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黒木のなんでも掲示板 (0072)

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Id: #a20010607134754  (reply, thread)
Date: Thu Jun 07 13:47:54 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010607130831
Name: くろき げん
Subject: レポートの答を他人に聞くな

馬場裕成さん、本当に物理バカであればレポートの提出云々よりも何が本当のことなのかを自力で理解することを優先すると思います。

それ以前の問題として、「レポートのしめ切りがせまっているので、なるべく早く教えてください」はないでしょう。課題のレポートは自力でやらなければいけません。

馬場裕成さんが言い訳や反論をしたい場合はそれに応じて恥をかけるだけ十分により詳しく自己紹介をして下さい。

この件についてはここにはもう誰も書き込まないようにお願い致します。この件に関しては予備掲示板2の方に書いて下さい。


Id: #a20010607130831  (reply, thread)
Date: Thu Jun 07 13:08:31 2001
In-Reply-To: a0051.html#a19991030124754
Name: 馬場 裕成
Subject: オルバースとWessonの論文について

初めまして、僕は大学1年生です。僕は高校のときに物理に興味を持ちそれいらい結構物理バカです。最近は天文学にはまっています。本題にはいります。大学の講義の中で「オルバースのパラドックスを数式を用いて説明せよ」という課題レポートがでたのでインターネットで調べていたらまきのさんがWessonの論文を交えて解説していた(かなり前のことですが、、、)のを見つけたのですが概要は分かったのですが、数式を用いたくわしい説明をしてほしいです。(この前のではrとfが何なのか分かりませんでした。)いまさらオルバースですいません。レポートのしめ切りがせまっているので、なるべく早く教えてください。お願いします。
Id: #a20010605181917  (reply, thread)
Date: Tue Jun 05 18:19:17 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010603231926
Name: まきの
Subject: SST

京都の研究会の SST のセッションというのは昨日だったんですね、、、今日 から別の研究会で京都なので、昨日のうちに京都に来て見物にいくんだった。 おもしろい話はありました?

論文は楽しみにしてます>早川様


Id: #a20010604135238  (reply, thread)
Date: Mon Jun 04 13:52:38 2001
In-Reply-To: a0030.html#a19981206141645
Name: ブタネコ
Subject: 球面裏かえしビデオ

SpringerのVideo and Multimedia at 3ecmという、90分で15作のオムニバスの、7分だが、
The Optiverse
はよく出来ている。DVD版もある。
他に4次元の立体を高さを換えながら切った、3次元断面の素晴らしいアニメとか劔持さんの微分幾何みたいのとか。
Id: #a20010603231926  (reply, thread)
Date: Sun Jun 03 23:19:26 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010603160730
Name: 早川

牧野さん、もう少ししたら論文にします。単純な計算というだけではなく いろいろ微妙な話があることがわかってきましたので。例えば圧力を運動量流束 で定義して孔のところで計算すると温度勾配の1次の項が残ります。バルクの 圧力は説明した通りですが、非摂動系の温度をどこで定義するかで結果が微妙に 違うようななので明日の発表(勝手に飛び入りを決めていますが)が修羅場に なるかもしれません。熱力学と気体分子運動論の整合性にもちょっと問題が ありそうです。従って明日からの研究会の議論を踏まえて修正が入ると思います。 計算自体は簡単なので牧野さん(や中村さん) ならすぐ分かると思います。 佐々さんの日記での記述は忙しいので辛気臭い計算はフォローする気はないという宣言だと 思っています。
Id: #a20010603160730  (reply, thread)
Date: Sun Jun 03 16:07:30 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010526195812
Name: まきの
Subject: ラングミュアのパラドックス

うーむ、なるほど。「衝突がない」といっても本当になにもなければなにも起きないはずでしょうから、実効的に衝突項として働いているのがなにかよくわからない、、、というような話なんでしょうか?

ところで、下のFIO の早川さんの結果はやはり途中を見たいような。佐々さんにチェックできないようなものなら私がみてもわからないとは思いますが、、、


Id: #a20010602121241  (reply, thread)
Date: Sat Jun 02 12:12:41 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010526195812
Name: 早川
Subject: SSTは正しいか

皆様、早川です。御無沙汰です。先週は出張していたりして結論が出るのが 遅くなりましたが、とりあえずSSTの気体分子運動論からの検証 計算は完了した様です。まだチェックが必要 ですが。。詳細は月曜からの 研究会で ということですが、結果だけまとめると以下の様になります。 といったところが結論です。SSTは正しい予言を与えているようです。
Id: #a20010526195812  (reply, thread)
Date: Sat May 26 19:58:12 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010526171702
Name: 中村 匡
Subject: Re: Lynden-Bell 統計とか

まきのさん:

 衝突がないのになぜマックスウェル分布になるのか,という問題はプラズマ業界では「ラングミュアのパラドックス」と言われています。もともとは I. Langmuir, Phys. Rev., vol 26, 585 (1925); Proc. Acad. Sci. vol 14, 627 (1928)あたりにでているのですが,この時期はラングミュアが「プラズマ」という言葉を案出したころで,つまりラングミュアのパラドックスはプラズマ物理の歴史と同じくらい古いのです。Phys. Rev.の方の論文はとなりのページにミリカンの論文がのってたりして,歴史を感じますね。
 それ以降,実験室や宇宙空間のあらゆる場所で,衝突がないのにマックスウェル分布が見つかっています。したがって,プラズマ業界では,(理由も知らずに)マックスウェル分布は当然のこととして,そこから議論をはじめることが多いです。ただし,宇宙空間のように境界がないプラズマの場合,往々にしてマックスウェル分布にべき乗の高エネルギーテイルをつけたκ分布というやつになっていて,これもなぜそうなるのか不明です。

 ところで, ここにPxxとかの計算結果を書いたのですが,これって,計算違いで係数が違います。あとから訂正して田崎さんにはメモを送ったのですが,その計算も結構まちがいだらけ(示性量と示強量を混同したりして)だったので,時間をみてもう一度計算しなおすつもりです。やっぱり他分野の計算って「勘所」がいまいちわからないですね。

Id: #a20010526171702  (reply, thread)
Date: Sat May 26 17:17:02 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010520170847
Name: まきの
Subject: Lynden-Bell 統計とか

今週はなんだか忙しかったというかいろいろはまっていて、ここを読んではい たんですが書く元気がなかったのですが、ちょっと一段落したので。

中村さん、質問ですが、無衝突プラズマではマックスウェル分布にいくってい うのはどんな実験ですか?よろしければ論文を教えていただけないでしょうか?

自己重力系ではマックスウェル分布にいくというわけでは(もともといくのは 不可能ということをおいておいても)ないというのがまあ妥当な理解だと思っ ているので、、、

あと、すでに遅いかもしれませんが、天文関係の主要な雑誌のコピーは大抵ADSにあります。雑 誌がオンライン化する前のでもページをスキャンしたものが PS ファイルになっ てるので、非常に便利です。


Id: #a20010523010930  (reply, thread)
Date: Wed May 23 01:09:30 2001
In-Reply-To: a0028.html#a19981120102412
URL: http://www3.ocn.ne.jp/~raven/
Name: レイヴン
Subject: RE:理科教育と相対主義
初めてここに投稿するレイヴンと申します。
自分は理科においてもっとも大事なのはやはり教科書学習による理論の習得より
何故その法則・理論は得られたか?だと思っています。
それを知る事が理論・法則を使いこなす道だとも思っています。
教科書中心の勉強の最大の支障はそれを盲目的に信じる事だと思います。
科学は何故?と疑って観察し考察するという姿勢がとても必要であると
考えています。
また、近代科学を生んだニュートン、コペルニクスなどは熱心なキリスト教信者
でした。そんな彼らが近代科学を生んだものは神がこの世を創造したという
意識の信仰の賜物だと考えています。
そういう確信のために事物を観察し考察する事ができたのだと思います。
つまり、言いたいのは信仰、懐疑という科学を創る基本的な行動原理の基で
科学を創造するのは『観察』によるものだという事です。
よって観察を軽視する理科教育は科学の発展・教育上良くないものだと
思います。
拙い意見ですいません。

Id: #a20010521222332  (reply, thread)
Date: Mon May 21 22:23:32 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010516145731
Name: はりがや
Subject: Re: 女王とか
自分の掲示板すら,出張中,見てない間に,
関連投稿が何件かありました...

http://www.etl.go.jp/~harigaya/BBS/spool/log.html

Id: #a20010521011108  (reply, thread)
Date: Mon May 21 01:11:08 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010520190435
Name: sasa
Subject: sst

