需要不足が問題であり、デフレはインフレより怖い
「雇用不安と構造改革 「痛み」は避けられないのか」上智大学経済学部シンポジウム2001年10月27日(土)の中継のコピー。その後の論争については「ESRI‐ 経済政策フォーラム」の「第5回 デフレへの対応を巡って」 (2001/12/03) を参照せよ (引用 1, 2)。
転載
以下は http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/eco/1002801116/240-246 からコピー。所謂「半角カナ」の所謂「全角カナ」への変換および細かい誤植の修正は引用者による。
- 240 :現在:01/10/27 16:21
- 今、上智大学で吉川、岩田、浜田がシンポジウムやってる!
- 243 :中継:01/10/27 17:08
- 浜田が野口ユキオを酷評!
- 245 :報告:01/10/28 15:27
- 岩田氏と吉川氏は需要不足が問題で、不良債権の償却はマーケットへの
アピールにはなるがそれだけで本質的に解決しないことで一致。また、
デフレは悪であるとすることも一致。岩田氏によるとインフレとデフレは
非対称で4%のインフレと4%のデフレでは全然害悪としてのレベルが
違うという帰結。「良いデフレ論」に対して浜田氏は「為替を考慮しない
理屈で、院生の答案なら落第」として野口ユキオの持論を一蹴。
インフレターゲッティングに対しては有効な手段が鍵になることで一致。
外為を利用してのインフレは可能というのは3者ともに一致。
問題は長期金利と国債で、岩田氏はやるべきであるとして主張したが、
吉川氏はこの点の効果に関しては懐疑的だった。吉川VS岩田氏はなかなか
の激論が交わされたが、二人とも目的には相違はなく、むしろ手段についての
議論だった。
そんなわけでカテゴライズするなら
インフレターゲット積極派
インフレターゲット慎重派
デフレ容認派
の3つにした方が良いかも。3番目の連中は論外ということで。
- 246 :銅鑼:01/10/28 15:39
- 「外為を利用してのインフレは可能というのは3者ともに一致。」
スベンソン提案には全員一致だから、遂に吉川先生も旗幟をはっきりし始めたようですな。
結構なことです。
文献
- 「ESRI‐ 経済政策フォーラム」の「第5回 デフレへの対応を巡って」 (2001/12/03) で野口悠紀雄が厳しい批判にさらされている (引用 1, 2)。
- 『中央公論』2002年1月号で浜田宏一曰く「輸入物価の効果を論じながら、変動為替制度下の日本で、為替レートの効果をほぼ無視した議論を展開する論者 (たとえば野口悠紀雄氏) があり、それに説得される聴衆がいるのには驚くほかない。相対価格と絶対価格水準を混同したり、開放経済の下での為替レートの働きを無視するような学生は、マクロ経済学のクラスで及第するかもおぼつかない。」
- 岩田規久男、「[金融]マネーサプライの量的緩和を」、特集:日本経済再失速のリスク、東京財団研究事業部ニューズレター、 No.45、 2001.2。要約:「資産デフレのワナから抜け出すためには、財政支出の拡大は有効ではない。いま求められている金融政策は、マネタリーベースの拡大によるマネーサプライの量的緩和。消費者物価を3〜4%程度上昇させるというインフレ・ターゲットをはっきり宣言し、市場に大量のマネタリーベースを供給しつづける必要がある。」
- ラルス・E・O・スベンソン、「開放経済下における名目金利の非負制約:流動性の罠を脱出する確実な方法 (pdf)」、日本銀行金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ2001年収録分、 2001/1。引用:「本稿はこの提案を拡張し、開放経済のもとで流動性の罠から安全かつ確実に脱出する方法があることを論ずる。その方法とは、(1)上昇トレンドを持つ物価水準目標経路(要するに長期的なプラスのインフレ目標に対応)を宣言すること、(2)(a)自国通貨を切り下げ、定常状態に比し実質ベースで自国通貨安の水準に為替レートをペッグすること、そして(b)物価水準目標経路に到達した段階で、物価水準ターゲティング(ないしインフレーション・ターゲティング)に移行し、為替レート・ペッグを放棄すると宣言すること、 そして(3)後はただそれを実行すること、というものである。¶ この方法は、(a)自国通貨を実質ベースで長期均衡水準以下に引き下げる、(b)長期実質金利を低下させる(いずれ自国通貨が実質ベースで増価するはずであるため、実質ベースでの増価期待が国内の長短実質金利を相対的に低下させる)、そして(c)インフレ期待が上昇する(為替相場がペッグされているため、実質ベースでの増価期待は自国のインフレ期待を発生させる)ことを通じて、景気回復を急起動(jump-start)させるはずである。GDPギャップは、(a)および(b)により需要超過方向へ転じ、デフレは(a)、(c)のほか、GDPギャップの需要超過方向への動きが加わってインフレに転化する。経済は、流動性の罠から脱出することになる(信認されたペッグの下では名目短期金利はプラスになる)。物価水準が上昇し、やがて物価水準目標経路に到達するので、その段階で為替レート・ペッグは放棄される。」
- Lars E. O. Svensson, "The Zero Bound in an Open-Economy: A Foolproof Way of Escaping from a Liquidity Trap", Monetary and Economic Studies 19(S-1), February 2001, 277-312
- Lars E. O. Svensson, "The foolproof way of escaping from a liquidity trap: Is it really, and can it help Japan?", The Frank D. Graham Memorial Lecture, Princeton University, April, 2001, Non-technical summary
- 三木谷良一、アダム・S・ポーゼン編、清水啓典監訳、『日本の金融危機――米国の経験と日本への教訓』、東洋経済新報社、 2001.8.16 (原書 2000)。この本を読めば、日本銀行 (および日本政府) に可能な不況脱出の具体的な手段が提案されているにもかかわらず、日銀側がそれを拒否していることがわかる。 (注意: bk1 に掲載されている日本経済新聞の書評では「榊原氏の「告白」のほうに説得力があると思える」とあるが、私には、榊原英資氏の「告白」は大蔵省と日本銀行の責任回避のために役に立つ悪しき言説に過ぎず、反発した米側研究者たちの方が今後の日本のためになる発言をしてくれているように見えた。)
- ポール・クルーグマンによる日本の経済政策批判