From reform-admin@ed.niigata-u.ac.jp Thu Jun 19 01:02 JST 2003 Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (cosmos.ed.niigata-u.ac.jp [133.35.176.6]) by sakaki.math.tohoku.ac.jp (8.9.3p2/3.7W) with ESMTP id BAA02078 for ; Thu, 19 Jun 2003 01:02:52 +0900 (JST) Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (localhost [127.0.0.1]) by cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id AAA30307; Thu, 19 Jun 2003 00:23:27 +0900 (JST) Date: Thu, 19 Jun 2003 00:23:19 +0900 From: TSUJISHITA Toru Reply-To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Subject: [reform:04810] 大岡覚氏日々雑感 6/16 「国立大学法人法案」 6/03 「横浜市立大学問題」 To: 大学改革ML Message-Id: X-ML-Name: reform X-Mail-Count: 04810 X-MLServer: fml [fml 2.2.1]; post only (only members can post) X-ML-Info: If you have a question, send e-mail with the body "# help" (without quotes) to the address reform-ctl@ed.niigata-u.ac.jp; help= User-Agent: Wanderlust/2.11.2 (Wonderwall) Emacs/21.1 Mule/5.0 (SAKAKI) Mime-Version: 1.0 (generated by SEMI 1.14.5 - "Awara-Onsen") Precedence: bulk Lines: 127 Content-Type: text/plain; charset=ISO-2022-JP Content-Length: 8029 大岡覚氏サイト http://homepage2.nifty.com/ohoka/ 日々雑感 http://homepage2.nifty.com/ohoka/a-news/index.html より 6/16「国立大学法人法案」,6/03「横浜市立大学問題」 ---------------------------------------------------------------------- 6/16「国立大学法人法案」 「今日は講義の合間をぬって、参議院議員会館で行われた「国立大学法人法案 と大学の未来を考える国会内集会」というのに一市民として参加してきました。  マスコミではほとんど報道されていませんが、現在日本の大学や学問の将来 に大きな影響を及ぼすことになる「国立大学法人法案」(以下「法人法案」) が衆議院を通過し、現在参議院文教科学委員会で審議されています。法案の問 題点については「独立行政法人反対首都圏ネットワーク」 の人びとが縷々批判して きましたが、ようやく法案の問題点が国会での議論となり、その過程で文部大 臣はまともに答えられず 、審議がス トップするという局面も見られました。慎重な審議をするのは当たり前の話な のですが、審議を続けていけばさらに法案の問題性は浮かび上がってくるでしょ う。しかし与党側は強行採決も辞さない構えで早々に法案成立をさせようとし ています(法案そのもののの問題点についてはたとえば鬼界彰夫「「国立大学 法人法」批判要綱ー全国民が反対すべき理由ー」 を参照)。  一部の熱心な方々(その人たちには最大限の敬意を持ちます)はともかく、 多くの「大学人」がこの問題に無関心、ないしは消極的同意を与えている状況 に腹を立てて、浪人時代の私は「なるようになれ」とやけっぱちな気分になっ たこともありましたが、先日母校の学長(国立大学協会副会長)が、朝日新聞 論壇で全くひどい文章を書いていたのに触発され、あらためて法案の行く末に 関心を持ち始めました。  #ちなみにこの学長の氏名と「御用学者」を掛け合わせてgoogleを検索する と4件ヒットします(笑)。彼の『大学はどこへ行く』(講談社現代新書)につ いては橋本健二さん は「数ある 「大学改革もの」のなかでも最低のもののひとつ。こんな本を新書で出す講談 社の見識も問われます」と評しています。集会でも先の論壇の文章について 「ウソ、ごまかし、根拠のない希望的観測」(南塚信吾氏)に満ちた文章とし て批判のやり玉に挙がっていました。全くひどい人物を学長にいただく母校を 深く恥じいる次第です。  今日の集会では、呼びかけ人の一人で『週刊新潮』等で法人法案反対の論陣 を張っているジャーナリストの櫻井よしこ氏をはじめ、衆・参院文教科学委員 会の国会議員、大学教員、大学生のスピーチや意見交換がありました。野党議 員は皆熱心にこの問題に取り組んでいる印象を受けました。  櫻井氏ほか、多くの人が問題にしていたのが、法案が大学の研究の「中期目 標」を文部科学大臣が定めるとしている点です。