牧野さん、久しぶりです。中村さん、はじめまして。

佐々と申します。中村さんが予想されているとうり、SSTとは、熱力学関数を非平衡 定常状態に対しても使えるように拡張し、それを介して物理量の新しい関係を議論し ようとする枠組です。そのさい、形式的にえいやぁと拡張するのでなく、既存の物理 法則との関係やミクロな力学との関係などを考えながら、「自然な拡張」を試みる ものです。例えば、熱伝導の場合には、

dF=-SdT-PdV-ΨdJ

です。御指摘のとうり、対象とする系は異方的なので、この記述は誤解を招くかも しれません。圧力Pは温度勾配方向の成分であり、dV というのは、断面積 A, 温度 勾配方向の長さ L とするとき、 A dL のことだと解釈してください。ピストンがつ いている方向が温度勾配方向だと仮定しています。また、マクスエル関係式を使えば、 圧力のJに関する偏微分がΨのVに関する偏微分が等しくなります。それを使えば、 早川さんの第一の問題の答えから第2の問題の答えを議論できます。(第0近似 では、偏微分を割算に置き換えてもいいと思いますが、一般にはそれ以外 の寄与もあると思います。)

また、牧野さんが「平均自由行程での温度差の2乗に比例するだろう」とおっし ゃっていますが、その通りだと思います。だから、非常に小さいです。そこで、 実測できる領域はないかなと考え、この圧力差を臨界点で評価しています。確定する 前の結果を出すのも何ですが、今日のところは、臨界圧力 P, 臨界温度 T, (温度-臨界温度)/臨界温度 ε, 温度勾配 dT/dL とするとき、 観測される圧力差 ΔP は、

ΔP / P = (dT/dL)^2 (b/T)^2 ε^{-γ}

となりました。臨界指数γは 定圧熱容量の発散の指数で 1.2と測定されていて、 b は 長さの次元をもった物理量で、例えば Xe の場合、10 Åのオーダーと見積もられ ました。(粘性係数の弱い発散は、考慮に入れていません。)

ささ


Id: #a20010520190435  (reply, thread)
Date: Sun May 20 19:04:35 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010518194610
Name: 中村匡
Subject: さらに質問

 さきほど書いた計算結果のバックグラウンドを考えていて,またわからなくなったので,質問をさせてください。田崎さんとは「バーチャル幼なじみ」の仲(?)なので,個人メールで訊こうかとも思ったのですが,他の方も興味があるかもしれないので,こちらに出させていただきます。

  1. 田崎さんの日記にある解説で∂p'(T',p,J) / ∂J = - Ψ / v' というのが出てきますが,これは早川さんの問題1の場合はその場所の諸量を使って∂p(T,p,J) / ∂J = Ψ / vと書けるのですか?
  2. そうだとすると自由エネルギーの拡張版Fを定義してdF = - SdT - PdV + ΨJとか書いて(ΨJはベクトル),それをVとJで微分して出てくるのですか?
  3. いま,異方を考えているのでPはテンソルになると思うのですが,それに対するVはどうなるのですか?

 なんせ,SSTどころか普通の熱力学も田崎教科書で勉強中なもので,Maxwellの関係式などもいちいち教科書をみないとわからない初心者です。でも,こういうのって考え出すとハマってしまいますね。本当は別の計算をやらなくちゃならないのですが,つい,こっちを考えてしまう。(おかげで大仏率が更新できず。)


Id: #a20010520170847  (reply, thread)
Date: Sun May 20 17:08:47 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010519191030
Name: 中村 匡
Subject: RE:般化変分原理他

まきのさん:
 一般化変分原理というのがFokker-Plankにいくのなら,私が前に書いたことより高級なはなしですね。それとも,この問題も,その原理に含まれるようなものなのでしょうか。MNRASは身近にないので,とりよせてみます。
 それからおっしゃるとおり,Lynden-Bell統計というのはニセもので,そのあとのShuの論文もおかしいとおもいます(簡単に矛盾が指摘できるし,指摘した論文もいくつかある)。しかし,無衝突系の統計力学的平衡状態がどうなるかというのは未解決の大問題で,なぜ,みんな真面目に考えないのかというのが疑問なのです。無衝突プラズマについていえば,緩和現象はみんなViolent Relaxationで,緩和先はマックスウェル分布(ひょっとしたらその親戚のκ分布)であるというのが70年以上前から実験的にはわかっていますが,いまだにちゃんとした理論がありません。ランダウ・ダンピングは,平衡からちょっとだけはずれた線形段階の理論で,しかも統計力学的な基礎付けは,あまり理解されていない思うのですが。

早川さん,田崎さん:
 私も第一問題について,前に書いた線にそって,いいかげんながら値をみつもってみました。熱流がないときの熱速度をvth=∫v2 f dvで定義し,J =∫v3 f dvと書くとJ ≪ vth3のとき,Pxx = Pyy が(1 -7 J2 / 18vth6)倍に,Pz が(1 + 7J2 / 9vth6)倍になるというのであってますか?きわめてSimple Mindedな計算で,あってなかったら恥ずかしいので詳しいことはのちほど。ディメンジョンをあまりちゃんと考えてないので,他の定数がつくかもしれません。

それにしてもhtmlって数式が書きにくいですね。


Id: #a20010519191030  (reply, thread)
Date: Sat May 19 19:10:30 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010518110538
Name: まきの
Subject: 一般化変分原理

ですが、元論文は Inagaki and Lynden-Bell, Generalized variational principle for collisional stellar dynamics, MNRAS 1990, 244, 254 です。 ええと、軌道平均 Fokker Planck 方程式をエントロピー生成最小を要求する ような変分原理を満たすものであると書けるというようなことが書いてあるよ うで(隣の部屋に稲垣さんの弟子で実際にこれで Fokker Planck 方程式のプ ログラムを書いた人がいるので、そっちに聞けばもっとちゃんとした話がわか りますが、、、)。で、まあ、すくなくとも Fokker-Planck 近似していい場 合には変分原理からもとの Fokker-Planck 方程式に戻るので、エントロピー生 成最小というのが要請であるということで話が済んでいるような気もします。

と、話変わって、、、 Violent relaxation ですか。うーん、あれは、 Lynden-Bell が妙なことを思いついたのが混乱を引き起こしただけという気も するので、あんまり議論にならないほうが健全というか、まあランダウ・ダン ピングというのがどうせそういうものであるというか、そんな感じではないか と思うのですが、、、

で、早川さん、不勉強なので Knudsen 効果というものを知らなかったのです が、式は私の最初の記事で書いたバリスティックな時のものと同じですね。もちろん、 あれの場合の釣り合いに対しては、中のしきりにむかうものの速度だけが問 題で跳ね返ったあとはどうでもいいので、単に右と左で温度が違う時と同じ答 が出てくる、というかそういうふうに設定を作ってみたので、 Knudsen 効果 と同じものが出てこないといけなかったわけですね。

あ、細かいことをいうと私が書いた式はちょっと間違っていて、つまり、左側 では右向きと左向きで速度が違って、したがって密度も違うので、「左側の密 度」として書いたものは「左側のうち右向きのものの密度の2倍」でないとお かしい、、、ととある人から指摘されました。

ええと、あと、その、温度勾配の2乗に比例ということだと、スケーリングか らいって平均自由行程での温度差の2乗に比例することになるような気がするの で、やっぱり普通の気体ではとても小さいということになるような気も、、、


Id: #a20010518194610  (reply, thread)
Date: Fri May 18 19:46:10 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010518173537
Name: たざき
Subject: ふぉっ ふぉっ ふぉっ

題名に特に意味はないです。不器用な喜びの表現であろうか。

早川さん、

早川さんが参入してくださって、分子運動論からの堅実なアプローチをすすめてくださっているのは、実に心強い。 うれしいです。

いまのところ、とてもいい感じだし、議論のすれ違いもないと思うのですが、せっかくですから整理もかねて、いくつかの点をはっきりさせておきます。

多孔質壁がある際の分子運動論の計算は、想像するだに、なかなか大変なものになりそうですね。 結果を楽しみに待っています。
Id: #a20010518173537  (reply, thread)
Date: Fri May 18 17:35:37 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010518110538
Name: 早川
Subject: 熱流のあるときの分布関数

