スティグリッツ岩田規久男デフレはインフレより怖い暗闇への跳躍

オークンの法則――クルーグマン論文からの引用


ポール・クルーグマン、「復活だぁっ! 日本の不況と流動性トラップの逆襲」 (原著1998年、山形浩生訳2001年、 PDFTeX ソース) からの引用。長目の抜粋が「クルーグマンによる日本のGDPギャップの推定」にある。


アメリカでは、産出ギャップはふつうは、自然失業率と、失業の変化と実質GDPの変化との関係を示したオークンの法則係数推定を組み合わせることで推定される。日本の計測された失業率は、伝統的にアメリカの失業率よりずっと小さな動きしか見せなかったけれど、1981-91の期間には、実は驚くほどぴったりしたオークンの法則関係が成立している(図4)。この見かけの関係の傾きは、アメリカのものの3倍だ。失業率を1%下げるには、余剰成長が6%上がらなくてはならないということになる。もし停滞期以前の平均2.5%という失業率を、自然失業率の推定値として採用するなら、1997年の3.4%失業は、1997年の産出ギャップが5%以上あったということだ――そして潜在産出がたぶんいまも増大していて、実際の産出が停滞しているのだから、1998年末のギャップはたぶん10%にも達しているかもしれない。

図4:日本のオークンの法則

日本のオークンの法則


オークンの法則 (Okun's law) とは、上のグラフのように、実質GDPの変化 (実質GDP成長率) と失業率の変化のあいだには統計的に直線で近似される関係が観測されるという経験則のことである。

上のグラフを見ると、 1981-1991年においては、実質GDP成長率が4%を切ると失業率が増加し始め、 4%を超えると失業率が減少し始めるという関係があったことがわかる。実質GDP成長率がたとえプラスの値だったとしても、その値が小さ過ぎると失業率が増加してしまうことになる。

1990年代に日本の失業率はほぼ単調に増加した。 1995年度と1996年度の日本の実質GDP成長率は、「失われた10年」のあいだであったにもかかわらず、それぞれ2.5%と3.5%という比較的高い値であった。しかし、失業率は減少しなかった。 2000年 (歴年) の日本の実質GDP成長率も2.4%と比較的高い値であったにもかかわらず、やはり失業率は減少しなかった。

以上の事実から、日本の実質GDPの潜在成長率は少なくとも3%近くはありそうだと推測できる。

もしも潜在成長率が1%台ならば、 1995年度と1996年度にかけておよび2000年 (歴年) には失業率を減少させることなく経済成長を実現することはできなかったはずである。