From reform-admin@ed.niigata-u.ac.jp Wed Nov 17 19:34 JST 1999 Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (cosmos.ed.niigata-u.ac.jp [133.35.176.6]) by sakaki.math.tohoku.ac.jp (8.8.8/3.7W) with ESMTP id TAA03163 for ; Wed, 17 Nov 1999 19:34:38 +0900 (JST) Received: from cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (localhost [127.0.0.1]) by cosmos.ed.niigata-u.ac.jp (8.9.3/3.7W) with ESMTP id RAA09092; Wed, 17 Nov 1999 17:50:56 +0900 (JST) Date: Wed, 17 Nov 1999 17:52:29 +0900 From: fumoto Reply-To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Subject: [reform:02327] Re: 授業アンケートについて To: reform@ed.niigata-u.ac.jp Message-Id: <38326CCC.D19E8633@cc.hirosaki-u.ac.jp> References: <199911170744.QAA23244@allegro.phys.nagoya-u.ac.jp> X-ML-Name: reform X-Mail-Count: 02327 X-MLServer: fml [fml 2.2.1]; post only (only members can post) X-ML-Info: If you have a question, send e-mail with the body "# help" (without quotes) to the address reform-ctl@ed.niigata-u.ac.jp; help= X-Mailer: Mozilla 4.6 [ja] (Win95; I) Organization: 弘前大学教育学部 X-Accept-Language: ja,en,de Mime-Version: 1.0 Content-Transfer-Encoding: 7bit Precedence: bulk Lines: 89 Content-Type: text/plain; charset=iso-2022-jp Content-Length: 5414 野崎 一洋 wrote: > > > 理科系の専門教育では、もちろん講義も重要な要素ですが、それと同等、あるいは人に > よってはそれ以上に、演習、実習、実験が重要な要素となっています。すなわち、 > 講義だけでなく、演習、実習、実験を合わせて、初めて全体的で有効な教育評価が可 > 能となります(もちろん、それぞれの要素は相対的に独立していますから、その枠内での > 評価もある程度可能と思いますが)。アンケートの出し方が悪いのかも知れませんが > 、講義だけを取り出して、学生の感想を聞くと「難しくてよくわからなかった」とい > うのが多くあります。講義を聴いていただけで専門の内容で十分理解できることはそ > う多くないのが普通ですので、こういう感想を聞くとがっくりして、「大学は、小、 > 中学校ではありません」と言いたくなります。専門の言葉を持ち出して恐縮ですが、 > 例えば、物理の学生である限り修得しなければならない量子力学を構成する(非日常 > 的)諸概念を講義だけで(どんな優れた講義でも)理解し、使えるようになることは > ありません。すなわち、仮に、すばらしい講義があって、それを聴いてわかったよう > な気になっても、それだけでは、使える生きた知識にはならず、演習、実験等を通じ > て各学生が、自分の頭と手足を使って汗をかくことによってしか獲得できないものです。 > 従いまして、学生にこのような自己学習への意欲を与えるための種々の工夫・改善を > 講義に行なわねばならないということは当然ですが、同時に、もう一方の当事者であ > る学生の主体性を問うことも必要ではないかと思います。 > > 本来は、教育評価が問題となっているのですから、授業評価が適当でなければ、別の方法で やるべきだと思います。  アンケート調査で十分なのは、大人数の授業であり、いくらいいアンケートを作っても、学 生が2,30名までの授業では、正確な評価はできないと思います。たまたま熱心な学生が多 い年やそうでない年があるし、実際回答してくれる学生は半分程度ですので、たまたま熱心な 学生しか出さない雰囲気だったり、遊び半分に出す雰囲気だったりする可能性があるからで す。大学全体で行った時の私の20人程度の授業では、評価用紙をしかるべき回収場所に提出 した者がたった1人でした。  理系では、単なる授業評価よりも、1年勉強して満足したか、というような調査をしたり、 卒業時に調査した方がよいかも知れません。いずれにしても、授業評価を自分の仕事のフィー ドバックとしてやる気があるかどうかの問題だと思います。  自分、あるいは、大学として、仕事の出来映えを自ら評価する姿勢を持つかどうかだと思い ます。これまで、日本社会全体、特に公務員社会は、それを怠ってきたと思います。大企業も 含めて怠ってきており、それが、年呼応序列型社会の原因あるいは結果なのでしょう。鎖国し て今までの生活様式を守るという選択肢は実現不可能なので、グローバル化した国際情報社会 で日本が生き抜くためには、越えるべきハードルだと思います。  私のアメリカでの経験で、こういうことがありました。アクレディテーションで、審査員が 学生に聞く日がありましたが、私が傍聴したいと申し出たところ、大学教官がいると自由に話 せないから、我々さえも出席できないのだと言われました。学生自体も、大学が推薦する学生 ではなく、審査会側が指名するそうです。大学評価の本を読んでいると、日本人で、大学の外 の人間であるのに、評価の実態を見せてもらえたという話が書いてありましたし、私の経験で は、アメリカでこの大学の組織を知りたいと話すと、全教官の主な業績目録をすぐさま取り出 して、ただでもらえたこともありました。このように、外にオープンなことや、大学教員性悪 説に基づくような学生からの事情聴取を含めた大学評価が定着しています。  学生の主体性を問題にしていますが、私が、最近調査した自分の授業の評価アンケートで、 学生に、「学生には正当な授業評価はできない」という意見の賛否を求めたところ、賛成意見 は少数でした。彼らも、勉強したいとは思っています。主体性がないのは、高校までに、自分 で考える習慣と方法を身につけていないからです。  学生の主体性を問題にして、もし彼らに我々が望む主体性がないとしたら、その主体性をつ けるような授業をするか、主体性のない人は入れない入試をやるかが選択肢であり、授業評価 が低いのは学生の主体性がないからだという言い方は、現状の客観的記述ではあっても、大学 の外からは、授業をまじめにやらない口実としてしか理解されないと思います。  そうは言っても、文部省の定員まで入学させなければいけないというような指導があり、改 革は難しいと思います。それでも、もし、主体性を特別に訓練するような新しいメニューの教 育実践を行わないのであれば、「最近の学生は主体性がないが大学ではそのような学生に対す る特別の配慮はしないので、落第するかも知れない。それを納得して受けるように」という文 言を入れて募集するのが大学人の倫理と思います。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ Japanse   氏名  麓 信義   弘前大学教育学部保健体育科 教授 住所 036-8560 青森県弘前市文京町1 専攻 運動・スポーツ心理学 -------------------------------------------------------------------------------------------- English Name Fumoto, Nobuyoshi (Professor) Major Psychology of sport and physical activities Address Department of Health and Physical Education, Faculty of Education, Hirosaki-University 1, Bunkyo-cho Hirosaki, Aomori 036-8560 Japan http://siva.cc.hirosaki-u.ac.jp/hotai/fumoto/fumoto.htm -------------------------------------------------------------------------------------------- tel: 0172-39-3391 fax: 0172-32-1470 E-mail: fumoto@cc.hirosaki-u.ac.jp +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++