いろいろ分かって参りましたので御報告致します。訂正も幾つかあります。

まず第1の設定。即ち温度勾配のある場合の温度Tの系と平衡にある系の温度T の系の圧力が同じか違うかという事について今朝は同じと書きましたが、定義に よっては変わって来ます。つまり今朝変化がないとした圧力はストレステンソル P_{ij}の対角和の1/3なのですが、変化し得る量はP_{xx},P_{yy}, P_{zz}です。温度勾配をz方向につけるとP_{zz}は温度勾配の2乗に比例 して値が大きくなりますが、P_{xx}=P_{yy}は逆に値が小さくなり、変化 量の対角和はゼロを保ちます。ここで「圧力」の定義が問題になってきます。 等方的な静水圧のみを圧力とするならば牧野さんの言うように変化はないし、 実効的に温度勾配の方向に仕事をする力を圧力とするならば圧力変化が温度勾配 の2乗に比例し、その値は正というSSTの結果は正しいことになります。

次に第2の問題、即ち、小孔で結合した系で圧力はどうなるかはまだ計算できて おりません。結構面倒な計算が必要なので、先の投稿の誰でもできるというのを 私以外の誰でもできるに変更したいと思います。ちょっと来週は1週間の出張で 計算の時間を確保するメドは立っていません。しかし第1の設定の結果から推察 できることはSSTの予言の正しさです。そのことについても時間が確保でき、 結果が出たらまた報告したいと思います。

またSonine展開で「異方的な」速度分布関数を求めると書きました。 しかし実際は 異方的な速度勾配に依存しているだけでFourier則が成立しているときは空間 の異方性すらなく、 速度の2乗だけで決まる等方的な関数しか出て来ません。その点を 訂正致します。


Id: #a20010518110538  (reply, thread)
Date: Fri May 18 11:05:38 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010518073126
Name: 中村 匡
Subject: RE: 熱流のある時の分布関数

まきのさん:

 ご指摘のとおり,空間依存性はあるわけで,いちばん単純には未定常数が定数にならずにβ(x)などの様に空間依存をもつことでしょう。実際にはそんなに簡単じゃないと思いますので,前の記事の3で「ややこしくなる」と書いたわけです。あそこで書いた式はあくまで大雑把な雰囲気をあらわしてるだけで,実際はかなり違ったものになるのかと思います。この手の路線でうまく行くものならば,過去にやられているはずだと思うのですが,牧野さんがいってらっしゃる「一般化変分原理」というのがそうなのでしょうか。それともうまく行かないというのがもうわかってるのでしょうか。

「熱流と温度勾配の関係は、衝突項を具体的にいれないと決まらない」というのも,その通りのご指摘ですが,今知りたいのは「熱流があったときに圧力が変化するか?」ということなので,この関係はgivenの束縛条件にして計算すればいいのではないでしょうか?(くわしいことはわかりませんが,早川さんの計算というのは分子運動論の方からで,このへんはもっと健全にあつかってらっしゃるのかと思います。)

 まきのさんの論文で読んだのはFunato, Makino & EbisuzakiのViolent Relaxation関係のシリーズです。この話題で論文も書きました(ApJ., 531,739, 2000,書いた本人もちょっと胡散臭いと思ってます)。この手の問題って同じ無衝突系で,なぜプラズマ方面で話題にならないのでしょうね。重力とちがってデバイ遮蔽効果があるから,空間一様の仮定ができて,だいぶ楽だと思うのですが。


Id: #a20010518092212  (reply, thread)
Date: Fri May 18 09:22:12 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010518073126
Name: 早川

牧野さん、私も田崎さんの日記に書かれている設定が分かりにくかったので 簡単なものに置き換えました。(第2の設定の方です。第1の設定は何も起こらない 様です。)

教科書に載っているKnudsen効果というもの をご存知と思います。2つの容器を繋ぐ小さな孔を開けてどのような状態になる かというものです。各容器の気体が平衡にあれば圧力/温度^{1/2}がバランスした 状態で質量流がなくなります。

SSTに対応しているのは、以下の問題の様です。 片方の容器を温度勾配を与えて非平衡に し、更に孔の処の温度は平衡側と同じ温度に保たれているとする。そこで 質量流がバランスしたら何が導かれるかというというものです。(という 事だと佐々さんに教えて貰いました)。多孔を1つの孔に置き換えたのは 多少心配ですがまっすぐな孔であれば孔の数は関係ありません。

この問題であれば気体分子運動論の簡単な例題になって誰でもすぐ解けます。 何も起きない可能性は多々あると思いますが、私には分かりませんのでとりあえず 計算をしてみましょう、という話です。残念ながら昨晩に計算は終了しませんでした。 この状況で温度勾配の1次迄考慮しても何も起きないことは確認しました。


Id: #a20010518083436  (reply, thread)
Date: Fri May 18 08:34:36 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010518073126
Name: たざき
Subject: つりあい

まきのさん、

まだ講義の準備中(あと30分)なので、瞬間で答えておきます。

多孔質の壁は物質のやりとりを許すので、その両側で(SST における)化学ポテンシャルが等しいという条件を用います。 すると熱流のある側とない側では、化学ポテンシャルと圧力の関係が異なる(異なりうる)ので、化学ポテンシャルをたてると圧力がずれるという結論がでるのです。 平衡熱力学における浸透圧の導出と、数学的には、ほぼ同じです。


Id: #a20010518073126  (reply, thread)
Date: Fri May 18 07:31:26 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010516145731
Name: まきの
Subject: 熱流のある時の分布関数

中村さん、

ええと、良くわかってないのですが、熱流とともに温度勾配もあるわけなので、 分布関数が v だけでなくて x にも依存しないといけないと思うのですが、な んか変なことになるのは x がはいってないせいとかいうことはないでしょう か?さらに、熱流と温度勾配の関係は、衝突項を具体的にいれないと決まらな いような、、、あれ、そういえば、京都の宇宙物理の稲垣さんが昔やってた一 般化変分原理というのはそういうような話だったかな?コトバしか憶えてない のですが、ちょっと後で論文捜してみてみます。論文といえば、どんなものが 「拝見」されちゃってるのかなんとなく気になるような、、、

と、それはさておき、早川さん、

すみません、早川さんの設定がよくわからないのですが、「等温の2つの系を 比較したときに温度勾配」ってのは?それぞれは等温なんだけれどもその温 度は違う2つの系で、その間に相互作用がない時ということでしょうか?で、 結合させるというのは田崎さんのみたいな壁で、でも断熱壁であるものでしき るというようなことでしょうか?僕も SST のなんたるかはよくわかってない のですが、形式的にはとにかく熱流とか非平衡状態がある示強 変数で表されるとするとそれに対応する示量変数もあるはずで、それらが変化 すると、、、というような話なので、断熱壁では SST からはなにもおきない ことになるのではないかという気もするのですが、、、

と書いてて改めて疑問に思ったこと。田崎さんの設定で熱流のある方で圧力が 下がるとして、熱流のない方とつながってるにもかかわらずない方、つまり圧 力の高いほうからものが 流れ込んできて圧力を釣り合わせておしまい、ということにならないのはなぜ でしょう?僕の考えた設定では穴は平均自由行程より小さいので圧力平衡は考 えなくてもいいということにしたんですが、なんかそんな仮定というのがマク ロな熱力学にどう表現されうるかというのがよくわからないです。


Id: #a20010517182752  (reply, thread)
Date: Thu May 17 18:27:52 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010517162753
Name: 早川

どうも第1の問題設定、即ち、同じ温度であるが、 温度勾配のある系の圧力は変化するか、という問の答えはどうも「変化がない」 というものの様です。 SSTでは結合系しか議論していないのでそのこと自体は矛盾はないと思います が、先の投稿でSSTでは「結合がなくても圧力変化がある」と予言されるだろう と書きましたがそうではないので訂正しておきます。
Id: #a20010517162753  (reply, thread)
Date: Thu May 17 16:27:53 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010516145731
Name: 早川

早川と申します。

佐々、田崎の予言と状況がどうもしっくり来なかったのですが昼にちょっと当人 から教えて貰って状況の理解は出来ました。この問題は2つに分けて考えた方が (少なくとも私には)分かりやすいと思います。一つは等温の2つの系を比較した ときに温度勾配の影響で圧力がどう変化するか、という問題と、もう一つはその2つ の系を結合させて質量流がないように平衡状態に持って行ったときに圧力はどうなる かという事です。

SSTの予言はおそらく第1、第2の問題ともに温度勾配の影響で圧力が上がるという ものです。無論、現時点ではその正否は私には分かりませんが、統計力学あるいは 気体分子運動論に基づいてその正否を確かめるのは(勘違いでなければ)原理的な 困難さはありません。

