From owner-he-forum@ml.asahi-net.or.jp Fri Nov 17 00:20 JST 2000 Received: from ml-dist.asahi-net.or.jp (ml-dist.asahi-net.or.jp [202.224.39.110]) by sakaki.math.tohoku.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id AAA16391 for ; Fri, 17 Nov 2000 00:20:12 +0900 (JST) Received: from ml.asahi-net.or.jp (ml.asahi-net.or.jp [202.224.39.111]) by ml-dist.asahi-net.or.jp (8.9.3+3.2W/3.7W) with ESMTP id AAA22953; Fri, 17 Nov 2000 00:20:19 +0900 (JST) Received: from localhost (daemon@localhost) by ml.asahi-net.or.jp (8.8.8/3.7W) with SMTP id AAA45806; Fri, 17 Nov 2000 00:14:06 +0900 Received: by ml.asahi-net.or.jp; Fri, 17 Nov 2000 00:14:01 +0900 Received: (from ml@localhost) by ml.asahi-net.or.jp (8.8.8/3.7W) id AAA33838 for he-forum-outgoing; Fri, 17 Nov 2000 00:12:49 +0900 Message-Id: <200011161512.AAA33838@ml.asahi-net.or.jp> To: he-forum Subject: [he-forum 1414] アルカディア学報No.13 X-Mailer: Mew version 1.94.2 on Emacs 20.4 / Mule 4.1 (AOI) Mime-Version: 1.0 Content-Transfer-Encoding: 7bit Date: Fri, 17 Nov 2000 00:18:02 +0900 (JST) From: Hiroaki Ozawa X-Dispatcher: imput version 20000228(IM140) Lines: 98 Sender: owner-he-forum@ml.asahi-net.or.jp Precedence: bulk Reply-To: he-forum@ml.asahi-net.or.jp Content-Type: Text/Plain; charset=iso-2022-jp Content-Length: 6272 私学高等教育研究所『アルカディア学報』No.13 (2000年11月8日) 大学評価・学位授与機構の評価実施方針を問う 主幹 喜多村和之  文部省では7月から8月にかけて国立大学の独法化に関する調査検討会議を 開き、独法化に関する審議を開始した。そこでは大学の在り方について、国立 大学だけにとらわれず公私大や高等教育全般にわたって、興味深い議論が活発 に展開されていることが、議事録要旨から推察される。ぜひともこの検討会議 で実りある審議成果を期待したい。  これとほぼ平行して、4月に発足した大学評価・学位授与機構では、大学評 価委員会を設置して、独法化のペアとなる大学評価の在り方を審議しつつある。 9月26日には委員・評価員を加えると総数255名から成る6つの専門委員会も 発足させている。そして10月4日には早くも「平成12年度に着手する大学評価 の内容・方法等について」という照会の文書が木村機構長名で日本私立大学団 体連合会会長宛にも寄せられてきた。ここには平成12年度に予定されている評 価事業の全学テーマ別評価、分野別教育評価、分野別研究評価の具体的な実施 案が詳細に提示されている。同機構ではこの実施案について平成12年11月15日 までに団体の意見をまとめて回答することを求めている。  発足からわずか半年の間に、同機構は評価を実施するために委員会、専門委 員会を通じて評価事業の実施案まで、矢継ぎ早に提示してきた。しかも1ヵ月 そこそこの期間内に私大団体全体の意見を「とりまとめて」回答せよという。 私事であるが、この10月に約10日間訪米していた私は、留守中にかくもめまぐ るしい動きがあったことに驚きを禁じ得ないでいる。そもそも評価の対象とな る95校の国立大学や国立大学協会でも、そんなに手際よく意見がまとめられる のであろうか。