これは大学の教育研究に対す る文科省の介入を招くものであること、文科省に「ウケ」ることを書かなくて は予算がもらえないということになり自由で創造的な研究がしにくくなること であり、学問の発展を阻害するでしょう。「法人化すれば大学はもっと自由に なる」という議論はウソです。  さらに印象に残ったこと一点だけ触れておきます。この法案は、大学を官僚 の天下り先として確保することに意を注いでいることです。「法人化」した大 学には学外者を含む「理事・監事」という名の役職が設けられ、貴重な予算を 割いて千数百万の給与を彼らに準備しなくてはならなくなります。ここには予 算の獲得に「貢献」するとされる文科省キャリアOBが就任することになるのは は明らかです。特殊法人改革の中で天下り先を失いつつある官僚にとって、こ んな「おいしい」ものは二度とないかも知れません。法人法案の問題点とは、 大学自治と学問の自由の破壊であるばかりでなく、大学を天下り官僚が食い物 にするというところにもあるのです。その一方ですでに法人のもとでの大学教 員定数の規準が(非公式に?)示されており、それによれば現有の教員数を下 回るものになるそうです。つまり規準を上回る分の教員数を削減するか、その 教員分の給与を捻出するために全教員の給与を下げるなどしなくてはならなく なります。  そのほかさまざまな問題点を抱え、創造的な学問の発展や、次代を担う市民 の養成に貢献できるとは思えない大学になってしまう、そんな法案を通すこと は、将来に大きな禍根を残すことになります。私は私学の教員ですが、市民の ための学問の発展を願う立場から、この法案の廃案を望みます。 ---------------------------------------------------------------------- 2003/06/03 (火) 横浜市立大学問題  高校時代の友人から以下のようなメールが来ました。 -------------------------------------------------- お元気ですか? 大学の独立行政法人化の問題といい、この2か月でずいぶんと私も世の中の(日 本の)行方について勉強してきました。 ところで、今日はイベントの宣伝です。 「市大を考える市民の会」のHP  http://www8.big.or.jp/‾y-shimin/index2.html にものっているんですが、「市民の夕べ」が今週の土曜日、6/7の夜6時か ら開港記念会館(関内)であります。作家の井上ひさしさんが講演をしてくれ ることになっているのですが、なんと井上さんは前日にも東大で開かれる「国 立大学の法人化を考える夕べ」で講演なさるようで、市民の会のスタッフ一同 驚いています。 井上ひさしさんの講演は、代表の長谷川先生(市大名誉教授)が(何のコネも ないのに)手紙で口説いたものです。そういうわけで、せっかくこんな有名人 が来てくれるのだから、大勢の人に集まっていただいて話を聞いてもらいたい と願っています。関心のある方がいらっしゃいましたら、ぜひお誘いあわせの 上いらしていただけたら幸いです。 また、市民の会で「市大はどこへ行く?」というポスターも出来上がりました。 集会当日に会場でも配る予定なのですが、こちらをはっていただけるところも 探しているので、心あたりがありましたらご一報いただけると助かります。 ----------------------------------------------------  全国紙ではあまり報道されていないので、詳しい経緯は「市大を考える市民 の会」のHP をご覧いただき たいのですが、昨年当選した中田宏・横浜市長(松下政経塾出身の「ネオ・リ ベ」論者)のもとで、横浜市立大学の「民営化」が、かなりの急テンポで押し 進められようとしています。横浜市立大学を一挙に「民営化」するという議論 は、国立大学の「独立行政法人化」の先を行くものです。  市民運動などやったことのなかった会社員である友人は、母校の行く末を案 じて、市大民営化反対の市民運動にコミットしているようです。  現在、関係者の努力や、私も募金をした国立大学の「独立行政法人化」反対 の意見広告 の甲斐もあって か、国会の論議で法人化法案の問題点も指摘され、また、遅ればせながら2日 の朝日新聞社説にみられるように(しかしまだまだ法案の本質的な問題点に目 をつぶっていますが)、法案の修正を提起する議論がようやく新聞に出てくる ようになってきました。しかし、大学の自治や学問の自由を破壊する惧れのあ る、文部省主導の「大学改革」への世論の関心は、まだまだ低いのが現状では ないでしょうか。  もちろん国や地方自治体の財政はひどい状況で、なんらかの行政改革の必要 性を認めるに吝かではありませんが、行政のスリム化=「独立行政法人化」 「民営化」というイメージだけが一人歩きし、真に国家や社会の将来を考えた 慎重な議論がなされていない。それが何をもたらすかは、同じようなことが既 に進められたイギリスやニュージーランドなどのひどい状況をみれば明らかで す。  「聖域なき行政改革」(これを唱える人も実は母校(神奈川県立横須賀高校) の出身者なのですが)などは、そもそもあってはならないことです。人間の尊 厳や人類の知的財産、自然環境などは、「経済の論理」から保護されるべき 「聖域」であるべきです。  経済状況の悪化や将来の不透明感のなかで、威勢のいい、けれどもきわめて 近視眼的で浅薄な議論だけが横行する現状は、憂慮すべき事態です。  何を守るべきか、どんな未来を描くか。いまこそ熟慮すべき時だとおもいま す。 ----------------------------------------------------------------------