かく言う私も昼からちょこちょこと計算をして非等方的な速度分布をSonine 多項式を使って求めて圧力補正を計算してみました。しかし展開の最低次では (温度勾配の1次に比例した非等方的な速度分布関数を与える)圧力への影響は消えてしまい ました。よって圧力補正は温度勾配の2次以上の微小量であることはすぐ分かります。 しかし2次の計算はまだなので、正否迄は分かりません。しかし統計力学的に計算 することが原理的な困難がない点は確認できたと思っております。


Id: #a20010516145731  (reply, thread)
Date: Wed May 16 14:57:31 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010515140159
Name: 中村匡
Subject: Re: 非等方とか女王とか

田崎さん,まきのさん,ご回答ありがとうございます。例のバグのせいで,田崎さん以外にも,全世界の「じょ(う)おう問題」研究家から,苦情がよせられました --- なんてことはないです。いま,アンケート結果をチェックすると46対47で,ほぼ1対1ですね。なにか合理的な理由があるのでしょうか。
 まきのさんは実は90年中頃から論文を拝見しておりますので,「はじめまして」というより「お会いできて(実際には会ってないですが)光栄です」といった感じです。

 私も,大ざっぱな方なので,はじめはまきのさんのv1, v2で直感的に納得していたのですが,いろいろ考えるうちに,混乱してきて質問させていただいた次第です。なにを考えていたかというと:

  1. 熱流量などの巨視的な量を決めても,それを与える分布関数は無数にある。その中でもっとも確率の高い分布が実現されるはずで,それは多分∫f log f dxdv(これが熱力学のエントロピーと一致するかは自明でない)を束縛条件のもとで最大化する分布だろう。

  2. 粒子数,運動量,エネルギーの3つに加えて,たとえば熱流量を束縛条件にしてラグランジュの方法で∫f log f dxdvを最大化するとf = C exp(-αv-βv2-γv3)の形になるが,実際の分布も,このような感じで求められないだろうか?

  3. αとかβとかは平衡統計力学では定数だが,温度勾配や熱流がある場合はこの辺がややこしくなるに違いない。このような形に書けない可能性大。

  4. ややこしくなった結果,β近辺からでてくる温度と圧力の関係も,またややこしくなり,それが,田崎さんの指摘する効果に関係するのでは? γあたりで巨視的な熱流が出るのなら,β近辺から巨視的な影響がでても不思議はない。

と,ここまで考えて,2でもとめた分布関数がじつはv=-∞で発散することに気が付いて,じゃ,熱流があるというのはどういうことなのか?と考えだして,v1, v2でなく3次のモーメントでまじめに考えなくては?ということになった次第です。

 ところで,文章が長くなると行間がつまっていては読みにくくなるので,htmlで投稿できるのをいいことに,ちょっと行間をあけてみました(ブラウザによっては効果ないでしょうが)。場所をくって迷惑でしょうか?


Id: #a20010515140159  (reply, thread)
Date: Tue May 15 14:01:59 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010515103456
Name: まきの
Subject: v1, v2...

中村さん、はじめまして。「極端大仏率」楽しく読ませていただいております。

ええと、最初の記事での v1, v2 ですが、厳密にいうともちろん質量フラック スを求めるには左側とか右側の部分の1次の平均、圧力ではそうでなくて運動 量フラックスの平均、、、ということで区別する必要があります。が、ここでは 左側とか右側はとにかくボルツマン分布であるということにしたので、その辺 は係数がそれぞれにつくだけで比はおんなじになるからまあいいかな?という ことで適当に書いてあります。すみません。ちゃんとやるとかけ算のところが ちょっと変わるかなと思いますが、符号(大小)はどうせ同じと思ってさぼりまし た

で、その後の、バリスティックではなくって平均自由行程が小さいまともな流 体の議論では、もちろん熱流は3次のモーメントということでそれを使った議 論をするのがまっとうなやりかただと思います。が、話のつながり上というか、 「平均自由行程程度での温度差」にあたる量を(私にとって)わかりやすく書 きたかったので、バリスティックな時のアナロジーみたいなのを強引に使って います。

で、質問2ですが、、、とか書いてるうちに既に田崎さんが書かれてますが、 えと、もちろん、熱流があれば非等方的なんですが、その主な効果は熱流の方 向の3次のモーメントで、さらに普通の状況(平均自由行程が小さくて 温度差が有限)ではその非等方性も小さいのでは?というようなことを多分私はい いたかったのだと思います。

私も普段扱ってるのがほとんど無衝突の恒星系なので、平均自由行程が小さい 時になにが起こるのかというのが実はあまりわかってないのですが、、、

あ、田崎さん、「貴重」といっていただけると嬉しいです。なるほど、佐々さ んは臨界点近くでしか見えない可能性も考えているんですね。それだとありか な?という気がします。


Id: #a20010515112430  (reply, thread)
Date: Tue May 15 11:24:30 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010515103456
Name: たざき
Subject: 非等方とか女王とか

まきのさん、

ありがとうございます。 まきのさんが持たれている「現場感覚」というか、基本的な描像は見えてきました。 ぼくは、ほとんど直感が持てずに苦しんでいるので、そういうご意見は貴重です。

実際、前にも書きましたが、そもそもこのような圧力差が存在するというのは純粋に熱力学的な予言で、さらに、存在するとしてどの程度のオーダーかというのは、今のところまったくオープンです。

ぼくは、何の根拠もなくこの効果は通常の流体でもまともに存在するのではないかと思っていたのですが、佐々さんは、さいしょから、通常の状況では見えず、臨界点などにおいてのみ観測される可能性があるのではないか、と指摘しています。 まきのさんのおっしゃる通り、まともな球形の分子の場合には、こんな効果は無視できるほど小さい、ということも、ありうるかもしれません。 (あるいは、SST そのものがダメという可能性だって・・)


おお、中村さん、

ここでは、はじめまして。

「女王様とお呼び!」アンケート』の集計バグ(ページの最下端参照)には愕然としました。 あそこで得たデータをもとに色々考察していたのが、すべて逆転するかと思い、大いに焦りました。 が、ぼくが、見たときはたまたま両方同数だったので、影響はなかったのであーる。

中村さんに説明する必要はないと思いますが、まきのさんの v1, v2 のモデルは、通常の局所平衡のモデルに最小限の修正を加えて、局所平衡の破れの効果による圧力をみるためのものと理解しています。 自然なモデルだと思うし、おそらく、まきのさんがおっしゃるような効果は存在するとぼくたちも思っています。 ただ、それは結局、なんらかのマクロ極限では自然に消えてしまって、標語的にいっている「非等方性」の効果は残り、熱流の方向によらない圧力降下がみえる、というのが、希望的シナリオ。 でも、まだ、科学になってません。

というわけで、中村さん、ぼくが言っている「非等方性」は、きわめて漠然とした物です。 露骨に期待値に現れる「非等方性」やら、おっしゃるような高次のモーメントに現れる「非等方性」などなど、を視野にいれつつ、ともかく、まともな描像をつくろうとしているところです。 どうなることかわかりませんが、今しばらく待ってください。

flux-induced osmosis (流れの生む圧力差)の現象論とゆらぎの理論については、ほぼやるべきことはやったという感じになっています。 いずれ、ちゃんとまとめるつもりです。


Id: #a20010515103456  (reply, thread)
Date: Tue May 15 10:34:56 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010514184643
Name: 中村匡
Subject: v1, v2? 非等方性?

中村と申します。この掲示板はいつも楽しく拝見しております。初めての投稿ですので,自己紹介をさせていただくと,福井県立大学の教養の教官で宇宙空間プラズマ物理学を研究している者です。詳しいことは ウェブサイトをご覧下さい。

無衝突プラズマの運動論をやっておりますので,まきのさんと田崎さんのやりとりを興味深く拝見しておりました。自分でもいろいろと考えていたのですが,基本的なことからわからなくなったので質問をさせてください。

質問1
おおもとの,まきのさんの記事のv1, v2の定義がよくわかりません。

右向きの粒子の典型的な速度を v1, 左向きを v2 としましょう。右半分の等温のほうは v2 です。密度 は左で n1, 右で n2 ということにします。
「典型的な速度」というのは分布関数の左もしくは右半分の部分の平均のことでしょうか? のちにまきのさんも書いておられるように,熱流があるということは3次のモーメントがあるということで,必ずしもv1≠v2ではないですよね。おっしゃっている雰囲気はなんとなくつたわるのですが,議論がすすむにつれて,混乱してきました。v1とv2は熱伝導の存在を微視的に評価するために導入されたと思うのですが,速度でなく,3次のモーメントで評価するのではダメなのでしょうか?

質問2
もし,熱流が存在するなら,分布関数は不可避的に非等方的で,巨視的効果があるほどに平衡分布からずれている(熱流方向に三次のモーメントがある)と思うのですが,「非等方的」とはそういうことではないのでしょうか?

