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初等中等教育と高等教育との接続の改善について (中教審中間報告への意見) gif { 〒980-8578 東北大学理学研究科, 長谷川浩司, 男, 36 才, 大学教官・日鱒矧w会会員, 022-217-6400 (fax).

所謂接続問題、特に最近の大学生の学力低下は、実は高卒時の学力低下 であり、直接原因は 「新学力観」に基く教育課程スリム化にあるとの指摘が既に多くなされている [1]。 経理のできない会社員、統計のできない官吏、 文献が読めない技術者、等々が明日の日本を担うことになり、 塾通いが教育の機会均等を、 知識の欠如が各人の自立を、 将来の国力を弱める結果 社会福祉を、各々阻害するだろう。 前15期中教審答申には基礎を疎かにする誤りがあったというべきである。

中教審ばかりか教課審でも専門家の意見は無視されるかのようであり、 根拠に乏しい議論で 各科目を方向づけるのは問題だ[2]。 中でも高校までの理数系科目の軽減は 高等教育に大きく影響し、補習によっても容易に解消されない [3]。 難しいから○○はやらない という議論は粗末すぎる。 難しい教科ほど 諸外国なみに 時間をたっぷりとって楽しさを伝えるべきで、 学校だけで理解が進むように教師 の質量を高めるべきである[4]。

教師の資質の第一は、教えるべき内容を自信をもって教えられることにある。 ところが現在、教員養成系の大学入試2次試験で専門科目を 出題すべきでないとの指導が行なわれ[5]、 入学後の教科教育スリム化さえ行われている[6]。 教員養成系以外から教師になる道も 狭められており、 一般社会人の採用の検討も 専門的能力は問わない範囲という[7]。 既に週休 2 日にむけ 小学校で 周率をおよそ 3 とする、 中学校で不等式をやらない、 等の方針も示され、 十数年後には 新課程履修者から 2 次方程式さえ「高度」で理解 できない教師が現れよう。 この再生産は理系の人材供給に壊滅的影響を与える。

来年幕張で数学教育世界会議がある。 国際的な場で現状が明かに なれば金融市場へも影響し、 600 兆 の借金を抱える日本の経済的基盤に拘るのではないか。 十数年先の教師 のレベル低下を避けるためには今改善をはじめても遅すぎる位である。 東海村の臨界事故が 「やってはいけない」改善の結果であったと同様、 答申が「やってはいけない」社会実験になりかねないことを恐れる。 そこで

  1. 現在の「ゆとり教育」の問題点検討のため、 週休 2 日制と新しい指導要領の実施を延期せよ。 また答申は学術会議にレフェリー(査読)を求め、以後慣例とすべきである。
  2. 教師の数とその知識内容充実のための予算措置に踏み込む。 この正攻法こそは少子化やインターネット上の情報と共に 個人の適性に即し入試に偏らない進路指導を(特に高校で)可能とし、「接続」 に資するだろう。 M(以上、 1999 年 11 月 21 日)





Koji HASEGAWA
Sun Nov 21 18:04:32 JST 1999