臣
Subject: こちらこそよろしく
黒木さん。こちらこそよろしくお願いします。掲示板の書き方もアドバイスしてい
ただきありがとうございます。
いま、わたしは周囲から「気をつけてやれよ」とか「構造改革論者(正確には構造
改革バカ)にならないようにな」とアドバイス?をうけながら、小泉首相の言説を
読んでいます。『コイズム』とか(笑)。まだ明確な意見をいえるまではなってい
ませんが、そのうちこちらでも皆さんの意見をお伺いするために書き込みことがあ
るかもしれませんのでよろしく。なかなか日本には首相の政治経済学的な機構とし
ての役割を分析した本がないですね。あと経済財政諮問会議と財務省との関係もな
にかすっきりしません。

Id: #b20020324222728  (reply, thread)
Date: Sun Mar 24 22:27:28 2002
In-Reply-To: b0039.html#b20020324154458
Name: さんぼんまつ
Subject: 初めて発言させていただきます

初めて発言させていただきます。さんぼんまつ、と申します。
私は現在大学院生をしており、研究している分野はここの掲示板で皆さんが
議論されているような経済政策的なものではなく、情報化が経済に与える影
響は何かということを研究しております。特にネットワーク外部性が社会に
与える影響はなにかということに興味をもっております。
 前置きが長くなってしまって大変恐縮ですが、ひめたにしさんがご発言さ
れていることについて自分の考えたことを発言させていただきたいと思い ます。
>私の「インフレになったら、消費者はよけいに節約に励むのでは?」という
>疑問に対する答えは次のとおり。
>---------(p.26)------------------
> 通常、インフレターゲットを導入すべきかどうかを議論する時は、資金を
>借りる個人や企業家について議論する。また、消費者も意思決定をする際に
>実質金利を問題にしているのである。日本が実質金利を引き下げても支出が
>減っていくなら、日本は本当に奇妙な国ということになるだろう。
>---------------------------------
> これだけでは有権者の納得は得られないでしょう。
 インフレになったら、消費者は節約に励むというのは非常に考えにくいので
はないかと考えております。なぜならば、物価が上昇するということは貨幣価
値が低下するということになり、さらにインフレが続くようだと貨幣を所有し
ていても紙屑を持っていると言うことになるからです。
 消費税が3%から5%にあげたときも駆け込み需要というものがあった、という
ことを記憶しております。税金が上昇するということは、相対的に買える
もの が少なくなるので、非常に単純に考えるとインフレと同様であると考えられま
す。そのように考えますと、節約するのではなく、物価上昇が進む前に人々
はものを買おうとするので、節約ということは考えにくくなるのではないで
しょうか。
 教科書的な答えで大変恐縮ですし、ひめたにしさんの「節約」というご発言
を私が勘違いしているようでしたらすみません。
 それでは失礼します。
Id: #b20020324165153  (reply, thread)
Date: Sun Mar 24 16:51:53 2002
Name: ブタネコ
Subject: 『デフレの進行をどう読むか』橋本寿朗 岩波

まず、随所に産業諸分野の最新のデータが載せられているのがいい。
この本の中心テーマは、今日の毎日の書評(中村達也)も指摘するように『利潤圧縮メカニズム』で、b20020305223004の金属メーカ勤務のたかつかさんの実感告白とよく対応しています。
インフレターゲットについては、p19で植田和男の指摘(これ以上やると金融政策が信頼されなくなる)をそのまま追認してるが、この部分にはあまり説得力を感じない。
しかし、それをさし引いても、利潤圧縮メカニズムを歴史的、地理的に実証してる全体は、あーむちぇあの本よりもフィールドの本として価値が高いだろう。
バブルの傷については、1929年の大恐慌でアメリカのキャピタルロスがGDPの1.9倍なのに、日本の1990~94では、2.4倍であることを指摘、以降、利潤圧縮メカニズムが継続してる。
そこからの橋本の主たる脱出案は労資協調貨幣賃金引き下げである。
これはシバキか?シバキには違いないが、小泉改革のシバキよりマイルドかも。
ブタネコの周辺にも賃金の価格破壊は進行してて、ニコヨンで下水の穴を掘ると、昔2万が今1万とか、トラックを一晩飛ばしても同じようとか、50才のころ予想した退職金の半額を受け取ったとか。
また、政治による需要つくりも、業種によっては大切では。全国の5000の高校や一万の中学にプロジェクターや書画投影装置を配るようなことは、川辺川ダムの無駄でできること。
こまかい点ではP152のひめたにし流長寿輸出案とか、p164の、消費を念頭においた技術とdisruptive technologyとか、実際的な提言に満ちている。

たしかに、資本論の21世紀初頭版のスケッチみたいな気もする。高須賀さんなんかどう思うだろう?

1つ前の記録:黒木のなんでも掲示板2 (0039)


管理者: 黒木 玄  <kuroki@math.tohoku.ac.jp>  (Web Site)
CGI_Board 0.70