実は,無衝突プラズマで飯を食っていますのもで,衝突がある場合はあまり考えたことがありません。「Chapman-Enskog理論」とか「Gradの13モーメント解」とかいう難しげな名前だけは記憶の片隅にあって,ここの議論に関係あるような気もするのですが。(いま,手元に資料がないもので・・・。)


Id: #a20010514184643  (reply, thread)
Date: Mon May 14 18:46:43 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010514155925
Name: まきの
Subject: 散乱

ですが、平均自由行程というのは定義により「有意に散乱が起きるまでの距離」なので平均自由行程のスケールで散乱が小さいということはあり得ないような気がします。私は具体的なイメージがないとものを考えられないので、ここで想定しているのは剛体球や LJ ポテンシャルのような近距離力で相互作用する「希薄」気体です。

で、そういう系では平均自由行程のスケールでは温度差 (v1-v2) はミクロスコピックなものであると仮定すると、ほぼ必然的に普通の局所熱平衡の仮定が(v1-v2の程度で)成り立つことになると思います。基本的には1回の衝突でほぼ等方化しちゃうので。数値例は熱伝導の古典 MD 計算とかは 1980年代からいっぱいやられているみたいなので、捜せばなんか見つかると思いますが、、、

そういえば伊藤さんのとこで楕円形の剛体粒子の MD 計算とかやってましたね。 なんか大変そうだった。


Id: #a20010514155925  (reply, thread)
Date: Mon May 14 15:59:25 2001
Name: 田崎
Subject: ふたたび非等方性

まきのさん、
異方性はあってもやはりせいぜい (v1-v2)/v1 の程度
とのことですが、もちろん、理想気体というのは、あくまで短距離で比較的散乱の少ない気体のことを言っているのですよね? (正真正銘の「理想気体」は温度勾配を維持できない病的な系。) そういうときに、速度分布の非等方性の評価ができるのですか? ぼくには、どうも、わからない。 (わからない、というのは情けない話で、こういう状況ならこうだと言えるようになりたい。)

われわれの議論は、ずり系や、熱伝導系を特徴づける定常自由エネルギーが存在することを前提にしています。 自由エネルギーの存在については、(Langevin equation などで)いくつかの理論的な傍証がないわけではないですが、やはり、楽観的な仮定と言わざるを得ません。 ともかく、自由エネルギーの存在を認めると、このような圧力差が予言されるので、それが現実のものか否かを問いたい。 もし、現実に、そういうものがあれば、定常状態熱力学の存在の大きな証拠になる。

ずり系についての情報ありがとうございます。 東大物工の伊藤さんのところで、そういう MD の計算をしているので、彼とも議論しています。 実際、たとえ熱力学が正しくても、こういった効果が実測されるほど大きいかどうかは、まったく自明ではないと思います。 球形の分子の系では小さいということは大いにありうる。 ただ、佐々さんの評価によると、臨界点では、圧力差は大きくなるはずなので、(本当なら)実測できる可能性が高くなります。


Id: #a20010513210753  (reply, thread)
Date: Sun May 13 21:07:53 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010513134939
Name: まきの
Subject: 3 次元的な非等方性

ですが(実は前のもそのつもりで書いたのですが)、少なくとも という条件の元では、異方性はあってもやはりせいぜい (v1-v2)/v1 の程度に なります(と思います) 。

田崎さんの主張が正しいとすると、別に真中のしきりとかそういうものを考え なくても、そもそも熱伝導の方向に平行な方向と垂直な方向で圧力が大きく (v1-v2 の1次のオーダー以上に)違うこと になります。が、少なくとも理想気体ではそんなことはありえないような気が します。もちろん、理想気体は実は考えてなくて細長い分子の液体とかそうい うものだけでなり立つ話であるということならそれはそれでそういうこともあ るのかもしれないとは思います。

ちなみに、ずり速度による秩序形成というのは割合昔から知られているみたい で、剛体球での数値実験とかでも確認されています。が、少なくとも剛体球では ずり速度がものすごく大きくないと(結局、平均粒子間隔程度で速度が有意に 変わらないと)無視できるとフーバーの教科書(計算統計力学)には書いてあ りますが、、、


Id: #a20010513134939  (reply, thread)
Date: Sun May 13 13:49:39 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010512233302
Name: 田崎
Subject: 非等方性

まきのさん、

あ、すみません。

ぼくが非等方といったのは、熱流に平行な方向と、垂直な方向での速度分布が偏っているのではないか、という意味です。 そうなると、特定の方向の圧力が上がってくることはありうる。

v1-v2 の効果はミクロなものに過ぎず、この速度分布の非等方性が大きな寄与を持つ、と言うのが、今のところの想像です。

もちろん、われわれの議論は、純粋にマクロな熱力学的なものなので、ミクロなメカニズムにはいっさい踏み込んでいません。 いくつかの仮定をして、まっとうな熱力学(と思うもの)に従うと、圧力差があるという結果があっさり出てしまうのです。 たとえば、分子が細長かったりすれば、(熱流の中で)向きがそろうといったことが生じて、それが原因で圧力差を生むのかもしれない。 (実は、ずり速度のある流体でも同様の圧力差があると結論できます。 また、細長い分子の流体では、ずりにおける異方性も実験されているらしい。)


Id: #a20010512233302  (reply, thread)
Date: Sat May 12 23:33:02 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010512182018
Name: まきの
Subject: v1-v2

は熱流束に、つまりは速度分布関数の 3 次のモーメントに比例するので、速度分 布の等方からのずれに比例する、というかそのものではないかと思うのですが、、、

少なくとも理想気体とかなら分布関数の熱平衡からのずれはせいぜい (v1-v2)/v1 の程度でしかないので、それよりも大きい効果が出てくるという のはありそうにないような気もします。


Id: #a20010512182018  (reply, thread)
Date: Sat May 12 18:20:18 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010512174535
Name: 田崎
Subject: 平均自由行程

牧野さん、

平均自由行程以下のところで同じ話をすると、v1 と v2 の差がぐんと小さくなって、ラフな言い方だけど、ミクロなオーダーになってしまうと思っています。 そうすると、圧力差なんて出そうにないですが、おそらく、熱伝導のある状況では分子の速度分布は等方的ではないはずで、そのために、ああいう計算では見えない(もっと大きな)効果が出てもいいのだろうという風に考えています。


Id: #a20010512174535  (reply, thread)
Date: Sat May 12 17:45:35 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010511124143
Name: まきの
Subject: 散乱があっても

最初にも書いたのですが、平均自由行程よりも小さなスケールでの振舞いを考えればバリスティックな場合と同じになるような、、、という気もします。平均自由行程が 0 の極限をとるともちろんこの効果は消えますが、この時は有限の温度勾配では熱が流れないのであんまり意味がある極限とは思えないですし。
Id: #a20010511124143  (reply, thread)
Date: Fri May 11 12:41:43 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010511031448
Name: 田崎
Subject: 熱流の生む圧力差

牧野さん、

ありがとうございます。

数日つづいている不眠のなか、講義ふたつ、4年生との時間無制限ゼミ、学科の新任の助手の方のセミナー、懇親会、というメニューをこなすことになり、今夜は、まともに生きていられるか心配している田崎です。 いまは、講義が終わったところで、腰痛がかなり悪化してますが、ま、オッケーです。

おっしゃるとおり、散乱がない極限では、反対側の温度に相当する圧力がみえてしまいます。 ぼくも、それが関係するのか、とはじめ思ったのですが、今、熱力学サイドから見ている現象は、それとは、まったく違うものです。 そもそも、基本の仮定として、まともな温度勾配をもった熱伝導ができていることを使っている(普通は、そうです)ので、散乱のない極限は、除外されています。

では、実際、どういう分子運動が生じて、こんな現象が見えるのか、というのを悩み出すと、数日間の不眠を味わうことになります。 ある程度のイメージはありますが、まだ、なんとも。 佐々さんの日記も見てください。

もちろん、この現象は、純粋な理論的予言に過ぎません。 理論的な「強さ」については、やはり、眠れぬ夜を過ごしながら、かなり、まともな方向に向かっています。 「日々の雑感」に解説を書いたときは、まだ、一抹というか三抹くらいの不安があったのですが、今は、かなりましになっています。 ほとんど 0.5 抹くらいまで来たかな?

