1999年 11月

<意見>

国立大学の独立法人化には反対する。

<理由>

国の主要な教育・研究機関である国立大学 に独立行政法人通則法による 独立法人化は全くなじまない。 その異質性は文部省の提案するような特 例措置によって 対応可能なものではないと考える。
(通則法と特例措置の具体的な内容については、 文部省ニュースの 「国立大学の独立行政法人化の検討の方向」 を参照)

私が問題と考えるのは次の点である。 通則法によれば、一般に独立法人 の運営については、各法人について、

(1)3年から5年の中期目標を 主務大臣が財務大臣と相談し定め、 法人に指示する。また目標はできるかぎり数値による。

(警告)主務大臣について言えば、法人化後の国立大学については、 文部大臣とは限らないかもしれない。法人化後にある大学 が 職業訓練校的な位置付けになれば、主務大臣は例えば 労働大臣になるかもしれない。財務大臣は大蔵大臣であろう。

(2)与えられた目標を受け、法人は中期計画を立て主務大臣に 許可を受ける。 法人の長(大学の場合学長)は主務大臣が任命し、解任もできる。

(3)期間終了後、目標達成の評価を外部の「評価委員会」 が行う。 評価委員会は主務省に設置し、外部の識者を主務大臣が任命する。

以降、(3)の評価をふまえ、次期の目標設定というように、このサイクルを 繰り返す。

大学の役割を考えるとき、この制度の重大な原理的欠陥は二つある。

(A) 目標を与 え成果を評価する段階が、すべて主務省によるので、大学の自立性や 自発性が著しく損なわれる。

この仕組みの中での大学の 役割は、主務省から与えられた目標を達成する為に計画をたて、それを 許可してもらうだけである。学長や評価委員会の人事も主務省による のであるから、大学の主務大臣・財務大臣そして評価委員会 への従属状態は必至である。

(B)通則法による 目標設定から評価までの一サイクルが 3〜5年と短すぎる。

大学の役割である教育と研究 は長期的視野にたって行う事が不可欠であることを考えれば、 通則法による国立大学の独立法人化は到底受け入れられない。

さて、文部省は、大学については、その性格から法人化について、 次の ような特性措置を提案している。

(警告)この文部省の特例措置についての提案が 法人化のさいに 実現される保証はない。この特例措置を前提に 法人化後の大学を考えるのには 大きな落とし穴があるかもしれない事を知る べきである。

それによれば、中期目標の設定において国立大学には数値による 目標が なじまないから、特例措置 を考えるとしている。しかし、仮にこれが認 められたとしても、 評価のステップと合わせて考えると現実的に機能す ると思えない。 すなわち、目標設定と評価の部分が全く機能しないか又 は、 単なる数字による目標設定と達成評価になるであろう。前者であれ ば そもそも法人化する意味がないし、後者であれば 国立大学の教育・研 究機関としての機能は著しく劣化する。 このように法人化後の法人の運 営の主要部分である目標・計画設定と 評価のしくみが国立大学の機能と 役割と著しく乖離する点が、私が 国立大学の独立法人化に反対する理由 である。

さらにもう一点、評価のしくみに重大な技術的困難がある。 すなわち、 評価機構として設置が予定されている「大学評価・ 学位授与機構」の信 頼性が分からない現段階で、それを頼りにした 法人化に踏み切るのは危 険である。上にも述べたように、国立大学 の機能を考えるとき3年から5 年という目標設定の期間は短すぎる だけでなく、教育・研究という性質 上、目標設定そのものに難しさ があり、それはすなわち評価の困難さと 表裏一体であり、それに ついての安易な取り組みは、国家の教育・研究 に重大な損害を与える ことになる。その困難な部分をいまだ発足してい ない「大学評価・学位授与機構」 に委ねるのは現在進行している大学の 法人化の技術上の著しい欠陥である。

私は大学の外部評価については支持する。よって「大学評価・学位授与機 構」 の設置には賛成する。またこの機構は独立法人化とは別の話しであ るから、 法人化を中止しても設置すべきであると考える。ただ仮に「大 学評価・学位授与機構」 が設置され、大学の外部評価機関として成功し たとしても、それを評価機構 として想定した、通則法による国立大学の 独立法人化には反対である。理由は 繰り返しになるが、通則法の「3年か ら5年の中期目標を主務大臣が財務大臣と 相談し定め、法人に指示す る」の部分が国立大学の運営になじまないからである。 私は、妥当な成 果評価に基づく競争原理の導入などによる、国立大学の改革には 賛成す る。「大学評価・学位授与機構」が成功したら、それを国立大学の改善に 役立てるのは賛成である。

以上の理由により、私は 通則法に基づく国立大学の独立法人化には 反対 する。大学の改革は必要と考えるから、それは時間をかけて新しく 議論 すべきである。