From reform-admin@ed.niigata-u.ac.jp Fri Oct 26 18:41 JST 2001 Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (cosmos.ed.niigata-u.ac.jp [133.35.176.6]) by sakaki.math.tohoku.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id SAA08461 for ; Fri, 26 Oct 2001 18:41:31 +0900 (JST) Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (localhost [127.0.0.1]) by cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id RAA10644; Fri, 26 Oct 2001 17:39:48 +0900 (JST) Date: Fri, 26 Oct 2001 17:34:37 +0900 From: 神沼公三郎 Reply-To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Subject: [reform:03807] 北大職組の「パブリック・コメント」 To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Message-Id: <200110260839.RAA21896@blue.sys.hokudai.ac.jp> X-ML-Name: reform X-Mail-Count: 03807 X-MLServer: fml [fml 2.2.1]; post only (only members can post) X-ML-Info: If you have a question, send e-mail with the body "# help" (without quotes) to the address reform-ctl@ed.niigata-u.ac.jp; help= X-Mailer: Windows Eudora Pro Version 2.2-J (32) X-Sender: kk120@pop.fsc.hokudai.ac.jp Mime-Version: 1.0 Precedence: bulk Lines: 120 Content-Type: text/plain; charset="ISO-2022-JP" Content-Length: 7716  北大教職員組合委員長の神沼です。当職組は本日、下記の文章を「パブリック・コ メント」として文部科学省に送信しました。 ***************************************                                2001年10月26日      「新しい『国立大学法人』像について(中間報告)」に対する       パブリック・コメント        北海道大学教職員組合 1 このコメントの基本的な考え方  「新しい『国立大学法人』像について(中間報告)」(以下では「中間報告」と呼 ぶ)の最大の問題点は、「大学の理念」「国立大学の使命」を何も検討することなく、 「産官学連携」を唱えていることである。しかし、この点については、他の教職員組 合を含む大学関係者からコメントがあると思われるので、我々は、大学関係者として 日々の教育研究活動と社会活動に関わって来た経験から、中間報告に対する2つの疑 問と1つの要望を述べたい。  疑問の1つは、中間報告が、大学運営ばかりに目を奪われ現場の教育研究組織に注 意を払っていないこと、もう1つは、日本社会の様々なアンバランスを放置したまま で競争原理・市場原理を導入しようとしていることであり、要望は、大学評価機関の あり方に関する。 2 いま必要なのは、管理運営の権限拡大ではなくて、教育研究組織の主体性である 中間報告は、大学の「管理運営」に注意を集中しながら、教育研究のあり方を何も 検討していない。管理運営の強化のために、学長の権限を拡大し、また、事務組織に ついては、教育研究組織の一部である面を軽視して、「学長以下の役員を直接支える 大学運営の専門職能集団」にしようとしている。これは、中間報告が、研究教育の現 場に対する不信から出発し、また、その「科学技術創造立国政策」が狭いからであろ う。しかし、大学の基本的活動は管理運営ではなくて教育研究である。そして、教育 研究活動の改善は、その管理運営に「民間的経営手法」を導入すれば済むものではな い。いま必要なのは、大学運営の合理化とともに、教育研究活動とその組織の充実・ 改善であり、事務組織でいえば、学生と教官の日常の教育研究活動を支える十分な数 のプロの支援者集団を形成することである。 中間報告は、上記のように専ら「管理運営」を問題としたうえで、学長中心の運営 体制、学長への権限集中を主張する。そして、学長が役員のみならず部局長までも任 免するとしている。しかし、中間報告が、現行制度にもない学長解任権を文部科学大 臣に与えているのは、このような学長への過度の権限集中の危険性を自ら認めている からであろう。学長に権限を集中した場合の弊害は外国でもわが国でもしばしば見ら れるのであり、このような権限集中は大いに疑問である。  中間報告は、学長へ権限を集中させる一方で、学部・学科というこれまでの研究・ 教育の現場共同体を弱体化しようとしている。