From reform-admin@ed.niigata-u.ac.jp Thu Dec 9 13:48 JST 1999 Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (cosmos.ed.niigata-u.ac.jp [133.35.176.6]) by sakaki.math.tohoku.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id NAA28564 for ; Thu, 9 Dec 1999 13:48:10 +0900 (JST) Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (localhost [127.0.0.1]) by cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id MAA02506; Thu, 9 Dec 1999 12:07:42 +0900 (JST) Date: Thu, 9 Dec 1999 12:06:32 +0900 From: Toru Tsujishita Reply-To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Subject: [reform:02457] Re: 科学技術基本法による予算投下 To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Message-Id: In-Reply-To: References: X-ML-Name: reform X-Mail-Count: 02457 X-MLServer: fml [fml 2.2.1]; post only (only members can post) X-ML-Info: If you have a question, send e-mail with the body "# help" (without quotes) to the address reform-ctl@ed.niigata-u.ac.jp; help= X-Mailer: Macintosh Eudora Pro Version 4.0.1Jr1 X-Sender: tujisita@pop.math.sci.hokudai.ac.jp Mime-Version: 1.0 Content-Transfer-Encoding: 7bit Precedence: bulk Lines: 77 Content-Type: text/plain; charset="ISO-2022-JP" Content-Length: 4108 水畑 穣 様 貴重な証言とご批判を頂き、私の知識不足を改めて痛感しました。事情を よく知らない者の発言に憤りを感じられることも理解できます。申し訳な く思っています。 乗り越えがたい全般的知識不足が私にあり、多くの人には常識であること を初めて知って衝撃を受けると、奥にある状況を分析する前に発言してし まう、ということを繰り返しています。しかし、さいわい、視野の狭さを 明確に指摘して下さる方がいつもおられて本当に救われています。 政府研究開発投資により広範囲に大きな学術的効果が挙っていることは、 他の方からも具体例を挙げて指摘されました。これによって整った実験設 備でブレークスルーが引き起こされた分野も少なくないようです。また、 この投資によってインフラが整備され、研究活動全体の質と意欲の向上と いうものであれば、たとえ目立ったブレークスルーがなくても、それと同 様の(あるいはそれ以上の)意義があります。 また、次の証言はとても重要です。 > さらに、そういった成果は、この予算によってすべてをなし得たわけでは > 絶対にないと思っています。少なくとも、その提案公募の予算を獲得する > までにも長い年月をかけた(しかも予算的に制約された中での)予備的実 > 験をふまえた上で、ある程度の見込みがあって提案公募に応募することも > 少なくありません。また、成果に対する短期的な評価や追跡調査も当然存 > 在します。実験系の研究者は、仮説をたててもそれだけで終わるわけでな > く、かならず実証をする必要があります。その実証のためには、たまたま > 安価な実験装置ですむこともありますが、装置によっては多大な予算を必 > 要とすることもあるわけです。 問題にすべきは、このような真摯な提案公募だけだろうか、という点にな ります。おっしゃるとおり問題の核心は「1996年に未来開拓推進事業が始 まった時、この予算を審査する事業委員会の委員98人のうち34人が助 成金を受け取るリーダーになった」という点です。助成金の審査委員が自 分で助成金を受け取れるというのは信じられないスキャンダルです。 科研費を含め公募型の助成金の審査委員の名前の公表、および、採否の審 議の具体的論点の公表は今後不可欠になります。それがなければ、17兆 円の投資はやはり正当化できません。(なお、研究開発投資も「公共投資」 である、とある方から指摘されました。たしかに、高額の実験設備を購入す ることにより内外の製造会社に国からお金が流れます。逆にいうと、公共 投資の拡充のために道路工事を減らして研究開発投資を増やしてもいいわ けです。) しかし、以上のことを理解した上でも問題は残ります。公募型の助成金が 主な研究費となっていくことは、結局大学という場を実質的に不要なもの とし、個々の研究者だけを日本の科学技術の基盤の担い手とすることです が、上に引用させていただいたことを考えると、場としての大学を通して 培われた芽がなければ、公募型研究費が機能しないように思われます。 公募型助成金のみが研究費となる研究システムの作動原理は、別の角度か らすれば研究者の使い捨て(パート化)にあります。例の「創造的破壊」 の原理により達成される、研究者を効率的に利用する見事なシステムとい うべきですが、「遊び」を排除してしまうため長期的には立ち枯れる危険 性が大きいことは明白なので、国立大学の独立行政法人化により日本の研 究体制をこのシステムに完全移行させる政策は間違っていると思います。 なお、多額の研究費を得ても総定員法下では人件費に使えないために有効 に使えない場合もあることは想像できます。この点で独立行政法人化に魅 力を感じる方は多いのではないかと想像していますが、大学が独立行政法 人化により<任期付き大学>となって、場としての機能を持たなくなれば、 息継ぎする間もなく公募型研究費を次々と当てなければならないことにな り、それは種々の<落とし穴>を避けられず望ましいこととは思えないよ うに感じます。 高額の研究費が不可欠な分野の方が、独立行政法人化についてどう感じて おられるのか率直なご意見をお聞きしたいように思います。 独立行政法人化賛成の意見を表立っては言いにくい雰囲気があるようです が、そういう状況下では反対意見が安易で浅薄になり成長せず、最終的に は効力を失って無視されてしまう危険性があります。 辻下 徹 北海道大学大学院理学研究科数学専攻 tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp 011-706-3823