現実の流体でどの程度みえるかについては、ぼくは漠然とした思いしかないですが、佐々さんが、それなりに見解をまとめつつあります。

まだまだ何がどうなるかわからない状況ですが、ぼくとしては、非常におもしろがっています。

すみません。 ともかく食事をしないとマジで倒れるので、まとまりがないですが、このへんで。


Id: #a20010511031448  (reply, thread)
Date: Fri May 11 03:14:48 2001
Name: まきの
Subject: Heat flux induced osmosis

という話が田崎さん の日記に出てくるんですが、どうも何が問題なのかよくわからないのでちょっ と書いてみます。

ええと、(私が理解したところでは)、なにか適当な容器を適当な仕切りで半 分に区切る、でも、その仕切りは(ちょっと違うんですが)半透膜みたいな、 流体を通すんだけど圧力も感じるみたいなものにしておく。さらに、右側は等 温にして左側は温度が仕切りのところで右と同じになるような温 度勾配があるとする。左端は温度が高くても低くてもいい

と、SST によると仕切りが(左端の温度が低くても高くても)右向きの圧力を感じるはずである。

というのですが、、、

少なくともある種の極限的な場合を考えると、圧力は発生してその向きは左端の温度によるということになるような気がするので、どっちでも圧力がおんなじ向きというのはあり得ないような気がします。

極限的な場合というのは、中の流体、というか気体を考えて、それが希薄な極 限、つまりバリスティックな場合です。簡単のために壁にぶつかった時は直ちに熱平衡分布 になるとします。(これは本質的な仮定ではないですが)すると、左側では「気体分子の速度分布が右向きに動いているか左向きかで違う」という不気味な状態が実現します。右向きの粒子の分布は左側の壁の温度に対応するボルツマン分布で、左向きの粒子は右側の壁に対応するわけですね。右向きの粒子の典型的な速度を v1, 左向きを v2 としましょう。右半分の等温のほうは v2 です。密度は左で n1, 右で n2 ということにします。

まず、気体が移動しないはずなので、 n1v1 = n2v2 でないといけないはずであるような気がします。

この時、中の仕切りが左から感じる圧力は p1= n1v1(v1+v2) に比例するはずで、右からのは p2 = 2n2(v2)**2 に比例します。とすると、 p1 が p2 より大きいかどうかは v1 が v2 より大きいかどうかで決まることになります。

でもって、理論的にはこれはバリスティックでなくても、平均自由行程よりも小さなスケールでの振舞いを考えれば同じになるような、、、

というわけで、上の議論がおかしいかまたはなにか考えている状況が違うんだろうと思いますが、なにが違うかわからないのでちょっと書いてみました。


Id: #a20010508210832  (reply, thread)
Date: Tue May 08 21:08:32 2001
Name: くろき げん
Subject: 口直しにCM

宣伝:高崎金久著『可積分系の世界』Peter Gacs の大論文多体問題の舞踏解アンドレ・ヴェイユ自伝


Id: #a20010508204148  (reply, thread)
Date: Tue May 08 20:41:48 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010508182834
Name: くろき げん
Subject: なんでまたルール破りをあっさりできるのかねえ

ここでやっていることが公立の大学内のサーバーでやってはいけない単なる遊びとして排除される世の中とそうでない世の中ではどちらが良い世の中なんでしょうか。

ちなみに、 「a man at tohoku」さんのリモートホストは 218.78.149.210.economy.2iij.net です。どこのどなたなんですかねえ。

こういう輩は単なる嫌がらせの愉快犯である可能性も高いので、本当は黙って削除する方針なのですが、すでにブタネコさんのフォローが付いているので残しておきます。


Id: #a20010508182834  (reply, thread)
Date: Tue May 08 18:28:34 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010508134624
Name: ブタネコ
Subject: ふーむ whom フーム

なにか、a man at tohoku さんこそ公務員みたいなことを。
もともとここは、「匿名による批判の禁止ルール」なども成文化されていない、自由な議論な場だったの。
わずらわしきかな律法学者パリサイ人よ!!

そんで、当然内容は玉石咳混交で、ブホブホ、at tohokuのatはinのがいいのかなんてのは石で、中性子星が3つ8の字なんて玉も結構あって、多くの人がそういう議論の場に存在意義を感じてたときに、石にしてもひどすぎる身勝手質問少年とかが、結構な頻度で登場するようになって、存在意義の低下の防止に、常識のない人に常識教育を施してあげましょうということになったんだろうけど、それもあまりうまくいってないのね。
そんで、a man at tohokuさんのいう通りアンビバレントな状況とも言えるかも。もっと上手い方法が提言できるなら、提言してくださいな。
a man at tohokuさんの主張は、あえて御自身もルールやぶりを楽しんでいるだけで、『なんでもな空間』をどう作ればって難問の解決には寄与してないです。
Id: #a20010508134624  (reply, thread)
Date: Tue May 08 13:46:24 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010507211241
Name: a man at tohoku
Subject: ふーむ

この掲示板なんですが、あなたの私物のサーバーで
運営されていて、あなたの趣味でやっているのだとすると、
たしかにこういうことを言うのはわからないんでもないですが、
東北大学数学教室所有のサーバー上でやっていて(ということは
税金で維持されているわけですが)、かつこのような掲示板の運営を
”職務”でやっているわけではないとすると、どういう根拠で書いてるんですか?
書いていることを見る限り国家公務員的なんですけど。
アンビバレントな状態ですよ、これは。





Id: #a20010508002647  (reply, thread)
Date: Tue May 08 00:26:47 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010507211241
Name: ラベンダー
なるほど。よく勉強させていただきました。
確かに軽い気持ちで質問を書いたことは確かです。
ごめんなさい。

ただ、前回の文章も、別段くろきさんややまざきさんを
非難するつもりでかいたわけではありませんでした。


私の投稿で気分を害されてしまったのは残念でした。

ご迷惑のようなので、これで失礼します。


Id: #a20010508002551  (reply, thread)
Date: Tue May 08 00:25:51 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010507233429
Name: くろき げん
Subject: このタイムリーな話題は「なんでも2」でやることにしましょう

あ、なるほど、七尾藍佳さんは「なんでも2」で 5/5 から話題になっている「不妊症の女性の卵子に健康な提供者から採取した卵子の細胞質を注入する治療」の件にからめて、その記事を投稿したかったわけですね。

七尾さん提供の話題にのりたい方は「なんでも2」でやることにしましょう。


Id: #a20010507233429  (reply, thread)
Date: Mon May 07 23:34:29 2001
Name: 七尾藍佳

↓の記事はなんでも2、のほうに貼るべきでした。
間違えました。ちなみに自己紹介は、
生命倫理の話しでいうと、加藤尚武先生の弟子の廣野善幸先生の
弟子です。
Id: #a20010507231753  (reply, thread)
Date: Mon May 07 23:17:53 2001
Name: 七尾藍佳
Subject: 科研費調整による研究規制について

東大教養学部4年生の七尾藍佳と申します。
突然ですが、academic science とrestrictive scienceについて
お聞きしたいことがあります(この分け方が世間で通用するか知らないけど)。
生命倫理に関わる研究(クローン、生命操作技術)、社会にインパクトを与える
可能性のある研究を何らかの形で規制しようとする場合、
次のどちらの方法が有用でしょうか?
1)法律を作って「〜研究は禁止」として適宜規制して行く(EX、クローン法)
2)研究アセスメント・ボードを、科研費配分の上層部において、
細かく個別研究上・研究所のチェックをして、研究助成を減らしていく
2)は、イギリス・欧州式ですが、これを日本で実施する場合、
様々な制度的問題点があると思います。それはおいておいて、
理系研究者は2)のようなシステムを実際に導入しようという動きが出たら、
やはり一斉に反対するでしょうか。しないでしょうか。


Id: #a20010507211241  (reply, thread)
Date: Mon May 07 21:12:41 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010507073807
Name: くろき げん
Subject: 自己紹介とは何か?

