From reform-admin@ed.niigata-u.ac.jp Sat Jun 7 13:18 JST 2003 Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (cosmos.ed.niigata-u.ac.jp [133.35.176.6]) by sakaki.math.tohoku.ac.jp (8.9.3p2/3.7W) with ESMTP id NAA22290 for ; Sat, 7 Jun 2003 13:18:56 +0900 (JST) Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (localhost [127.0.0.1]) by cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id MAA10581; Sat, 7 Jun 2003 12:46:34 +0900 (JST) Date: Sat, 7 Jun 2003 12:46:22 +0900 From: "Ryuzaburo Noda" Reply-To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Subject: [reform:04766] 有事法成立に対する地方2紙社説 To: Cc: Message-Id: <005401c32ca7$5eb49780$0200a8c0@sotecakyyc9va0> X-ML-Name: reform X-Mail-Count: 04766 X-MLServer: fml [fml 2.2.1]; post only (only members can post) X-ML-Info: If you have a question, send e-mail with the body "# help" (without quotes) to the address reform-ctl@ed.niigata-u.ac.jp; help= X-Mailer: Microsoft Outlook Express 6.00.2800.1106 X-Priority: 3 X-MSMail-Priority: Normal X-MimeOLE: Produced By Microsoft MimeOLE V6.00.2800.1106 Mime-Version: 1.0 Content-Transfer-Encoding: 7bit Precedence: bulk Lines: 120 Content-Type: text/plain; charset="iso-2022-jp" Content-Length: 5275 有事法成立に対する地方2紙の真っ当な社説を紹介します。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 高知新聞社説2003年06月07日 【有事法成立】憲法に照らし監視を  有事関連法が6日の参院本会議で与党3党と民主、自由両野党の賛成多数によ り可決、成立した。  衆院を通じても、審議で大きな混乱はなく、国内の反対、抗議活動も限定的に とどまっている。戦後有数の対決法案といわれた割には、静かな展開である。  これは問題の決着ではない。国家緊急権を明確に規定しない日本国憲法にとっ て、有事法制は基本的に異物である。これが法制化が進まなかった要因だった。  有事に備えるとしても、専守防衛の基本を外れることは許されない。しかし、 武力攻撃事態法の中身はあいまいで、憲法の禁じる集団的自衛権行使に踏み込む 恐れを内包している。人権保障にも不安が残る。  緊急権乱用が不幸な事態を招いた過去の教訓からも、有事法制が憲法を逸脱す ることにならないか、厳重に監視する必要がある。  明治憲法は、非常大権、戒厳令などの国家緊急権を定めていた。幾多の戦争の 反省に立ち、戦争放棄をうたう現憲法が緊急権を明示しなかったのは自然な流れ でもあった。  1960年代、非常事態法をテーマにした防衛庁内部の「三矢研究」が明るみ に出たとき、強い批判が起きたのは、憲法理念との整合性に疑義があるからだっ た。  それ以来、一種のタブーになっていた有事法制の審議が進行したのは、国内外 の変化が大きい。特に朝鮮半島などの緊張は、国民の有事対応への関心を高めた。  「備えあれば憂いなし」という小泉首相の説明に一理はある。しかし、防衛政 策を論じる場合には、だれから、どう守るか、の具体論を厳密に詰める必要があ る。  外敵が日本に侵攻した場合、有事対応への国民の大きな抵抗は考えにくいが、 問題は周辺有事にある。  武力攻撃事態法では、有事の認定基準は依然あいまいで、朝鮮半島などの周辺 事態と一体化する可能性がある。今後、制定予定の「米軍行動の円滑化」法案と あいまって、集団的自衛権との関係が濃密になる。  民主憲法とうたわれたドイツのワイマール憲法は、一項を構成する緊急令がナ チスによって乱用され、基本精神がねじ曲げられた。  21世紀の日本が、同じ過ちを犯さないためには、憲法との整合性について絶 えざる論議と検証が欠かせない。有事認定の基準づくりと国民保護法制の在り方 などが、当面の焦点となる。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 河北新報社説2003年06月06日 有事関連3法成立/ジュネーブ議定書の批准を  武力攻撃事態法をはじめとする有事関連3法がきのう、成立した。冷戦構造の 崩壊後に噴き出してきた地域紛争や国際テロ。それが、重大な危機となって国内 に及ぶ場合、3法は武力対処の法的な枠組みになる。  ただし、国民保護法制は骨格が示されているだけで未整備だ。1年以内に整備 することになったものの、国民保護規定が国際ルールを踏まえたものにならなけ れば、有事に備えた法体系の整備は十分とは言えない。  有事関連法をめぐる国会審議では、ジュネーブ4条約に追加された第1議定書 を、わが国がまだ批准していない問題が、民主党などから再三、指摘された。  武力攻撃事態法で「国際人道法の的確な実施が確保されなければならない」と 明記されている以上、政府は1日も早く、追加第1議定書を批准すべきだ。  文民や民間施設などへの攻撃を禁じ、武力攻撃による災害の危険から文民を保 護するルールを定めた、この議定書は、国民保護法制を充実させていく上で、極 めて重要な指針になるだろう。  避難民の保護や支援活動で前面に立たなければならない都道府県や市町村にとっ ても、国際人道法の内容を詳しく知っておく必要がある。  成立した有事関連3法の運用を、憲法に沿った民主的なものとするためにも、 国民を挙げて保護法制の整備と充実に力を注ぎたい。  ジュネーブ条約の追加第1議定書は、第2次世界大戦で非武装住民が数多く犠 牲になったことへの反省から、1978年7月に発効した。  北朝鮮を含む130以上の国々が、既にこの議定書を批准している。だが、同 盟関係にある日本と米国が、いまだに調印していないのは問題だろう。  第1議定書で注目したい取り決めは、無差別攻撃の禁止のほかにも多数ある。  紛争当事国は、いかなる手段によっても、武装が撤去された「無防備地域」を 攻撃することはできない(59条)との規定。  住民の避難や救助、応急手当てを含む医療、消防活動など、人道的な任務に取 り組む「民間防衛組織」は尊重、保護される(61、65条など)といった規定 が、それだ。  有事発生の際、自衛隊や米軍は攻撃排除に全力を挙げなければならない。代わっ て住民の避難、保護、救助に主な役割を果たさなければならないのが都道府県と 市町村だろう。  ジュネーブ4条約と追加議定書の内容に、自治体が通じていなければならない 理由が、ここにある。  福田康夫官房長官は先の衆院特別委の答弁で「政府として(第1議定書の)締 結に努力したい」と強調した。川口順子外相もきのう、閣議後の記者会見で締結 に努めていく考えをあらためて表明した。  政府は言葉だけでなく、批准を急ぐべきだ。国内に第1議定書の精神が浸透し ていなければ、これから始まる国民保護法制の整備も偏ったものになる恐れがあ る。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   野田隆三郎(元岡山大学)   TEL/FAX 086-294-4020  e-mail nodarr.193@do9.enjoy.ne.jp