ましてや400校を超える多様な私立大学の総意を短期間でまと めるなどということが簡単に出来る筈がないことは、十分承知の上であろう。 大学を評価するという、国家百年の計に影響を及ぼす重要な問題に、なぜそん なに性急に事を運ぼうとするのであろうか。  同機構がこうも急いでいるのは平成12年度中には実施しなければならないと いうタイムスケジュールの故であろう。ということは、大学評価機構の内部で は、評価の方針、内容、方法も殆ど出来上がっていて、後は広く意見を聞いた という形をとりたいだけなのではないかという推測もしたくなる。これだけ詳 しい原案ができあがっていれば、意見をはさむのも難しいし、異論が採用され る可能性も乏しいだろう。なにしろ当の国立大学関係者でも、大学評価機構と は何ものであって、評価の実施案がどんなものかも知られているかどうか疑わ しい。筆者の知るかぎりでは、国立大学関係者は独法化の方に気をとられてい て、そのペアとなる評価の方までは、まだ気がまわっていないように見受けら れる。いまのままでは、大学評価の方針は、ごく一握りの関係者によって決定 されていく公算が大である。  私大関係者の実態からいえば、この問題への情報も不足しているし、関心も 決して高いとはいえないと思われる。その理由の1つは、評価は「大学等の設 置者の要請をまって行うものとする」とか、私立大学は「当分の間」評価の対 象としない、とされているからであろう(国立学校設置法施行規則第52条の3 および附則6)。つまり私立大学にとって大学評価はさしあたっては自分とは 関わりのない国立大学のことなのであり、仮に関係あるとしてもかなり先のこ とで、切迫感が感じられないのである。しかし私立大学はみずからの要請によっ ては国の評価事業に参加することが出来るし、法的には評価を免れるような規 定はどこにもなく、まさに今は対象とされていないだけのことである。政府の やることはいつでもこんなふうに裏木戸から何気なく入ってきて、気がつくと 思うつぼにはまっているということが少なくない。  そこでここでは、実施案の具体例や細部に対する疑問や見解はひとまずおい て、同機構の第三者評価の基本的性格にかかわる点のみについて、同機構の回 答を求めたい。  (1)同機構の大学評価は公私立大学は対象としないのか、あるいは「当分の 間」だけ対象としないのか、そうだとすればその期間とはどのくらいの時間な のか、是非とも曖昧にしないでお教えいただきたい、というのが第一の問いで ある。それに評価実施案について公私大の意見をきくということは、いずれ公 私大へも評価を及ぼす意図ではないかと思われるが、どうであろうか?もし国 立大学だけに評価の対象を限るのならば、公私大の意見までを必ずしも徴する 必要はないであろう。  (2)同機構の収集整理した評価情報は、当該大学のみならず、ひろく社会に 公表するとの方針が表明されている。情報公開自体は望ましいことであるが、 公表の仕方次第によっては、いくつかの問題が引き起こされる可能性がある。 たとえば評価情報を利用して、さまざまな評価機関やメデイアが大学の質を序 列化し、大学がランキング競争に巻き込まれる可能性である。すでにイギリス ではジャーナリズムが高等教育評価機構(HEFC)のデータをつかった大学 ランキングを毎年公表している。つまり公的機関が収集した評価情報が、大学 の教育研究水準の向上や改善に資するという本来の目的から逸脱して、大学の 序列化に利用されるおそれがある。序列化がすべて悪いとはいえないかもしれ ないが、大学の組織全体や教育研究の質を序列化することが、教育研究の質的 評価としては適当な尺度といえないことは、過去に偏差値ランキングがもたら した幾多の弊害が証明している。機構の評価情報がこうした方向に利用される 可能性に対して、機構としてはどのように考え、またこれに対していかなる対 応策を講じているのか。  (3)今回の「実施方針」のなかの評価の目的のなかには、評価結果を大学の 改善に役立てることと公共的な機関としての大学に対する「国民の理解と支持 を得られるよう支援・促進していくこと」が挙げられている。ここにはその評 価結果を資源配分に活用するといった、2月の評価委員会報告にあった文言は 抜け落ちている。機構はただ評価情報を提供するだけで、政府がこれをどう使 うのかには関知しないのだろうか。あるいは、評価情報が政府の予算配分や優 先順位の決定につかわれる可能性はないと考えているのだろうか。もしそうだ としたら、第三者評価はなんのために行われるのだろうか。機構の行う評価が、 私学助成等になんらの影響を及ぼすことはないのだろうか。その点機構として どう考えているのかを明らかにして欲しいのである。  少なくとも以上の3点が曖昧にされたままでは、私学としての機構への回答 のしようがなく、また私学としての評価システムの在り方も考えようがないの である。