From wr-return-58-kojihas=math.tohoku.ac.jp@mail.cocode.ne.jp Fri Jul 27 00:55 JST 2001 Received: from queen.cocode.ne.jp (queen.cocode.ne.jp [61.200.15.132]) by sakaki.math.tohoku.ac.jp (8.9.3/3.7W) with SMTP id AAA19609 for ; Fri, 27 Jul 2001 00:55:08 +0900 (JST) Received: (qmail 20353 invoked from network); 27 Jul 2001 00:56:42 +0900 Received: from smith.cocode.ne.jp (HELO mail.cocode.ne.jp) (61.200.15.130) by queen.cocode.ne.jp with SMTP; 27 Jul 2001 00:56:42 +0900 Received: (qmail 17851 invoked by alias); 27 Jul 2001 00:45:08 +0900 Received: (qmail 17842 invoked by uid 60001); 27 Jul 2001 00:45:08 +0900 Mailing-List: contact wr-help@mail.cocode.ne.jp; run by ezmlm Precedence: bulk X-No-Archive: yes Reply-To: tujisita@geocities.co.jp Delivered-To: mailing list wr@mail.cocode.ne.jp X-Sequence: 58 Date: 27 Jul 2001 00:45:07 +0900 Message-ID: <20010726154507.17841.qmail@mail.cocode.ne.jp> To: wr@mail.cocode.ne.jp From: CoCode Mail Magazine X-Mailer: CoCode Mail Sender X-WebSite: http://mail.cocode.ne.jp/ Cocodemagazine-id: 0700400128 Content-Transfer-Encoding: 7bit Subject: [wr:58] [Weekly Reports 62] 国立大学独法化問題週報 Content-Type: text/plain; charset="ISO-2022-JP" Content-Length: 25467 ---------------------------------------------------------------------- Weekly Reports 62 2001.7.26 Ver 1 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-62.html 総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━        目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-0]内容紹介  [62-0-1]週刊朝日:文部科学省に関する連載企画  [62-0-2]第一期科学技術基本計画を巡って  [62-0-3]「独法化で命がけの実験が違法となり国際競争力が失われる」  [62-0-4] 「最近の大学政策の本当の目的」  [62-0-5] 総合科学技術会議事務局の官僚集団70名の采配 [62-1]◆コラム:大学を考える 河野 敬雄「京大内部から見えたこと」 [62-2]内閣府総合規制改革会議「重点6分野に関する中間とりまとめ(案)」 [62-3]大学事務局による独立行政法人問題資料集  [62-3-1]熊本大学:大学改革・独立行政法人化に係るこれまでの経緯  [62-3-2]東京農工大学;国立大学法人化関連資料(PDF) [62-4]国立大学独法化阻止ネットによる参議院選挙候補へのアンケート集計  [62-4-1]政党の選択肢への回答部分: [62-5]◆科学技術基本計画をめぐって  [62-5-1]「科学情報会社ISI:4分野で日本の大学がベスト5入り」   [62-5-1-1] ◆Yahoo JAPAN コメント  [62-5-2]◆ポスドク1万人計画と研究体制一若手研究者の現状と悩み  [62-5-3]◆学術審議会学術研究体制特別委員会議事録2000.4.11  [62-5-4]日本経済新聞連載「17兆円の決算ー科学技術基本計画」  [62-5-5]1996-2001 