From reform-admin@ed.niigata-u.ac.jp Mon Oct 15 19:52 JST 2001 Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (cosmos.ed.niigata-u.ac.jp [133.35.176.6]) by sakaki.math.tohoku.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id TAA18632 for ; Mon, 15 Oct 2001 19:52:40 +0900 (JST) Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (localhost [127.0.0.1]) by cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id SAA03974; Mon, 15 Oct 2001 18:21:35 +0900 (JST) Date: Mon, 15 Oct 2001 18:14:38 +0900 From: Yasuhiro ISCIDA Reply-To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Subject: [reform:03773] 労働新聞  2001 年 10 月 15 日 To: he-forum@ml.asahi-net.or.jp, reform@ed.niigata-u.ac.jp Message-Id: <3BCAA8FE.DAA55F4A@cc.gifu-u.ac.jp> References: <200110150232.LAA37432@ml.asahi-net.or.jp> X-ML-Name: reform X-Mail-Count: 03773 X-MLServer: fml [fml 2.2.1]; post only (only members can post) X-ML-Info: If you have a question, send e-mail with the body "# help" (without quotes) to the address reform-ctl@ed.niigata-u.ac.jp; help= X-Mailer: Mozilla 4.7 [ja] (WinNT; I) X-Accept-Language: it,ja Mime-Version: 1.0 Content-Transfer-Encoding: 7bit Precedence: bulk Lines: 103 Content-Type: text/plain; charset=iso-2022-jp Content-Length: 6098 『労働新聞』 2001年10月15日 http://www.jlp.net/syasetu/011015c.html 解説 「大学の構造改革の方針」 「遠山プラン」の狙いは何か? 「大学改革」と反抗の始まり  今年六月、遠山文部科学大臣が経済財政諮問会議に提示した「大学の構造改 革の方針」(いわゆる「遠山プラン」)の発表以来、「国立大学改革」の議論は いよいよ声高となった。マスコミ、財界あげて「国際競争力ある大学への改革」 をあおりたてる中で、国公私大のすべてを巻き込んだ「大学改革」の動きが加速 されようとしている。文部科学省の強引な指導に対する、各大学当局の反発が強 まる一方、再編と統合、二極化に備えて生き残りをかける各大学では、教職員 や、とりわけ学生への矛盾の押しつけで当面の危機を乗り切ろうとする策動も強 まっている。作用があれば反作用もある。大学は今、大きな転機を迎えており、 学園の自治、自主活動への不当な圧力や、不利益の押しつけに対する学生の抵抗 も強まらざるを得ないだろう。「大学改革」の狙いとそれへの各界の対応の中か ら何を見るべきだろうか。(早川裕二)  打ち出された「大学の構造改革の方針」は、「国際競争力ある大学」の育成 を掲げ、(1)国立大学の再編・統合を大胆に進める、(2)国立大学を法人化して民 間的発想の経営手法を導入する、(3)競争原理の導入で、国公私「トップ30」大 学を世界最高水準に育成するために国の資金の重点配分を行う、の三本柱からな っている。  これは、戦後の大学政策の抜本的な転換を意味し、国立大学の民営化への移 行と国公私全大学の再編、淘汰(とうた)による、大リストラ、高等教育政策全 体の大胆な効率化、合理化を狙うものである。  すでに政府、文科省は今秋の来年度予算概算要求づくりの過程でも各国立大 学当局に、この方針への積極的な対応を厳しく要求。現在九十九ある国立大学の 大幅削減を打ち出し、地方国立大、国立単科大には、再編、統合に向けた具体 策、協議を急がせている。