すなわち、教授会の決定権限を「新に 教育研究に関する重要事項に精選」し、学科以下の組織を各大学が――ということは、 学長を中心とした大学執行部が――、改廃できるとする。また、教員の選考では、人 事の客観性・透明性のためとして公募制、選考基準の公開を、流動化のためとして任 期制の導入を説き、さらに、教官人事に大学全体の人事方針、学内外の意見を反映さ せるべきだとしている。結局、学部・学科は、縦の関係では大学執行部の権限拡大に よって、横の関係では競争と外部の介入によって解体される。しかし、大学の教育研 究は学部・学科という現場共同体によって支えられてきた。それに代わるものを示す ことなくそれを弱体化することは、大学の基本的機能を麻痺させるものである。10年 近く前にわが国の多くの国立大学では、人事交流等々を名目に教養部を解体したが、 これが初年時教育の責任主体を弱体化したために、今その見直しが進められている。 このことを、中間報告は一体どのように認識しているのであろうか。また、教授会の 決定権限を教務事項に限定することは、学長選考過程への教員参加の制限と相まって、 大学教員を大学運営に無関心にし、結局は大学の活性化を阻害するであろう。実際、 ヨーロッパの多くの大学だけでなく、アメリカでも比較的小規模の州立大学では、教 員が大学運営に関与することを要請されているのである。教授会の決定権限を教務事 項に限定することには、もっと慎重でなければならない。  「大学の自治」の重要な意味の1つとして、教育研究の現場共同体の主体性の尊重 があると考えるが、それを無視する改革は数年のうちに破綻するであろう。 3 競争の条件を整備しない限り、日本社会の歪みをひどくするだけである 中間報告の改革は、大方の観察によれば、地方の大学の低落を促すものである。一 方で、任期制の導入や給与への業績評価の反映などによって教員の流動性を高めなが ら、他方で、定員管理がなくなり、給与が各大学への運営費交付金から払われるよう になれば、高い給与を払うことができない地方からは優れた教員職員が離れて行くこ とは容易に想像できる。  今日の大学間不平等は、大学自体の責任ではなくて各大学の置かれた諸条件の違い と、それを理由とする文部科学行政に起因する。その背景には、戦前以来の大学政策 と、戦後高度成長期以降の国土政策がある。そして、東大を頂点とする大学のピラミ ッドと、未だに地方分権が確立していない極度の一極集中の下では、大学が提供する サービスを市場化しても歪んだ競争・歪んだ市場にしかならず、そして、擬似的な競 争は大学関係者の意欲を失わせ、教育研究を荒廃させ、他方で、地方のさらなる疲弊 とますますの一極集中を押し進めるだけである。このようなものを「改革」と呼ぶこ とはできない。  問題の大半は、大学問題というよりも経済政策、国土政策の問題であるから、調査 検討会議が論ずべき問題でないと考えたのかも知れない。しかし、そうであれば、軽 々に「産官学連携」という経済産業政策を提言すべきではない。中間報告は、基礎に した経済政策、国土政策を示さないだけでなく、問題の本質を認識しているとすら感 じられないのである。 4 第三者評価・外部評価の公正・独立性・多様性を確保すべきである  3に述べたことは、中間報告が各国立大学の置かれている状況の違いを無視して、 1つのモデルに合わせようとしているからであるが、同じ問題が中間報告の提言する 第三者評価についても見られる。  評価の公正が確保されねばならないことは言うまでもない。公正であることを前提 として、3つの点を指摘したい。  1つは、評価者の見識である。評価者は、大学の活動について正確な認識を持つて いることが不可欠である。というのは、既に大学の共同利用施設では外部評価が行わ れているが、施設の実態を知らない評価委員が思い付き的な意見を述べたために混乱 が生じ、研究活動の障害になった例が少なくないので、強調しておきたい。  2番目は、評価機関の独立性である。「大学評価委員会」は文部科学省の中に置か れ、その評価を予算に反映させるとしているが、文部科学省から独立した機関とすべ きである。  3番目は、評価の多様性である。外部評価には多様性がなければならない。例えば、 これまでの種々の審議会・委員会の大学外「有識者」が東京など大都市の在住者に限 られていることからは、地方の意見を無視した一面的な「外部評価」になるおそれが あることである。これとの関連で、中期計画の目標は「数値的な」ものが考えられて いるが、中間報告が説く大学の「自主性・自律性」のためには、統一的・画一的な基 準は参考資料に留めるべきである。また、評価が多様であることから、評価結果はい わゆる資源配分に反映させるべきでない。 ******************************************* 神沼 公三郎(かぬま きんざぶろう) 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター 森林圏ステーション 〒060-0809 札幌市北区北9条西9丁目   Tel.011-706-3853(ダイヤル・イン)   Fax.011-706-3450   E-mail:kanuma@fsc.hokudai.ac.jp ******************************************* *Mailアドレスが変更になり、上記のとおりとな  りました。 *2001年4月1日づけで農学部、理学部、水産学  部などの計10施設が合体して、上の組織が発足  しました。