From owner-he-forum@ml.asahi-net.or.jp Sat Jun 3 23:41 JST 2000 Received: from ml-dist.asahi-net.or.jp (ml-dist.asahi-net.or.jp [202.224.39.110]) by sakaki.math.tohoku.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id XAA12142 for ; Sat, 3 Jun 2000 23:41:51 +0900 (JST) Received: from ml.asahi-net.or.jp (ml.asahi-net.or.jp [202.224.39.111]) by ml-dist.asahi-net.or.jp (8.9.3+3.2W/3.7W) with ESMTP id XAA08504; Sat, 3 Jun 2000 23:42:18 +0900 (JST) Received: from localhost (daemon@localhost) by ml.asahi-net.or.jp (8.8.8/3.7W) with SMTP id XAA33560; Sat, 3 Jun 2000 23:38:03 +0900 Received: by ml.asahi-net.or.jp; Sat, 3 Jun 2000 23:37:59 +0900 Received: (from ml@localhost) by ml.asahi-net.or.jp (8.8.8/3.7W) id XAA21516 for he-forum-outgoing; Sat, 3 Jun 2000 23:36:18 +0900 Message-Id: <200006031436.XAA21516@ml.asahi-net.or.jp> To: he-forum Subject: [he-forum 973] 河北新報社説06/03 X-Mailer: Mew version 1.94.2 on Emacs 20.4 / Mule 4.1 (AOI) Mime-Version: 1.0 Content-Transfer-Encoding: 7bit Date: Sat, 03 Jun 2000 23:38:22 +0900 (JST) From: Hiroaki Ozawa X-Dispatcher: imput version 20000228(IM140) Lines: 45 Sender: owner-he-forum@ml.asahi-net.or.jp Precedence: bulk Reply-To: he-forum@ml.asahi-net.or.jp Content-Type: Text/Plain; charset=iso-2022-jp Content-Length: 2815 『河北新報』2000年6月3日付社説 国立大法人化/改革による利害得失示せ ---------------------------------------------------------------------  99の国立大すべてが、10年後ぐらいには国から独立した行政法人になり そうだ。今月中にも、関係者や識者による検討会議が設置される。  国立大にとっては戦後最大の改革だが、法人化という結論が先にあって、ど んな利害得失があるのかが具体的でない。早急に示す努力が必要だろう。  国立大には、確かに多くの課題がある。教員から学生への一方通行的講義、 安易な進級や卒業、個性の乏しさなどだ。  「このままでは、欧米の大学に取り残される」との指摘もある。活性化のた めに、何らかの改革が必要なのは明らかだ。  しかし法人化は、活性化を第一の目的として持ち出されたわけではない。出 発点にあったのは、中央省庁再編に伴う国家公務員の定数削減計画だ。  国立大の教職員は、約12万5000人。この人たちを減らさなければ、来 年度から10年間で公務員定数25%削減という目標の達成は難しい。  法人化論議は、そこから始まった。「数合わせが目的」との批判は、必ずし も的外れではない。  法人化そのものへの疑問もある。「効率性を求める法人化は、大学に適さな い」「競争原理にさらされ、弱肉強食による統廃合が進む」「学問や研究の質 的低下を招く」などだ。  しかし法人化しなければ、まともに定数削減の対象になる。文部省は「やむ を得ない」と法人化を容認、中曽根弘文文相が先月、国立大学長会議で事実上 の決定を通知した。  ただし、大学が持つ特性を考慮し、現行の独立行政法人通則法をそのまま適 用しないことも明らかにした。大学の自治を尊重するための「調整法」か「特 例法」を設けるという。  例えば、人事や事業評価。通則法では主務大臣の権限が強いが、大学の主体 性をある程度認めることなどが考えられている。  ともあれ法人化は、既定事実化したと言えよう。だが、将来の具体像は見え ない。法人化という結論だけが先にあり、多くの問題が先送りされている。  その1つに、教職員の身分がある。文部省は「公務員型」とする方針だが、 公務員とどう違うのかが明確でない。  公務員の身分が保証されるならリストラの心配はないが、保証すれば定数削 減の抜け道にもなりかねない。基本的な問題なのに具体像を示さず「まず法人 化」だけが独り歩きしている形だ。  授業料がどうなるのか、競争激化で地方の国立大は生き残れるのか、欧米諸 国の半分にも満たない国立大の予算はどうなるのか、なども不透明なままだ。  法人化には、多くの利点もある。優れた教授の引き抜きや、大学の判断での 学科や専攻の設置ができることなどだ。活性化につながるだろう。  大事なのは、それらの利害得失を、損得対照表のようにして国民に示すこと だ。結論が先で、後はのつじつま合わせでは、理解を得られない。  国立大の在り方は、21世紀の日本の科学技術や文化の発展を左右する。何 よりも関係者は、その視点を忘れてはならない。