Lie 環の学び方についてコメント

黒木 玄

1999年11月1日(月)

佐武一郎著『Lie環のはなし』は線型代数さえマスターしていれば読める易しい良い本なので、線型代数を学んだ直後に読むと良いかもしれません。しかし、内容的には semisimple Lie algebra の分類が目標になっていて、他の分野での応用において重要な Lie 環の表現論がほとんど説明されていません。

Semisimple Lie alg. の表現論は、 semisimple Lie alg. の構造の一般論 (root 分解などについて) をみとめるか、具体的な Lie alg. を与えて、その構造を具体的に書き切ってしまうこと(これは単なる計算なので一般論抜きに直接やっても難しくない)から出発すれば、『Lie環のはなし』の内容とほぼ独立に学ぶことができます。 (Lie 環の root 分解は、昇降演算子の考え方を Lie 環レベルで実現したもの。そして、その表現の構成も昇降演算子の考え方に基いて実行可能(highest weight module (もしくは representation)の理論)。それとは別に四元数体を一般化した Clifford 代数(fermion の代数)というのがあって、それを使って構成された o_n(C) の表現は spin 表現と呼ばれていて物理でも重要。)

どちらにしても、 gl_n, sl_n, o_n, sp_{2n} の root 分解を(特に n が小さいときに)具体的に書き下して表を作るという作業を前もってやっておかないと、暗中模索という感じになって、かなりの時間を無駄にしてしまいます。 (そのとき、o_n, sp_{2n} の定義において、「内積」を左上から右下への通常の対角行列に取るのではなく、右上から左下への対角行列に取っておくのが良い。その理由は root 分解を具体的に記述してみればわかる。Cartan subalg. を左上から右下への通常の対角行列にとれる。)

V. G. Kac の Infinite dim. Lie. alg. も最初はそういう読み方をするのが正しいのだと思います。具体的には第7章から第11章までを読むことを最初の目標にする。

もしくは、 V. G. Kac and A. K. Raina, Bombay lectures on highest weight representations of infinite dimensional Lie algebras, World Scientific, 1987 (145頁のうすくて易しい本、線形代数と微積分を知っていれば読めるはず、 Virasoro alg., affine sl_2, free fermion の表現論および KP 方程式系の佐藤理論などについて具体的な話が書いてある)を最初に読むことを目標にする。