内容: Constructivism、理科教育、Sokal、Pinker
From: Kuroki Gen <kuroki@math.tohoku.ac.jp> Subject: Constructivism, Science Education, Sokal, and Pinker Message-Id: <199710071243.VAA03207@sakaki.math.tohoku.ac.jp> Date: Tue, 07 Oct 1997 21:43:39 +0900 Revised: Wed, Oct 8 14:07:22 JST 1997
黒木です。
私が作成したリンク集が幾つかあるので紹介します。
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/Constructivism/index-j.html
ここ数年、数学教育および理科教育プロパーの間で流行している用語に「構成主義」(constructivism)というジャーゴンがあります。 (最近では「構築主義」と訳されるようになった。) 教育学における構成主義のスローガンは「生徒自身に知識を構築させる」というものです。
Constructivism には色々なバージョンがあるようですが、中でも「科学知識の社会学」(sociology of scientific knowledge, よく SSK と略される)に結び付き、「科学および数学の知識の最も中核的な部分でさえ、社会的に構成されたものに過ぎない」というスローガンを教育の場に主義として持ち込もうという動きが、アメリカの教育学の世界の一部にあるようです。
このような動きが日本ではどのように受け入れられつつあるかということに興味が湧いたので、今年の6月頃に、WWW の検索エンジンで調べてみました。「社会的構成主義」という用語が含まれたウェブページからの抜粋が上の URL にあります。科学技術論、社会学、数学教育、科学教育、その他の教育関係、と大雑把に分類してあるので、興味のあるところから読んで下さい。
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/rikaedu-relat.html
このウェブページは理科教育メーリングリスト
http://rika.org/
において8月の終わり頃に始まった「理科教育プロパーのもつ科学観」に関連した議論へのリンク集です。
教育学の専門家が、クーンやファイヤアーベント以降に流行した相対主義的な「新しい科学論」を、十分理解もせずに、理科教育の現場に持ち込もうとしていることに対する疑問がそこでは提出されています。
文部省の「新しい学力観」と多くの教育学プロパーの「新しい科学観」の間には、字面の上での類似性を越えた相性の良さがあるように見えるので要注意です。
実際、もと文部省教科調査官で現在広島大学教授の武村重和氏が、『楽しい理科授業』97年7月号において、
======================================================================== 伝統的な理科教育パラダイム 新しい理科教育パラダイム 受 容 創 造 ------------------------------------------------------------------------ 2 自然科学 自然には普遍の原理、法則、概念 自然科学は人間が創造したもので変 がある。観察事実は、客観的であ 化する。自然科学は科学者により異 る。 なることが多く相対的である。 5 授業の主な目標 正しい科学概念の理解と科学の方 学習者の考えた仮説を実験により確 法、科学的思考や態度の育成 かめる自然認識の再構成と表現力の 育成 ========================================================================
というような対比をした上で、「新しい理科教育パラダイムによる改革」を説いていることが、理科教育メーリングリストにおいて報告されています。ここでなされている
伝統的な理科教育パラダイム : 新しい理科教育パラダイム = 受容 : 創造
という単純な対比の仕方はアンフェアな議論の典型のようにも思えます。このような議論と「新しい学力観」との関連や上のようなことを説いている方がもと文部省教科調査官の大学教授であるという事情があるので、見過ごすことはできないと思いました。
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/Sokal/index-j.html
1996年の春に、cultural studies の有力な学術誌である Social Text 誌の科学批判特集号 "Science Wars" に、ニューヨーク大学物理学教授の Alan Sokal 氏が寄稿した論文が掲載された。しかし、その論文は Sokal 氏が sloppy thinking とみなしている事柄のパロディーだったのである。Sokal 氏はすぐさま暴露論文を Social Text 誌に送り付けたが、今度はリジェクト。そこで、Sokal 氏は別の雑誌にその暴露論文を発表した。その内容はある種の文化評論家達のいいかげんな批判活動を強く非難するものであった。しばらくして、大物評論家の Stanley Fish 氏が「悪いのは他人を騙した Alan Sokal 氏の方である」という内容の論説を The New York Times に発表した。論争はまたたくまに激化。上の URL を覗けば、その後の大騒ぎの様子がわかります。
論争とは直接関係ないのですが、科学論および教育との関連する記事としては、
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/Sokal/index-j.html#References
にある科学社会学と科学のカルチュラル・スタディーズの紹介および
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/Sokal/index-j.html#1997-03
にある H. Cromer 著 "Connected Knowledge" の書評などが結構参考になります。
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/Pinker/index-j.html
これは、言語学のウェブページです。
スティーブン・ピンカー著、『言語を生み出す本能』、上・下、椋田直子訳、NHKブックス 740-741、日本放送出版協会、1995年 (Steven Pinker, The Language Instinct - How the Mind Creates Language, 1994)
などの言語学関係の本を幾つか読み、言語学の世界にも C. P. スノーの意味での所謂「二つの文化」が存在しているのではないかと感じ、そのことを確認することを意図して作成した資料です。上で紹介した The Sokal Affair も「二つの文化」の対決という図式でもって解釈することもできます。「二つの文化」の話に関する簡単な解説については、
http://www.komaba.ecc.u-tokyo.ac.jp/~ctakasi/02minj/cpsnow.html
を参照してください。
サピア・ウォーフの仮説および言語論的相対論にかかわる議論を追うと面白いと思います。アインシュタインの相対性理論は言語学における相対論の影響を受けているという話を変な形で真面目に信じている人が結構いることには驚きました。エスキモーの雪を意味する単語の数に関する都市伝説は笑える話として結構楽しめます。
以上の資料を集めてみて、科学と教育と社会と文化に関して、色々なことを考えさせられました。
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