From owner-he-forum@ml.asahi-net.or.jp Thu Jun 8 18:06 JST 2000 Received: from ml-dist.asahi-net.or.jp (ml-dist.asahi-net.or.jp [202.224.39.110]) by sakaki.math.tohoku.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id SAA21134 for ; Thu, 8 Jun 2000 18:06:30 +0900 (JST) Received: from ml.asahi-net.or.jp (ml.asahi-net.or.jp [202.224.39.111]) by ml-dist.asahi-net.or.jp (8.9.3+3.2W/3.7W) with ESMTP id SAA19620; Thu, 8 Jun 2000 18:07:22 +0900 (JST) Received: from localhost (daemon@localhost) by ml.asahi-net.or.jp (8.8.8/3.7W) with SMTP id SAA40828; Thu, 8 Jun 2000 18:03:12 +0900 Received: by ml.asahi-net.or.jp; Thu, 8 Jun 2000 18:03:08 +0900 Received: (from ml@localhost) by ml.asahi-net.or.jp (8.8.8/3.7W) id RAA45372 for he-forum-outgoing; Thu, 8 Jun 2000 17:58:09 +0900 Message-Id: <200006080858.RAA45372@ml.asahi-net.or.jp> Date: Thu, 08 Jun 2000 18:01:32 +0900 From: Hiroaki Ozawa To: he-forum Subject: [he-forum 992] 団藤保晴氏の見解 MIME-Version: 1.0 Content-Transfer-Encoding: 7bit X-Mailer: Becky! ver 1.26.02 Sender: owner-he-forum@ml.asahi-net.or.jp Precedence: bulk Reply-To: he-forum@ml.asahi-net.or.jp Content-Type: text/plain; charset=ISO-2022-JP Content-Length: 4426 http://netbr1s.nikkeibp.co.jp/wcs/nbr/leaf?CID=onair/net_b/c_up_tp/103884 (06月06日付) netbrain.nikkeibp.co.jp -------------------------------------------------------------------------------- 国立大学の独立行政法人化を文部省が表明 真に解決すべき問題は何か -------------------------------------------------------------------------------- 何を目的に国立大学を改革するか (写真は東京大学,時事)  文部省は5月下旬,国立大学長・大学共同利用機関長等会議の大臣説明で国立大 学の独立行政法人化をで正式に表明した。「検討課題は,極めて広範多岐にわた ることから」「相当の時間を要するものと考えておりますが,平成13年度中には, 調査検討会議としてのとりまとめをお願いしたい」と,早急に踏み出すつもりで ある。  全国大学高専教職員組合は早速,これを批判する談話を出した。「独立行政法 人制度は」「行財政のスリム化を目的とした行政改革に端を発している」「財政 をはじめ,研究教育基盤の総合的充実等,日本の学術研究・教育に対する国の果 たすべき責務が明確にされるどころか,その後退が危惧される」と。  独立行政法人化が話題になってから,大学人からいろいろな問題点が指摘され てきた。  例えば,平成11年11月の国立大学理学部長会議「危うし!日本の基礎科学−国 立大学の独立行政法人化の行方を憂う−」は「短期間での成果を評価することで 行政の効率化を図ろうとする通則法に従って,国立大学の独立行政法人化が行わ れるようなことになれば,理学部及び関連大学院における教育・研究は息の根を 止められ,明治初年以来の営々たる努力の結果,ようやく多くの分野で世界をリー ドするまでになった日本の基礎科学が衰退するであろうことは,火を見るより明 らかです」と述べる。  これに対して文部省は「通則法」は採らず,「特例法」を作るという。大学人 はそれで納得するのか。果たして,それが問題なのだろうか。  5月16日のこの「Close up!」欄「ヒトゲノム解読がゴール間近 出遅れた日本, 『ヒトゲノム解読がゴール間近 出遅れた日本,『機能解析』で巻き返せるか」 で,生物学の年間学位取得者の数が日本は米国の30分の1以下,とんでもない人 的格差になっていることを指摘した。  そればかりではない。私の連載コラム「インターネットで読み解く!」第13回 「大学改革は成功するか」は,労働人口をベースに考えると,日本は米国以上に 工学分野の大卒者を多く送り出しているのに,理学分野の大卒者は3分の1しかい ないことを,大きな問題とみている。組み立て系産業はともかく,化学などの基 礎分野で取り返しがつかないほどに遅れ続けている本質的な理由はここにあるの ではないか。  そして,同じ大学の中で助手―講師―助教授―教授と昇格していく,既得権益 保持型の人事システムが,世界的に見れば異常なのだとも。あの青色半導体レー ザーを開発して世界を驚かせた徳島・日亜化学工業の中村修二氏は,この春,米 カリフォルニア大教授に転じたが,国内の大学からは声も掛からなかったという。  冒頭の文部大臣説明は,長い表明の最後になって「国際社会に向けて我が国独 自の価値を発信していくために,個々の大学等の枠組みを超えて,我が国の高等 教育や学術研究の在るべき姿を長期的な視点から展望し,学問分野のバランスや 重点的に振興すべき領域などについて,国全体の視野から議論しうるような場を 設けることを考えていきたい」と述べるのが精一杯である。  この劇的な改革で何を解決しようとしているのか,「出発点が行革だった」不 幸は取り戻せそうにない。  (団藤 保晴) ■関連サイト ▼国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部大臣説明 http://www.monbu.go.jp/news/00000456/ ▼国立大学長等会議」(5月26日)をふまえて― 文部省の独立行政法人化「方針」 を批判する −(談話)全国大学高専教職員組合委員長 http://www.dango.ne.jp/fuj/dokuhouka/zendaikyo/00-5-29%20dokuhouka%20danwa.htm ▼危うし!日本の基礎科学− 国立大学の独立行政法人化の行方を憂う −国立 大学理学部長会議 http://www.sci.hokudai.ac.jp/oshirase.htm ▼「ヒトゲノム解読がゴール間近 出遅れた日本,『機能解析』で巻き返せるか」 http://netbr1s.nikkeibp.co.jp/wcs/nbr/leaf?CID=onair/net_b/c_up_tp/101938 ▼筆者のウェブ 記者コラム「インターネットで読み解く!」 http://www.alles.or.jp/‾dando/ 独立行政法人化については第74回「大学の混迷は深まるばかり」も ▼青色発光ダイオード・半導体レーザー開発物語 日亜化学工業 http://www.sw.nec.co.jp/con/con99/science/mar.html 中村修二氏の仕事について詳しい