CM: 高崎金久著『可積分系の世界――戸田格子とその仲間』

何をどれだけ自己紹介しなければいけないかは、ここの管理人の私との人間関係、この掲示板の他の参加者との人間関係、どのような態度を取るか、どのような話題をふるか、どのような議論に参加するか、などなどによって大きく違って来ます。

例えば、昔からの私の友人がここを発見して何か挨拶をするときには「黒木の友人の○○です」程度の自己紹介で十分な場合もあります。その場合はそいつの人となりを僕が友人として保証することになる。

しかし、僕個人への挨拶ではなく、他の方たちとの議論に参加したいのであれば、たとえ私の友人であっても初登場時に「恥をかけるだけ十分に」自己紹介をしてもらいたいと思っています。まあ、その場合は僕の方が気を使って、どういうやつなのかを紹介してしまうかもしれませんがね。

私やこの掲示板の他の参加者と何の繋がりもない方が初登場するときにはかなり気を使うことになると思います。その場合はどのような発言をするかによって、自己紹介の中身を適切に変えて欲しいと思います。

例えば、何かお願いをする場合には、そのずうずうしさに応じて、自分自身が対応に値する人物であることをアピールしなければいけません。日常生活ではみず知らずの人に何かお願いするときにはものすごく気を使いますよね。それと同じだけ気を使って頂ければ結構です。

他の場合も同様にどのような発言をするかに応じて、どういう風に自分のことを説明すれば受け入れてもらい易いかを考えて欲しいのだ。

もちろん、気の使い方には個人差があるでしょう。誠実でさわやかな印象を与える自己紹介をする方もいるだろうし、ユーモアで楽しい奴だと思われるような自己紹介をする人もいるでしょう。そして、馬鹿な態度を取れば馬鹿扱いされるだろうし、迷惑をかけたのに謝罪しなかったりすれば嫌われることになる。

以上で述べたことは本当は説明をするまでもないことですよね。自己紹介は人間関係の問題ですから、形式的にこれだけ自己紹介すれば十分というような単純な規準はないと思います。ケース・バイ・ケースで適切に自分自身をアピールしなければいけない。

さて、ラベンダーさんのような態度を取る方には以下のどれかの選択肢を取って欲しいと考えています:

私の警告や他の人によるつっこみに対する言い訳や非難などは批判の一種とみなせるので、「匿名」による批判の禁止ルールにより、恥をかけるだけ十分に自己紹介をした方以外はここでそうすることは許されてません。言い訳などは他の場所でやってください。もちろん、そうするときに、その場所の URL をここで紹介するのは構いません。


Id: #a20010507073807  (reply, thread)
Date: Mon May 07 07:38:07 2001
In-Reply-To: a0071.html#a20010505193929
Name: ラベンダー
ラベンダーです。

お騒がせしてすみませんでした。
無事書き終わりました。
ゴールデンウィーク中、緊急の仕事が複数重なって、
パニクッテいました。(これもいいわけですね)
知り合いに詳しい人がいたことを思い出し、教えてもらいました。
最後に1つ、実験計画法だけ分からなくて保留していたのですが、
私の関連領域の社会学辞典にも載っていました。


ところで、自己紹介って何を書けばよかったのでしょうか。
他の方は何を書いているのかな、と思って読み返してみたら
「漫画を読んで暮しているXXです」とか、
「XX学科出身のものです」とかのようでしたが、
私の「今度留学することになった、社会福祉専攻のものです」
というのでは、自己紹介になっていなかったのでしょうか。
私の趣味はXXです、というよりはオフィシャルな自己紹介のつもり
だったのですが、だめだったんですね。
社会福祉のことで何か質問ができたときにはいつでもどうぞ。
私はホームページを持っていませんが、
社会福祉士会に所属していて、そこにはホームページ、
および会員メーリングリストがありますので、たいていのことは
情報が入ります。

それからやまがたさん、
間違えた私が悪いとはいえ、
改めて茶化されてしまって、すごくショックでした。
「だったらはじめから間違えるな」って?
きびしいですね。

Id: #a20010507001602  (reply, thread)
Date: Mon May 07 00:16:02 2001
In-Reply-To: a0072.html#a20010506211429
Name: くろき げん
Subject: 「歴史」と言えども様々

CM: 高崎金久著『可積分系の世界――戸田格子とその仲間』

参照すべき場所を紹介。埋文担当者さんが議論をしている場所は「メタ考古学談話室」の「歴史に客観・真実はあるか? [埋文担当者 ] 2001.04.09 21:03 No.196」から始まるスレッドですよね。

ちょっと時間がないので、今まで何度も言って来たことの繰り返しになってしまいます。相対主義云々以前の問題として、埋文担当者さんは問題の立て方自体が非常にまずいと思います。もちろん、他人の注意を魅くために問題を極度に単純化した形で提示するのは悪いことではないと思うのですが、その単純化をずっと引きずってしまってはまずい。

ここで私がせいぜい問題を出す瞬間にのみ許される単純化と言っているのは、「歴史」と言えども様々であることを無視することです。

歴史に限らず何であっても、この部分は信用できる、この部分は信用できない、これは話を整理するための方便、この部分にはこういう批判がある、その批判にはこう答えている、……のように各々の主張を細かく分析してみなければ、その主張がどれだけ客観的で信用できるかを判断できません。限られた情報だけからでは決定的な結論を出すことが不可能な場合もあるだろうし、十分な証拠があって信頼性がものすごく高い場合もあるでしょう。客観性や信頼性は各主張ごとに異なります。一つのまとまった理論の中でも弱い部分と強い部分が必ずある。そういうことに詳しく触れようとせずに、「歴史に客観・真実はあるか?」のようにウルトラ一般的な問いを立てたまま議論を先に進めてしまってはまずいと思う。

歴史学の最良の部分がどのような仕事をしているかに関する素養がない人たちが「歴史に客観・真実はあるか?」という問題についてまともな議論を展開することは不可能です。まともな議論をするためにはそういう素養をできるだけ広く深く身に付けなければいけません。

あらゆる分野について完壁な素養を身に付けることは専門家にだって不可能なので、自分自身が身に付けたと確信できる知識を小出しにしながら大きな誤りを犯さないようにバランスの取れた明確な議論を目指さなければいけない。

これに対して、相対主義的なことを言う人たちの多くは、議論のターゲット (例えば「歴史」や「考古学」) をあたかも一望のもとに見渡すことができるようなことを言うことがある。歴史学のような広くて複雑な対象を一望のもとに見渡すことができると思っているから、「歴史に客観・真実はあるか?」と問いを立ててもおかしいと思わないのだ。

そして、「相対主義に関するよくある質問」にも書いておいたように、相対主義的主張は曖昧になる傾向が強い。だから、「何を言いたいのかよくわかりません」のように言われることになる。

以上とはちょっと別の話ですが、ネット上では、ある分野について素養のある人は自分が素養をどんどん公開してくれると (たとえ議論が満足に進まなくても) 周囲の人たちは楽しめるので非常に良いと思います。特別に難しいことじゃなくても自分自身が普段普通だと思っていることを普通に説明してくれるだけで参考になります。

埋文担当者さんの場合は考古学に20年間かかわったというものすごい素養があるのだから、相対主義的な議論にはまるんじゃなくて、もっと具体的な事柄に関する素養を公開することで貢献してくれると個人的には嬉しいのだ。 (おそらく、そう考えるのは僕だけじゃないと思う。) 例えば、現在の考古学のこの主張はこういう理由で実はそれほど信用できないのだとか、このことはあまり知られてないけどこういう証拠があるので実はかなり信用できるとか……。

異なる分野の人たちがそうやって互いの素養を交換することができれば、互いの分野の客観性や信頼性などなどに関する議論をやり易くなると思う。そういう難しい議論をするには背景に膨大な素養を前提にしなければいけないと思います。

(互いの素養を交換するためには何年もかかるのが普通なので、長い付き合いを維持し難い「匿名」中心のコミュニケーションは、そうでないコミュニケーションに比べて、議論を深めるのがおそろしく難しいと思う。)

あと、細かいことですが、「パラダイム」という言葉は要注意です。元祖トーマス・クーンは「パラダイム」という言葉を何通りの意味で使っていたか、クーンは「パラダイム」という言葉の流行についてどう思っていたか、クーンは哲学者たちにどのように批判されたか、などなどについて十分知ってから使った方が良いと思う。知ってしまうとむしろ使うことに抵抗を覚えるようになると思いますが……。


Id: #a20010506211429  (reply, thread)
Date: Sun May 06 21:14:29 2001
Name: 埋文担当者
Subject: 相対主義についてのご質問

はじめまして。
「考古学情報広場」から入りました。
理系がまったくだめな、考古学の人間です。

実は、「反省的メタ考古学」の談話室で、「歴史に客観・真実はあるか?」なるタイトルでネタふりをしました。議論の最中で、このサイトで「相対主義」についてのコーナーを見つけたところです。

なぜ気になるかというと、私の歴史学についての主張が「相対主義」そのものと読めたためです。(恥ずかしい話ですが、「相対主義」という言葉も、ここで理解しました)

私は20年程前に大学を卒業し、一自治体の埋蔵文化財担当として現在まで考古学とかかわっています。この20年の間に、各時代の「認識」(理解・解釈)がかなり変わってきたと感じています。
極端な例を言えば、縄文時代についての理解です。
私たちが大学で学んだ70年代には、縄文時代は「食うや食わずの時代」で、人々はその日暮らしをしていたようなイメージでした。
ところが、80年代以降、「縄文時代はパラダイス」的な論文が多くなり、現在では若干ゆり戻しがありますが、「そんなに悲惨な生活ではなかった」というのが一般的な見解です。

