From reform-admin@ed.niigata-u.ac.jp Mon Dec 6 11:27 JST 1999 Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (cosmos.ed.niigata-u.ac.jp [133.35.176.6]) by sakaki.math.tohoku.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id LAA04859 for ; Mon, 6 Dec 1999 11:27:39 +0900 (JST) Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (localhost [127.0.0.1]) by cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id JAA00972; Mon, 6 Dec 1999 09:23:11 +0900 (JST) Date: Mon, 6 Dec 1999 09:16:15 +0900 From: Toru Tsujishita Reply-To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Subject: [reform:02441] 独立行政法人化問題の論点(1) To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Message-Id: X-ML-Name: reform X-Mail-Count: 02441 X-MLServer: fml [fml 2.2.1]; post only (only members can post) X-ML-Info: If you have a question, send e-mail with the body "# help" (without quotes) to the address reform-ctl@ed.niigata-u.ac.jp; help= X-Mailer: Macintosh Eudora Pro Version 4.0.1Jr1 X-Sender: tujisita@pop.math.sci.hokudai.ac.jp Mime-Version: 1.0 Content-Transfer-Encoding: 7bit Precedence: bulk Lines: 112 Content-Type: text/plain; charset="ISO-2022-JP" Content-Length: 6071 北大@辻下 以下のものを先週11月30日に北大内部で発送しました。 ご参考までに転送させて頂きます。 ----------------------------------------------------------- 北大構成員の皆さま 独立行政法人化問題について、各部局での議論が始まりました。この問題は大 小の争点が沢山あるために、肝心の論点を見失う危険性があります。少しだけ 論点を整理し始めました。より詳しく http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/dgh-issues.html に論じていく予定です。参考にして頂ければ幸いです。なお、独立行政法人化 に対する<対案>については「反対するのに対案が必要」という主張そのもの も吟味する必要がありますが、学長から全構成員に対案を出す機会が与えられ たいうことですので、ぜひ真剣に考えていきましょう。 【国立大学の独立行政法人化への真の圧力】 ◆国立大学の定員削減には必然性はない。それは政治的に作られた誘因に過ぎ ない。国立大学をすべて廃校にしても予算の中の0.5%である1兆5千億が 毎年浮くだけで焼け石に水である。国立大学の独立行政法人化は国の財政改革 には意味がない。独立行政法人化の推進力は(政治家の都合は別にして)別の 所にある。 ◆経団連が11月24日に発表した「科学・技術開発基盤の強化について」 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/pol251/index.html で鮮明になったが、<グローバリズムの国難>に対峙する挙国一致体制の一 貫として国立大学の独立行政法人化が構想されている。(他にも http://www.keidanren.or.jp/21ppi/japanese/policy/19991006b/sum.html 経済同友会 http://www.doyukai.or.jp/database/teigen/970109_1.htm) 【独立行政法人制度の不安定性について】 ◆独立行政法人化推進のキーワードは「創造的破壊」である。市場原理により 伝統的な価値(大学内部の連帯感・学問の有機性等々)を破壊することで挙国 体制に組み込まれた、無駄のない研究機関・不要になればすぐに改廃できる機 関、が形成できる。 この点は、経済企画庁経済研究所教育経済研究会が1998年4月6日に出 した報告書の要約 http://www.epa.go.jp/98/g/19980406g-kyouiku-s.html に次のように鮮明に書かれている。 > 第二に、教育機関や教員の間に競争原理を導入する。現在の規制その他の政 > 策は、既存の教育機関やその教職員の経済的な安定を保証しており、消費者 > に質の高い教育を供給するための競争をむしろ阻害している。 これは、教職員の経済的な安定性を奪って競争させろ、そうすれば効率が飛躍 的に上がるだろうという勧告であり、「恒産なければ恒心なし」という古来の 知恵を忘却したものであるだけでなく基本的人権への露骨な攻撃ともいえる。 ◆独立行政法人制度の持つ構造上の不安定性は、この制度設計の目的が要求し た核心的特性である。 ◆このような<使い捨て>法人を用意する制度への移行作業に莫大な知的人的 資源が日本全体で十年のスケールの期間を通して消費されるであろうことにも 問題がある。 【定員削減についての誤解】 「国立大学制度に留まれば10%〜25%の削減があるのに対し、独立行政法 人化すれば<定員>という枠がなくなるので、予算次第でもっと大きな削減が あり得る。しかし、一方では予算に応じて人員をいくらでも増やせる。たとえ、 国立大学全体としては大幅に人員が減ることになっても、減り方は一様ではな く、ある大学やある部局は100%減るが、別のところは逆に50%増えるこ とも可能である。これが独立行政法人化を是とする意見の要点である。大きな 大学や時勢に合った(「科学技術立国日本」に直接寄与できる)分野にとって は大きなチャンスであることは否めない。しかし、その他の大学や分野は当然 25%以上刈り込まれることは確実である。この問題は小規模ながら大学院重 点化のときに始まっており、大学院重点化した大学の予算的優遇は、それ以外 の大学の厳しい予算削減の代償の上に成り立っている。独立行政法人化はそれ を徹底的に推し進めるものである。(これが「創造的破壊」として推奨されて いる) 【イギリスの実験】 H.J.パーキン(有本章/安原義仁編訳)「イギリス高等教育と専門職社会」 (玉川大学出版部1998, ISBN4-472-11171-3)p104前後に詳しい様子 が書かれています。独立行政法人化後は一部の分野を除いて以下のようなこと が普遍的に生じることになります(除外される分野自身も時間と共に動きます が)。 「大学教師団の規模を教授と講師あわせて約6000人減らすため、政府は任意辞職 と早期退職の制度を創設した。前者は55才以下の者を対象に、早期退職する場合に は年金の額に10年までの割増金を付加するというものであった。多くの大学教師が 補償金を受け取って職を辞するよう奨励された。さらに彼らはその後、数年間パート タイム講師として大学に復帰した。これは高価につく制度であった。短期間では節約 になるどころか、かえって高くついた。それはまた、大学を去るのは主として最も優 れた人々であったがゆえに、高等教育システムのバランスを崩すものであった。なぜ なら、彼らはより愛他心に富む人々であったり、あるいは、もっと研究に自分の時間 を使いたいと希望する人々だったからである。さらにまた、彼らはアメリカやオース トラリアやヨーロッパなど、海外の大学で仕事をみつけることのできる人々であった 。こうして、広く知られるようになったイギリス大学人の「頭脳流出」が生じた。そ の大半はアメリカに渡ったが、そこで彼らの多くはそれまでの2倍もの俸給を得、衰 退しつつある制度を維持するための空しい奮闘から解放されたのであった。法学や工 学などの専門職に関係した大学人も多くイギリスを後にした。...  ...大学はアカデミック・スタッフの新規採用をほとんど中止したし、また大学 で研究や教育に従事することを希望する大学院レベルの学生は急速に減少した。そし てその結果、中国の文化大革命のときの「失われた世代」と同様、大学人の「失われ た世代」が生み出された。」 辻下 徹 内線3823 ---------------------------------------- PS:他の点は、時間がないので、10月30日にreform というメーリング リストに投稿したものをそのまま添付します。 ([reform:02227,02230]..略) ----------------------------------------------------------- 辻下 徹 北海道大学大学院理学研究科数学専攻 〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目 011-706-3823(office) tujisita@math.sci.hokudi.ac.jp http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh ---------------------------------