政府研究開発投資17兆円の内訳 [62-6]新聞記事より  [62-6-1]週刊朝日文部科学省特集   [62-6-1-1]「「文科省に食い物にされた」私大」   [62-6-1-2]◆「文科省国立大「脅し」の全容 」  [62-6-2]東京新聞社説07/23「すそ野あっての高峰」  [62-6-3] ◆(BBC News, 2001.1.24)イギリスの大学に迫る危機 [62-7]主張・論説など  [62-7-1]◆五味健作「東京大学憲章について考える」  [62-7-2]五味健作コラム  [62-7-3]佐藤学「真の改革とは 2 教育緊急要する三つの課題  [62-7-4]◆塚田広人「市場経済システムと教育制度ー教育費負担原則、と ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-0]内容紹介 --------------- [62-0-1]週刊朝日が文部科学省に関する連載企画  週間朝日が2週続けて文部科学省の行状を取り上げている[62-6-1]。概算要 求の場での有無を言わせない統廃合の行政指導の諸例が生々しく取り上げられ ている。「私が言うことをそのまま聞いてくれるなら私は嬉しいが、もしもそ のようなことをすれば、私は人間としてのあなたの見識を疑う。」[62-6-1-2] と言う人がいたら、ふつうは信用を失う。 --------------- [62-0-2]第一期科学技術基本計画を巡って 「科学・自然・人間」7月号[62-5-2]に、「物理学者の社会的責任」シンポジ ウム「ポスドク1万人計画の研究体制−−若手研究者の現状と悩み」の記録が ある。 その中で、世界的な研究者が、「お金が天から降ってくる」時代になったの だから、体制がどう変ろうと余り心配はいらない、と言う趣旨の発言をしてい る[62-5-2]。しかし、過去5年間に天から降った17兆円がどこに降ったのか はいまだに明確にされていないし、それが有効に使われたかどうかは誰も明言 できない[62-5-4]。自分の所に降らせた審査員も少なからず居たことさえ話題 になったことがある。天から金が降る時代が来た、という捉え方には違和感を 覚える。  しかし、種々の問題点はあるにもかかわらず、17兆円は有効だったという 「物証」らしいものもある。最近、科学情報会社ISIが最近10年間で論文 引用数が多い世界の研究機関を分野別に公表したが、4分野で日本の大学がベ スト5入った[62-5-1]。これについて、Yahoo JAPAN! の掲示板にこういう意 見があった[62-5-1-1] 「91年のSICENCEの記事ではかなり開いていた日本のトップ大学と欧米の大 学の業績の差が2001年に縮まってきたということは、1)日本の大学の研究業 績が特に1995年以前に低いことの理由は高等教育への予算が欧米より小さかっ たことが大学側の能力不足よりも大きいだろうということ、2)増えたとはい え未だに欧米の1/2以下の高等教育への予算である程度キャッチアップできた ことは、日本の大学の潜在能力を示しているのではないか、ということです。  つまり現在までの日本の大学の研究業績を律速しているのは大学側の能力で はなく、高等教育支出を抑え続けてきた政治の側の問題ではないだろうかとい うことです。」 不明朗な科学技術基本計画が有効だったのは、国立大学予算が、それまで余 りに貧困だったからだ、という指摘は鋭い。 --------------- [62-0-3]「独法化で命がけの研究が違法となり国際競争力が失われる」  ところで、1996年〜2000年に投入されたという「17兆円」という 数字にはトリックがある。91年〜95年は12.6兆円だった[62-5-3]ので、 新たに5年間に投入された額は4.4兆円、平均すると年に約8000億であ る。文部省関係では年ごとの増額は2000億程度であり、その大半は科研費 の増額とポスドク5千人増大に割り当てられたことになるようだ。施設改善に ほとんど回らないのも当然である。  そのため、実験系の研究室では、文字通り「命掛け」の危険な環境の中で実 験が行われている所も少なくない、と聞く。以前3名の若い方が亡くなった爆 発事故が阪大の研究室であったが、それは日本の大学の研究室ではどこでも起 こりうることかも知れない。独立行政法人化されると厚生労働省の安全基準が 適用されるため命がけの実験ができなくなり、今まで程度の研究費では成果を 出すことは不可能になる、だから独立行政法人化が心配だ、と言う方もいる。 命など大事にするような非効率な人間は、国に財政的負担を掛けずに効率良 く国際競争に勝つことを至上命令とする日本の大学には不要だ、というのが日 本という国が今思い描いている学術政策の本質と言えるだろう。 --------------- [62-0-4] 「最近の大学政策の本当の目的」  こういった大学政策が実現され、大学が命を削る場となり、行政文書を山の ように作成することが研究費を得るだけでなく生活費を稼ぐためにも必要とな るほど殺伐とした場となったとき、大学は、考え学ぶことを好む人種にとって は何の魅力も感じない存在となることが予想される。その場合には、日本の大 学の国際競争力など問題にもならなくなるだろう[62-6-3]。このようなことが 有能な官僚集団に見えていないはずはないから、最近の大学政策の本当の目的 は、考え学ぶことが好きな人間を引き寄せて産業力の成長を邪魔する大学を日 本から駆除することにあるのではないか、と思われるのである。・・・・とま あ、このような馬鹿げた空想が浮かぶほど、昨今の大学政策は長期的に見れば 馬鹿げている。 --------------- [62-0-5] 総合科学技術会議事務局の官僚集団70名の采配 総合科学技術会議事務局には70名程度の官僚がいて、次期科学技術基本計 画を立案したという[62-5-2]。エネルギーと野心に満ち、全勤務時間を当該問 題に投入できる70名の有能な「憂国」の官僚集団ーーその意思の実現を阻む ことは一見すると不可能に近い。「いろんなところでキーパーソンに皆さんが いうことが大事」というアドバイスは現実的には理解できるが、このクリティ カルな時期には、それだけでは済まない。戦時中の行政による学術社会の完全 コントロールを再現させてよいかどうか、その判断を大学は迫られている。こ れから決めるべきことについて、もう決める余地がない「不可避」なことだと いうのは、単に決断からの逃避に過ぎない。 ━━本文━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-1]コラム:大学を考える 河野 敬雄「京大内部から見えたこと」 「数日前に京都大学のホームページの総長室、総長式辞集のページの中に、6 月18日創立記念式典における総長挨拶の全文が載っていることに気づき、中 身を読んで驚愕しました。その中で、総長はつい1週間前に開催された国大協 総会において、「自主性、自律性をもった法人としてのありうる枠組を国立大 学協会総会に報告し、了承されました」とあったからです。報告が了承された か否かに関して異論があることは予め承知しておりましたから、京大の広報担 当の責任者である森本総長補佐に問いただしたところ、自分は6月18日の式 典に欠席していたため、本当にそのような挨拶をしたかどうか知らない、とい うことと、問題の個所に関して、広報担当者が勝手に修正することは出来ない、 旨の返答がありました。私自身、この件に関してはまったく1次情報を持たな いわけですから、是非、直接の当事者どうしで、事実を明確にしていただきた いものです。この京大総長の挨拶の内容がどこまで、いわゆる京大の執行部で 検討の上なされたかははなはだ疑問ですが(多分、していないと想像されます が)京大のトップが公開の席上で予め準備した原稿を読み上げて、ご丁寧にそ れを京大のホームページで公開する以上対外的にこれが京大の公式見解である、 と理解されるのが当然です。また、京大の学内においてもいくら他大学の人が 異論を唱えている、と主張してみても自分の大学の学長の見解が優先するのも 当然といえば当然でしょう。 ところで、それでは京大としての公式見解、というものが本当に責任と権限 のある場所で議論されて決まっているか、ということに関してははなはだ危惧 の念を抱かざるを得ません。といいますのは、京大の場合、全ての責任は最終 的には各部局にある、という発想をするからです。京大全体に対して責任を持 つ様ないわば「総長部局」というスーパー部局を絶対に認めようとしないよう です(法学部の「大学自治=学部自治」論だと思いますが)。 このように、京大の「意思」というものがあるのかどうか、さえよくわかり ませんが、現実問題として総長、副学長、総長補佐のいわゆる執行部が独立行 政法人化を前提とした将来計画を考えていることは疑う余地がありません。問 題はそのような現状に対してすら学内での盛り上がりや議論(賛成にしろ、反 対にしろ)もない、ということです。独立法人化に関するシンポジウムも何度 か学内で開かれましたが、回を重ねる毎にむしろ参加者が減ったように思われ ます。これがかって、「産学協同反対」で盛り上がった同じ京大か、と感じる のはもう旧守派の感傷なのでしょうか。 このような現状では、「了承された」のか、「いや、それは違う」という論 争が果たして意味があるのかどうか、さえ疑わしくなってきます。しかし、些 細な現状追認が結局今日の事態を招いたことを考えると、京大総長の挨拶の中 の「国立大学法人化の検討状況」というのはあるいは意図的な文章ではないか、 とも考えられます。この4月から広報委員会が改組されて、このような京大全 体に関わる広報に関しては、広報担当の総長補佐が対外的な窓口になることが 決まったのですから、是非初仕事として総長とともに真剣に対応して頂きたい ものです。