すでに山梨大、山梨医大や九州大、九州芸術工科大な ど地方を中心に六組十二大学が統合で合意、八組十七大学も統合推進の協議を進 めている。さらに文科省は、県境を越えた統合も射程に入れており、「一県一国 立大学」整備という、地方開発政策と結びついた戦後の国立大学政策は基本的に 転換されることになった。  一方、国立大学の独立行政法人化にむけて人事や機構、経営などの基本制度 を検討してきた文科省の調査検討会議は、九月二十七日、「新しい『国立大学法 人』像について」と題する中間報告を発表。副学長など役員に財界人などの外部 人材を登用し、大学の意思決定から教授会を排除し、学長、副学長ら役員に権限 を集中させる。  大学の業績を外部機関に評価させ、その評価に基づいて国の交付金を配分す るなど、国立大学の事実上の民営化と弱肉強食の競争と淘汰をめざした改組案を 打ち出した。  検討委員会は今年度中に最終報告をまとめ、二〇〇三年度通常国会に「国立 大学法人法(仮称)」を提出、二〇〇四年度からの法人化を目指すとしている。  国公私「トップ大学」育成のための資金の重点配分という露骨な選別政策と 併せ、大学リストラは加速する。「トップ」大学は優遇されるにしても、他は財 政面で切り捨てられることになる。国立だけではない。十八歳人口の減少ともあ わせ、高度成長期の無責任な高等教育政策を下支えし、膨張してきた私立大学の 多くも、この中で容赦なく切り捨てられ、倒産、廃校の憂き目に直面する。 「改革」急ぐ支配層の意図  八〇年代半ば以降、国際化に直面したわが国支配層、多国籍大企業は、高度 技術革新のための産学連携を大学、特に大学院に求め、「国際競争力ある大学」 育成が叫ばれるようになった。また、大企業にとって効率的で即戦力となる人材 養成のための「大学改革」が求められた。  しかし、九〇年代を迎え「グローバル化」の中、いっそう激しい国際競争で 生き残りを争う多国籍大企業にとって、文科省、大学主導の「改革」はまったく 不満足なものだった。財政危機の中、国内での負担、リスクの削減を求めて「資 本効率重視」を掲げる多国籍大企業にとって、従来の学生の量的拡大に対応し、 均等で従順な人材育成を支えてきた国立大学の経営形態や教授会を中心とした大 学運営は、金がかかり効率の悪い「改革」の逆流、抵抗勢力であった。  国立大学民営化、民間的経営手法と競争原理の導入、外部評価の活用などが 提案され、その実現を急がねばならなくなった。「聖域なき構造改革」を掲げる 小泉改革の一環としての「大学の構造改革の方針」は、こうして登場した。 矛盾押しつけを許すな  これに対し、「大学政策はいまや、外部の力に主導されている」(天野郁夫 国立学校財務センター教授)、「大学の効率化、選抜にばかり目を向けた誤れる 政策」(加藤寛千葉商科大学長)など、これまでの「大学改革」推進論者たちか らも、激しい反発があがっている。また、統合と合理化を迫られる大学当局の混 乱、危機感は深刻である。「改革」は少なからぬ抵抗に遭遇するであろう。  個別大学経営にとって、「改革」は脅威で、生き残りのためになりふりかま わぬ合理化や再編を迫られることとなる。そこで学ぶ学生にも学費値上げ、勉学 条件の悪化、はては大学自身の廃校など、とてつもない不利益を押しつけられ る。それは教職員にとってもまた、深刻な事態である。ここにこそ、何より注目 しなければならない。  すでに、独立行政法人化後の学費の値上げは不可避とされている。大学の効 率運営の観点から、さまざまな学生の自主活動、自治活動、自治組織への露骨な 圧力、弾圧が国公私大を問わず、加えられている。  地方国立大学、多くの私立大学にとっては、再編、統合で、まさに自ら学ぶ 大学自身の存立にかかわる事態が切迫している。  すでに学生の新卒就職率は五割少しと異常な低さとなり、経済環境も悪化 し、学生生活は一層苦しく、希望のもてないものとなっている。  東大の駒場寮など、抵抗の兆しも見えはじめた。敵が「改革」を急ぎ、矛盾 を押しつけるほど抵抗の力は拡大せざるを得ない。あらゆる抵抗の芽を支持し、 激励し、発展を支援しなければならない。 こうした切実な闘いをとおしてこ そ、わが国の学生運動は、新たな発展の契機をとらえるに違いない。 -- *-----------------------------------------* Yasuhiro ISCIDA c/o Biblioteca. Universita' Gifu Yanagido, 1-1 Gifu 501-1193 GIAPPONE e-mail: iscida@cc.gifu-u.ac.jp TEL: +81-58-293-2186 FAX: +81-58-293-2194 *-----------------------------------------*