From reform-admin@ed.niigata-u.ac.jp Mon Jun 5 22:13 JST 2000 Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (cosmos.ed.niigata-u.ac.jp [133.35.176.6]) by sakaki.math.tohoku.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id WAA10260 for ; Mon, 5 Jun 2000 22:13:29 +0900 (JST) Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (localhost [127.0.0.1]) by cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id UAA24832; Mon, 5 Jun 2000 20:07:11 +0900 (JST) Date: Mon, 5 Jun 2000 20:09:27 +0900 From: reformad@ed.niigata-u.ac.jp (reform-ml) Reply-To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Subject: [reform:02881] 国立大学農学系学部長会議声明 To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Message-Id: <200006051101.UAA16930@yahiko.ed.niigata-u.ac.jp> X-ML-Name: reform X-Mail-Count: 02881 X-MLServer: fml [fml 2.2.1]; post only (only members can post) X-ML-Info: If you have a question, send e-mail with the body "# help" (without quotes) to the address reform-ctl@ed.niigata-u.ac.jp; help= X-Mailer: Eudora-J(1.3.8.8r7-J16) X-Sender: reformad@133.35.177.100 Mime-Version: 1.0 Precedence: bulk Lines: 139 Content-Type: text/plain; charset=iso-2022-jp Content-Length: 7228 「農学教育研究にはたす国公立大学の役割」と題する国立大学農学系学部長 会議の声明が国大協会長に提出されました。he-forumから転載します。                6月5日 大学改革情報ネットワーク [he-forum 977(6/5)] 国立大学農学系学部長会議声明 独行法反対首都圏ネット事務局です。 「国立大学農学系学部長会議声明の提出について」の最後に引用されている 国大協会則28条を紹介します。 <国大協会則28条> 第28条:国立大学の教員は、協会の事業に関して協会に意見を述べることができる。 2 前項の意見は、文書で提出するものとする。 3 意見が協会に提出されたときは、会長は、これを関係のある事項を担当する委員 会に回付するものとする。 4 前項の規定により、意見の回付を受けた委員会は、必要があると認めたときは、 口頭によってその教員の意見を聴取することができる。 佐々木 敏昭  東京大学職員組合   職場の電話 3813−1565(FAX兼用)   emailアドレス  <ここから声明> 平成12年6月5日 国立大学協会 会長 蓮實重彦殿 国立大学農学系学部長会議声明の提出について 国立大学農学系学部長会議 会長 林 良博 謹啓  向夏の候、貴職におかれましてはますます御健勝のこととお慶び申し上げま す。  さて、私たち国立大学農学系学部長会議は、さる6月1,2日の両日にわたって 第102回会議を開催し、国立大学の法人化問題に関する声明を取りまとめました。 本声明は、同問題に対する5月26日の文部大臣説明までに至る一連の事態に対す る農学系学部長会議の見解を表明したものでございます。  本声明は、あくまでも農学および学部の立場からの見解を表明したものであ り、大学全体に関わる見解は、国立大学協会が大所高所の立場から表明される ことを強く希望いたします。  幸いにも、国立大学協会の会則第28条には、「国立大学の教員は協会の事業 に関して意見を述べることができる」とございます。本声明は、同会則第28条 第2項に基き、文書で提出させていただきます。どうかよろしくお取り扱い下さ いますよう、お願い申し上げます。                               謹白 ****************************************************** 平成12年6月2日 国立大学農学系学部長会議声明 −農学教育研究にはたす国公立大学の役割−                       国立大学農学系学部長会議 1.