それが、京大構成員に対しても、また国大協の会長校として全国の 国立大学に対しても一定の責任を負っている京大の責務ではないでしょうか。 「京大の責務」という場合は、京大の構成員である私自身の責務、というもの もあると考えますが、それがどのようなものであるべきか、という明確な確信 はないまま、試行錯誤しております。 以上      (7月19日)」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-2]内閣府総合規制改革会議「重点6分野に関する中間とりまとめ(案)」 2001年7月24日 http://www8.cao.go.jp/kisei/giji/006/index.html 抜粋:http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2305.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-3]大学事務局による独立行政法人問題資料集 ---------------- [62-3-1]熊本大学資料集:大学改革・独立行政法人化に係るこれまでの経緯 http://www.kumamoto-u.ac.jp/CONTENTS/KAIKAKU/dokuhouka/dokuritsu-keii.html --------------- [62-3-2]東京農工大学総務部総務課;国立大学法人化関連資料(PDF) http://www.tuat.ac.jp/‾number01/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-4]国立大学独法化阻止ネットによる参議院選挙候補へのアンケート集計 (2001.7.24までの回答) http://www17.u-page.so-net.ne.jp/da2/saku/senkyo.html --------------- [62-4-1]政党の選択肢への回答部分: ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-5]◆科学技術基本計画をめぐって --------------- [62-5-1]朝日新聞「科学情報会社ISI:4分野で日本の大学がベスト5入り」 (asahi.com 2001.7.17) http://www.asahi.com/national/update/0717/027.html 「科学情報会社ISIが17日、最近10年間で論文引用数が多い世界の研究 機関を分野別に公表。4分野で日本の大学がベスト5入り」 --------------- [62-5-1-1] Yahoo JAPAN コメント ホーム>教育>入学試験や各種資格>全般>国立大の独立行政法人化! でのコメント2001年7月23日 午後 8時51分 http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=ED&action=m&board=1086166&tid=9qna9bga4nfhna99tc0afka1bfm2bda1aa&sid=1086166&mid=2980 --------------- [62-5-2]ポスドク1万人計画と研究体制一若手研究者の現状と悩み 「科学・社会・人間」77号(2001.7) p3−27 第25回「物理学者の社会的責任」シンポジウム   ポスドク問題の歴史と現状       平山貴之  ・・・3   現場からの問題提起          向井宏一郎 ・・・7   日本のポスドク問題          丸山瑛一  ・・・13   最近の科学政策とオーバードクター問題 佐藤文隆  ・・・17        給合討論                  ・・・22 抜粋   p20 佐藤文隆 「私の考えの大意は今も変らない。状況は20年前の「窮乏の時代」とは違っ て、現在は巨費が天上から降ってくる時代に変っている。第二期「計画」には 人材計画に関しては「任期制・流動性」「若手研究者の自立」が掲げられ、具 体策が書いてある。「第一期」のパイを食った人は次はこれですよ、と丁寧に 計画されている。  物理学はこの流れにどう上手く付きあうのか。この大元との関連でのみPD F問題の局面変化もあるというのが筆者の考えである。」 p25 総合討論より 丸山 第一次科学技術基本計画が終わったが、あの17兆円の成果の評価はき ちんとできていない。・・・今度は第二次で、24兆円。・・・本当の意味で 24兆円を生かして使うためには、人を育てるのが一番重要なのだから、そう いう仕組みをどう作るか、もっと声を挙げて、科学技術会議で考えて貰う必要 がある。