この例のように、「歴史」・「考古学」の時代観は数十年のオーダーで変わります。(変わらないものや保留のものもありますが)

私としては、こんなにコロコロ変わるものなんて、「真実」ではない、と考えています。
「歴史学」・「考古学」は解釈と考えていますので、「歴史の真実を考察する」なんて文章をみるとジンマシンが出そうです。
「客観性」も同じで、現在私たちが理解している「竪穴住居」でさえ後世の研究で「あれは住居ではないんだよ」という説得力のある説も出るかもしれません。

つまり、今の「歴史学」・「考古学」上の理解は、現段階の理解に過ぎない。(ある面、パラダイム論かな?と思ったこともあります)。そこに「真実」なんて「片腹痛いわい」というのが私の心情です。

私が言うのは「その時々によって解釈が違ってくるかもしれないから、今の解釈が完全ではない、ということを自覚せよ」ということです。

ここで読んだ「相対主義批判」は、自分の主張が批判されているようで、少しショックでした。
あくまで、学問は「真実」を追求するものなのでしょうか?

まとまりのない文章になってしまいました。質問になっていないかもしれませんが、コメントいただければと思います。
Id: #a20010506061211  (reply, thread)
Date: Sun May 06 06:12:11 2001
Name: くろき げん
Subject: 高崎金久著『可積分系の世界――戸田格子とその仲間』

時田さんがちょっと触れてますが、高崎さんの『可積分系の世界――戸田格子とその仲間』をまだ宣伝してませんでしたね。

『可積分系の世界』は様々な無限次元古典可積分系 (ソリトン系) に関する最新の教科書です。感覚がずれてしまって読むのがどれだけ大変な本なのかうまく認識できなくなってしまっているのですが、私が見た限りにおいて、内容的にかなり高度なわりに、この本が要求する予備知識は少ないです。大学の理系における基礎的な教養である微積分と線形代数をマスターしていれば読めます。大事なのは、手を動かすことを嫌がらないことと、特殊な場合を扱っていてもそれが普遍的な代数解析的構造と繋がっていることを忘れないことです (後者は納得するまでかなりの時間がかかるはず)。

ソリトン系についてどう説明したものかと悩みますが、これに関しては百聞は一見にしかずだと思うので、ソリトン工房画廊の「ソリトンのさまざまな顔」でソリトンの姿を見て下さい。文章による詳しい解説と共に、 KdV, mKdV, sine-Gordon のソリトン解のアニメーションを見ることができます。

20世紀の後半に物理的に意味のある非線形の偏微分方程式の中に異様に良い性質を持つものが次々に見付かって行ったんですね。そして、それらは、無限個の保存量を持つ、逆散乱法で解ける、 Lax 形式で書ける、双線型型式で書ける、 N ソリトン解を持つ、などの多くの共通した性質を持ち、異なる方程式の間も無関係ではなく、有限次元の可積分系も含めて様々な関係が見付かって行きました。

その流れの中で、1980年頃、佐藤幹夫は、無限個の高次の時間発展を同時に考えることによって、ソリトン系の解全体が無限次元 Grassmann 多様体 (の部分多様体) で記述できるという画期的な理論を発見しました。その理論は現在では佐藤理論と呼ばれています。高崎さんの本の中心部分は戸田階層に関する佐藤理論の解説です。 (私は学部生の3年、4年のときに続けてあった佐藤幹夫の東北大学数学教室における集中講義で無限次元 Grassmann 多様体の理論を知りました。)

佐藤理論を含む無限次元古典可積分系全体の世界への入口になるような本をどのように書けば良いのか? これは非常に悩ましい問題です。なぜなら、佐藤理論があったとしても、世界の探索は必ずしも整理され切っているわけではないからです。広い世界のどこを入口に設定すれば良いのか? 数学的に普遍的な性質は全てのソリトン系で共通しているので入口の選択肢はおそろしく広い。

高崎さんの解答は戸田格子→戸田場→戸田階層という流れを中心にすえることでした。ソリトン系としておそらく最も有名な KdV や KP に関しては他にも解説書があるのですが (例えば、日本語で書かれた本では三輪哲二・神保道夫・伊達悦朗共著、『ソリトンの数理』 (岩波講座応用数学18、対象4) がある)、戸田階層について高崎さんの本は (英語で書かれたものを含めて) 他に類書がないと思う。

それでは「戸田格子」「戸田場」「戸田階層」と何か。面倒なので無限格子の場合だけを考え、運動方程式の形だけを書くことにします。 (手抜きですみません。)

戸田格子の運動方程式:

t2 qj - exp ( qj-1 - qj ) + exp ( qj - qj+1 ) = 0.

要するに nearest neighbor interaction の potential の形が V(qj+1 - qj) = exp (qj - qj+1) の形になっている場合を戸田格子と呼ぶわけです。 (実際には V(u) = g2 exp (- u) + a u という potential を考えるが運動方程式の形に関係ない a u の項を面倒なので省略した。 V(u) = g2 exp (- u) + a u は、 a > 0 のとき、ただ一つの極小値を持ち、その幅で qi が並んでいる場合が定常状態になる。 Hamiltonian は適切に定数を引き去って値が有限になるように定義する。)

戸田場方程式:

( ∂t2 - ∂x2 ) φj - exp ( φj-1 - φj ) + exp ( φj - φj+1 ) = 0.

戸田格子の 2 次元時空への拡張が戸田場です。代数的な扱いのためには z = (x + t)/2, z' = (x - t)/2 と置き、 z, z' を独立な複素変数とみなして、

- ∂zz' φj - exp ( φj-1 - φj ) + exp ( φj - φj+1 ) = 0.

を考える方が便利です。戸田場方程式は、 φ2k = - φ2k+1 = - a √-1 φ という constraint を置くと、

zz' φ + 2a-1 sin 2aφ = 0

となり、 sine-Gordon 方程式に帰着します。

戸田場には、独立変数 z, z' を z = t1, z' = t1' と置き、可算個の独立変数 (t1, t2, t3, ...), (t1', t2', t3', ...) とそれらに関する微分方程式を自然に導入することができます (それらを高次の時間発展と呼ぶ)。正確な定義は線形常差分作用素に関する Lax 形式の代数で要領良く行なうのですが、戸田場の持つ無限個の独立でかつ互いに Poisson 可換な保存量の各々に時間発展の変数を導入したと考えて構わないはずです。 (考え得る互いに可換な全ての時間発展を同時に考えるというのが佐藤理論のミソなのだ。この点は KdV や KP などの他のソリトン系でも共通しています。)

戸田階層は Lax 形式によって高次の時間発展を導入した戸田場の方程式を含む非常に一般的な方程式系です。

不親切でいいかげんな紹介になってしまいましたが他にやらなければいけないことが山積みなんでこの辺で止めます。本当は、 string equation や Painlev\'e との関係だとか、行列模型との関係だとか、様々な有限次元可積分系 (古典および量子) の話だとか、量子化の問題だとか、量子群との関係だとか、数論との類似だとか、たくさんの面白い話があるのですがここでは省略。

KP 系を中心としたソリトン系の理論の発展の歴史については『現代数学の広がり2』 (岩波講座、現代数学の基礎 34) の第3章がおすすめです。

高崎さんの本を bk1 で検索。その結果は以下の通り:

よくできる高校生は『新入生のための数学序説』を読むと良いかもしれません。

『コマの幾何学』の主題の一つは「コワレフスカヤのコマ」の解析です (読むためには数学科大学院レベルの素養が必要)。コワレフスカヤが新しい可積分系を見付けるときに用いた方法 (Kowalevski-Painlev\'e analysis) は今でも完全に理解されてないと思う。ソーニャ・コルヴィン・クルコフスカヤ・コワレフスカヤ (Sonya Corvin-Krukovsky Kovalevskaya) は1850年にモスクワで生まれた美貌の女性数学者で1891年に41歳で生涯を閉じています (1, 2, 3)。コワレフスカヤは色々話題になり易い数学者なので知っておいて損はないと思う。『ソーニャ・コヴァレフスカヤ――自伝と追想 改版』 (岩波文庫 1996.11) やワロンツォーワ著『コワレフスカヤの生涯――孤独な愛に生きる女流数学者』 (三橋重男訳、東京図書、 1975) という本があるようだけど、実はどちらもまだ読んでないのだ。


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