はじめに  さる5月26日に招集された国立大学・大学共同利用機関長等会議において文部 大臣は、独立行政法人制度は国立大学に十分適合するものであると同時に、公立 大学についても国立大学に準じた対応を検討する必要があり、文部省としては、 今後、国立大学を独立行政法人化する方向で、法令面での措置や運用面での対応 など制度の内容についての具体的な検討に、速やかに着手したいと説明されまし た。  昨年4月の閣議において、国立大学の独立行政法人化を大学改革の一環として 検討し、平成15年までに結論を得ることが決定されて以来、農学系大学・学部を 有する40国立大学・学部と6公立大学・学部等の学長・学部長で構成する国立大 学農学系学部長会議は、国立大学の独立行政法人化が、専ら業務の効率性向上と いう行政改革の視点から提起されたことに強い危機感を提示した国立大学協会と 基本認識を共有してきました。  このような大学や有識者が発した危機感は、厳しい行財政のなかにあっても、 着実に国民各位に理解されはじめ、わが国の高等教育に対する公的投資が欧米諸 国に比べて極めて低い水準にとどまっていることの問題性を、行革本部も認識す るようになりました。また文部大臣の説明に明示されたように、短期的には成果 を予測しがたい先駆的な研究や基礎的な研究、社会的需要は少ないものの重要な 学問の継承などに果たしてきた国立大学の役割や、学生が経済状況に左右される ことなく、自己の関心や適性に応じて、分野を問わず大学教育を受ける機会を確 保する上で果たした国立大学の貢献は、今後の国立大学の在り方を論ずる上で決 して忘れてはならない点であると、私たち国立大学農学系学部長会議は考えます。 2.短絡的な効率主義は農学を弱体化させます  農学は、世界の人々を栄養不足や飢餓から開放し、安全で良質な食糧や生物素 材を提供すると同時に、生物のもつ発展的・持続的な能力を生かして破壊された 環境を修復し、豊かな自然環境を創造する使命をもつという点において、極めて 応用的な科学であるといえます。しかし、多様な生物種の特性を明らかにする分 類学や、驚嘆に値する生命体の仕組みを解明する生命科学等の基礎科学を農学が 内包するからこそ、実践的な応用科学の成果が実るのです。その意味において、 農学は極めて基礎的な科学であるともいえます。  昨年11月に国立大学理学部長会議は、短絡的な効率主義が基礎科学を弱体化さ せることへの危惧を表明しましたが、応用科学と基礎科学の両者に責任をもつ国 立大学農学系学部長会議もまた、短絡的な効率主義に対し深い憂慮の念を禁じ得 ません。  さらに重要なことは、短絡的な効率主義は応用科学の健全な発展をも阻害する ことです。私たち農学は、30分ごとに細胞分裂を繰り返す微生物から数千年の寿 命をもつ樹木まで実に多様な生物種を対象として教育研究を行っております。業 務の効率性の向上を主たる目的とする独立行政法人制度の下で実施される大学の 目標・計画の設定やその評価は、よほどそれらの基準が多様化されないかぎり、 効率性の呪縛から開放されることは有り得ないと多くの大学人が考えたとしても 不思議はありません。その結果、大学の教育研究が効率のよい対象や方法に特化 するという歪みが進行し、均衡のとれた応用科学としての農学が弱体化すること を、私たち農学系学部長会議は危惧します。 3.農学は地域性を重視します  文部大臣が説明されたように、国立大学は、全国的に均衡のとれた配置により、 地域の教育、文化、産業の基盤を支え、各地域特有の課題に応じた独創的な教育 研究の実施や解決に貢献してきました。それらの貢献のなかで果たした農学の役 割は、決して少なくありません。地域農業への貢献はもちろんのこと、地域の環 境保全に関する教育研究、地域性を生かした生物と人の係わりという文化的な貢 献など、様々な課題において農学は地域性を重視してきました。また農学は、実 験科学とフィールド科学の両者の方法論によって教育研究を行っており、フィー ルドという地域を本質的に重視する科学です。国立大学の在り方に関する今後の 検討において、均衡のとれた地域発展の視点を欠くことがないよう、私たち農学 系学部長会議は要望します。 4.学部の成熟した自主性・自律性は、大学運営に貢献します  国立大学の法人化の論議において、私たちがもっとも危惧するのは学部の自律 的機能の弱体化です。大学の自主性・自律性の大切さは繰り返すまでもありませ んが、私たちはそれに加えて、大学の真の自主性・自律性は、その構成単位であ る学部の自主性・自律性を保証し、構成員のエネルギーを最大限に引き出すこと を可能にするネットワーク型の運営体制を構築することによってのみ、達成され ることを指摘しておきたいと思います。それは成熟した地域社会が、その構成単 位である地域住民の自主性・自律性の尊重によってこそ達成し得ることと同じで す。私たち農学系学部長会議は、成熟した学部運営の構築のために努力を続ける ことで、大学の真の自主性・自律性の確立に貢献していく決意を表明するもので す。