計画を作る過程もある程度知っているが、いろいろな有識者の意見を 聞いて、役所がとりまとめてはめ込んで、皆さんの顔を立てて文章に纏める。 だから、いろんなところでキーパーソンに皆さんがいうことが大事だ。70人 くらい官僚がいて、そこで立案する。物・装置ではなく、人を育てる仕組みを どう作るかが日本の将来のために必要だ、ということをそこに反映する必要が ある。 藤田 このシンポジウムで大学の設置基準の大綱化・教養部の廃止、独立法人 化、今回のPD問題と議論してきたが、いつも苛立ちを覚える。その原因はい ろいろあるが、誰が決めたのかわからない、ということがある。文部大臣を辞 めた有馬氏は前回の講師だったが、自分も教養部廃止に反対だった、といった。 今も、キーパーソンに話を通じろというが、それは大きく間違っていると思う。 大学の問題、研究者の問題を大学人、研究者が議論するのではなく、どこかで 誰かが考えて、学術会議の偉い人にも政治家にも話はつけてある、お金も出る、 という形で決まって、それが上から降ってくる、という形が続いている。大学 が大学の問題を、学者が学問の問題を、学生が自分達の大学の問題を決めるこ とを止めてしまった。そこに私は強い危機感を持っている。このPDの問題も、 大学院重点化で大学院生を量産して、どうなるんだ、と少しでも先を考える人 は思っていた。ところが、そうすればお金がついてくる、何がついてくる、と いうことで大学が時勢に乗って、今のようなことになった。あのときはバブル の絶頂期で、その破綻が予想できなかった、などということはない。あんな暴 走的な経済発展が破綻する事は、ちょっと冷静に考えれば誰にでもわかる。昨 日のエイズの裁判のように免罪してはいけない。その責任は、自分達の問題に ついての決定権を放棄したわれわれ大学人に戻る。ここ数年のこのシンボジウ ムでの議論を聞いていての苛立ちはそこだ。いつも、誰かが決めてしまってさ あ大変だ、となる。決めた主体が見えない。これだけでは済まなくて、これか らいろいろな問題が起きてくると思うけれども、もう一度原点に戻らなくては ならない、と考える。 ・・・・ --------------- [62-5-3]学術審議会学術研究体制特別委員会議事録2000.4.11 --------------- http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/726-gaku.html (○委員、△事務局) 93 ○科学技術基本計画を受けての5年間の科学技術関係経費の累計が17兆 94 円ということだが、従前ベースに比べてその増分はどのくらいになるのか。 95 96 △今の基本計画ができる前の5年間の累計は12兆6,000億円、今回 97 の基本計画の5年間での累計が17兆2,000億円であり、4兆6,0 98 00億円の増で、率で大体36%増になる。 99 111 ○増加分が約4兆円として、年間8,000億円ずつくらい増えているこ 112 とになる。その年間8,000億円がどこに行っているのかという質問だ 113 ろうと思う。競争的資金が、大分増えたので、それが一番大きく増えてい 114 ると思うが、それ以外に文部省の施設の改善もある。 115 116 △4兆6,000億円のうち、補正予算が大体1兆9,000億円あるの 117 で、その分で引き算すると、5年間で2兆7,000億円である。 118 119 ○毎年5,000億円くらい増えたことになるのか。 120 121 △累計なので5,000億円まで増えていないと思う。2,000億円か 122 そのくらいかと思うが、競争的資金が、基本計画の前後で1,700億円 123 ぐらい増えている。ほかに、ポスドク1万人計画もあるが、差額について 124 はどこに行ったのか、分かりやすく提示できるよう工夫してみたい。 216 ○先ほどの意見に、「学者」という言葉が出てきたが、自然科学系と理工 217 系には、「学者」はもう殆どいないのではないか。つまり、科学技術基本 218 計画、その他いろいろなサポートがあり、多くの優秀な「研究者」がたく 219 さん育って活躍しているが、「学者」は殆どいなくなっている。自然科学 220 系でいうと、大学における研究活動では、研究者と教育者の両方の活動の 221 乖離が著しい。研究だけをして、研究成果が出ればいいというのであれば、 222 大学は必要ない。これは現在、世の中から大変批判を受けている点ではな 223 いかと思う。基本計画により17兆円を投下した結果、何々賞を取ったと 224 か、論文がどれだけ出たとかということは、プラスの面である。一方、人 225 材、学者の養成ということについては、マイナスの面が非常に大きいので 226 はないかと思う。優秀な「研究者」であれば、国研で研究すれば良く、語 227 弊があるかもしれないが、5年、10年先のことであれば、国研で集中的 228 にやれば良い。大事なことは、立派な「学者」を養成するということであ 229 る。一方、翻って日頃仕事をしている学会等を見ると、有能な、優秀な、 230 プロダクティブな研究者はいるが、ただ働くだけの、学者とは到底言えな 231 い人になってしまっている。学者をさらに養成するということになると、 232 17兆円の使い方が問題となり、重点整備、重点投資も結構だと思うが、 233 初等中等教育や家庭教育をきちんとしない限り、将来指導者になるような 234 志の高い学者は育たないだろう。これでは、「有能な」、「優秀な」、 235 「プロダクティブな」研究者ばかり製造することになって、富国強兵で強 236 力な兵隊を養成しているのとあまり変わりないという気がする。人文・社 237 会系には、まだ「学者」と呼べる方がたくさんいて素晴らしい。 356 ○学術研究が日本で全く行われなくなったら大変なことになると非常に心 357 配している。プロジェクト研究というものが、学問の研究全般を推進して 358 いく推進力になっていくのであれば大変ありがたいが、「この指とまれ」 359 で、この指に止まらないと、研究もお金もなく、意欲も出なくなってしま 360 うということになると大変困る。学術研究を大いに推進するのか、それと 361 も科学技術というプロジェクト研究に資金を注ぎ込むのかという二者択一 362 という格好での選択はあり得ないと思っている。やはり、学問をちゃんと 363 知っている人が大勢いて、学者も学者の卵も随時リクルートできるという 364 状態になって、初めて大きなプロジェクト研究が成功するのだと思う。そ 365 ういう非常に肥沃な苗床をいつも用意しておくことが、科学技術の進歩だ 366 けではなく、社会全般の発展のために絶対不可欠であるということは人間 367 の歴史が証明している。その点を、前向きな格好で強調していただきたい。 --------------- 第17期学術審議会委員名簿 http://www.monbu.go.jp/singi/gaksin/00000923/ --------------- [62-5-4]日本経済新聞連載「17兆円の決算ー科学技術基本計画」 http://www.jca.apc.org/toudai-shokuren/dekigoto/00056n.html 上 研究開発投資 ミスマッチ  2000年5月22日 中 研究者増加、環境は整わず  2000年5月29日 下 研究評価に透明性必要    2000年6月 5日 --------------- [62-5-5]1996-2001 政府研究開発投資17兆円の内訳 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/99b30-watanabe.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-6]新聞記事より --------------- [62-6-1]週刊朝日文部科学省特集 #記事の最後に「大学に関する情報、取り上げてほしいテーマなどを編集部ま でお寄せください。電子メール wa@cg.pub.asahi-np.co.jp」とある。 --------------- [62-6-1-1]「「文科省に食い物にされた」私大」 『週刊朝日』2001年7月27日号、pp.156-157. 「幹部職員のおよそ6割が文部科学省OBという私立大学がある。・・・ ・・・ 文部科学省は国立大の再編に向けて着々と準備を進めているが、学内関係者は こう嘆くのだ。「これだけ経営幹部に文科省OBがいるのに、大学はこんな状 態です。これでは、いくら文科省が音頭をとっても、結果は推して知るべしと いう感じです。」 --------------- [62-6-1-2]◆「文科省国立大「脅し」の全容 統廃合プランで事務局長からヒ アリング」 『週刊朝日』2001年8月3日号、pp.136-137. ・・・ 関東の国立大の場合は、こうだ。「文科省から『大学の理念については、この 際いっさい関係ない。とにかく統廃合の案をもってきてもらいたい』と言われ た。もう学問なんてまったく関係ないという雰囲気です。それでいて、すでに 始まっている他大との連携については『それはダメなんじゃないの』などと言 うんです」  ・・・・ 文科省は何を考えているのか。合田隆史・大学課長はこう語る「・・・言わ れたとおりにするのなら、役所にとって都合がいいかもしれないが、大学とし ては見識に乏しい。各大学の検討状況は来年1月の次回ヒアリングでも聞くが、 それまでに結論を出せと言っているわけではありません。できるだけ早いほう がいいが、単なる数合わせでは意味がないですから。」 ・・・ --------------- [62-6-2]東京新聞社説07/23「すそ野あっての高峰」 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2303.htm --------------- [62-6-3] (BBC News, 2001.1.24)イギリスの大学に迫る危機 'Crisis on horizon' in UK universities http://news.bbc.co.uk/hi/english/education/newsid_1135000/1135215.stm 「高等教育セクタは危機に向かいつつある。それを避けるには、もっと多くの 若い人々を学術世界に募り留まらせなければならない、と学術界の長老が警告 している。」"The higher education sector is heading for crisis unless more young people can be recruited and retained in academia, a senior academic warns." ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-7]主張・論説など --------------- [62-7-1]五味健作「東京大学憲章について考える」 http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/univ/charta.htm --------------- [62-7-2]五味健作コラム http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/thinkmore.htm#column --------------- [62-7-3]佐藤学「真の改革とは 2 教育緊急要する三つの課題 まず財源、若者の社会参加の機会を奪うな」 (東京大学大学院教育学研究科教授) 『東京新聞』2001年7月19日付夕刊 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2295.html --------------- [62-7-4]塚田広人「市場経済システムと教育制度ー教育費負担原則、と くに高等教育と国立大学の授業料の負担方法をめぐってー」1998/9,11 山口経済学雑誌第46巻第5号、第6号(pp.19-43)(pp.65-98) http://www.cc.yamaguchi-u.ac.jp/‾ht/education.htm 「そもそも人間は自分がその中で生きているその社会が公正かつ慈恵的であり、 同時に効率的であるとき、初めてその協力関係=社会それ自体を維持し続けよ うという意欲を持つことができる。たとえば、たとえある政策を採ることによっ て、(ここではある種の学費負担方法を採ることによって)短期的には社会全 体としての満足の総計が増えたとしても、それを行うことが少数個々人の社会 的協力への意欲を大きく欠如させるとしたら、それは社会の基礎的な安定性と いう、社会の持つ最重要な効用を掘り 崩すものとなり兼ねない。それは社会 の靱帯を破壊するというもっとも重大なマイナスの効果を社会に対して与えか ねない。どれだけその社会が効率的、競争的であっても、その存立条件が、 (市場経済社会においては競争条件が)不公正と感じられるならば、その社会 は不安定なものとならざるをえない。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題を広い視野から考えるのに役立 つと思われる情報(主に新聞報道・オンライン資料・文献・講演会記録等)を 紹介。種々のML・検索サイト・大学関係サイト・読者からの情報等に拠る。  メール版で省略されている部分はウェブ版参照。ウェブ版は目次番号が記事 にリンクされている。転送等歓迎。 【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ ひ読んで頂きたいもの。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/ --------------- 発行部数 2253 (2001.7.25現在) 1521 Mag2:865|CocodeMail:360|Pubzine:90|melten:79|Macky!:56 |melma:40|emaga:31 732 直送(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・国会議員等) --------------- Digest版 発行部数 約1600(北大), ML(he-forum,reform,aml,d-mail) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━